農家が特定技能「農業」で外国人を採用する方法とは?技能実習との違いも解説

近年、農分野で働く外国人労働者が増えています。特に技能実習生の受入れが顕著ですが、2020年以降は新型コロナウイルス拡大の影響により技能実習生が入国できない事態となっています。そこで注目を集めているのが特定技能 「農業」です。

特定技能「農業」は技能実習と比較してどこがメリットなのか、就労できる業務内容や、取得の条件、最新の試験実施情報、違法にならないために注意すべきポイントなどを見ていきましょう。

特定技能「農業」とは?

特定技能「農業」は、外国人が農業分野での業務に従事することができる在留資格の一つです。

2019年4月、日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(14業種)において、即戦力となる外国人材の就労が可能になりました。その対象14業種のうちの一つが「農業」です。

在留資格の取得に、学歴や母国での関連業務の従事経験などが求められないため、求職者にとって取得しやすいのが特徴です。在留資格「特定技能」についての詳しい解説は、下記の過去記事をご覧ください。

農業分野の現状と、特定技能ができた背景

令和2年10月末時点で、農業分野で働く外国人の総数は38,064人(外国人雇用状況|厚生労働省)となっており、外国人の数は年々増加しています。中でも技能実習生の増加が顕著で、平成27年と令和1年を比較すると、倍近くに増加。また、在留資格の割合を見ると、技能実習生が大部分を占めています。

出典:農業分野における新たな外国人材の受入れについて|農林水産省

このように、技能実習生は農業に携わる外国人の大部分を占め、活躍していますが、実は雇用柔軟性は高くありません。

たとえば「人手不足の時期だけ働きに来てもらう」といった働き方はできません。また、従事できる業務内容にも制限があります。外国人本人との直接雇用契約で完結せず、監理団体を間に入れなければならない点も、事業者にとっては手間がかかることかもしれません。これらは技能実習制度が、「日本の技術母国にもち帰って経済発展に役立てる」という「国際貢献」が目的で創設された制度であることが影響しています。

労働力確保を背景に、特定技能が創設される

そこで、人材不足の業界に外国人を労働者として受け入れることができる「特定技能」が創設されました。

労働者として受け入れるわけですから、従事できる業務の範囲や雇用形態など、特定技能はさまざまな面で技能実習よりも柔軟な制度となっています。令和2年10月末現在、特定技能「農業」で働く外国人は1,025人(外国人雇用状況|厚生労働省)と、技能実習と比較してまだまだ少数ですが、特定技能「農業」の試験は国内と国外で実施されており、試験合格者も増えてきました。

以下のグラフの通り、国内にも多くの特定技能「農業」外国人がいます。14業種のなかで2番目に、在留している特定技能外国人が多いのです。

出典:特定技能在留外国人数の公表 | 出入国在留管理庁

制度が始まって以来、特定技能「農業」の人数は増加傾向にあり、今後も増加していくと考えられます。

特定技能「農業」で可能な業務

特定技能「農業」でできる業務内容について、以下で詳しく解説します。

特定技能「農業」で対応できる業務

特定技能「農業」では、「耕種農業全般」「畜産農業全般」および、その2つに関連する業務に従事できます。

耕種農業とは?

田畑に種を撒いて作物を育てるスタイルの農業を言います。具体的には、「施設園芸」、「畑作・野菜」、「果樹」の栽培を指します。

畜産農業とは?

「養豚」、「養鶏」、「酪農」(乳牛を育てて牛乳を生産すること)を指します。

「関連する業務」とは?

農業分野の関連業務には、農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業などが含まれます。

注意すべきポイント

●「耕種農業」の場合は業務内容に栽培管理、「畜産農業」の場合は飼養管理が含まれている必要がある。

基本的には「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の業務を合わせて行うことができない。

●「関連する業務」はあくまでも「付随業務」なので、これらをメインとする働き方はできない

業務には「栽培管理」または「飼養管理」の業務が含まれていなければなりません。農産物の選別だけをするなど、栽培管理も飼養管理もしない働き方はできないという点に注意が必要です。

認められていない業務を行うことは違法であり、不法就労となります。外国人労働者本人だけでなく企業も罰せられてしまいます

特定技能「農業」は派遣が可能

特定技能「農業」の雇用形態は、派遣という選択もあります

特定技能の中で、直接雇用に加えて派遣雇用ができるのは「農業」と「漁業」の2分野のみです。派遣が認められている理由としては、農業も漁業も、季節や地域によって仕事の内容や期間が異なるからと考えられます。

繁忙期と閑散期がはっきりしている農家にとっては、繁忙期に派遣を利用することで、人手不足を補うことができます。雇用の柔軟性が高い資格です。

特定技能1号「農業」を取得するための要件

試験のイメージ

外国人材が特定技能1号「農業」を取得するには、以下の二つを満たすことが必要です。

(1)一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材であること
(2)ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有すること

技能測定試験と日本語試験に合格する

農業技能測定試験と、日本語試験の2つを行います。

特定技能の試験制度や、試験のレベルについては、過去記事で解説しているので、参考にしてください。

なお、最新の試験日程については、試験実施団体(全国農業会議所)のホームページ(農業技能測定試験 (asat-nca.jp))を確認してください。学習用テキストは、試験実施団体のホームページで閲覧可能です。

技能実習2号からの移行

特定技能1号「農業」を取得するもう一つの方法は、「農業分野の技能実習2号から移行する」することです。
「技能実習2号」とは、1993年に導入された技能実習制度に基づき、一定の期間技能実習を行い、要件を満たすことで取得できる在留資格です。

技能実習から特定技能への移行に必要とされる主な要件は以下の通りです。

(1)技能実習2号を良好に修了
(2)技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の職種が一致

特定技能「農業」外国人を採用するには

特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入機関)は、次の条件を満たす必要があります。

外国人支援をおこなう(または委託する)

特定技能外国人を雇用する際は、業務や日常生活における様々な支援を行う必要があります。自社ですべての支援をおこなうことも可能ですが、初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、支援を代行してくれる「登録支援機関」への委託がほぼ必須となります。

●すべての支援を委託しなければならない場合
 ⇒直近2年間に外国人労働者の受け入れ実績がない、生活相談に従事した役員・職員がいない

●自社で行うか、委託するか選べる
 ⇒支援実施体制・計画づくりといった条件クリアできる

事業者が行うべき支援の内容や、登録支援機関について、詳細は過去の記事を参照してください。

農業特定技能協議会に入会する

特定技能外国人を雇用した場合、事業者は外国人を雇用してから4か月以内に農業特定技能協議会に入会する必要があります。入会は、ホームページから可能です(会費無料)。

▶参考:「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム(法人用)|農林水産省

特定技能「農業」の特徴は?技能実習と比較

ここでは、「技能実習」と比較しながら、特定技能「農業」の特徴やメリットについて解説していきましょう。

参考:http://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf

海外から採用する技能実習と違い、国内在住者の活用ができる

技能実習生は海外現地から受け入れを行う以外の採用ルートがありません。一方、特定技能は「国内外で実施される試験の合格」、「技能実習からの切り替え」という複数のルートがあり、海外からの受入れができなくとも、国内在住者から採用するという選択が可能です。

また現在では、技能実習から特定技能への在留資格切り替えが進んでいますが、これは実習期間が終了したにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の影響で帰国できないことが大きな要因です。

これにより、国内在住の特定技能外国人を採用できる確率が高まっています。

特定技能「農業」は受け入れ人数に上限がない

特定技能「農業」の場合、1事業者あたりの受け入れ人数の上限はありませんので、必要な人数の外国人を雇用することが可能です。

技能実習の場合、受け入れられる人数には上限があります。たとえば、夫婦2人で農業をしている農家を想定すると、1号実習生であれば2人までしか受け入れられません。

日本では夫婦二人や一人で農業を営んでいる農家もあり、農業の担い手そのものが減少、高齢化している現状があります。そのため、より多くの外国人を受け入れることができる特定技能「農業」はメリットが大きいと言えるでしょう。

技能実習に比べて対応できる業務範囲が広い

特定技能「農業」では、農業に関する専門的な業務はもちろん、付随業務まで対応することができます。一方、技能実習の場合は仕事内容によって従事できる時間の割合が決まっており、対応できる業務の範囲が限定されています。

特定技能「農業」で従事できる業務内容について、詳しくは後述します。

特定技能外国人には日本語能力が高い場合が多い

特定技能「農業」には、留学生や技能実習生から移行してきた日本の滞在歴が長い外国人も含まれています。そのため、比較的、日本語の能力は高いことが多いです。高い日本語スキルを持っている外国人に、技能実習生の管理といった業務も担ってもらえる可能性があります。

技能実習生よりも長く働ける

技能実習は、原則3年までしか働くことができません(条件を満たせば、一度、帰国をして2年間延長することは可能)。一方で、特定技能「農業」は、通算5年間在留し、働くことができますので、その間は帰国せずに勤務することが可能です。

それ以外にも、農家の繁忙期や閑散期にあわせて半年ごとに帰国と勤務を繰り返して、10年間に渡って勤務するといった選択肢もあります。勤務可能な業種、期間、日本語能力の水準の観点から、特定技能「農業」の外国人は実戦力として活用できる人材であると言えます。

まとめ

日本の農家のイメージ

特定技能「農業」は、技能実習よりも幅広い業務に対応でき、受け入れ人数の制限もないので、人手不足に悩む農業事業者にとって適した制度と言えます。また、母国に帰らず日本で就労を続けたいと考える外国人労働者のニーズにも合った制度です。

農業分野の人手不足対策としては、長らく技能実習制度が活用されてきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、技能実習生は入国ができず、新たな受け入れは難くなりました。技能実習生は原則、転職ができませんので海外からの受入れができなければ採用することができません。

対して、国内在住者からの受入れも可能な特定技能「農業」であれば、現在も人材を探すことができます。人手不足が深刻な場合、選択肢の一つとして検討してみることをおすすめします。

このように、特定技能「農業」のメリットは多いですが、「飼養管理」「栽培管理」を業務に含まなければいけないことや、付随業務がメインになる働き方ができない点には注意が必要です。また、対応可能な業務である「耕種農業」「畜産農業」これらの範囲についても順守することが重要です。