【解説】在留カードを紛失した際の再交付手続き|外国人社員に相談されたらどうする?
大切な在留カードを紛失してしまったとわかると、多くの外国人が焦ってパニックに陥ってしまいがちです。
「いま警察官に職務質問されたらどうしよう?」「仕事は?家族はどうなるの?」「悪いことしてないのに犯罪者になっちゃうの?」など、不安で最悪の事態を考えてしまうこともあります。
在留カードは常時携帯義務のあるとても大切なものですので、企業の担当者は、在留カードを紛失してしまった外国人社員の相談やその後の対応をフォローしてあげられるよう、備えておくと良いでしょう。
今回は、万が一在留カードを紛失しても落ち着いて対応できるように、在留カードを紛失した際の再交付手続きをご紹介したいと思います。出入国管理及び難民認定法(入管法)や、出入国在留管理庁のQ&A等を参照しながら、行政書士が対応方法をレクチャーします。
目次
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在留カードを失くしたら、14日以内に再交付申請
紛失が発覚したらスピード勝負。すぐに動きましょう。
悪用を防ぐためにも、慌てず、落ち着いて、すぐに近くの警察署に紛失届を出し、在留カードの再交付の申請を行います。
在留カードの交付を受けた中長期在留者は、紛失、盗難、滅失その他の事由により在留カードの所持を失つたときは、その事実を知つた日(本邦から出国している間に当該事実を知つた場合にあつては、その後最初に入国した日)から十四日以内に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、在留カードの再交付を申請しなければならない。
入管法第十九条の12:紛失等による在留カードの再交付
再発行の方法についてはこの後ご説明します。
【紛失は一大事!】在留カードは常時携帯の義務あり
在留カードは、日本に在留する16歳以上の外国人全員に常時携帯義務があり、パスポートでは代わりになりません。
外国人にとって在留カードは、適法に在留していると証明するために非常に重要なもので、不携帯では不法滞在者と疑われる可能性もあるため、絶対に避けましょう。
また、紛失した外国人社員本人が、在留カードの携帯義務について知らない、再発行の手続きをしない可能性もあるため、企業側から外国人社員に対して事前に説明しておくと良いでしょう。
特に、採用面接の時に「在留カードを無くして再交付申請中」などの場合は、雇用前に再発行された在留カードを提示してもらいましょう。
永住者も在留カードの携帯は必須?
永住者であっても、16歳以上の外国人は在留カードの携帯義務があります。
我が国に在留する外国人は,旅券又は各種許可書を携帯し,権限ある官憲の提示要求があった場合には,これを提示しなければなりません。
これは,我が国に在留する外国人の旅券には一部の例外を除き,入管法で定める何らかの許可を受けていなければ我が国に上陸又は在留することができず,活動が在留資格により制限を受けたり,制限が付されていることがあります。したがって,我が国に在留する外国人について,在留の合法性,資格外活動の可否,上陸・在留の許可に付された条件に違反していないかを即時的に把握するために,外国人は旅券又は各種許可書を携帯し,権限のある官憲からの要求があった場合には,これを提示しなければならないとしています。
旅券等の携帯(入管法第23条)|出入国在留管理庁 (入管法第二十三条の2:旅券等の携帯及び提示)
※中長期在留者は、出入国在留管理庁長官が交付し、又は市町村の長が返還する在留カードを受領し、常にこれを携帯していなければならない。
在留カードの携帯義務が免除される場合
以下の場合、在留カードの携帯義務は免除されます。
- 在留期間更新等で一時的に取次行政書士に在留カードを預ける場合 (行政書士に在留カードを預けていることを証明する預かり証を発行してもらうと安心です)
- 16歳未満の場合
- 特別永住者の方で、特別永住者証明書を所持している方(入管特例法第十七条4項)
※ 警察官などに提示を求められた場合、たとえ携帯していなくても、特別永住者証明書の提示義務があります 入管特例法第十七条2項)
※特別永住者証明書の常時携帯義務については、入管法等改正法の国会における審議の過程で、「特別永住者に係る歴史的経緯等に鑑み、特別の配慮が必要」であることから、常時携帯義務は定めないこととされたものです。
在留カード不携帯は罰金や懲役なども……
警察官などに提示を求められた際に在留カードを携帯していない場合、20万円以下の罰金に処せられることがあり、提示に応じなかった場合は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。(入管法第七十五条)
処分情報は記録され、在留資格の次回更新時に影響が出る可能性もあります。
企業は在留カードを預かってはいけない
外国人社員から取り上げるのは当然認められていませんが、好意で預かってあげることも、やってはいけない行為に当たる可能性があります。
これは外国人社員から保管をお願いされた場合も同じです。知らずにうっかり預かってしまう場合もあるので、気を付けましょう。技能実習生の旅券や在留カードの取り上げが不正行為として出入国在留管理庁に摘発された事例もあります。
▶外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第48条第1項
在留カードの再交付手続き
在留カードを紛失した場合、その事実を知った日(本邦から出国している間に当該事実を知った場合は、その後最初に入国した日)から14日以内に入管で在留カードの再交付申請をしなければなりません。
※在留カードの交付を受けた中長期在留者は、紛失、盗難、滅失その他の事由により在留カードの所持を失つたときは、その事実を知つた日(本邦から出国している間に当該事実を知つた場合にあつては、その後最初に入国した日)から十四日以内に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、在留カードの再交付を申請しなければならない。
また、在留カードの紛失自体に対する罰則等の規定はありませんが、紛失による在留カードの再交付申請を申請期間中に行わなかったときは、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。
では、これから再申請の手続きについてご説明します。
1.最寄りの警察・交番に紛失届を提出
まずはお近くの警察に速やかに届け出ましょう。在留カードを拾った人が悪用してしまう事も考えられますので、気づいたら「すぐ」に行動しましょう。
2.住居地を管轄する入管へ再交付申請
次に、警察署で貰った遺失届出証明書等を持って、住居地を管轄する入管で再交付申請を行います。例えば、東京都内に住んでいる場合には東京入管へ再交付申請を行うことになります。
在留カード再交付申請時の必要書類
- 在留カード再交付申請書
- 顔写真
- 所持を失ったことを証する資料(遺失届出証明書等)
- 旅券(旅券を提示できないときは、その理由を記載した理由書)
上記の書類を準備し、住居地を管轄する入管で再交付申請を行います。
本人以外の再交付申請は可能?
本人以外にも、再交付申請を行うことが可能です。
一例をあげるとすれば、以下の通りです。
- 本人と同居する16歳以上の親族(本人が16歳に満たない又は疾病等)※申請人との関係を証明する資料(住民票等)、診断書等が必要です
- 取次行政書士、弁護士
- 申請人本人の法定代理人等
- 申請取次の承認を受けている企業の担当者
上記に該当する人は再交付申請が可能です。詳細は入管のHPを参照ください。
再交付にかかる時間は?
再交付は入管にて、当日中にできます。
慌てず、一つ一つ落ち着いて手続きをしましょう。
入管の受付時間は9時~16時です(地域によって12時~13時対応不可の場合あり)。
例年、入学や入社手続きが増える3月頃は入管の窓口が大変混み合いますので、時間に余裕を持って向かいましょう。
在留カードが即日で交付されず、後日改めて在留カードを受領するときは、次の書類の提出が必要です。
- 申請受付票
- 旅券
- 身分を証する文書等の提示
再交付の手数料はいくら?
紛失、盗難、滅失等の理由による在留カードの再交付に手数料はかかりません。
また、著しい毀損、汚損、ICチップの記録の毀損を理由とする在留カードの再交付にも手数料はかかりません。ただし、毀損等の場合以外で在留カードの交換を希望するときには、1,600円の手数料がかかります。
紛失した場合はパスポートの携帯を
在留カードを携帯していれば、通常パスポートを携帯する義務はありません。
ですが、紛失に気が付いた後はパスポートを携帯することをおすすめします。警察に在留カードの提示を求められたときに、パスポートで身分を証明できないと問題になる可能性があるからです。在留カードの提示を求められたときは、在留カードを紛失したことや再交付申請中であることを説明しましょう。
海外で在留カードを紛失してしまった場合
「日本に帰国できなくなったらどうしよう!」と、日本で紛失するよりもあせってしまうかもしれません。しかし、基本的には対応は同じです。
紛失の事実に気づいたら、まずは海外の近くの警察署に行き、在留カードの紛失を届け出ましょう。
日本に再入国後、14日以内に本人が入管へ出向き、海外で貰った紛失の証明になる書類を在留カード再交付申請の手続きの時に提出します。(入管法第十九条)
在留カードを持っている外国人が、再入国許可(みなし再入国許可も含む)を受けて、日本を出国中に在留カードを無くしてしまっても、特に手続きをせずに日本に再入国できます。ただし、再入国出国記録(再入国EDカード)は必要です。
気を付けなければならないのは、在留カード無しで日本に再入国する場合、飛行機への搭乗を拒否される可能性があるという事です。
この場合、行うべき流れとしては、
↓
再入国許可期限証明書を、国際郵便で本人宛てに郵送してもらう。
↓
紛失した本人が日本に再入国した後、本人の住居地を管轄する入管に在留カード再交付の手続きを行う。
以上が、海外で在留カードを紛失した際の手続きになります。
海外で在留カードの紛失に気づいた場合、在外日本大使館や領事館では在留カードの再交付ができない事を覚えておきましょう。
まとめ
雇用している外国人社員に用心するように伝えていても、いつかは直面するこの問題。多くの場合お財布と一緒に紛失するため、本人も企業の担当者も不安で頭が真っ白になりがちです。
外国人本人はもちろんのこと、企業の担当者も正しい知識を学び、不測の事態に対応できるよう準備しておくことが重要です。