外国人雇用にまつわるトラブル事例!対策ポイントも紹介

外国人雇用は、知らないうちに違法行為となったり、トラブルに発展したりしやすい要素があります。自社で働く外国人とトラブルにならないように、起こりやすいトラブルの傾向とその対策を知っておきましょう。

違法行為への意識の差が引き起こすトラブル

日本においては、会社のコンプライアンスが厳しく問われています。

海外には、日本よりルーズな国が少なくないのも事実です。その結果、違法行為への意識や順法意識の差が生じ、トラブルに発展してしまうことがあります。社会風土の違う国で生活してきたことが原因の一つであるわけですが、日本で働く以上、日本のルールに従ってもらう必要があります。

また、会社側で日本のルールをしっかりと教えないままに働かせてしまうというのもトラブルに発展する要因の一つです。母国の感覚を維持したままの外国人労働者を働かせてしまった場合、彼らは問題ないと思ってやった行為が、違法行為にあたってしまう可能性があるのです。

実例:著作権法違反に関するトラブル

東京都の労働局の相談事例のなかから紹介します。

英会話・教材作成の非常勤講師として、1年更新の契約で働いていた外国人が、会社から作成を依頼されていた教材について、無断引用をしていたことが発覚しました。会社が調査した結果、過去に作成した分の教材についても、外部著作者の著作物を無断引用していたことがわかり、1か月前に通告し「解雇」となりました。

参考:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例-東京都の労働相談から|独立行政法人労働政策研究・研修機構

対策:日本人でもわかりにくい概念は、外国人も間違えやすい

日本人でもわかりにくい概念については、外国人も間違えやすいと考えたほうが良いでしょう。
著作権は日本人でも正しく理解できている人ばかりではありません。外国人にはより一層丁寧なルール説明が必要です。

会社の備品に関するトラブル

外国人に限らず、会社の備品を勝手に持ち出してしまう人がいます。会社の備品を私用に使うことや持って帰ることは窃盗罪・横領罪にあたるので、勝手に持ち出さない、使わないことが重要です。

対策:日本のルールをわかりやすく説明する

職場でのトラブルを避けるためには、日本のルールを、わかりやすい日本語で説明することが重要です。特に、日本人でも間違えやすい話題については、慎重に説明してください。

万が一のことが起こった場合、会社も責任を問われる可能性があり、違法行為を行った個人の問題だけでは済まなくなる場合があるということを説明しましょう。

法律に違反することがあると、裁判になったり、刑罰を受け、刑務所入りとなる場合があります。刑務所に入らない場合でも、在留資格を更新できず、母国に帰らざるをえなくなることもあるということを外国人本人に説明しましょう。

音信不通になってしまうトラブル

外国人労働者に起こり得るのが、音信不通になり、職場に来なくなってしまうパターンです。

2019年には、実習先から失踪した外国人技能実習生約5,000人に関する調査が行われ、外国人の失踪問題が注目を集めています。

音信不通になってしまったら出入国在留管理庁へ報告を

失踪してしまった外国人は、そのまま在留期限を過ぎると不法滞在者になってしまう可能性があります。外国人労働者が音信不通になってしまった場合、まずは出入国在留管理庁へ報告しなければなりません。

犯罪に巻き込まれている可能性も考慮して、警察にも相談する必要があります。

また、社会保険上の手続きも必要です。これらの手続きをしないまま放置すると、社員(または技能実習生)のままであると思われて、企業が思わぬ不利益(使用者責任など)を被る可能性があります。

近年では技能実習生の失踪件数が増加していることを受けて、失踪者を出した企業への罰則強化も検討されています。失踪者を出した企業は、実習生の受け入れができなくなる可能性もあるため、失踪者を出さないための対策が求められます。

対策:早期に問題をキャッチし、公的支援につなぐ

技能実習生が失踪してしまう背景には、報酬の低さといった問題点があることも事実です。

外国人がお金の問題を一人で抱え込んで、突然失踪してしまうことを防ぐためには、「お金に困っている」という情報を事前にキャッチしておく必要があります。情報をキャッチしておけば、会社としてサポートができる場合もありますし、自治体などの公的支援につなぐことも可能です。

このように、会社としては、労働の対価として適正な給与を支払うことはもちろん、外国人が困窮して問題をおこさないためにも、支援に努めていくことが大切でしょう。

従業員同士のトラブル

従業員同士が揉めてしまうこともあります。

実例:外国人材同士のトラブル事例

東京の労働局への相談事例のうちの一つを紹介します。

外国人従業員同士(料理長・他のスタッフなどは全員外国人で、経営者だけ日本人)がささいなきっかけからけんかに発展してしまいました。会社側は、けがをして出勤できなくなった従業員からけがの治療費と、解雇予告手当相当額を請求されました(根拠は労働基準法第20条)。

参考:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例-東京都の労働相談から|独立行政法人労働政策研究・研修機構

解説:外交問題を職場に持ち込む従業員には要注意

上記の事例において、外国人従業員同士の国籍はさまざまでした。けんかのきっかけについては、「ささいなきかっけ」としか書かれていませんが、本人達の相性が悪かったのかもしれませんし、何かの発言が引き金を引いてしまったのかもしれません。

外国人労働者を採用するということは、さまざまなバックグラウンドを持った人が集まるということです。政治や宗教の話題、外交問題を職場に持ち込んでしまい、雰囲気を悪くする外国人もいます。日本人も例外ではありません。建設的な議論ができればよいのですが、場合によっては感情的になり、ハラスメントや傷害事件などへ発展する可能性があります。

対策: 多様性を尊重し、政治や宗教に関する議論は行わない等のルールを周知

規模の大きいけんかは刑事事件に発展することがあります。刑事事件になってしまった場合、外国人本人が罪に問われるほか、会社としての監督責任を全うしていたのか問われてしまうことがあります。

多様なバックグラウンドを持った人間が集まるところには、もめごとの火種も多くあります。「政治や宗教はお互いに尊重し、職場でそれについての議論はしない」などのルールを決めて、労働者に周知すると良いでしょう。

また、従業員のフォローだけではなく、問題のある行動をとる人についての情報を収集する意味も含め、一緒に働く人についての相談ができる相談窓口を作るのも一つの方法です。

契約時のトラブル

契約の内容が実際と違うといわれてしまうことがあります。事例とともに解説していきます。

実例:契約内容に関するトラブル事例

東京都の労働局の相談事例を紹介します。

ワーキングホリデーで働いていた外国人労働者は、採用時は「時給1,000円」という約束であったにもかかわらず、実際には900円しか支払われていませんでした。

参考:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例-東京都の労働相談から|独立行政法人労働政策研究・研修機構

対策:契約書類と確認・説明がポイント

上記の事例では、きちんと採用時の約束通りに給与を支払わない会社側に非があります。

このように明らかに会社側に非がある場合以外であっても、思い違いなどで契約と実際が違うと言われてしまう場合が考えられます。

思い違いや、ミスを防ぐためには、雇用契約書の中身をきちんとわかりやすい日本語で説明することが重要です。雇用条件通知書は、できればその外国人社員の母国語でも作っておき、理解されやすくなるよう工夫をしてください。

また、「こんなはずじゃない」「聞いてない」を予防するためには、説明したことを残す資料があると良いです。例えば、「説明を受けました チェックボックス 名前(署名)」といった書式を用意するのも良いでしょう。

そもそも、給与や待遇、仕事内容などがわかりにくいと「そんな仕事内容は聞いてない」といわれることもありますので、用語を一つひとつ説明するつもりで、雇用時に丁寧に契約を確認することが重要です。

たとえば、「あなたがする仕事は、レストランでの料理人です。あなたは朝の当番なので、朝7時から、夕方3時までの仕事です。お給料は、月額25万円です。わかりづらいことはありますか?」など、簡単な日本語で、簡潔に説明してください。

解雇時のトラブル

実例:解雇に関するトラブル事例

東京都の労働局の事例から紹介します。

勤務態度が悪いので会社側が注意、2週間後に「改善が見られない」として解雇通告したところ、外国人本人としては納得できず、不当解雇だと主張されました。外国人がハローワークに相談、労働紛争となり、結局裁判外で和解しました。

参考:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例-東京都の労働相談から|独立行政法人労働政策研究・研修機構

対策:まずは信頼関係を構築 丁寧に説明しよう

解雇する際、退職理由に納得がいかないのは、日本人相手でもありうるトラブルですが、日本語が通じにくい外国人に対してはより一層の説明を要します。

外国人は、日本語の理解能力に個人差があり、「勤務規定に違反しているから」「勤務態度が悪いから」といっても伝わらない可能性があります。「難癖をつけて解雇したのではない」ということを説明し、わかってもらいましょう。

外国人労働者としては、それでも納得がいかないことはあるかもしれません。なかには最初から納得するつもりがない人もいるでしょう。

そのような場合は、各都道府県の労働局に相談し、紛争になってしまう前に支援を求めてください。会社の顧問弁護士がいる場合は、弁護士に相談し、ベストな方法を探しましょう。

まとめ

今回は、外国人を雇い入れた場合のトラブルについて説明しました。日本の法律についてはもちろん、なんとなくのルールで運用されてきた日本独特の社内の習慣は、説明しないとわかりません。

社内のルールは書面にして、本人に説明しながら一緒に確認することが重要です。就業規則など形になっているものは読み合わせをしましょう。社外のルール(法律)についても、説明して理解してもらうことが重要です。一例として、東京都のTOKYOはたらくネットでは、外国人向けのハンドブックなども用意されています。外国人社員の研修用として活用するのも良いでしょう。