ワーキングホリデー人材に日本で働いてもらうためには?重要ポイントを解説

ワーキングホリデービザは、18歳から30歳の人が対象のビザです。休暇を目的として原則1年間日本に滞在できるビザですが、就労も可能であることが大きな特徴です。
ワーキングホリデーで来日する外国人は、滞在期間こそ1年間と定められているものの、雇用主側のメリットは大きいです。
ここでは、ワーキングホリデーの基礎知識や対象国、雇用するメリットなどを解説します。
目次
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ワーキングホリデーとは?
ワーキングホリデーとは、休暇・観光目的で入国しながらも、滞在中の旅行・宿泊資金を補うための就労を認める制度です。様々な国や地域の人が、相手国の文化や生活様式を学ぶことを目的に整備されました。
ワーキングホリデーとして外国人が滞在できるのは、基本的に入国から1年間です。この決められた期間を超えて滞在することは不法滞在となります。
ワーキングホリデーの対象国
ワーキングホリデーの対象国は、以下の通りです。
オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド
北米・南米:カナダ、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ
ヨーロッパ:フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、ポーランド、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、アイスランド、チェコ、リトアニア、スウェーデン、エストニア、オランダ、フィンランド、ラトビア、ルクセンブルク
参考:ワーキング・ホリデー制度|外務省
ワーキングホリデービザ(特定活動)とは?
ワーキングホリデーは制度の名称であり、この制度により発給されるビザを、一般的にワーキングホリデービザと呼んでいます。こちらは在留資格としては「特定活動」に該当するものとなります。
在留資格「特定活動」とは、ほかの在留資格では当てはまらない外国人に対し、法務大臣が個々に活動を指定する在留資格です。
ワーキングホリデービザが発給されるためには、次のような要件を満たす必要があります。
- 相手国・地域に居住する国民・住民であること
- ビザ申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること(オーストラリア、カナダ、韓国およびアイルランドでは18歳以上25歳以下。また、アイスランドでは18歳以上26歳以下に限る)
- 滞在期間は原則として1年間
- 主に休暇を過ごす意思があること
- 配偶者や子どもを同伴しないこと
- 有効なパスポートと帰りの航空券・資金を所持すること
- 滞在の当初の期間に生計を維持するための必要な資金を所持すること
- 健康であること
- 過去にワーキングホリデービザを発給されたことがないこと(※一部の国や地域を除く)
※…2025年以降、カナダ、イギリス、ニュージーランド、デンマーク、オーストラリア、ドイツ、アイルランド、スロバキアについては、生涯で2回の参加が可能になりました。
また、日本では一部の国や地域との間でワーキングホリデー制度の一部見直しを行っています。そのため、国によって詳細な要件が違う場合があるので、注意が必要です。
特定活動について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶在留資格「特定活動」とは?就労は可能?46種類一覧や指定書など徹底解説
「ワーキングホリデー」・「留学」・「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の比較
ワーキングホリデービザは、ほかの就労可能な在留資格とは少し違う点があります。具体的な違いは、以下の表の通りです。
ここでは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」、「留学」と比較しています。
在留期間 | 在留資格の目的 | 年齢制限 | 職業制限 | 労働可能な時間の制限 | |
技術・人文知識・国際業務 | 3カ月・1年・3年・5年(更新可能) | 外国人の知識や技術を日本で役立てもらうため | 特になし | 単純労働は不可 | 日本人と同等程度に就労可能 |
留学 | 4年3カ月を超えない範囲(法務大臣が個々に指定する期間) | 日本語教育機関における勉学のため | 特になし | あり(出入国在留管理庁からの許可が必要) | 1週間で28時間まで※ |
ワーキングホリデービザ | 原則1年 | 主に休暇として | あり(原則として18歳以上30歳以下) | なし | なし |
※…夏休みなど長期休暇中では、1週間で40時間まで働けます。
このように、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では単純労働が認められておらず、「留学」では出入国在留管理庁から資格外活動許可を得たうえで1週間に28時間までと制限されています。
一方で、ワーキングホリデービザは「技術・人文知識・国際業務」や「留学」の在留資格とは違い、労働に関する制限が少ないのが特徴です。単純労働も可能であり、就業時間の制限もありません。そのため、様々な業種で働いてもらいやすいという点が特徴です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶【職種一覧】「技術・人文知識・国際業務」の要件、不許可事例を徹底解説
特定技能もワーキングホリデー同様に単純労働が可能な在留資格です。特定技能については以下で詳しく解説しています。
ワーキングホリデーで来日する外国人はどの国が多い?
ワーキングホリデーで来日する外国人の国籍別割合は韓国人と台湾人が過半数を占めています。

ワーキングホリデーのビザ発給数21,963件のうち、台湾では3,742件、韓国では7,444件のワーキングホリデービザが発給されています。
なお、台湾と韓国ともにワーキングホリデービザの発給枠は年間1万名となっています。
なぜワーキングホリデー人材の雇用が注目されているのか
日本で働くワーキングホリデー人材のなかでも、台湾と韓国の人材が注目されています。
理由は次の通りです。
- そもそも台湾・韓国のワーキングホリデービザの発給数が多い
- 日本語を第二外国語として選択する人も多く、来日前に日本語を話せる人が多い
繁忙期に合わせて短期間で雇用する人材としても、ワーキングホリデーで来日する台湾人・韓国人の採用競争は激化しています。
ワーキングホリデー人材を雇用するメリットとは?
ワーキングホリデー人材を雇用するメリットは、大きく分けて以下の通りです。
- 業種・職種の制限がない
- 勤務形態の制限がない
- 在留資格申請において企業側の準備が不要
- インバウンド客に対応できる
- 繁忙期にあわせてスタッフを増やせる
ひとつずつ解説します。
業種・職種の制限がない
ワーキングホリデーでは、風俗営業等に関する就労はできませんが、それ以外に就く業種・職種の制限はありません。そのため、他の在留資格と比較して就労制限が少ないといえます。
技術・人文知識・国際業務や特定技能などは、どの業務に就くのか決められており、それ以外の活動は認められていません。
また、「技術・人文知識・国際業務」は単純労働を行うことができず、特定技能についても、メインの業務に付随する形でのみ従事が認められる形となります。
一方で、ワーキングホリデーでは単純労働のみの従事も可能で、事前の就労に関する申請も必要ありません。そのため、色々な業務を任せることができる点が特徴です。
雇用形態や勤務時間制限がない
他の在留資格のように雇用形態や勤務時間の制限がなく、アルバイトや契約社員として就労可能な点もワーキングホリデーの特徴です。
「留学」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」では、以下のように制限があります。
在留資格「留学」:
出入国在留管理庁に事前に資格外活動許可を申請したうえで、1週間に28時間まで働けます。就労時間の制限により、アルバイトなどの短時間労働の勤務形態がほとんどです。
在留資格「特定技能」:
原則として正社員かフルタイムでの雇用と定められています。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」:
自社の規定でアルバイトが許容されている場合かつアルバイトの内容が「技術・人文知識・国際業務」として許可されている内容であれば、アルバイトは可能です。しかし、出入国在留管理庁に資格外活動許可を申請する必要があり、手間がかかります。
在留資格申請において企業側の準備が不要
ワーキングホリデー人材の雇用では、他の就労ビザで必要な企業側の手配や申請は不要です。
例として、在留資格「特定技能」と比べてみましょう。特定技能外国人を雇用するためには、自社での受け入れ準備や支援計画書の作成・提出など、たくさんの準備が必要です。
しかし、ワーキングホリデー人材の雇用では、企業側で何か準備をする必要はなく、日本人を雇用するときと同じように契約し、働いてもらうことができます。
在留資格「特定技能」の詳しい受け入れ準備については、こちらの記事で詳しく解説してあります。
インバウンド客に対応できる
ワーキングホリデー人材に、インバウンド客の対応をしてもらうこともできます。

JNTO(日本政府観光局)のデータによると、2024年で3,600万人もの外国人が訪日しており、そのうち過半数を占める約2,000万人が韓国、台湾、中国からの観光客です。そのため、ワーキングホリデーで来日した韓国人と台湾人を雇用することで、中華圏や韓国語圏の観光客に対して接客が可能となるというメリットがあります。
ちなみに、2,000万人という数字は、東京都の人口よりも多い数字です。
増加するインバウンド客に対応するために、外国語対応が可能なスタッフとしてワーキングホリデー人材を雇用するのもいいでしょう。
繁忙期にあわせてスタッフを増やせる
繁忙期に合わせて、一時的にワーキングホリデー人材を雇用することも可能です。
ワーキングホリデーは最大1年なので、ワーキングホリデー人材は短期間に集中して働きたいと考えていることが多いです。こうした短期間での就労ニーズにマッチしているのが、繁忙期と閑散期の差が激しい観光地での仕事です。
ワーキングホリデー人材と観光地は、短期間での就労を求めているという点において、お互いのニーズが一致しているといえます。
ワーキングホリデー人材を正社員で雇用するには?
では、逆にワーキングホリデー人材を正社員として長期雇用することは可能なのでしょうか。
結論、ワーキングホリデー人材を正社員で雇用すること自体は可能です。
しかし、ワーキングホリデーはあくまでも観光や休暇を目的としたビザです。日本滞在が認められているのは1年という期間であるため、1年以上正社員として日本で働くには、ワーキングホリデーの在留資格「特定活動」から他の就労可能な在留資格に変更する必要があることが想定されます。
別の在留資格への切り替え方法
ワーキングホリデーで来日中の期間に、基本的に在留資格を変更することは難しく、帰国する必要がある国がほとんどです。
ただし、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ドイツの5カ国は帰国不要で、日本滞在中にほかの在留資格に変更することができます。
多くの国では在留資格切り替えのために帰国が必要
上でも述べたように、基本的にワーキングホリデーから在留資格を切り替える際には、帰国が必要です。
ワーキングホリデー終了後も正社員として雇用したい場合は、本人に合った就労ビザを取得してもらうことが必要ですが、在留資格の申請は複雑であり、提出する書類も取得したい就労ビザによって異なります。
そのため、自社で手続きを行うことが難しい場合は行政書士や、特定技能で外国人を雇用する場合は登録支援機関などの在留資格・ビザに詳しい専門家に依頼するのをおすすめします。審査には通常1~3カ月要するので、余裕を持って申請しましょう。
ワーキングホリデー外国人を採用する際の3つの注意点
ワーキングホリデー人材を雇用する際、以下の3つに注意が必要です。
- 在留カードや在留資格を事前に確認
- 社会保険への加入が原則必要
- ワーキングホリデー時と同じ仕事を任せられるとは限らない
詳しく解説します。
①在留カードや在留資格を事前に確認
ワーキングホリデー人材を雇用する前に、在留カードや在留資格を確認する必要があります。特に、以下の事項に注意しましょう。
- 在留カードには在留資格「特定活動」と表記されているので、ワーキングホリデーかどうか、パスポートの指定書(※)の確認を行う
- いつから滞在しているかを確認する(ワーキングホリデーは1年間が滞在期間となるため)
※在留資格の活動詳細を記載した書類で、在留カードと共に発行されます。ワーキングホリデーは「旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動」と記載があります。
特に注意したいのが、滞在期間です。滞在期間を超えても出国しないと不法滞在となります。不法滞在者と知らずに外国人雇用した場合、不法就労助長罪として企業も罰せられます。
②社会保険への加入が原則必要
ワーキングホリデー人材でも、以下の3つの社会保険への加入が原則必要です。
【原則加入が必要な社会保険】
- 厚生年金保険
- 健康保険
- 労災保険
雇用保険は適用対象外であることに注意してください。ワーキングホリデーはあくまでも「休暇」が目的の来日であり、就労目的の来日ではないため、対象外となります。
厚生年金保険と健康保険の対象となるケースは、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同じ業務を行っている正社員などの一般社員の4分の3以上、かつ下の①から⑤をすべて満たす場合です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2カ月を超える
- 月額賃金が8.8万円以上
- 学生ではない
- 従業員51人以上の企業に勤務している
これらの条件を満たさない場合、厚生年金保険と健康保険が適用対象外になります。
また、以下の国は日本と社会保障協定を結んでいるため、厚生年金保険と健康保険の対象外となります。社会保障協定とは、外国人が母国と日本の保険料の二重支払いを防ぐために二国間で結ばれた協定です。
日本と社会保障協定を結んでいる国
母国と日本の保険料の二重支払いを防ぐために社会保障協定を結んでいる国は、以下となります。
ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン、イタリア
外国人の社会保険加入となる条件は複雑ですが、よく理解しておく必要があります。
③ワーキングホリデー時と同じ仕事を任せられるとは限らない
こちらはワーキングホリデーの終了後も雇用する際の注意点となりますが、在留資格を切り替えると、就労制限の対象となる場合があります。ワーキングホリデー中には就労できた仕事でも、在留資格が変わるとできない場合があることに注意してください。
そのため、ワーキングホリデー中に行った仕事の継続を希望する場合は、どの在留資格であれば業務に従事可能か、事前に確認をしてから採用する必要があります。
従事して欲しい業務に就くことが認められていない在留資格の外国人を雇用した場合、たとえ勘違いだったとしても、外国人本人は不法就労、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。
人手不足対策にワーキングホリデー人材もおすすめ
ワーキングホリデー人材は、近年増加しているインバウンド客に対応できる外国語能力を期待できること、就労内容に制限が少ないことが特徴です。
就労内容に制限が少ないのは、「技術・人文知識・国際業務」などの他の就労可能な在留資格にはない利点です。また、観光地のように、繁忙期とそうでない時期の差が激しい職場に適した人材といえます。
ワーキングホリデー人材の雇用は、外国人側も日本の職場体験ができる機会となります。外国人側にも雇用主側にもメリットがあり、win-winの関係になってくれるでしょう。