監理団体とは?技能実習生を受け入れるなら知っておきたい役割と選び方
「技能実習制度」を利用して海外から実習生を受け入れる多くのケースでは、技能実習生や受け入れ先に対する指導や監査などを行う「監理団体」と呼ばれる非営利団体によるサポートが必要となるのをご存知でしょうか。
今回は、技能実習制度を正しく利用するためにも欠かせない監理団体の基本情報、また選ぶ際のチェックポイントについて詳しく解説します。
監修:行政書士/古田 晶稔(サポート行政書士法人)
在留資格(ビザ)申請に携わると共に、技能実習に関する手続きも担当。 人材不足に悩む中小企業へ向けた外国人活用に関するコンサルティング業務をメインとして活躍。 行政書士(愛知県行政書士会所属 /第16190330号)
目次
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監理団体とは?
監理団体とは、技能実習生の受け入れを検討する企業などからの依頼に基づき、海外での技能実習生の募集や受け入れに関する調整や各種手続きを行うことや、受け入れ先に対する指導や受け入れ後の監査などを行う組織として、主務大臣(法務大臣、厚生労働大臣)によって認められた非営利の団体のことを呼びます。
技能実習生の受け入れ方には、「企業単独型」と「団体監理型」というふたつのパターンがありますが、「団体監理型」で技能実習生を受け入れるケースは監理団体による支援やサポートが必須です。その場合は、事前に任意の監理団体に加盟する必要があります。
技能実習生を受け入れたい日本の企業や団体が、海外の取引先や現地法人、合弁企業など、独自につながりを持つ組織から直接、技能実習生を迎え、受け入れる方式。
◆団体監理型
監理団体が海外で技能実習生を募集し、実習生受け入れを希望する企業などで技能実習を行う方式。
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ちなみに2018年時点では、日本国内にいるうちのおよそ97%が団体監理型で入国した技能実習生※ですので、技能実習生の受け入れのほとんどのケースで監理団体が関わっていると言えます。
※JITCO(公益社団法人国際人材協力機構)を参考。2018年末時点では受入れの97.2%が団体監理型、残りの2.8%が企業単独型(技能実習での在留者数ベース)。
そもそも 技能実習生とは?
1993年に創設された技能実習制度を利用して日本に在留する外国人のことを、「技能実習生」と呼びます。
技能実習制度は「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする」と定められています。本来は海外への技能移転を目的で、労働力として雇用するための制度ではありません。2015年頃から急激に数を増やし、コロナ禍は新規入国ができずに数を減らしていますが、現在も日本で多くの技能実習生が実習を行っています。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ご覧ください。
監理団体になるための要件
監理団体はどんな団体でもなれるわけではなく、一定の条件を満たした団体のみが資格を得ることができます。監理団体の許可基準について見てみましょう。
監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないこととされており、当該許可に当たっては、許可基準が設けられ、当該許可基準に適合しなければ許可を受けることはできない。(法第23条及び第25条)
【監理団体の主な許可基準】
① 営利を目的としない法人であること
外国人技能実習制度について|法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官
② 監理団体の業務の実施の基準に従って事業を適正に行うに足りる能力を有すること
③ 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること
④ 個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じていること
⑤ 外部役員又は外部監査の措置を実施していること
⑥ 基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること
⑦ 優良要件への適合<第3号技能実習の実習監理を行う場合>
⑧ ①~⑦のほか、監理事業を適正に遂行する能力を保持していること
さらに詳しい情報は厚生労働省掲載の「外国人技能実習制度について」に記載されていますのでご覧ください。
「一般監理団体」と「特定監理団体」の違い
監理団体には「一般監理事業」を行うことができる団体と「特定監理事業」まで行うことができる団体があります。
一般監理事業を行うことができる監理団体のことは「優良な監理団体」と呼び、法令違反をしていないことや、技能評価試験の合格率・指導・相談体制などが一定の要件を満たした監理団体だけがなることができます。
◆一般監理事業……技能実習1号(1年目)、技能実習2号(2~3年目)+技能実習3号(4~5年目)を監理する事業
ここで受け入れる企業が注意すべきポイントは、技能実習生を何号まで受け入れようとしているか、ということです。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
在留資格 | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 | ||
実習機関 | 特定監理団体は3年 | 一般監理団体は5年 |
技能実習には「技能実習1号」から「技能実習3号」までの区分がありますが、「技能実習3号」への移行を認められるためには、一般監理事業も担当できる優良監理団体からのサポートでなければなりません。技能実習期間最長となる4~5年目までの受け入れを考えている場合は、一般監理事業も行うことができる優良な監理団体を選びましょう。
また、監理団体が一般監理事業を行うことができ、実習実施企業も優良と認められる場合には、受け入れることができる実習生の人数も倍になります。
人数枠については、以下の記事で詳しく解説しています。
監理団体の役割や主な業務
次に、監理団体の果たす具体的な役割や業務は6つです。
- 監査業務(定期監査・臨時監査)
- 訪問指導
- 入国後講習の実施
- 技能実習計画の作成指導
- 外国の送り出し機関との契約、求人・求職の取次など
- 技能実習生の保護・支援
では、順番に詳しく見てみましょう。
監査業務(定期監査・臨時監査)
実習生を受け入れる企業などが事前に提出した「技能実習計画」に沿って実習が行われているか、その進め方に問題がないかなどを確認するための業務です。3ヶ月に1回行う定期監査のほか、実習が適性に行われていないと判断される場合には臨時監査を行うこともあります。
訪問指導
定期監査とは別に行う指導です。監理団体職員が日本入国初年度の外国人技能実習生がいる受け入れ企業を訪問し、技能実習の状況の確認や、当初の計画通りに実習を実施するための指導などを行います。
入国後講習の実施
入国後、企業に配属される直前の技能実習生に対して、日本語や日本での生活全般に関する指導、入管法や労働基準法などの説明、現場見学といった、これからの暮らしや業務をサポートするさまざまな講習を行います。
技能実習計画の作成指導
実習生の受け入れを検討する企業は、外国人技能実習機構から認可を得るためにあらかじめ技能実習計画を提出する必要があります。その作成に関する指導も監理団体の役割です。
外国の送り出し機関との契約、求人・求職の取次など
技能実習生を送り出す現地機関との契約の取り交わしや現地での求人活動、面接同行などです。
技能実習生の保護・支援
技能実習生が母国語で相談できる生活相談の窓口業務や、その内容に応じた対応など、実習生が安心して暮らせる環境整備全般です。
全国の監理団体の数
2021年3月現在、監理団体として認められている非営利団体の数は日本全国で3,245に上ります。
◆「一般監理事業」の監理団体は 1,661ヶ所
◆「特定監理事業」の監理団体は 1,584ヶ所
このように監理団体は全国に数多く存在しますが、監理に関する能力や取り組みは、監理団体によって大きく異なります。
悪質な監理団体の問題
昨今、さまざまな問題が取り沙汰される技能実習制度ですが、実習生を受け入れる企業が違法にならないための監視や指導をきちんと行ってくれる監理団体を選べていないこともその理由のひとつです。
残念なことに、監理団体の中にはいわゆる「ペーパー団体」とも呼べるような実体のない団体が一定数存在すると言われています。不正行為や法令違反が認められて取り消しとなる監理団体については、ほぼ毎月発生している状態です。日本政府からも、「監理団体が適正に機能していないことから悪質な人権侵害が実習先で発生している」という見解が出されいます。
監理団体は役割を適切に果たしていない場合、許可を取り消されます。
処分理由で多いと言われているのは以下の内容です。
◆訪問指導や監査を適切に行っていなかった
◆虚偽の報告書を技能実習機構に提出した
また、監理団体が提携している送り出し機関の質が低い場合は(違法に本人から金銭を徴収する等)、技能実習生の日本語能力が低かったり、失踪したりするリスクがあります。しっかりと役割を果たすことができる監理団体を選び、その助けを得ることは、制度を正しく、安全に活用するために最も重要なことといえるでしょう。
監理団体の選び方と4つのポイント
では、実際に監理団体を選ぶ際には、どのようなことを意識するべきなのでしょうか。ここでは、監理団体選びの際にチェックすべき具体的な項目についてお伝えします。
複数の監理団体を比較する
ひとつの監理団体だけではなく、必ず複数にアプローチし、それぞれの情報を十分に比較検討することをしてください。最初は知識がなくとも、いろんな団体を比較することで、費用の相場やそれぞれの団体が果たすことができる役割なども次第に理解できるようになります。
上述したように、監理団体には多くの実績を持つ団体からペーパー団体までさまざまなものが存在しますので、複数団体を比較・検討した上で、その実態をしっかりと見極めるようにしましょう。
具体的なアプローチの例としておすすめなのは、費用の比較です。
監理団体によってかかる費用は全く異なります。費用はあまり公になっていませんし、団体によっては実費(監査の交通費など)とそれ以外の経費を一緒にして提示してくることなどもあり、それぞれを分けた上で見比べてみてください。ここで大切なのは金額が安いかどうかではありません。あまりにも安すぎる場合はペーパー監理団体の疑いなどもありますので、値段だけで選ぶのではなく、監査の内容についてもあわせて確認することが重要です。
監査業務がきちんと行われているかどうか確認する
監理団体の中にはきちんとした監査や指導を実施しない、あるいはできない団体も存在しています。技能実習制度では、労働基準法違反などで摘発される企業が後をたちませんが、故意に違反する企業だけでなく、監理団体がきちんと機能していないために知らず知らずのうちに違法行為をしてしまっているような企業もあります。
不祥事を未然に防ぐ意味でも、きちんと役割を果たしてくれる監理団体を選びましょう。
希望する国や地域の実習生を扱うことが可能か確認する
どの国の現地機関とパイプを持っているかなどについては、監理団体によって全く異なります。実習生を募りたい特定の国や地域がある場合は、その国や地域の実習生を扱っているか確認してから契約しましょう。
希望の職種・作業の実習を監理できるか、実績があるかを確認する
扱える国や地域があるのと同じように、監理団体によって指導や監査ができる職種や作業も異なります。可能であれば、実習生を迎え入れたい現場や作業に即した監理に実績を持つ団体を選ぶようにしましょう。
監理団体は途中でも変更可能
ここまでの記事では正しい指導や監査ができる監理団体を選ぶことの重要性を説明してきましたが、実際に技能実習を実施している最中に何らかの不安が生じた場合には、途中で監理団体を変更することも可能です。
幾度かの監査や指導を経て、少しでも監理団体への信頼が揺らぐようなことがあれば、あらためて情報を集めて選び直すのもひとつの手段です。
マイナビグローバルでは「自分たちがお願いしている監理団体は大丈夫?」「どんな監理団体にお願いすればいい?」といったご相談にも対応します。お困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
雇用側のためにも、指導や監査を正しく行っている監理団体を選びましょう
技能実習制度を正しく活用するためには、指導や監査をしっかりと行ってくれる監理団体を選ぶことが大切です。しかし、監理団体は数多く存在しますので、ペーパー体や悪質な団体を選んでしまわないようにするためも、まずは技能実習制度や監理団体の役割などについて、正しい知識を持つことを心がけてください。
また、監理団体選びに不安がある場合は、外部の意見を取り入れることも重要です。マイナビグローバルでも、適切な監理団体のご紹介サービスのほか、3ヶ月に1回の監査にも同行し、監理がしっかりと行われているかをチェックするサービスもご用意しています。
技能実習生の受け入れに関しても入社前の日本語教育サービスなども提供していますので、技能実習制度の活用をお考えなら、ぜひお気軽にご相談ください。