家族滞在ビザとは?要件や就労制限、必要書類などを行政書士が解説!
就労している外国人などが家族が日本に滞在したい場合、被扶養者に発行されるのが「家族滞在」ビザです。
本記事では、家族滞在ビザの概要について説明するとともに、在留資格を家族滞在ビザから就労ビザへ変更する際の手続きについても紹介します。
また、家族滞在ビザで就業が可能かどうかといった疑問にもお答えします。 外国人社員のなかには「日本に家族を呼びたい」と思っている人も多いため、企業側としても家族滞在ビザについて知っておくと役立ちます。
目次
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家族滞在ビザとは?
家族滞在ビザは、就労ビザや経営管理ビザで働く外国人の家族が、日本で一緒に暮らすための在留資格です。
家族滞在ビザがあれば、母国から家族を呼び寄せて日本で一緒に1年以上暮らすことが可能になります。
家族滞在ビザの対象者は?
就労者が扶養する配偶者や子。養子や認知している非嫡出子も対象。
兄弟や両親など、配偶者や子ではない家族は対象外です。
例えば、母国から高齢の親を呼んで一緒に暮らしたい場合も、原則として対象外になります。
▼在留資格の基礎知識はこちらの記事をチェック!
在留資格とは?29種類一覧・総まとめ!要件や取得方法を解説
家族滞在ビザの要件
「家族滞在」の在留資格を取得するには以下を満たす必要があります。
- 在留資格「家族滞在」申請要件
- 配偶者や子(日本に呼ばれる側)が実際に扶養を受けていること
- 日本で一緒に暮らせるだけの経済力があること
- 家族関係が証明できること
詳しく見ていきましょう。
配偶者や子(日本に呼ばれる側)が実際に扶養を受けていること
扶養を受けるとは、経済的に扶養者に依存しているという意味です。
明確な金額の基準はありませんが、被扶養者の年収が扶養する側の年収を超えている場合は、扶養されているとは認められないものと考えられます。
在留資格に関する扶養の概念は、必ずしも健康保険や税制における扶養の考え方と同じではなく、実態に即して審査がなされます。扶養する子の年齢についても、上限ははっきりとは決まっていませんが、概ね18歳までと考えられています。
ただし、経済的に自立しているかどうかがポイントであるため、学生であるなどの事情があれば扶養していると認められます。扶養していることを示す書類として、家族へ送金した記録のある通帳のコピーなどがあると良いでしょう。
日本で一緒に暮らせるだけの経済力があること
母国から家族を呼ぶ際に、経済的に生活が成り立つのかということは大変重要な審査事項です。
経済的に生活が成り立つラインがはっきりと決まっているわけではありませんが、収入、居住する地域の物価、家賃などを総合的に考慮して審査されます。経済力を証明するための必要書類(課税証明書・納税証明書など)も必要です。
家族関係が証明できること
家族関係を証明する必要があるので、日本でいうところの戸籍謄本にあたる書類や、婚姻証明書、出生証明書などの公的書類を用意します。それらの書類が外国語で作成されている場合は、日本語の訳文を付けます。
また、これらの項目について立証する書類が必要になります。
必要な書類の詳細については、法務省のホームページ「出入国在留管理庁|家族滞在」をご覧ください。
▼特定技能2号も家族滞在が可能になります。特定技能は全11分野に対象が拡大しました!
家族滞在の申請方法と必要書類
海外から呼び寄せる場合、申請方法は2種類あります。
- 海外の大使館や領事館でビザの申請を行う。
- 既に日本国内にいる外国人が、日本の出入国在留管理局で在留資格「家族滞在」の在留資格認定証明書を取得、家族が自国の日本大使館に在留資格認定証明書を持参してビザを取得する。
必要書類は以下となります。
◆在留資格認定証明書交付申請書 1通
◆写真 1葉
◆返信用封筒(404円の切手) 1通
◆申請人と扶養者との身分関係を証明する文書
⇒戸籍謄本、婚姻届受理証明書、結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)、これらに準ずる文書 など
◆扶養者の在留カードまたは旅券の写し 1通
◆扶養者の職業及び収入を証する文書
(1) 扶養者が収入を伴う事業を運営する営する活動または報酬を受ける活動を行っている場合は在職証明書又は営業許可書の写し等、住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書
(2) 扶養者が上記(1)以外の活動を行っている場合
既に日本にいる外国人の方が配偶者になる場合は、新規の在留資格申請ではなく、現在の在留資格からの変更を行うために出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請書を提出ます。必要書類は以下となります。
◆在留資格変更許可申請書 1通
◆写真 1葉
◆パスポート及び在留カード 提示
◆申請人と扶養者との身分関係を証明する文書
⇒戸籍謄本、婚姻届受理証明書、結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)、これらに準ずる文書 など
◆扶養者の在留カード又は旅券の写し 1通
◆扶養者の職業及び収入を証する文書
(1) 扶養者が収入を伴う事業を運営する営する活動又は報酬を受ける活動を行っている場合
(2) 扶養者が上記(1)以外の活動を行っている場合、扶養者名義の預金残高証明書又は給付金額及び給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書、上記aに準ずるもので、申請人の生活費用を支弁することができることを証するもの
家族滞在ビザの外国人は就労できる?企業は雇用できるのか?
条件付きで、就労することができます。
家族滞在ビザによって家族が来日した外国人社員が、「もう少し世帯年収を上げたいので、家族にも働いて欲しい」と思う場合もあるでしょう。
ただし、そのためには資格外活動の許可を得る必要があります。
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家族滞在ビザで就労するためには資格外活動許可を得る
家族滞在ビザで認められている活動は「日常生活の範囲内」に限定されていることから、働く場合は資格外活動許可を得る必要があります。
資格外活動の許可には、「包括許可」と「個別許可」の2種類があります。
内容について見ていきましょう。
勤務先や業務内容を特定しない「包括許可」
勤務時間が1週間のうち28時間以内であることと、活動内容が風俗営業ではないという条件を満たす場合は、勤務先や業務内容を定めない、包括許可が与えられます。
通常、家族滞在で就労するための資格外活動の許可は、包括許可になります。
以下の要件のいずれにも適合する場合に資格外活動を行う相当性が認められ,許可されます。
(1) 申請人が申請に係る活動に従事することにより現に有する在留資格に係る活動の遂行が妨げられるものでないこと。(2) 現に有する在留資格に係る活動を行っていること。
(3) 申請に係る活動が法別表第一の一の表又は二の表の在留資格の下欄に掲げる活動(「特定技能」及び「技能実習」を除く。)に該当すること。(注)下記2(1)の包括許可については当該要件は求められません。
(4) 申請に係る活動が次のいずれの活動にも当たらないこと。
ア 法令(刑事・民事を問わない)に違反すると認められる活動
イ 風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行う活動又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介事業に従事して行う活動(5) 収容令書の発付又は意見聴取通知書の送達若しくは通知を受けていないこと。
(6) 素行が不良ではないこと。
(7) 本邦の公私の機関との契約に基づく在留資格に該当する活動を行っている者については,当該機関が資格外活動を行うことについて同意していること。
▶出入国在留管理庁|資格外活動許可について
勤務先や業務内容を指定された「個別許可」
個別許可は、包括許可の条件に当てはまらない場合に、特定の勤務先や業務内容に対して、個別に就労を許可するというものです。どちらも時間の制限がつき、報酬の制限はありません。扶養の要件を外れないようにすることが重要です。
家族滞在ビザの外国人材の雇用形態は?
先述の通り、家族滞在ビザには週28時間までという制限があるため、アルバイトでしか雇えないと思われがちです。
しかし、雇用形態が制限されているわけではないので、勤務時間が週28時間の契約社員として雇うことも可能です。受け入れ企業にあった雇用形態で雇いましょう。
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家族滞在ビザが企業にもたらすメリットとは?
メリット:家族を呼べるようにすれば、家族の事情で外国人が退職する可能性が低くなる
冒頭でも説明しましたが、「家族と一緒に日本で暮らしたい」と考えている外国人社員は少なくありません。一定期間働いたら母国にいる家族のため帰国したい……という理由で離職する外国人は少なくありません。
そのため、企業が家族を呼べるようにすれば、家族の事情で外国人が退職する可能性が低くなり、企業への定着につながるのです。長く働いて欲しいと考えている場合ほど、家族滞在のメリットについて把握しておきましょう。
雇用する際のポイント・注意点
家族滞在ビザで日本に滞在する外国人を雇用する場合、企業が注意しなければならないことを見ていきましょう。
在留カードを確認する・活動内容にあった雇用をする
不法就労にならないように在留資格をしっかり確認することが重要です。
在留カードが本人のものかどうか、偽造カードでないかどうか、在留資格が「家族滞在」かどうか、在留期限が切れていないかなどの確認は必須です。また、週28時間までしか働かせることができない点や、キャバレーやスナックといった風俗関係業種では雇うことができない点も忘れないようにしましょう。
働けない在留資格で働かせる、働ける時間を超えて働かせる、働けない業種で働かせるというのは、いずれも不法就労助長罪にあたり、企業側も処罰される可能性がありますのでご注意ください。不法就労は外国人本人にとっても、雇用主にとっても良いことはありません。うっかり不法就労をさせないようにしましょう。
在留カードの確認方法や、不法就労助長罪の詳細は、以下の記事をご覧ください。
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就業時間を増やしたい場合は「技術・人文知識・国際業務」などへ変更する
家族滞在ビザで認められる要件「勤務時間が1週間のうち28時間以内」を外れてしまいそうな場合は、就労時間の制限がない「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへの切り替えが必要になるでしょう。
切り替える場合は手続きとして、在留資格変更許可申請を行います。
用意するのは、在留資格変更許可申請書、日本で働く予定の会社についての書類など、日本での活動内容に応じた資料です。以下の記事でも詳しく説明していますのでご覧ください。
離婚した場合は在留資格変更が必須
離婚した場合は、扶養されているという要件に当てはまらなくなるので、家族滞在ビザでは日本に滞在できなくなります。引き続き日本に在留したい場合は、就労可能な在留資格などに変更する必要があります。
家族の帯同が可能な在留資格
家族滞在が認められる場合は限定されています。
以下の在留資格以外では、外国人の家族が家族滞在ビザを取得することはできません。
外国人の方が,「教授」,「芸術」,「宗教」,「報道」,「高度専門職」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「医療」,「研究」,「教育」,「技術・人文知識・国際業務」,「企業内転勤」,「介護」,「興行」,「技能」,「文化活動」,「留学」のいずれかの在留資格をもって在留する方の扶養を受ける場合(配偶者又は子に限る。)
出入国在留管理庁|家族滞在
昨今注目されている特定技能1号は対象外ですが、イレギュラーもありますので、それは後述致します。
90日以内なら、短期滞在ビザでも家族が日本に滞在できる
家族を日本に呼ぶ場合、90日以内の滞在であれば、より簡単に取得できる「短期滞在ビザ」で滞在が可能です。
短期滞在ビザは、観光などを目的に一時的に日本に滞在するためのビザで、来日する本人が申請します。配偶者や子でなくても90日まで日本に滞在することが可能なので、場合によって使い分けましょう。
特定技能1号外国人の配偶者と子が例外的に日本に滞在する方法
特定技能1号では、家族を帯同させることはできません。ただし、例外があります。
在留資格「留学」の方が、「特定技能1号」に切り替えを行う場合です。
本来、特定技能1号の在留資格では家族を滞在させることができません。特定技能に在留資格が変わった時点で、家族滞在の資格はなくなってしまいます。しかしそれでは困ってしまうので、特例として、この留学生の「家族滞在」の方は「特定活動」へ在留資格変更して引き続き滞在可能とする措置が設けられています。(参考:出入国在留管理庁|特定技能への移行を希望する留学生の皆様へ)
ちなみに、特定技能2号は家族を滞在させることができます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
雇用できるが制限が多いので就労条件に注意しよう
今回は、企業が知っておくべき家族滞在ビザの概要と、企業にとってのメリットや注意点をご紹介しました。
企業の戦力となる外国人にも、大切な家族がいます。「家族と一緒に日本で暮らしたい」という声に耳を傾け、年収面などにおいてサポートすることで、外国人が安定して長く働ける企業になるでしょう。
一方、家族滞在ビザで日本に滞在している外国人を雇用する場合には、不法就労にならないよう、労働時間や業種に十分注意が必要しましょう。