日本のインターンシップに参加する台湾学生の実態と大学のインターンシップ制度の基礎知識

日本では深刻な人材不足から外国人採用が活発化しており、海外のインターンシップ生の受け入れを検討する企業が増えています。台湾からも毎年、学生がインターンシップに参加しています。
しかし、受け入れ経験がない企業の場合、様々な面で不安を感じてしまうのではないでしょうか。

そこで、今回は台湾の大学におけるインターンシップ制度及び、日本でのインターンシップに参加する台湾の日本語学科生の実態についてお話をしようと思います。

台湾からのインターン生を受け入れるための基礎知識

私が学科長を務める台湾の実践大学日本語学科は、これまで9年間に渡り台湾で一早く日本での実習体制の構築に力を入れ、これまでいろいろな企業から喜びとお礼の言葉を頂きました。その経験を踏まえ、まずは台湾の大学におけるインターンシップ制度についてお話したいと思います。

インターンシップは大学を通して、あるいは個人で申し込む

日本の学生の多くは就職系情報サイトからインターンシップに申し込み、大学を利用した申し込みはほとんどありません。

これに対して台湾では、単位が取得できる大学のインターンシップ制度を利用して行います。と言うのは、日本の入国管理局にインターンシップの為の在留資格申請をする際に大学での単位修得が義務付けられているからです。

ただ、本学では日本でのインターンシップを必修科目としていますが、多くの大学は選択科目として設定し、国内外を問わない自由なインターンシップ制度を取っています。

台湾のインターンシップはあくまで学習の一環

インターンシップに参加中の台湾大学生

先述の通り、外国人学生のインターンシップは、大学と企業間の協力の下に学習の一環として行われるものなので、就職活動の延長線上にある日本のインターンシップとは認識が異なります。

学生や大学側としては、インターンシップを通して何を学ぶことができるのか(おもてなしやホスピタリティー精神‧語学の向上‧実務の習得など)と言う事が重要です。日本学生のインターンシップ活動を想像してしまうと食い違いが起こるので注意が必要です。

インターンシップの期間は長期と短期がある

台湾の学生が日本へインターンシップに行く期間は、だいたい3つに分かれます。

①2~3か月(2か月の場合は厚生年金が免除)、②半年、③1年 です。

本学では日本へのインターンシップを学生全員に必修科目として推進していますが、2~3か月(2か月が主流)のインターンシップの場合は、3年生に上がる前の夏休み又は2.3年生時の冬休みを利用して行く学生が大半です。そしてこの短期のインターンシップで得た自信と経験を活かし、4年生に上がる前の夏から冬にかけて更に半年の長期インターンシップに挑戦する学生が増えており、本学では学生の約50%に達しています。

インターンシップ期間と日本の社会保険制度との関連性

税金、TAXのイメージ

ちなみにこのような期間が主流になったのには、日本の社会保険制度が関係しています。

2か月を超えるインターンシップの場合は、社会保険に加入することが義務付けられており、健康保険の加入と厚生年金掛け金の支払いが必要となります。中でも厚生年金掛け金の占める割合が非常に高く、インターンシップ後に母国に帰って年金がもらえなくても、この掛け金を支払わなければなりません。

ただし、半年以上の就労であれば、帰国時に払った厚生年金の掛け金がほとんど戻ってくる「脱退一時金」の申請が可能となります。そのため、2か月以内又は、半年以上のインターンシップを希望する学生が多いわけです。

受け入れには、在留資格の手続きが必要

海外の学生を採用するには、受け入れ企業側が入国管理局に「特別活動」と言う在留資格を申請しなければなりません。この申請は行政書士に依頼をして行われるのが一般的です。

申請が認められたら、「在留資格認定書」を採用予定の学生に送付、学生はその「在留資格認定書」を持って日本大使館(台湾では公益財団法人の「日本台湾交流協会」が大使館を代行しています)へ行き、ビザの申請を行うというのが一連の手続きの流れです。

エージェントを利用するとスムーズに進む

エージェントと握手するイメージ

海外からのインターンシップ生の受け入れには、上記の申請手続きのほか、インターンシップを開始する上での下準備、大学との契約交渉や学生の面接と適性判断などが必要になります。これらをフォローしてくれるのが、その道のプロである「人材派遣会社(以下エージェントと称す)」です。エージェントを挟むことで、契約関係はもちろん、申請手続きもスムーズに進めることができます。また定期的に受け入れをすることも可能になります。

エージェントの協力によるメリットは、企業側だけではなく、大学側にも言えることで、実際に本学でもエージェントを通じてインターンシップを実施するパートナー企業を探しています。

また、実習中に学生に何らかの問題が起きたとしても、日本にいるエージェントの協力の下、それに速やかに対処することができるので、大学も父兄も安心して台湾の学生を日本に派遣することが可能となります。

日本でのインターンシップが人気の理由7選

台湾において日本でのインターンシップに参加する学生が多い理由は、以下の7つに集約されるでしょう。またこれは、日本以外の国へインターンシップに行く学生が少ない理由でもあります。

  • 日本による台湾統治の歴史的背景から、日本文化や日本の思想になじみがある。
  • 学生達の日本文化に対する強い憧れが、日本語や日本文化を学ぶ動機になっている。
  • 台湾では日本の統治時代から企業文化(仕事の精神)や日本人の国民性などが称賛され続けて来ており、日本を学ぶ対象として見ている人が多い。
  • 台湾政府が外国との交流を推進しており、大学に多くの日本語学科が設立されている。
  • 台湾人は向上心が強く、将来の為なら多少の苦労も厭わず、我慢して素直に何かを学ぼうと言う意欲と精神を備えている。
  • 日本とは地理的に近いため、往来が容易。また政府レベルでも日本と姉妹都市関係を結び、その文化交流が広く頻繁に行われて来た。
  • 日本のインターンシップ制度が整備され、社会的にも外国人の受け入れが一般化。それに伴い日本の人材派遣会社の台湾進出が目覚ましくなってきたこと。

私の台湾在住30年に渡る細かい観察や台湾人との交流や経験から、私見ではありますが、台湾は、これほど日本の企業や日本人にマッチできる国が他にあるだろうかと思わせるほどの独特な国民性を備えている国だと思います。日本との親和性が高いので、海外からのインターンシップを初めて受け入れようと考えている企業にも非常におすすめです。

インターンシップに参加する学生達の志向性

インターンシップの際、旅館で働く台湾の大学生

台湾の学生は日本に憧れ、夢と希望を持ってインターンシップに参加し、一つでも多く何かを学びたいと言う意識を強く持っています。そして、この経験を将来に活かしたいという目標があります。単に日本で賃金を得るために仕事ができればいい、などと考える学生はほとんどいません。

上記の理由から、多少の辛さにも負けることなく、まじめに且つ素直に仕事を行います。そういった姿勢は、日本の雇用者やお客さん達にも非常に喜ばれています。

台湾のインターン生を受け入れるメリット

先述したように、台湾のインターンシップでは、学生の単位に影響するため、大学側に企業の評価が報告されます。そのため真剣に取り組むことが期待できるだけでなく、契約期間の途中で辞めてしまうといった心配もほとんどありません。

更に、日本との親和性が高いため、他国からのインターン生よりも職場に馴染みやすく、活躍が期待できます。優秀な学生に就業体験をしてもらうことで、将来の雇用機会につなぐことができる点もメリットです。

また、大学やエージェントとインターンシップ制度を構築できれば、定期的な受け入れも可能になります。今後も日本の生産労働人口は減少していくため、外国人の受け入れとそのステップとなるインターンシップの重要性が高まっていくのではないでしょうか。

結び

今回は、台湾の大学におけるインターンシップの実施状況やインターンシップを実施するメリットやインターンシップに参加する学生の志向性などを中心にお話しました。

このような純粋な学生達の期待を裏切らないよう、また企業にとってもこのインターンシップの実施が有益なものとなるよう、大学と企業、さらにはエージェントの三者が互いに信頼関係を持って協力し合う必要性があると強く感じております。

ぜひ、台湾の学生を採用してみませんか?きっと採用してよかったと言う喜びの声が聴けると信じております。