ワーキングホリデービザの外国人を採用するメリットは?対象国や注意点を解説
ワーキングホリデー、通称「ワーホリ」がいま、採用の場で注目を集めています。観光以外に、ワーキングホリデーで来日する外国人の数は年々増加しつつあります。同時に、ワーキングホリデーで日本に来た外国人を雇用する動きが広まっていますが、ワーキングホリデービザや採用方法については意外と知られていません。
ワーキングホリデーの外国人を雇うメリットはあるのか、外国人を採用したあとの手続きが大変ではないのかなどの疑問を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
ここでは、ワーキングホリデーの基礎知識、ワーキングホリデー制度が利用できる対象国、ワーキングホリデーで日本に来た外国人を雇うメリットを紹介します。
目次
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ワーキングホリデービザとは?
まず、ワーキングホリデーの制度や条件について、基本的な情報をみてみましょう。
観光も就労もできるワーキングホリデービザ
ワーキングホリデーは、日本と協定を結んでいる特定の国の人々が、観光・休暇をメインに一定期間滞在できる制度です。現在23か国・地域が対象となっています。その数は年々増加し、最近では年間約1万5千人の外国人がワーキングホリデービザで日本を訪れています。
【ワーキングホリデーの概要】
- 18歳~30歳が主な対象(オーストラリア、カナダは35歳)
- 1年など一定期間、休暇を目的に日本に滞在できる
- 子どもや配偶者を同伴するのは禁止
- 滞在中の資金をまかなう目的で働くことも可能
- 以前にワーキング・ホリデー査証を発給されたことがない
【ワーキングホリデーの対象国】
アジア:韓国、台湾、香港
オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド
北米・南米:カナダ、アルゼンチン、チリ
ヨーロッパ:フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、スロバキア、オーストラリア、ハンガリー、スペイン、アイスランド、チェコ、リトアニア、スウェーデン、エストニア、オランダ
※国によって、受け入れ人数や条件、滞在期間などが異なります。
ワーキングホリデーの特徴は、観光をしながら働けることです。日本全国を旅行しながら、もしくは特定の場所にとどまって、ワーキングホリデー中の外国人は働くことが認められています。なお、同じ国で何度もワーキングホリデー制度を利用することはできません。
ワーキングホリデーの在留資格は「特定活動」
「ワーキングホリデー」は制度の名前であり、在留資格の名称ではありません。ワーキングホリデーの外国人は、「特定活動」という在留資格で滞在しています。特定活動とは、ほかの在留資格に当てはまらない活動で滞在する外国人に対し、法務大臣が個々に活動を指定する在留資格です。ワーキングホリデーのほか、卒業後に就職活動をする留学生、有償のインターンシップで滞在する外国人があてはまります。
通常、日本に中長期間滞在する外国人は、氏名や在留資格の種類、在留期間などが示された在留カードを持っています。ワーキングホリデーの場合、在留カードの在留資格には「特定活動」、就労制限の有無の欄に「指定書により指定された就労活動のみ可」であるとしか書かれていません。ワーキングホリデーの外国人を採用する場合は、在留カードとワーキングホリデーの旨が記載されたパスポートの両方を確認しましょう。
なぜワーキングホリデー中の外国人雇用が注目されているのか?
雇用で注目が集まっているのは主にワーキングホリデーで来日する台湾人ですが、背景として台湾人へのビザ発給枠数が増えたことが影響しています。日本と台湾の間でワーキングホリデー制度の年間発給枠数拡大に合意がなされ、2019年より日本側のワーキングホリデービザ発給枠が年間5,000人から年間1万人に拡大されました。台湾人は日本文化が好きな人が多く、日本に来る前から日本語ができる人がたくさんいます。日本語ができる台湾人は即戦力として期待できるので、近年ではワーキングホリデー期間に働いてほしいと考える企業が増え、台湾人の採用が激化しつつあります。
ワーキングホリデーで滞在する外国人を雇用する3つのメリット
ワーキングホリデーで日本に滞在する外国人を採用するメリットを、3つご紹介します。
ワーキングホリデーは、ほかの在留資格より採用のハードルが低い
外国人が働くときに取得する在留資格は、職種や仕事の内容によって種類が変わります。あらかじめ仕事の範囲がある程度決められているため、たとえば調理師として採用した外国人が、レストランの経理の仕事をするなど、在留資格の条件とは異なる仕事を行うことは認められません。
その点、ワーキングホリデーは仕事内容に制限がなく、風俗関連の仕事を除き、どのような職種でも働くことができます。留学生のように週28時間の勤務上限といった制限がないのも特徴です。
訪日観光客の接客に対応できる
訪日外国人の増加にともない、観光地の飲食店や宿泊施設では、英語や中国語など日本語以外での対応を求められるシーンが増えてきました。その結果、訪日外国人が訪れる機会が多い場所で、日本語以外の言語が話せるスタッフの需要が高まっています。こうした観光地は、観光も仕事もできるワーキングホリデーの外国人に人気の場所です。冬場はスキー場、夏場はリゾート地などの飲食店やホテルで働きたいと考えるワーキングホリデーの外国人もいます。「海外のお客さんの接客に困っている」という経営者は、ワーキングホリデーで滞在する外国人の採用もおすすめです。
繁忙期にあわせてスタッフを増やせる
ワーキングホリデーで来日する外国人の滞在期間は、最大で1年です。そのため、観光しながら働きたいと考えていても、短期間の仕事を探すケースが想定されます。短期間に集中して働きたい外国人と相性が良いのが、時期によって忙しさが変わる観光地の仕事です。
スキー場や温泉旅館など、忙しさが年間を通じて変化する業界は、繁忙期に期間限定でワーキングホリデーで滞在している外国人を雇うことで、忙しい時期を乗り切れます。
ワーキングホリデーで滞在する外国人を正社員で雇うことは可能?
ワーキングホリデーは滞在期間が限定されている特性上、ほとんどの外国人はアルバイトなど非正規で雇用されています。しかし、まじめな勤務態度や、本人の長期間働きたいという希望から、正社員での雇用を検討する方もいるでしょう。ワーキングホリデーの制度を利用して働いていた人材であれば、持っているスキルや人柄がすでに理解できています。せっかく採用したのに、ミスマッチですぐにやめてしまったという離職のリスクを軽減できるというメリットもあります。
では、ワーキングホリデービザで採用した外国人を正社員として長期雇用することはできるのでしょうか。
以前はワーキングホリデー中に就労ビザへの切り替えが可能だった
ワーキングホリデービザで滞在している外国人を正社員として長期雇用するためには就労ビザに変更しなければなりません。
以前は、外国人本人が、正社員として働ける在留資格を取得するのに必要な学歴や職歴を持っている場合、日本に滞在中に新たな在留資格を申請し、ワーキングホリデーから就労ビザに切り替えることができました。しかし、現在はワーキングホリデー中に就労ビザへ切り替えることはかなり難しいです。
在留資格の取得は事案ごとに判断されることもあるので、詳しくは近くの入管に問い合わせるか在留資格の申請に詳しい行政書士に相談したほうがよいでしょう。
正社員として雇用するなら、本国へ帰国後に呼び寄せる
しかしながら、ワーキングホリデーで来日した外国人を正社員として雇用することは不可能ではありません。ワーキングホリデー制度は休暇を兼ねて利用する人がほとんどです。一度本国に帰国する人が大半なので、ワーキングホリデー終了後に一度本国へ帰国した後、外国人本人を呼び寄せるという方法があります。
その際は本人の業務内容に合った在留資格の申請・取得が必要になります。在留資格の申請は、在留資格の種類によって求められる提出書類が異なります。定められた条件を満たしていなければ、在留資格は許可されません。書類の不備で不許可にならないように、行政書士など在留資格・ビザに詳しい専門家に依頼するのも手です。また、審査には通常1~3か月要します。余裕をもって書類を提出しましょう。
参考:
正社員雇用に変更するときの注意点
最後に、ワーキングホリデーで滞在する外国人を正社員で雇用する際に、注意するべき点をご紹介します。
ワーキングホリデー時と同じ仕事を任せられるとは限らない
外国人が日本で働く場合は、在留資格の条件に合った仕事に就かなければなりません。ワーキングホリデー中に雇用していた外国人を、在留資格を変更して再度雇用する際は在留資格に合った仕事を任せましょう。
なぜ注意事項にあげたかというと、場合によっては、ワーキングホリデー制度を利用して働いていた時と同じ仕事では在留資格の申請が通らず、同じ業務を任せられない場合があるからです。
たとえば、ワーキングホリデー制度を利用して働いていた時は掃除や皿洗いといった単純労働をしていたとします。しかし、正社員雇用で取得されるケースが多い「技術・人文知識・国際業務」の在留資格ではこのような単純労働は認められていません。「技術・人文知識・国際業務」は、経理やエンジニアなど専門的な仕事に対して許可される在留資格だからです。
ワーキングホリデービザは仕事内容に制限がないので単純労働も可能ですが、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は単純労働では許可が下りません。
なお、雇用主側が在留資格の条件と合わない仕事をさせた場合、不法就労になる恐れがあります。外国人が持っている在留資格が認める仕事内容以外では、働けない点に注意しましょう。
日本人と同等かそれ以上の報酬で雇用する
正社員として働ける在留資格のなかには、雇用の要件を設定しているものがあります。先述した「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で外国人を雇用する場合は、同じ仕事内容・ポジションにいる日本人と同等か、それ以上の給与を支払わなければいけないとされています。
それ以外に、外国人だからという理由だけで、不当な扱いをすることは差別として禁じられています。正社員の雇用にあたっては、勤務時間・仕事内容・給与といった条件を確認しましょう。
まとめ
ワーキングホリデーは、観光だけではなく働くことも許可された制度です。また、人手が必要な観光地や、海外から観光客が多く訪れ、日本語以外での接客が求められる飲食店などは、ワーキングホリデー中の外国人が活躍できる職場です。働く本人と仕事内容によっては、新しい在留資格で正社員として働く道もあります。
人手不足で「いいアルバイトが見つからない」と悩んでいる経営者は、ワーキングホリデー中の外国人の採用を検討してはいかがでしょうか。
とくに、ワーキングホリデー目的の台湾人は日本語ができる人が多く、採用する企業が増えてきています。ワーキングホリデーで来日する外国人の雇用は人材不足に悩む企業を中心に注目が集まってきているので、採用を検討している方は早めに動いたほうがいいでしょう。