【外国人材相談事例#1】「伝えたことと全く違うことをしている」問題の処方箋

連載コラム:処方箋第1回メイン画像
執筆者:

山下弘喜

「伝えたことと全く違うことをしているんです。日本語は通じていると思っているんですが。もう、仕事が全然進まなくて。自分は現地のベトナム語がわからないから、自分で代わりにすることもできず、完全に仕事が止まってしまいます。どうしたらいいでしょう?」

筆者は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っています。その繋がりから様々な相談を受けるのですが、その中でもよくある相談内容から具体的な事例を元に紹介します。

外国人材定着の要!伝わる日本語の極意

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コミュニケーションミスを誘発する要因の1つである「言語」にフォーカスを当て、外国人とのコミュニケーションで日本語をどのように扱うべきかを紹介します。外国人社員との会話に課題を感じている方におすすめの資料です。

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相談内容の背景

某製造メーカーの岡田さん(仮名)は、ベトナムの工場の管理を日本の本社で行っています。岡田さん自体はベトナム語はできないため、日本語がN2で入社2年目のベトナム人ホンさん(仮名)を通訳を兼ねた業務アシスタントとして採用し現地とのブリッジ役として業務を行ってもらっています。

例えば、現地の工場の1年間分の固定費を現地の人に聞いて調べてもらって?とお願いしたら、何を勘違いしたのか、現地のスタッフ30人に1年間使ったお金を洗い出してもらおうとする指示を出してしまってました。現地の工場長から「なんでそんなことしなければならないのか?」とクレームが入り発覚したのですが、常識的に考えて、なんでそんなことするの?と呆れてしまった次第です。こういうことが頻繁に起こるので、ぜんぜん仕事が進まないんです。

と岡田さんは、まさにいま匙を投げようかと振りかぶっているところでした。

ホンさんの主張
現地の人に聞いてと言われたので、全員に聞かないといけないのかと思ってびっくりしていました。これは、私の勘違いと言われたのですが、ベトナムではこのように言われると、みんな同じように考えると思います。経理に話を聞けばよかったなんてどうやってわかるんですかね?クイズですか? と、こちらも正論です。

【今回の問題】会話の際に「想像していることが違う」ことによるすれ違いが起きている

コンテクストの違い

ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化というコミュニケーションをとるときに取る文化的なスタイルの違いが生じています。

話した言葉の背景、前後関係を共通した認識を持っていることを前提に話す文化(ハイコンテクスト文化)と話した言葉そのものを文字どおりにとらえる文化(ローコンテクスト文化)があります。

例えば「時間のあるときにやっといて」と言われたときに、言われた側はその時の相手のことを考えた上で、いつまでに出来上がっていれば良いかを推測し行動をとります。行間を読むとも言った行動パターンです。これがハイコンテクスト文化での会話になります。一方、ローコンテクスト文化だと文字通り「時間があるときにしかしない」ということになり、相手がどうあろうと、自分の時間が空かない限りその仕事がすむことはありません。なにしろ、そう指示されているからです。

「そこは察してよー」と言いたくなるのはハイコンテクスト側、ローコンテクスト側は、「それならいつまでにやってくれって言ってよ。なんでわざわざそんな回りくどい言い方するんだ?」と不思議で仕方ありません。

通常は、よくこのハイコンテクスト(日本語)とローコンテクスト(英語)の文化圏と比較され、日本語のハイコンテクストで会話をしても英語圏の人たちにはうまく伝わらないという事例が紹介されます。

※参照 Erin Meyer “The Country Mapping Tool” より抜粋
アジア諸国は、ハイコンテクストの文化の国家が多く、日本はその中でも一番ハイコンテクスな文化です。

上記のアジアのコンテクストMAPを参照いただくと、アジア圏の国はハイコンテクスト文化が多くなっています。その中で今回は、ハイコンテクスト同士の日本語とベトナム語の文化の間で起こっていることなので、ちゃんとお互い行間読めてるんじゃないの?と思ってしまうところです。しかし、この状態が一番すれ違いが起きやすいケースなのです。

なぜなら、言葉の背景や前後関係の認識が、日本とベトナムで違うので、伝えた側と伝えられた側がイメージしている行間が全然違ってしまっている可能性があるということです。

日本語の通じてない部分を想像で補おうとするので余計にすれ違う

さらに、日本語が第二言語のホンさんは、無意識に日本語がわからないことがあったらなんとか想像して、相手の言ってることを汲み取ろうと全力で自分の常識の範囲内で想像力を飛躍させます。

すると、岡田さんが伝えようとしたことと、大きく違った行間を読んでしまい、違ったイメージのものをアウトプットしてしまうという結果になってしまうのです。

今回の場合、「現地の工場の1年間分の固定費を現地の人に聞いて調べてもらって?」は、岡田さんとしては現地の経理担当者に「固定費を洗い出してもらってデータをもらうこと」を期待していたが、ホンさんは「固定費」がどういうものかわからなかったが「多分使ったお金のことだろうと想像して」、「現地の人に聞いて」を「全員に聞いてほしいと思っているのだろう」と、行間を読んでしまったのでしょう。

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【処方箋】うざいと思われてもいいぐらい詳細まで話す。

我々が日常使っている日本語は、日本語を話す単一民族内で日本文化という特有の価値観の中で暮らし、統一された教育を受け、みんなと同じことをすることを良しとする文化で培われたコミュニケーション言語です。したがって、異文化の人たちと日本語で話すと、当然、前提として言葉以外の伝えようとしている行間部分が共通認識として伝わっていくはずがありません。

このことを解決するためには、どんな文化の人にでも伝わる話し方をしなければなりません。たとえ相手が、ベトナム出身であろうと、ネパール出身であろうと、アメリカ出身であろうとです。

それには、言葉通りに受け取られてもわかるように詳しく話すことが大事です。

今回の「現地の工場の1年間分の固定費を現地の人に聞いて調べてもらって?」の場合

・現地の工場 → 具体的にどこの工場か
・1年間分の固定費を → 何年何月から何年何月までの固定費、もしくは何年の会計年次のものか
・現地の人に聞いて → 現地の経理担当の〇〇〇さんに聞いて

そして、いつまでに調べるのかや、どのような形式でアウトプットするのかなどの情報も必要です。

このように、日本人同士だと、「そこまで言われなくてもわかってます」と逆にうざいと思われるかもしれませんが、ここまで詳細に伝えるようにすることがポイントです。

そこまで言わないとわからないの?と感じてしまうかもしれませんが、「わかる、わからない」の相手の理解力の問題ではなく、正しく伝わるか、伝わらないかのコミュニケーションの問題なので、この点を勘違いをしないようにしてほしいです。

さらに慣れてきたら、なぜこの固定費を調べようとしているのか?や調べて何をしようとしているのか?などの前後の情報も併せて伝えると、よりどのようなアウトプットを期待されているのかがわかるので、よりよいアウトプットにつながります。

余談ですが、これって外国人とのコミュニケーションに限った話ではないですよね。同じ日本人同士でも、地域や世代が違えば、同じようなすれ違いが生まれるものです。このコミュニケーションの取り方を実践していけば、日本人同士でのコミュ力も改善されていくのではないでしょうか?

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【明日実践してみること】慣れるまでにテキストも用意して渡す機会を増やしてほしい

いつ、誰が、どのように、いつまでにを常に言語化して渡すようにするとコミュニケーションのロスが減ります。形式的な文書にする必要はなく、テキストチャットレベルでいいので、詳細を出して相手に伝えることが大事です。

この文章化は、日本語の理解力(今回の場合は、「固定費」を違った意味として想像してしまったこと)を補えます。ホンさんは、文章を読み返し、わからない単語「固定費」を翻訳ツールで訳して正しい意味を理解できます。

【解決のポイント】日本のコミュニケーションの取り方は、世界の中では特殊な文化であることをまず認識しよう

いつ、誰が、どのように、いつまでにを自分ではうざいと思うぐらい具体的に伝え、なぜこれを行うのかの前後関係も付け加えて話をすると、コミュニケーションのすれ違いを防ぐことができます。業務指示を口頭だけでなく、同時にテキスト化することによって、自分が伝えようとしていることの情報量のロスを防ぐことにもなるし、相手も振り返って読むことで日本語の理解力を補えます。

いかがでしたか? このように、ダイバーシティの環境が職場に生まれると、これまでとは違った働き方や意識を社員の方たちは身につけていかなければなりません。外国籍人材を登用することで生まれるこれらの環境の変化が、社員のもう一段高いスキルと意識を身につける機会へとつながります。

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