永住権獲得したい!IT企業で働く中国人女性が目指すキャリアプランとは
日本語学校進学をきっかけに来日し、大学・大学院を卒業後、今年の春から新入社員として働いている中国出身の白景文さん。
日本へ来たことは運命だったという彼女に、IT業界で働いてみて感じたこと、仕事を決めたきっかけ、外国人社員が働きやすい環境、今後のキャリアプランについてインタビューしました。
日本への留学は運命だった。アルバイトをしながら大学院まで進学
―日本に住んでみようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
初めての来日は2012年4月。日本語学校に通い、その後は大学、大学院と進学をしました。今でも、日本に来たのは運命だと思っています。
元々、中国の大学で日本語学科に通っていましたが、家庭の経済上の都合で留学は考えていませんでした。あるとき日本語学科の先生に「機会があればぜひ日本に行ってみてください」と勧められたのをきっかけに母親に相談をしたところ、予想外に大賛成してくれたため、日本へ来ることができました。自立した生活をおくりながら、外の世界を見てみたいという私の願いが叶うことになったのです。
―日本ではどんな仕事をしていますか? 過去にしたアルバイトなどもあれば教えてください。
日本語学校時代はお弁当工場で盛り付け作業のアルバイトや、居酒屋のホールスタッフをしていました。大学に入ってからはドラッグストアのスタッフ、百貨店のキャッシャー、大学院に入ってからはブランド品の販売と通訳のアルバイトです。
そして今年、大学院を卒業し、IT企業に入社して働いています。新型コロナウイルスの影響で最初の三か月は在宅で新人研修をうけ、7月から勤務地に出勤できるようになりました。現在はネットワーク構築の業務を担当しています。
―その企業に就職しようと決めた理由を教えてください。
就職活動始める前は、漠然と百貨店、商社やコンサルティング、人材業界など色々考えていましたが、就職活動を始めてから自分に合う仕事や、将来性のある分野はなんだろうかと突き詰めて考えました。私は社交的な人間ではなく、変化や挑戦性のある仕事の興味があったので、IT業界はどうだろうかと思い、多くのIT企業にエントリーしました。
日本企業では文系出身で0経験でも一から教育制度や研修制度などがあるため、躊躇なくITの道を歩むことにしたのです。中国の多くは経験者採用が基本ですので、その差は大きいと思います。
―どのようにしてIT業界の仕事を見つけたのですか?
日本の学生と同様に、卒業1年前から新卒採用の就職活動を行いました。マイナビなど就活のための情報ツールを使って2019年3月ころから会社を調べ始め、就職活動を実際に始めたのは4月です。業界を絞っていたので、企業を探すことは容易でしたが、エントリーが多くなると時間の調整を行って合理的に進めることがとても重要でした。
―まだ入社して1年未満ではありますが、働いてみていかがでしたか?
いわゆる世間で言われるたくさん残業するような日本企業の働き方とは違っていました。残業は少なく、平均残業時間は7時間です。私の場合は、作業の進捗によって1時間早く帰れる日や残業する日などがあります。残業する日は少ないです。
評価は年功序列ではなく、個人の能力次第ですし、人と人との距離感が程よくあります。先ほども言いましたが、私はそこまで社交的ではないので、この距離感がとても合いましたが、なんでも一緒にこなしたい、社交的な方には合わないかもしれません。
悪いところを挙げるとすれば、何事においても効率が良くないところでしょうか。
日本語能力が高くてもビジネス会話は難しいと感じた
―日本で働く時に一番大変だったこと・困ったことは何でしょうか?
やはり日本語能力だと思います。私は来日2年目で日本語能力試験1級の165点を取得し、大学時代はビジネス日本語の講習も受けていましたが、日本の企業で日本人と一緒に働くと、自分の日本語能力不足を感じます。日本人のように話せないことや、伝えたい意味をきちんと表現できないことで、誤解されてしまうこともありました。今は日本語をさらに一段向上させるいい機会だと考えて頑張っていきたいと思っています。
これから日本で就職を考えている海外出身の皆さんも、N1取得※は日本語勉強の終わりではなく、始まりだと考えたほうが良いでしょう。
言語以外の点では、日本の税金の仕組みがややこしくて、分からないことが多いです。
―日本で働いてみて、中国とは違うと感じた部分はありますか?
就職活動の選考中に思ったことは、日本の面接はとても厳しいということです。私が入社を決めた会社は、説明会と併せて1次選考があり、その後は一次面接、適性検査、二次面接、2回目の適性検査、そして最後に社長との最終面接というフローでした。中国の採用面接はもっと簡単です。なかなか大変でしたが、このフローを経ることでミスマッチが避けられると思いました。
また、日本では教育制度や福利厚生が中国より充実しています。そもそも中国には一括で大量に新卒社員を採用するような制度がありません。日本では新人教育に非常に力を入れ、内定者研修や野外研修、社外の講習やセミナーなどがあることに驚きました。福利厚生においては、正社員でも派遣社員でも有給休暇や残業代が発生することも中国とは違うと思いました。
仕事観で言うと、日本人は仕事に関する責任感が強い印象です。ルール順守を徹底する点はよい面もありますが、融通が利かないことも多く、効率が悪いと感じることがあります。
―勤務先に用意してもらって良かったものがあれば、教えてください
外国人が日本で就職する際に最も重要なのはビザです。これに関して助けてもらったことが大変ありがたかったです。
入社よりだいぶ以前に、会社からビザ変更の手続きに関するメールが届きました。ビザ変更に関して、会社側が準備するもの、私が準備するもの、ビサを変更する期間など、詳しく書いてありました。手続きは複雑ですし、変更できなければ働くことができませんから、非常に安心しました。
ところが、私の友人が入社した企業は、内定者自身が必要な資料などを自身で調べて会社側に教えるという形で、大変そうでした。彼女は日本に8年以上いましたが、入社後の税金、国民年金、雇用保険などに詳しくはありません。採用の際には外国人向けの説明があると、入社側も企業側もお互い安心できると感じました。
いずれは永住ビザを取得し、高いスキルをもつフリーランスとして働きたい
―日本での暮しはいかがでしょうか?
一番良いと思うことは、日本は安心、安全というところです。食品も、買い物も、外出することも、人と付き合うのも、余計な心配はしなくてもいいのです。日本人全体の教育水準が高く、人に迷惑をかけないことで、全体的にマナーがいいと感じられます。
残念に思ったことは、たまに外国人に偏見を持つ人にも出会うことです…。
日本で便利だと感じるのは、インフラの完備。逆に不便と感じるのは、ルールを守りすぎ、融通が利かないことで、効率性が低下します。新たな物事を受け入れるのは遅いと思います。例えば、ITの発展が遅いです。
日本人は人との距離感をもちます。友達でも、家族でも、中国人みたいな親密な関係に築きにくいと思います。日本は高度少子高齢化社会なので、正直に言うと、活力も足りないと思います。
―普段の趣味や、休日の過ごし方を教えてください
旅行が大好きなので、学生時代に国内旅行に行っていました。最近はgo to travelとgo to eatのキャンペーンを利用して新型コロナウイルスに注意しながら旅行を満喫しています。
9月から運動し始めました。コロナの原因で、あまり運動していないことや、今年の健康診断がBランクなので、少しショックを受け、且つ私は座り仕事なので、プライベートの時間にちゃんと体を動かないと、健康に良くないです。ちょうど会社からも運動補助金をもらえるので、家の近くのジムを週3回以上通っています。最近は投資や断食にハマっています。YouTubeの関連動画を見たり、本を読んだりしています。仕事とプライベートを両立しています。
―今後のキャリアプランはどのように考えていますか?
私の希望の職種はウェブサイトの開発とデザインです。しかし、現在やっている仕事はネットワーク関連です。希望の仕事に就くため、努力し自分を証明することが必要です。今やっている仕事をちゃんとやり遂げることはもちろん、希望職種に関する勉強や資格の取得に向けて頑張らなければいけません。今はすでにCCNAという資格を取得しました。これからの目標は、CCNAのワンランク上のCCNPという資格の取得、さらにプログラミング言語も習得する予定です。
そして3年後に永住ビザを取得し、将来的には場所や時間に囚われない高いスキルをもつフリーランスとして働いていきたいです。
―日本には外国人の採用に不慣れな企業もたくさんあります。これから中国人を採用する日本企業へのメッセージをお願いします。
日本は少子高齢化社会に伴い、海外から労働力の輸入が必要になる一方ですが、会社側も入社する外国人側も壁が高いと感じます。外国人でも働きやすい環境を作るためには様々な方面からフォローが必要になるでしょう。
例えば、現場社員の皆さんには外国人へ理解を求めたり、外国人社員には日本の職場文化、生活、働くのに必須な知識を教えたり、ビザなどの複雑な手続きに対してフォローを行うなど、会社が環境を整えてあげると順応しやすくなり、活躍をしてくれるはずです。
※2021年12月インタビュー実施