【外国人材相談事例#5】スケジュール通りに仕事が進まない問題の処方箋

【外国人材相談事例】スケジュール通りに仕事が進まない問題の処方箋
執筆者:

山下弘喜

私は企業のグローバル採用に関する支援をライフワークとして長年活動し、よく日本の職場に外国人を受け入れるための心構えなどの研修を行っているのですが、その繋がりから外国人材との働き方について相談を受けます。その中でもよくある相談内容と解決策を、具体的な事例を元に紹介します。

【今回の相談内容】

いつも話が脱線していくんです。事前に用意していたアジェンダ通りに会議が進まない事が多く、その日に進めなければならない議題の結論が出ないまま会議の時間が終了してしまう事がよくあるんです。
それだけならまだしも、話の展開次第ではこれまで決めてきたことまで覆ってしまって、話が前に進みません。
結論が変わるたび、その変更を関係者と再調整しなければならず余計に時間をとられてしまって、スケジュールはどんどん遅れてしまいます。どうしたらいいでしょう?

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相談内容の背景

某化粧品会社で商品企画・開発を手がける斉藤さんは、新商品の企画・シーズン商品のリニューアルを手がけるマネージャーとして日系企業から転職して2カ月月が経ちました。外資系で複数の国に商品を展開しているグローバル企業で、15人いる部署のメンバーの国籍もバラバラ。はじめて外国籍社員を部下に持ちました。

商品を次々とリリースしていかなければならないものの、商品開発において自社のノウハウを活かし上手に取り組めば、スケジュール通りに進行していける環境で仕事をしています。どれだけ効率よく進行管理して多くの良い商品を生み出すかが、斉藤さんの仕事のポリシーでもありました。

しかし悩みの種が……

会議の際に、いつも決まったメンバーから、議題にないことを問題提起され、議論が脱線してしまいます。さらに悪いことに、そのメンバーの発言力が大きいため、決定事項を大幅に覆されてしまうといったことが起こり、関係部署や進行管理の変更が大きな負担となっていました。

斉藤さんは、このような発言をするメンバーに対し「思ったことをなんでも発言する空気読めない人」というネガティブな意識を強く持つようになり、できるだけ発言させないようにするにはどうすればいいか?と悩んでいました。

【今回の問題】一つずつ決めていく「積み上げ型」の人と優先順位をきめて同時進行する「マルチタスク型」の人の違いに対処できていない

斉藤さんの悩みを聞いて、私は最初、コミュニケーションの取り方の問題かな?と感じました。そこで深掘りしてヒアリングしていったのですが、意思疎通に問題ありませんでした。今回の問題の原因に気がついたのは、斉藤さんのスケジュール管理表を見せてもらった時でした。

斉藤さんの仕事の進め方は「積み上げ型」といい、ゴールまでのタスク(仕事)の優先順位を、先に決定しなければならないことから順に並べて進行管理していくという手法です。日本の仕事の進め方の特徴の一つだと考えられます。一つずつタスクを完了させていき、ゴールにたどり着くという「積み上げ型」の道筋をたどっていくのです。

これと対照的なのが「マルチタスク型」です。ゴールまでのタスクに最も重要度の高いものから順に優先順位をつけていきながら同時に進行し、タスクの修正を行いながら調整し最終的にゴールにたどり着く方法です。

「積み上げ型」と「マルチタスク型」の仕事の進め方の違い

「積み上げ型」と「マルチタスク型」の仕事の進め方を図に表してみると、以下のようになります。

仕事の進め方のパターン図

「積み上げ型」は、より効率性や生産性を重視した仕事の進め方として先進国に多く見られ、「マルチタスク型」は、変化に柔軟に対応していくことを重視した進め方として発展途上国で多くみられる傾向があります。

理由として挙げられるのは、外的環境の変化の度合いの大きさが影響していると考えられます。成熟社会のなかでは、大きな外的環境の変化に晒されないという前提に立つため、決められた日時までにいかに効率よく意思決定するかに優先順位をつけてスケジュール化し無駄を省くかを考えて仕事をすることに価値を見出します。

一方で、市場環境が1週間後、1ヶ月後でどうなっているかわからないほど大きく変化が起こる可能性のある成長段階の社会の中では、一度決めたことでも修正しなければ成立しなくなったり、新たに議論していかなければならないタスクが発生したりします。

したがって、積み上げ型のようにタスクを一つずつ決定していっては、途中変更を余儀なくされるたびに振り出しに戻らなければなりません。マルチタスク型のように途中で変化する外的要因に対し、柔軟に優先順位を変更しながら、全体のタスクを進行させ調整していかなければゴールに辿り着かないだけでなく、進めたプロジェクトのアウトプットがその時のニーズにマッチしないものになりかねません。

時間の使い方・考え方にも違いが出てくる。

積み上げ型で進行する場合の特徴として、仕事のゴール(締切日)から逆算してスケジュールを組み、期間内にタスクを順番に完了させていく「時間軸に沿った時間の使い方」をします。一方でマルチタスク型は、同時進行でタスクを進行させながら必要に応じて必要なタスクに時間を割り当て、意思決定していくという「柔軟な時間の使い方」をする傾向があります。

このため、積み上げ型では、常に締切や納期といった厳密な時間管理が重要で、マルチタスク型では、時間管理より重要なタスクに十分な時間を割り当てる方を重要視します。

今回のケースで斉藤さんは、スケジュール通りに仕事を進めていこうとする「積み上げ型」の進捗管理を行っていますが、マルチタスク型のメンバーが、その時々に応じて重要度が高いと思われることにより時間を使おうとすることから、スケジュール通りに決めたい事が決まらないという問題が起きていると分析できます。

さらに、いまの人間関係だと、マルチタスク型のメンバーからの斉藤さんへの印象として、「大事な事を蔑ろにしてとにかく先に進めたがる人」とネガティブに思われる可能性もあります。これではいいものができるわけがないと、仕事に対するモチベーションの低下や斉藤さんへの不信感が募る恐れもあるのです。相談内容にもあるように「外国人は主張が強い」や「空気を読まない」からといった、よく世間的に言われている表面上のコミュニケーションの違いが原因だと錯覚し、発言をさせないようにしたり、意見を聞かないようにしたりといった対応をしてしまい、余計に拗れていってしまっています。斉藤さんは、このままでは原因はわからないが次第によくない関係性になってしまった……と悩むことになるでしょう。

時間の使い方の違いに関しては、【外国人材相談事例  #2】 お願いした仕事の「仕上がりがおかしい」問題の処方箋で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

【処方箋】意識的に時間の余裕を作ることと同時並行でタスクを進められるように練習すること

意識的に時間の余裕を作り、同時並行でタスクを進められるように練習

日本のように積み上げ型の文化で、締切や納期を守ることが前提となる社会の場合、マルチタスク型の時間の使い方をしてスケジュールを逸脱すると、信頼を失う結果となることは周知の事実です。しかし、マルチタスク型のように必要なことに時間をかけて議論するという多様な考え方を取り入れることは、より良い結果を追求するという観点からすると非常に有効な手段です。

こういう状況の場合、両方のいいところ取りをしてみましょう。

そのためには、トラブルを想定しつつも限られた期間でいかに余裕を持ったスケジュールが組めるか?という事が重要ですが、もともとギリギリのスケジュールで時間に余裕を作るなんてとんでもない!と多くの方は思われるかもしれません。

では、このようなスケジュールを組んでみるのはどうでしょうか。

タスクを同時進行する日をつくり、全体の日数は12日で変わらないが、1つのタスクにかけられる日数を増やす

順番に進行しているプロセスで、TaskA(3日)→TaskB(4日)→TaskC(5日)と合計12日間かかる仕事があるとします。このような場合、実際は1日中この仕事だけをやっているわけではないので、TaskBを5日に増やしてTaskAの2日目にスタートさせTaskAと同時進行する。TaskCはTaskBの3日目にスタートするが作業は7日とる、という風にスケジュールで組み直してみます。

こうすることでそれぞれのタスクには時間的余裕ができ、なおかつトータルの期間は同じ12日間で完了できるという状況を生み出せます。同時並行でタスクを管理するという状況をあえて作り出すと、それぞれにかける時間を増やす事ができるのです。あとは、この同時並行タスクを実行できるように重ねる時間を増やしていく練習をしていけば良いのです。

このようにルチタスク型の進行管理をできるようになることが今回の問題の根本的な解決に繋がります。また、進行中に新たに発生したタスクや議題に関しては、別で話し合うグループを作ったり、メンバーの誰かに担当させて、自分の進行と別進行で進行管理するという方法も実践してみると良いでしょう。

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【明日実践してみること】同時並行で進められるものを分類して、できるものから前倒しでスタートする

現在進行しているプロジェクトや仕事を見直して、先に始められるタスクはないかを確認します。いくつか見つけたら、本来取り掛かろうとしていたスケジュールより前倒して取り掛かってみてください。

そこで、例えば、そのタスクだけをメンバーのどなたかにお願いして、自分とメンバーとで同時並行で進行してみるといったことも取り入れると、本来自分が行う仕事をメンバーに渡せるので、自分は別の仕事の調整をする事ができるようになります。

【解決のポイント】多様性のある意見を活かすには、仕事を同時並行で進めることで時間的余裕を生み出す

斉藤さんは、自分がこれまで実践していた日本式のマネジメントにメンバーを当てはめようとしていたために、せっかくの多様性ある議論の場を排除してしまう方法を考えようとしていました。

今回のような場合は、文化的背景による進行管理の考え方の差異を理解し、時間的余裕を生み出す方法を実践していくことで、多様なメンバーからの意見を議論したり結果に反映させたりする事ができるようになると思います。

このように、ダイバーシティの環境が職場に生まれると、これまでとは違った働き方を実践する事でこれまでなしえなかった仕事のスキルが身につきパフォーマンスを向上させる事ができるようになります。外国籍人材を登用することで生まれるこれらの環境の変化が、もう一段高いスキルの獲得とビジネスの価値を生み出す機会へとつながります。

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