在留資格「特定活動46号」とは?申請要件や雇用のメリットを解説

執筆者:

行政書士/初鹿 麻美

特定活動46号は、日本での就労を希望する外国人に新たな可能性を提供する比較的新しい在留資格です。
人手不足やインバウンド対策などのニーズを受けて、高度な日本語能力や専門的な技能を持つ外国人が、日本の多様な産業で働けるように創設されました。

本記事では、特定活動46号の概要、対象者、その取得方法について詳しく解説します。

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特定活動46号とは

特定活動46号は、「特定活動」という在留資格の1つであり、日本の大学等を卒業した外国人材が、日本語能力を活かして日本国内で働くための資格です。
法務省による制度設計のもと、2019年に改定され、外国人材が日本社会で活躍する機会を広げるために重要な取り組みの一つになっています。

日本の大学等を卒業した外国人が日本で働くために取得する代表的な在留資格には「技術・人文知識・国際業務」がありますが、この在留資格が事務職やエンジニア販売などの、ホワイトカラーの職種のみ就業可能なのに対し、特定活動46号は現場作業に取り組むことも可能であるため(例:コンビニ、レストランのサービス係、弁当工場など)「技術・人文知識・国際業務」よりも広範な職種で様々な業務に就業が可能です。また、家族の帯同も認められています。

特定活動46号が創設された背景

特定活動46号は、インバウンド需要の高まりと労働力不足を背景に導入されました。
外国人観光客の増加に伴い、多言語対応が求められる観光業やサービス業においては専門的な仕事だけでなく、 通訳業務を兼ねていれば現場作業や接客業等幅広い業務への従事が可能となります。そこで留学生が日本で学んだスキルを活かし就労できる場をひろげることで、企業も人材確保をしやすくなるようにと創設されたのが特定活動46号です。

在留期間

特定活動46号では、3ヵ月、6ヵ月、1年、3年、5年、または日本の法務大臣が個別に定める期間(5年を超えない範囲)とされています。
在留期間の決め方は、法務省の規定やさまざまな条件に基づいて決定されます。特定活動46号では「留学」の在留資格からの変更や初回更新時の在留期間は、原則として1年に設定されます。

特定活動46号で従事可能な業務

特定活動46号で従事可能な業務は以下の通りです。

  • 飲食店での外国人客へ通訳を兼ねた接客や仕入れ業務等
  • スーパーやコンビニ等の小売り業で、外国人客への通訳を兼ねた接客や、仕入れ、在庫管理業務
  • タクシードライバーとして、外国人客への通訳を兼ねた観光案内や通常のタクシードライバーとしての業務
  • 宿泊施設で、外国人客への通訳を兼ねた案内や接客業務、多言語の館内案内や企画等
  • 食品工場で、日本語を十分に理解することが難しい外国人社員に対して日本人従業員からの指示を伝達・指導する業務や品質管理をしながらライン作業
  • 介護施設で、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながらの介護業務
  • ビルメンテ・ベッドメイキング現場スタッフへの教育、指導業務や管理業務をしながら自身での現場作業

以上、自身も現場作業をやりながら、通訳や留学生アルバイトや技能実習生が働く職場での指導係的な業務が想定されています。

特定活動46号で従事できない業務

以下は、特定活動46号で従事できない業務の一例となります。

  • 皿洗い、清掃、工場での指示されたライン作業等の単純作業のみに従事する業務
  • 風俗営業活動(キャバクラ、パチンコ、ゲームセンター等)
  • 弁護士等、資格を有する者に限定される業務

指示を受けるだけの単純作業や日本語を使用しない業務は、特定活動46号では認められないため、本人は不法就労に、雇用主は不法就労助長罪に問われ、罰金や懲役刑が科される可能性があります。

特定活動46号の申請要件

特定活動46号の申請要件は以下の通りです。

  • 日本の大学または大学院、高度専門士※が付与される専門学校を卒業・修了していること
  • 日本語能力試験(JLPT)でN1、またはビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上であること
  • フルタイムの雇用であること
  • 年収が日本人と同等以上であること
  • 高度な日本語能力や、学術的知識を用いる業務に従事すること

※高度専門士……4年制専門学校のうち、文部科学省の定める一定の要件を満たした学校が卒業生に対して付与する称号です。修業年限4年以上の専門課程を修了し、修了した課程は文部科学省によって認定を受けていなければなりません。また、必要な単位の取得とカリキュラムを受ける必要があります。

詳しくは後述します。

日本の4年制大学を卒業または大学院の課程を修了していること

特定活動46号の申請要件は、日本の大学(学士以上)または大学院を卒業・修了していることが条件です。
また、2024年2月の法改正により、短期大学や高等専門学校を卒業し(専門職大学の前期課程の場合は修了)学士の学位を取得した方や、文部科学大臣が認定した専門学校を卒業し、「高度専門士」の資格を取得した留学生も特定活動46号の申請要件に該当することとなりました。

一方、外国の大学や大学院を卒業した方、または認定されていない専修学校(例:日本語学校等)を修了した方は対象外です。

日本語能力試験(JLPT)N1以上相当であること

日本語能力試験(JLPT)の最も難易度が高いN1レベル、またはビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上を取得している外国人を特定活動46号の申請対象とします。
なお、これらの資格を所持していない場合でも、外国の大学または大学院で日本語を専攻して卒業した方は、申請要件を満たすものとみなされます。
ただし、その場合でも申請者は、日本の大学または大学院を卒業している必要があります。

フルタイムでの雇用であること

特定活動46号の雇用形態は、フルタイムの職員としての雇用のみが認められており、
アルバイトやパートでの雇用は許可されていません。
また、契約機関の業務に従事する活動に限られるため、派遣社員として働くことも認められていません。

日本人と同等以上の報酬を受け取ること

特定活動46号の要件の一つに、日本人と同等以上の報酬を受けることが定められています。
これは、外国人であることを理由に報酬面で不利益な取り扱いを禁止することを目的としています。
報酬額は、昇給を含め、日本人の大卒者・院卒者と同等以上の水準であることが求められ、地域や企業の賃金体系に基づき、同種の業務に従事する日本人と同等以上であるかどうか、在留資格申請の際に法務大臣によって判断されます。

大学で学んだことを活かせる仕事であること

従事する業務には、大学等で学んだ内容が含まれていること、または学んだ知識やスキルを活かせるものであることが求められます。

学部や学科、大学院の専門分野が高度に専門的であった場合は業務に関連性が必要となりますが、日本の大学や大学院で修得した幅広い知識や応用力を活かせるような、多様な業務を含む仕事であることが求められます。そのため、単純労働のみの従事は認められていません。

日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務に従事すること

日本語能力試験(JLPT)のN1レベルとは、日常的な場面で使用される日本語に加え、論理的でやや複雑な表現を含む幅広い場面で使用される日本語を理解する能力を指します。

特定活動46号の条件として、対人コミュニケーションを要する業務への従事が求められています。
このため、従業員と本人が円滑にコミュニケーションを取る能力が重要視されます。特定活動46号で就労ビザを申請する場合は、接客での通訳はもちろん、日本語が不慣れな外国人従業員への日本人従業員からの指示伝達や指導など、特定技能46号の外国人材を採用する場合は他者との双方向のコミュニケーションを必要とする業務に従事してもらうことが条件となっています。

不許可になるケース

在留資格の申請は必ずしも許可されるわけではありません。
特定活動46号の在留資格の申請が不許可となる理由の多くは、業務内容に起因しています。この資格では、高い日本語能力を活かした業務や、大学等で学んだ内容を活かした業務が求められるため、上記の「従事できない業務」で説明されているように、単純作業のみの業務は不許可となる点に注意が必要です。

以下は、不許可となる可能性が高い業務の例です。

  • 飲食店における皿洗いや清掃のみの業務
  • スーパーやコンビニなど小売業における商品の陳列や店舗清掃のみの業務
  • タクシー会社における車両清掃や整備のみの業務
  • 宿泊施設における館内清掃のみの業務
  • 食品工場における製造ラインで日本語の指示を受けて行う作業のみの業務
  • 介護施設における洗濯や清掃のみの業務
  • ビルメンテナンス会社における対象ビルの清掃のみの業務

技術・人文知識・国際業務との違い

「特定活動46号」と「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)は、いずれも外国人が日本で就労するための在留資格ですが、在留資格申請の要件や適用範囲には大きな違いがあります。

特定活動46号技術・人文知識・国際業務
対象者日本の大学等を卒業し、一定以上の日本語能力を有することが求められる。海外の大学卒業者や10年以上の実務経験を持つ方も対象。日本語能力は必須ではない。
専攻内容と
職種の関連性
就労する職種と専攻内容が関連している必要がある。就労する職種と専攻内容が関連している必要がある。
業務内容現場作業を含む幅広い業務が可能。ホワイトカラーの専門性が高い業務や学術的知識を必要とする職種に限定。
具体例
(飲食チェーン店)
店舗での現場作業、外国人スタッフへの指導、通訳を兼ねた接客業務が可能。本社でのメニュー開発やウェブサイトの作成が認められるが、現場作業は不可。
派遣社員
としての就労
派遣社員としての働き方は認められない。派遣社員としての働き方が可能。
雇用先企業の届出在留資格申請時に雇用先企業を届出る必要があり、転職時には変更申請が必要。雇用先企業の届出や転職時の変更申請は不要。
在留期間初回取得時と初回更新時は原則1年のみの付与。初回から最大5年の在留期間が付与されることがある。

特定活動46号では、日本の大学等を卒業し、一定以上の日本語能力を有することが求められ、専攻内容が就労する職種と関連している必要があります。
一方、技人国は、海外の大学卒業者や10年以上の実務経験を持つ方も対象であり、日本語能力は必須ではないものの、同じく専攻内容が職種と関連していることが条件となります。

また、技人国がホワイトカラーの専門性が高い業務や学術的知識を必要とする職種に限定されるのに対し、特定活動46号は現場作業を含む幅広い業務に従事することが可能です。
例えば、飲食チェーン店に就業する場合、技人国では本社でのメニュー開発やウェブサイトの作成が認められる一方、現場作業は不可とされています。しかし、特定活動46号では、店舗での現場作業に加え、外国人スタッフへの指導や通訳を兼ねた接客業務も可能です。

以上から特定活動46号と技人国の要件は、特定活動46号の方が汎用性があるものの、技人国より厳しめの条件が設定されていると言えるでしょう。

特定活動46号の外国人を採用するメリット

特定活動46号のメリットは、技人国では認められない単純労働にも従事できる点にあります。
日本語能力を活かした業務が求められるものの、接客業務や製造業務にも携わることが可能です。

また、業務内容を単純作業に留めず、現場作業と管理業務を組み合わせることで、学生時代にアルバイトとして雇用していた外国人スタッフをそのまま正社員として採用することもできます。留学などの在留資格から特定活動46号へ変更することで、正社員登用と長期就業も可能です。特定活動46号の外国人材がキャリアアップを続けると、技人国への在留資格変更できるため、将来的には永住権の取得も目指せるようになります。

現在、外国人スタッフをアルバイトとして雇用している企業にとって、新たに正社員を採用する必要がなくなる点は大きな魅力であり、特定活動46号は非常に有用な就労ビザと言えるでしょう。

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特定活動46号の外国人採用における注意点

特定活動46号では指定書に記載された会社以外での就労が認められておらず、転職する場合には事前に在留資格変更許可申請を行い、許可を受けた後で新しい職場で働く必要があります。

活動内容が申請時の計画と大きく異なる場合、再審査が必要となることがあり、在留期間の更新時には、就労状況や給与などの要件を満たしているかが改めて確認されます。申請には通常2~3カ月の審査期間を要するため、転職先が決まっている場合は退職日の3カ月前を目安に申請を行い、スムーズに新しい職場での就労を開始できるスケジュールを立てることが推奨されます。なお、退職後3カ月以上無職の状態が続くと在留資格取消の対象となる可能性があるため、雇用主側も注意が必要です。

また、介護職で外国人材を採用する際は特定活動46号の外国人も雇用できますが、「介護」の在留資格や特定技能1号(介護)、EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者などの在留資格でも雇用ができます。それぞれの在留資格ごとに業務内容の条件や雇用条件、就労制限など変わってきますので、雇用しようとしている外国人材の業務内容に一番あっている在留資格の外国人を採用しましょう。
ちなみに、特定活動46号は、身体介護のみを目的とした雇用はできずには適しておらず、他のスタッフの教育や管理、利用者様からの相談業務などを含めた日本語でのコミュニケーションを必要とする役割での就労が求められます。

雇用契約書には業務内容や労働条件を明確に記載し、外国人労働者にわかりやすく説明することが求められます。
雇用後も在留資格の期限管理や社会保険等の法令を遵守し、必要に応じて更新手続きや生活支援を行うことで、安定した雇用環境を提供することが重要です。

比較的採用しやすいのは「特定技能」

特定活動46号は日本の大学等を卒業した人材が対象であることに加え、日本語能力の要件が高いハードルとなるため、対象となる人材の総数が少なく、人材の確保は容易ではありません。
そのため、特定技能と特定活動46号を比較すると、採用の難易度という点では特定技能のほうが採用しやすいといえます。特定技能は特定分野における技能を持つ外国人を対象とした在留資格であり、在留資格の申請に学歴要件はありません。

そのため求職者の数が多く、人材を確保しやすい点が特徴です。対象となる産業も幅広く、16分野あります。

<特定技能の対象分野 全16分野>

介護ビルクリーニング工業製品製造業建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業外食業、林業、木材産業

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まとめ

特定活動46号は、日本での就労を希望する外国人にとって新たな可能性を広げる在留資格であり、日本の労働力不足や近年増加しているインバウンド需要に対応するための重要な取り組みです。
従事可能な業務の幅広さや家族の帯同が認められる点など、特定活動46号は他の在留資格と比べて柔軟性に優れている一方、申請要件の難易度が高く、雇用契約や法令に沿った対応が求められます。

この記事で解説した要件や注意点を参考に、従事してほしい業務にあわせた在留資格を選択してみましょう。

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