【外国人材相談事例#4】「自分の仕事しかしない」問題の処方箋

外国人相談事例#4メイン画像
執筆者:

山下弘喜

私は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っているのですが、その繋がりから外国人材との働き方について相談を受けます。
その中でもよくある相談内容と解決策を、具体的な事例を元に紹介します。

今回の相談内容】

外国人スタッフに、もっと周りのみんなのことを考えながら仕事して欲しいんです。どんなに忙しくても時間が来たらさっさと帰っちゃうし。自分に与えられた仕事しかしないし。チームワークで一緒に仕事してるわけだから、自分だけ終わったらそれでいいじゃなくて、責任感を持ってもっと手伝ったりして欲しいんですよね。やる気がある人たちなので、仕事はバリバリしてくれて、すごく助かってるんですが……
外国人スタッフにはお願いできないものなのでしょうか?

▼前回のお悩みはこちら

相談内容の背景

今回の相談者は、20名のスタッフがいる介護施設でリーダーとして働く中村さん(仮名)。1年前から外国人介護士も受け入れ始めた施設で働いています。現在外国人介護士は3名いて、そのうち2人は、夜勤もこなせるほどの実力がついています。
勤務形態はシフト制のため、常に全員と一緒に仕事をしていると言うわけではありませんが、施設の雰囲気はチームワークを大切にしていて、「みんなで責任を持って仕事をしよう」」という価値観が根付いています。

そんな中、外国人介護士の行動や態度に対して、もっと責任感を持って欲しいと日本人介護士の間で少しずつ不満が溜まっていっている状況だそう。外国人介護士は仕事はしっかりできているが、自分がする仕事の範囲しか仕事をしないようで、同じシフトの人を手伝ったり、就業時間が終わりの時にイレギュラーな仕事で手が回ってなかった人がいたとしてもさっと帰ってしまうのでした。

中村さんは、外国人介護士には何度もチームワークが大事だという話はしていて、みんな理解はしているようなのですが、なかなか改善されないとのこと。このままだと、人間関係がギクシャクした職場になってしまいそうで、と中村さんは心配しています。

【今回の問題】「責任感」の捉え方の違いがおきている

日本の会社で責任を果たすということは、「どれだけ会社に貢献できているか?」ということです。これが共通認識となっています。この価値観は、日本独特の雇用制度である「新卒一括採用」と「終身雇用制度」に由来していると考えられます。日本人は仕事を選ぶのではなく、会社を選び入社してその中でずっと長く働くことを前提に、社員が一様に同程度の責任を持つマインドが要求されます。

【連帯意識で一様に責任を持つ日本型】と【自分の役割のみに責任を持つ海外型】の責任感

【日本の場合】

会社全体の目標がある
 ⇓
目標に対して全員で責任を持って頑張る
 ⇓
全員が同じような責任感を持って働く
 ⇓
責任が同質化する

責任を同じ質・量で求めてしまう理由には、責任感の強さ弱さは想定的に比較されるため、誰がどのような仕事をしているかは関係ないからです。

一方、海外の雇用は、ポジション採用(ジョブ型雇用)です。採用前から、与えられる仕事の役割(ポジション)と責任、報酬が明確になっています。社員は自分の役割を果たす責任があり、その対価として報酬が支払われるという前提があります。

【海外の場合】

会社全体の目標がある
 ⇓
目標に対して必要な仕事が役割に割り当てられる
 ⇓
個人が役割に応じた責任を果たす
 ⇓
責任の範囲は役割ごとに異なる

この海外型の場合、責任の細分化が生じ、その集合体が結果として会社の目標を達成すると言う図式になります。一人一人役割も立場も仕事内容も違うのだから、一人一人が持つべき責任も違うことが当たり前。そしてその役割を果たしているかの説明責任があります。

このような文化が背景にあることを思えば、「仕事に対する責任はそれぞれ違うし、他人の仕事の責任まで果たす必要はないし、なぜサービス残業してまで他の人の仕事を手伝わなければならないのかわからない」という外国人の反応は至って自然だとわかるでしょう。

この違いから派生して、意思決定の仕方や権限の与えられ方も日本と海外では異なってきます。

こちらは、前回の記事「【外国人材相談事例#3】「勝手に進めて失敗されちゃう」問題の処方箋」にて紹介しているので、読んでみてください。

チームワークの捉え方も少し違う

チームワークの考え方をスポーツに例えると、日本はバスケットボールで、海外は野球です。

日本の職場は、バスケットボールの試合をしているようなチームワークです。それぞれガードやフォワード、センターと言った役割はありますが、相手からボールを奪って運びシュートして点数を決める一連の流れを全員で行い、常にフォローし合い連携しあう共同作業を行っている感覚です。そしてそれをうまくできることがチームワークだと感じます。

一方、海外は野球のように攻撃も守備も打順・ポジションがあり、一人ひとりがその役割を果たすことが求められます。攻撃なら前後の打順や塁に出ている人数などの状況に応じて打ち方を変える、守備なら継投や隣のポジションのエラーのフォローをするといったように、お互いが連携することも個人の役割として内含されているような状態です。従って個々が役割を果たすことがチームプレーに繋がっていくし、チームメイトを信頼し合い成果を出し合うことがチームワークだと感じます。

【処方箋】周りの人に合わせて仕事をすることも役割の一つにする

「処方箋」画像

仕事に対する責任の考え方が違うため、まずは上記の考え方の違いがあると言うことを外国人本人が認識し、その上で、仕事に対する価値観を変えなければなりませんが、急に考え方を変えると言うのも難しい話です。

そこで、まずは海外の仕事の向き合い方のままでも日本のスタイルに馴染むような仕組みをつくることから始めるといいでしょう

中村さんの職場のようなケースであれば、『就業時間内で仕事をする』ことが役割ではなく、『退勤時間までに仕事の区切りがつくように周りの人の仕事も手伝って区切りがついたら業務終了』というように、役割自体を変えればいいかと思います。要するに、退勤時間前に手伝うことがないかを周りに聞いて、あればそれを済ませることまでがあなたの役割だということを伝えます。すると、仕事の区切りが【時間】だったのが【区切りがついたとき】に変わり、本人の仕事の役割意識が変化していくのです。

 

このように少しずつ外国人介護士の役割を変更していき、周りに合わせて仕事をしたり、手伝ったりすることが役割で、しっかりこなせば自分のメリットにもなると言う仕組みづくりを目指していきましょう

また、この役割意識の変更と同時に「皆で一緒に仕事をしているから、皆と同じような立場で働かなければならない」という日本の考え方を意識させていくことが大事です。日本流の責任の持ち方やチームワークのありように慣れさせ馴染んでいくようにしていくことが解決への近道なのです。

【明日実践してみること】帰り際に行う仕事を追加する。

就業時間終了前になったら、外国人介護士は他のスタッフに手伝うことはないか尋ね、なければ自身の仕事が終わり次第帰っていいし、あればその手伝いが終わってから帰るようにする、と言うルールに変えてみましょう。

すると、そのうち自然と、手伝うことがないよう早めに周りの仕事を手伝うようになるはずです。なぜなら、就業時間よりも少し早めに帰ることもできるかもしれないというモチベーションが働くからです。やるべきことが終われば、少し早く帰ることができるように設定してあげることもとても有効です。

【解決のポイント】日本と海外では責任感の持ち方に差があるので、無理に日本型を押し付けず解決しよう

「皆やっていることだから、あなたもそれに合わせてください」」という同調圧力で何の疑問もなく同意するのは日本人くらいのものです。海外では、『自分は自分、相手は相手』が前提のうえで、相手との関係性はどうあるべきかというのが一般的な考えです。

サービス残業をすることが当たり前だったり、出勤時間の30分前に出勤するのが当たり前だったり、空気を読んで言うべきことを言わなかったりする日本型の働き方や責任のありようは、外国人にとってみれば意味不明です。だからと言って、日本のビジネス文化を変えろといっても現実には無理なわけですから、外国人には理解してもらわないといけないことも確かです。

特に、ビジネス文化の根幹となる「責任感」のあり方の違いは、目に見えず量れないため、余計に取り扱いが難しい問題です。日本人同士ですら齟齬を生みやすい価値観の一つだと思います。

日本と海外それぞれのスタンダードな責任のありようを互いに理解し、それに寄り添った形で解決策を目指していくことが大事で、職場での摩擦がないように工夫していくことが、結果的には最良の解決策になると考えます。

外国人材の面接での見極めポイント

外国人材が定着しない、人材の見極め方がわからない、というお悩みありませんか?

企業と外国人従業員とのすれ違いは、面接の時点できちんと確認していれば回避できる問題もあります。
本資料で、自社で活躍する外国人材を面接で見極めるポイントを公開します!

無料でダウンロードする