【2023年版】入管法改正はどう変わった?わかりやすく解説 改正案や特定技能との関係とは

執筆者:

行政書士/井手清香

ここ数年で何度か話題となった「入管法改正(出入国管理及び難民認定法改正)」は、2019年に大きな改正があった後、2021年に改正案が出たことで再び注目を浴びました。
入管法は外国人が日本へ入国・出国などをするにあたって避けて通れない日本の法律ですが、デメリットもあります。

今までの入管法からどこが変更になったのか、問題点や現在注目されている理由などに触れながら行政書士がわかりやすく解説していきます。

出入国管理及び難民認定法(入管法)とは

昨今話題となっている「入管法 改正」が、どんな法律かご存知でしょうか?

そもそもこの入管法とは略称のことで、正確には「出入国管理及び難民認定法」といい、ポツダム命令に基づいて1951年(昭和26年)10月4日に公布されました。

その後、ボツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基づく外務省関係諸命令の措置に関する法律の規定により、法律として扱われるようになりました。

「出入国管理及び難民認定法」とは


出入国管理及び難民認定法(入管法)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律です。

内閣府男女共同参画局|出入国管理及び難民認定法

つまり入管法とは、日本への入国や出国の管理、在留資格や不法滞在、難民の認定手続きなどに関して決められた法律ということです。

すべての人が対象なので、これには外国人だけでなく、日本人も含まれます。外国人を雇用したり、受け入れる場合に必ず関係する法律といえます。

▶参考:e-GOV法令検索|出入国管理及び難民認定法

このような目的で制定された法律ですが、昨今では改正が行われています。どんな点が改正されたのか、また現在改正案が審議されており、どんな案が提出されているのか、ここからは年代順にみてきましょう。

2019年の入管法改正の背景 ・変更点

入管法の大きな改正は2019年4月に行われていました。新しい在留資格「特定技能」の創設です。

日本の人口減少と深刻な人手不足という問題を解消するために行われました。外国人受入れの政策を見直・拡大をすることで人手不足を解消しようというものです。

変更点:新しい在留資格「特定技能」の創設

そこで、このときには新しい在留資格「特定技能」が創設されています特定技能を創設したことで、日本国内において人手不足が深刻とされている特定産業分野では、一定の専門性・技能がある外国人を即戦力として受け入れることが可能となりました。

注目すべきは、特定技能では単純労働を含む幅広い業務が可能という点です。

いままでは身分系の在留資格以外で単純労働はできませんでしたが、これにより幅広い業務に従事してもらえるようになりました。

また、特定技能には技能実習からの移行が可能です。技能実習生は最長で5年しか日本に在留できず、その後は必ず母国へ帰らなければなりませんでした。ところが、技能実習から特定技能への移行が可能になったことで、母国に帰らず引き続き働いてもらうことが可能になりました

このように、人手不足のに対して、外国人材の受入れを拡充することで対応していこうという動きがみられました。詳しくは以下でも解説していますので、ぜひ、ご覧ください。

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近年の改正の動向 

入管法改正の最近の動向としては、専門分野の外国人は積極的に、そうではない人の受け入れは慎重になっています。

専門分野の外国人については、特定技能の創設と受験機会拡大を始め、高度人材のポイント制の開始と拡大、特定活動46号の創設など、受入れ拡大の方向で動いています。 技能実習生については、失踪技能実習生対応の施策が公表されました。留学生の場合は、在籍管理の徹底が図られ、抑制される方向です。 

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2021年「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」は取り下げ

2021年に提出された法律案は、取り下げとなりました。その理由はなんだったのでしょうか。

2021年入管法改正の問題点

2021年の入管法改正について人権上の問題点が多いとして、批判の声があがりました。

問題とされている点

◆不法滞在者の帰国を徹底させる
◆難民認定手続き中の外国人であっても申請回数が3回以上になった場合強制送還できるようにする(2回申請を却下されて3度目の申請中の人)
◆強制送還を拒む人に対しては、刑事罰を加えることも可能

帰国すると身に危険が及ぶことで難民申請をしているので、かつては、強制送還が保留され、日本で生きながらえることを許されていました。

しかし、日本の難民認定率は諸外国と比べて低く、また入管施設に収容されていたスリランカ人女性が過酷な扱いを受けて死亡した事件をきっかけに、改正案への批判が高まり、結果として今回の改正は取り下げとなりました。

2021年の難民認定数はずか74人となっています。

・難民認定申請者数は2,413人で、前年に比べ1,523人(約39%)減少。また、審査請求数は4,046人で、前年に比べ1,473人(約57%)増加。
・難民認定手続の結果、我が国での在留を認めた外国人は654人。その内訳は、難民と認定した外国人が74人、難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が580人。

令和3年における難民認定者数等について|出入国在留管理庁

2023年6月に改正予定

2021年の「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」は廃案となりましたが、この内容を一部緩和した改正案が国会に提出されました。2021年の内容をかなり引き継いでおり、内容についてかなり波紋を呼んでいます。

どんな内容か見ていきましょう。

今回審議されている改正点

改定案の内容は主に以下の通りです。基本的には2021年の内容を引き継いでいます。2021年改正案の監理措置制度における監理人の定期報告義務は削除されました。

難民認定三回目以降の申請者は強制送還を可能にする

難民認定申請中は強制送還が停止されるという現行の規定があり、また申請に上限を設けていないことから難民認定申請を繰り返すことで送還から逃れようとするケースがあるとして、これを三回目の難民申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還とします。

その他の改正案

  • 退去するまでの間は施設に収容するとしていた原則を改め、入管が認めた「監理人」と呼ばれる親族や支援者らの元で生活ができるようにする
  • 入管施設への収容継続の必要性を3カ月ごとに判断する
  • 送還に必要な旅券の申請を命じられて拒否したり、送還の航空機内で暴れたりした場合の刑事罰を新設する
  • 条約上の難民には該当しないが保護すべき避難(ウクライナ避難民など)を、準難民として認定する「補完的保護対象者」制度を創設する
  • 難民認定が適正に行われるよう、専門的な職員を育成する

2023年入管法改正案の問題点

では、改正案のどこに問題があるのでしょうか。

一番大きな問題点は、難民認定三回目以降の申請者は強制送還が可能なことです。もともと、日本の難民認定は他国と比較して非常に厳しいとされています。

また、入管の調査官の知識の不足や、認定基準が国際的な基準と乖離していることなどから、充分な認定の審議がされないまま難民不認定が行われ、申請を繰り返さざるえを得ない外国人がいるということです。三回以上の申請で強制送還が可能となった場合、保護が必要な人達を命の危険にさらしてしまう可能性が高くなります。

これについて、外国人を排除する出入国管理と、保護の理念に立つ難民認定は同じ機関が所管すべきではないとし、立憲民主党は第三者機関の設置を求めましたが、盛り込まれずに衆院法務委で改正案が可決しています。難民認定が適正に行われるよう専門的な職員を育成する項目については盛り込まれました。

外国人雇用にあたって受入れ企業が注意すべきこと

金銭的な困窮や劣悪な労働環境といった理由から、やむを得ず在留資格を失ってしまう外国人も多くいます。本来は「不法滞在」「違法」とひとくくりにせず、フォローできる制度や社会づくりが必要なはずです。

企業ができることとしては、まずは外国人雇用の正しい知識を身に着けたうえで、受け入れ体制をきちんと整え、外国人と共生できる環境作りを作っていくことでしょう。昨今の報道からもわかる通り、誤った知識で外国人雇用を行っている企業も見受けられます。まずは正しく理解を深め、困ったときには専門知識をもった信頼できる組織に相談できる体制を作っていきましょう。

まとめ 

今回は、近年の入管法の改正についてご紹介しました。 

外国人受入れに関する従来の施策の課題を解決するため、2019年から2020年にかけて新たな在留資格創設されたり、今までの受入れ体制について慎重な姿勢が示されたり、多くの改正点がありました。 

2019年に創設された特定技能の在留資格については、受験機会が拡大し、現在は旅行者でも受験できるようになりました。ただし、合格したからといって必ずしも在留資格が付与されるわけではないため注意が必要です。人手不足や労働・雇用の問題と、外国人受入れに関する施策は密接に関係しています。

また、難民法改正案に関する情報は現在も審議中です。今後も動向に注目していきましょう。