【解説】違法?外国人労働者の賃金で注意すべきポイント|最低賃金・税金

賃金の比較

外国人社員を雇用する場合は、日本人の賃金水準と同一でなければなりません。もし、労働契約の段階でこれに反する場合、外国人が在留資格を取得できない可能性があります。
また、2020年4月から「同一労働同一賃金制度」がスタートし、外国人にも適用されています。
「同一労働同一賃金」とは具体的にどのような制度なのでしょうか? 
また、外国人と日本人で業務内容が違う場合、賃金が違うということは許されるのでしょうか? 

今回は、このような疑問に答えるとともに、外国人社員の賃金を設定するポイントを解説します。

外国人にも最低賃金が適用される

同一賃金で働く社員のイメージ画像

最低賃金は、時給に換算して考えます。つまり、月収を時間で割り、時給に換算したときに最低賃金を下回る場合は法律違反になるということです。そして、外国人にも、最低賃金法が適用されます。たとえ技能実習生であっても、最低賃金を下回ってはいけません。

最低賃金法に国籍は関係ない

企業の中には、「外国人社員は教育の手間がかかるのだし、その分賃金を安くしてもいいのではないか」と考える場合があるかもしれません。しかし、詳しくは後述しますが、教育の手間を賃金に反映させることはできません。
最低賃金法は、国籍に関係なく適用されますので、外国人社員も適用対象になります。したがって、日本語でのコミュニケーションに難がある場合や、教育の手間がかかる場合でも、最低賃金を下回る賃金設定をすることはできません。

技能実習生でも最低賃金を下回ることは許されない

技能実習生は、日本からの技術移転を目的に来日していますが、だからといって最低賃金を下回ってはいけません。「実習だから賃金は関係ない」と考えるのは間違いです。

仮に、受け入れ先企業と技能実習生が最低賃金額を下回る賃金で合意し、労働契約を締結した場合でも、その賃金額は無効となり、最低賃金額で締結したものとみなされます。

もし最低賃金以上の金額を支払わない場合は、入管法に基づく不正行為の対象となる可能性があり、監理団体や受け入れ先企業は技能実習生の受け入れを一定期間停止されてしまいます。

不正行為については、毎年処分事例があるので十分にご注意ください。

統計にみる外国人労働者の賃金

2019年の「賃金構造基本調査」では、外国人労働者の賃金統計がはじめて集計されました。外国人の一般労働者賃金を、在留資格別に比較した表は以下の通りです。

在留資格区分賃金年齢勤続年数
外国人労働者計22.31万円33.4歳3.1年
専門的・技術的分野(特定技能を除く)32.43万円32.3歳2.7年
特定技能
身分に基づくもの24.46万円42.4歳5.2年
技能実習15.69万円26.7歳1.5年
留学(資格外活動)
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動)21.49万円30.1歳2.2年
参考 厚生労働省|令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況 外国人労働者

特定技能と留学についてはデータがありませんが、技能実習の賃金が低いことがわかります。なお、外国人を含む労働者全体の賃金の平均は、正社員の場合は32.54万円、それ以外の雇用形態の場合は21.12万円となっています。

また、短時間労働者(いわゆるパートタイム)については、在留資格区分ごとに時給が公表されています。

在留資格区分1時間当たり賃金年齢勤続年数実労働日数1日当たり所定内実労働時間数
外国人労働者計1,066円29.1歳1.7年13.8日6.3時間
専門的・技術的分野(特定技能を除く)1,882円31.9歳2.5年17.6日5.5時間
特定技能
身分に基づくもの1,121円44.3歳3.5年15.2日6.0時間
技能実習977円25.5歳1.3年19.4日7.3時間
留学(資格外活動)1,024円24.3歳1.2年12.8日6.3時間
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動)1,033円29.5歳1.0年15.2日6.4時間
参考 厚生労働省|令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況 外国人労働者

この表を見ると、技能実習生の賃金が最も低く、1,000円を下回っています。外国人を含めた短時間労働者全体の賃金は、1,148円であったことから、全体と比較しても技能実習生の賃金は安めに設定されていることが多いと言えるでしょう。

一方で、専門的・技術的分野で働く外国人の賃金は、平均よりも高めです。

給与水準が日本人よりも低いと在留資格を取得できないケースも

外国人労働者の給与が最低賃金を上回っていたとしても、日本人と比較して給与水準が低い場合は、在留資格を取得できないケースがあります。

これは、特定技能の制度では、日本人と同等以上の給与水準が要求されているためです。具体的には、日本人と同等以上の賃金、さらには外国人であることを理由とした待遇の差が差別的であってはならないと定められています。これに適合しない場合、特定技能の在留資格が不許可になる可能性があります。

第1条(中略)

三 外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。

四 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと。

出典:電子政府の総合窓口e-Gov|特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令

ただし、そもそも従事する業務内容が日本人と違うことによって発生する賃金の差や、差別的ではない取り扱いの差(=合理的な取り扱いの差)については、許容されると考えられます。「合理性の判断」については、次の章で解説します。

「同一労働同一賃金」は外国人にも適用される

給料

同一労働同一賃金は、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保するための制度です。国籍に関係なく適用されますので、外国人にも同一労働同一賃金が適用されます。

そもそも、仕事内容が違えば、賃金も違って当然です。そのため、待遇に差があっても合理的な理由があれば問題ありませんが、理由が「差別的」であることは許されません。つまり、「合理的な理由と言えるのかどうか」がポイントであるということです。

では、合理性はどのように判断するのでしょうか。

厚生労働省の見解にみる「合理性」の判断

厚生労働省の「同一労働同一賃金のガイドライン」では、労働実態に違いがあり得ることを認めたうえで、以下のように労働実態の違いによる賃金の差も認めています。

「基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。」

出典:厚生労働省|「同一労働同一賃金ガイドライン」

例えば、ホテルで仕事をするのに、日本語が話せなくて経験もないAさんと、日本語が話せて経験もあるBさんが、それぞれ別の仕事をする場合、賃金に差があっても問題ないでしょう。同じ仕事内容であるにもかかわらず賃金が違うのは問題と考えられます。

  • Aさん:日本語が話せない・職業経験なし
  • Bさん:日本語が話せる・職業経験あり
  • AさんとBさんは同じ仕事内容を行う ⇒ 賃金に差があってはならない
  • AさんとBさんは違う仕事内容を行う ⇒ 賃金に差があってもよい

 

それでは、正社員と非正規雇用では賃金に差があってもいいのでしょうか? 

「正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明ではなく、賃金の決定基準・ルールの相違は、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない。」

出典:厚生労働省|「同一労働同一賃金ガイドライン」

上記ガイドラインでは、「期待される役割が異なる」というだけでは、主観的で抽象的な説明であるため、合理性が不十分だとしています。

つまり、企業は賃金の決定基準やルールを明確な根拠とともにしっかりと決め、それぞれの職務内容が違うことを明確にする必要があります。これは外国人の場合も同じです。

ところで、外国人の場合は日本のように様々な税金が天引きされるシステムに馴染みがなく、給与を渡すタイミングになってトラブルになることがあるため、注意が必要です。

次の章では、外国人の賃金と税金の関係について説明します。

居住者?非居住者?外国人と税金の関係

税金を計算する人

外国人にも税金は課され、日本に長く住んでいる人ほど税金が多く引かれるという仕組みになっています。国籍とは関係なく、日本国内に住所がある場合や、1年以上居所がある場合は「居住者」に分類されます。「居住者」以外の外国人は、「非居住者」となります。非居住者の具体例としては、短期的に日本に来て働いている人(ワーキングホリデーやインターンなど)や、日本に来たがまだ1年間も居住していない労働者などが当てはまります。

また、居住者は、さらに「永住者」と「非永住者」にわかれます。

過去10年間で、日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以上になると「永住者」に区分されます。5年以下の場合は「非永住者」となります。

ちなみに、永住という名前がついていますが、在留資格「永住者」(永住権)とは別ものです。

居住者の課税範囲

居住者の場合は、「永住者」と「非永住者」で所得税の課税範囲が異なります。所得税は日本人と同じ税率によって計算され、年末調整または確定申告で納税します。

永住者の場合

永住者の場合は、以下に対して所得税が課税されます。

  • すべての国内所得
  • すべての海外所得

非永住者の場合

非永住者の場合は、以下に対して所得税が課税されます。

  • すべての国内所得
  • 海外所得(日本国内で支払われた・日本国内へ送金された海外所得に限る)

非居住者の課税範囲

原則として「租税条約」により免税の適用がある場合を除き、所得の20.42%が源泉徴収の対象となり、給与所得控除はありません。

説明をしっかりと行うことがポイント

課税関係はわかりにくいので、トラブルを避けるためにも、給与から何が引かれているのか外国人労働者に対して説明することが重要です。先述の通り、給与から天引きされる仕組みがない国もあるため、なぜ給与からいろいろ引かれているのかわかりません。説明時に、実際にどのように計算されて、この金額になったのかを、数値を計算しながら示すと理解されやすいでしょう。

厚生年金保険には原則加入する

厚生年金保険については、ワーキングホリデーなどの非居住者扱いの場合でも、要件を満たしていれば加入する必要があります。働く時間や日数が短かったり、日本が「社会保障協定」を結んでいる国の場合は、加入する必要が無いケースもあります。詳しくは、以下の記事をご覧下さい。

外国人採用のカギは可処分所得のアップ

社宅の部屋を見る家族

給与から天引きされるシステムに馴染みの無い外国人が重視するのは、手取りの賃金(可処分所得)です。優秀な外国人を採用するためには、給与額が求職者の希望に近いことも大切ですが、可処分所得をアップさせることも重要です。さらに、福利厚生などで生活にかかる基本的な費用への支援があると、外国人労働者の生活基盤が安定するでしょう。

現在、課税は「総報酬制」が採用されているため、給与、賞与、住宅手当などの所得をすべて合算したものが対象です。

そのため、例えば、住宅手当を出すよりは、いったん会社で借り上げてから社宅として提供すると、額面上の所得を増やさずに実質的に使えるお金が増えるというわけです。ただし、無償で従業員に貸与すると、現物給付とみなされて税金がかかることになるため、いくらかは家賃を社員から徴収する仕組みをとる必要があります。

このように、賃金をアップさせるだけではなく、福利厚生を活用するなどして、外国人労働者が実質的に使えるお金を増やすことで、外国人から選ばれる企業となるでしょう。

まとめ

福利厚生のイメージ

外国人の場合にも、最低賃金や同一労働同一賃金は適用されます。給与の決まりかたが明確でないと「外国人であるがゆえの不合理な差別」と認定されてしまう恐れもあるため注意が必要です。

課税関係については、非居住者・居住者などの違いがあり複雑です。外国人の知りたいことは、「何が、どうして給与からいろいろ引かれているのか」という点です。

給与の決まり方や合理的な待遇差、租税関係については、外国人本人にとってわかりやすい言葉で説明してください。必要に応じて、図や表などを使って、ホワイトボードなどに書きながら説明するのも有効です。


また今回は、優秀な外国人を採用するための施策として可処分所得をアップさせる方法についてもご紹介しました。賃金アップ以外にもできることはあるため、優秀な外国人に選ばれる企業になるために準備していきましょう。