【違反に注意】外国人労働者の労働時間の制限について解説!留学生のオーバーワークも

執筆者:

社会保険労務士/川﨑潤一

外国人労働者が働く際に、日本人とは異なるような労働時間制限を受けることはあるのでしょうか。

ここでは、外国人労働者が日本で働く際の、労働時間の制限やルール、留学生や資格外活動で働く外国人が注意すべきオーバーワークについて、雇用する企業向けに解説していきます。

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外国人労働者は労働時間の制限はある?

外国人労働者にも日本人と同じように労働時間の制限はあります。

ただし、在留資格の種別により制限内容は異なります

在留資格「留学」、「家族滞在」、「特定活動」の一部は、労働時間に関して制限がありますので、注意が必要です。

また、残業時間の上限についても日本人と同様に労働基準法と36協定で定められていて、順守しなければなりません。

ではまずは、日本人・外国人ともに共通している、労働基準法に定める「労働時間」と「36協定」に関連する部分から見ていきます。

労働基準法と労働時間

労働基準法において、労働時間は下記のように規定されています。

<労働基準法>

①使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。

②使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。

③使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

出典:労働基準法|e-Govポータル

上記①~③を守れなかった時には、労働基準法で認められた労働時間外となり、残業時間が発生します。例えば、1日8時間労働なら、週5日勤務で40時間の労働となり、労働基準法の労働時間内となります。

しかし③を見てみると、休日については「少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」とされているので、勤務は週5日ではなく週6日にすることも可能です。1日6.5時間勤務、週6日勤務で週39時間の労働時間の勤務形態でも問題ないわけです。

休憩時間を正しく確保する

労働基準法により、全ての1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。1日の労働時間が6時間未満は、休憩を与えなくても違法ではありません。

また、休憩時間は、仕事の途中で与えなければなりません。仕事を開始する時、終わる時に休憩を与えるのは、労働者の同意があっても認められません。

拘束時間が長くなる等により、長時間労働になりそうな場合には、なるべく休憩を取らせるようにし、労働時間が長くなり過ぎないにしましょう。例えば、拘束時間10時間であっても、休憩時間が2時間であれば、労働時間は8時間となります。

36協定と残業時間

36協定とは、残業が発生する場合、事前に会社と労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で取り交わす労使協定を言います。この協定は、残業をする場合に結び、書面を労働基準監督署へ提出しておく必要があります。結ばない場合は残業をさせることはできません。

これは先述の通り、日本人の場合と違いはありません

36協定では、主に下記のことを定めます。

残業や休日労働をする具体的な理由

業務の種類

労働者数

1日、1ケ月、1年で残業する時間数

つまり、残業をするのであれば、事前にどのような理由で、どの業務において、何時間まで残業することがあるのか、を決めておくというものになります。

在留資格別の労働時間について

在留資格の種別により、労働時間に制限のある資格と、制限の無い資格とがあります。


◆制限有り:「留学」、「家族滞在」、「特定活動」の一部、給与を支給するインターンシップ

◆制限無し:その他の就労区分、特定技能、技能実習生、ワーキングホリデー、給与の支払いが発生しないインターンシップ

 

では次に、労働時間の制限について見ていきましょう。

【要注意!】留学生などがアルバイトで働く外国人の場合

在留資格「留学」、「家族滞在」、「特定活動」の一部は、労働時間に関して制限があります。これらの在留資格の外国人は、原則として働くことが認められていません。

出入国在留管理庁から資格外活動の許可を受けることで、働くことができます

資格外活動の許可を得ずに働いてしまうと、不法就労となり、本人ばかりではなく雇用した事業主も不法就労助長罪で罰せられる可能性があります。上記の在留資格を持つ外国人を雇用する場合は、在留カードにて、資格外活動許可を受けていることを必ず確認してください。

ただし、資格外活動を取得しても、労働時間は1週28時間までと制限されています。

在留カード表・裏
出典:在留カードとは?|出入国在留管理庁

なお、ワーキングホリデーは、労働時間の制限がありませんので、日本人と同様に働くことができます。在留カードの詳しい確認方法は以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

資格外活動許可を受けていても働けない業種がある

資格外活動許可を受けていればどの業種でも働けるわけではなく、パチンコ店、やホストクラブ、ダンスホール、バー、風俗営業といわゆる性風俗に関連するお店などでは、アルバイトをすることが禁止されています。

(例)
パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター、キャバレー、ナイトクラブ、ホストクラブ、ダンスホール、客席が区切られた飲食店(例・個室で仕切られたネットカフェなど)、照明の暗い喫茶店やバー など

例えば、ラブホテルで清掃のアルバイトをするのは、どうでしょうか。直接的に、性風俗に関する業務を行うわけではありません。風俗営業に間接的に関わる業務ではありますが、行ってはならないとされています。
個別の事情に応じて、行政書士へご相談されることをお勧めします。

掛け持ち(ダブルワーク)の際は週28時間の計算方法に注意!

間違いやすいのですが、労働時間のカウントは、1社につき1週28時間までではありません。2社以上で働く場合には労働時間を通算し、1週間で28時間までとなります。

これには残業時間も含まれ、また、1週間のどの曜日を起算日としても、1週間で28時間以内に収める必要があります。

自社が1社目である場合には、安易に掛け持ち(ダブルワーク)を認めないように気を付ける必要があります。掛け持ちの希望があった場合には、その希望する企業名、業務内容、1日の労働時間・労働日数などを申告してもらいましょう。許可する場合には、自社で働く時間を考慮して何時間までなら働けるのかを話し合い、その時間の範囲で働いてもらうようにしましょう。

掛け持ちで働くことが自社のリスクになるようであれば許可をしないという選択肢もあります。必要に応じ、申告した内容に虚偽はない等の内容を盛り込んだ誓約書の取り交わしをしましょう。

また、以下の点も注意しましょう。

  • 労働基準法が適用されるので、週に働ける日数は、週6日まで。
  • 夏休みや冬休みといった長期休暇のシーズンは、一時的に週40時間まで働くことが可能。

夏休みや冬休みといった学校の長期休暇期間を必ず確認し、いつからいつまで1週40時間以内で働いても問題ないのか、いつから1週28時間以内に戻さないといけないのか、確認しておきましょう。

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労働時間の制限を守らないのは違法

労働時間の制限のある外国人労働者が制限を守らなかった場合には、違法となります。資格外活動許可を受けずに働かせてしまった場合と同様、事業主は不法就労助長罪として、逮捕・送検される場合があります。

不法就労助長罪に企業が問われた場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(いずれも科される場合もあります)に問われます。また、外国人労働者は、不法就労として、退去強制、出国命令が出されることが想定されます。

摘発後に「そのようなことになるとは知らなかった」という言い訳は通用しません。外国人を雇用する際には非常に注意が必要です。不法就労助長罪については以下の記事で詳細を解説しています。併せてご覧ください。

違法になった事例

では、労働時間の制限を超えて働かせてしまったことで、違法(不法就労助長罪)となった事例について、見ていきます。

飲食業で、留学生アルバイトについて、週28時間を超えて働かせた。

裁判所は判決で、会社と同社の店舗統括部長に対し、同社を罰金50万円、部長を同30万円とする有罪判決を言い渡しました。裁判官は、「会社は不法就労を助長しないよう組織的に取り組むべきだったのに利益を優先させた。責任は重大だ」と指摘しました。
スーパーにおいて、ベトナム国籍や中国籍の留学生ら12人を、週28時間の法定上限時間を超えて働かせた疑い

調べた結果、不法就労したとして、不法就労助長として外国籍の女性2人を逮捕し、10人を書類送検しました。裁判所は判決で、社長と幹部3名を書類送検、法人に罰金100万円、人事部長に罰金70万円の有罪判決を言い渡しました。

このように、労働時間の制限を超えて働かせた場合に違反となります。

労働時間の制限はあるのか、制限があるのであれば掛け持ちでアルバイトをしていないか、通算の時間内で働いているかどうか、といった注意が必要です。

労働時間で注意すべきこと

労働時間に制限がある外国人労働者は一部ではありますが、それについて企業は「知らなかった」では済まされません。

制限を超えるオーバーワークとなってしまった場合の多くは、経営者も外国人労働者も労働時間の制限について知らず、うっかり違反してしまったというケースです。

違反とならないようにするためには、まずは上記に記載した正しい知識を身に付けること、そして以下についてチェックをすることです。

✓ 採用時や雇用をしている期間においても必ず在留カード、パスポートや就労資格証明書などで、その外国人労働者の就労活動における範囲、在留資格・在留期間を確認する。

✓ オーバーワークにならないよう労働時間の管理をし、シフトを組む。学校の長期休暇期間については、学校のスケジュールを必ず確認する。

本人の申告を信じるだけでなく、会社としても調べて正しい情報を確認する。

✓ 掛け持ち(ダブルワーク)について確認する。希望があった場合には掛け持ちをしても通算で制限時間を超えないかを確認する。

超えるような希望であれば掛け持ちを認めない、または制限時間について説明し(労働時間が通算されること、その上で制限時間があること)、制限時間内で働いてもらうようにする。掛け持ち先のシフトや実際の労働時間について申告させる。
オーバーワークとなった場合には、外国人は不法就労として逮捕・送検され、国外退去をさせられることもある。留学生の場合は学校を除籍となることもあるので、そのことを外国人労働者へ説明し、理解してもらうようにする。

外国人労働者から、生活のためにもっと稼ぎたい、祖国へ仕送りをしたい、だからもっと働きたいと言われる場合があります。しかし、そこでオーバーワークを認めてしまいますと、外国人労働者だけでなく企業も処罰されるなどダメージを受けてしまいます。また、留学生なのであれば、学生として学ぶことを第一とすべきです。

オーバーワークが発覚すると、外国人は在留資格変更・更新が不許可となったり、罰金刑、退去強制の対象になってしまうことがあります。退去強制処分を受けた場合、数年間は日本に入国できません。学校は退学することになるでしょう。日本の学校を卒業し、将来的にも日本で働いていくためには、違法行為を犯さないように意識することが大切である、ということを外国人労働者自身に理解してもらうようにしましょう。

就労区分や、業種によっては卒業後に特定技能や技術・人文知識・国際業務の在留資格などで働き続けてもらうこともできます。その時に即戦力として活躍してもらえるように、アルバイトの時から、ルールを守って働いてもらうようにしていきましょう。

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