外国人雇用企業がすべき「不法就労助長罪」対策とは?|不法就労防止に取り組む警視庁担当者に聞いてみた

警視庁に聞く!不法就労について_メイン画像
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外国人採用サポネット編集部

労働人口の減少により、多くの企業や事業者が外国人材の雇用を検討するようになった一方で、不法就労に関するニュースなどを耳にする機会も増えています。
これらのなかには、違法性を知りながら故意に不法就労させていたケースはもちろん、在留外国人の就業に関する知識の不足や就労条件等の確認不足などによる「過失」のために罪を問われてしまった企業や事業者のケースも数多く含まれています。

今回は、そうした過失を未然に防ぐため、外国人材を雇用する企業や事業者が必ず押さえておくべきポイントについて、不法就労防止の最前線で活躍する警視庁組織犯罪対策部の熊谷警視にお聞きしました。

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、対策をしっかり行った上で取材しております。

【聞き手】外国人採用サポネット編集部

プロフィール熊谷和典 さん(警視庁組織犯罪対策本部 管理官)

2021年より組織犯罪対策第一課において、在留外国人の安全の確保に向けた総合対策に携わり、在留外国人との共生社会の実現に向け、企業や学校、在留外国人に対する、不法就労や不法滞在を始めとする各種犯罪の未然防止に向けた指導啓発活動など、各種対策を進めている。

不法滞在・不法就労の今と警視庁の新たな取り組みとは

まずは不法就労について教えてください。

熊谷さん(以下、熊谷):日本に滞在している外国人は、「留学」「技能実習」「特定技能」などをはじめ、それぞれの目的に応じた在留資格をもっています。就業できる時間や業務範囲、さらには日本で働くことができるのかどうかなど、就業に関する定めについても在留資格ごとに細かく設定されています。その定めに反して働いてしまうのが、不法就労です。

不法就労が発覚すると、働いていた外国人本人はもちろん、雇用した企業や業務を斡旋した事業者なども「不法就労助長罪」に問われ、処罰の対象となることがあります。

―不法滞在や不法就労の現状についてお聞かせください。

熊谷:入国管理局で把握している不法滞在外国人の人数は、2021年7月1日までで7万3,327人に上ります。警視庁では、2020年の1年間で、不法就労外国人92名、不法就労をさせた企業や事業者の担当者など76名を検挙しています。

不法就労助長罪で検挙されてしまった場合、企業にはどのような罰則やペナルティがあるのでしょうか。

熊谷:不法就労助長罪で処罰の対象となった場合、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が課されることになります。これら処罰に関しては、故意だけではなく、必要な確認を怠ったなどの過失がある場合も対象となります。

また、こうした罰則以外の面でも、不法就労助長罪に問われたことで責任者が逮捕され業務に支障が生じたり、大きく報道されたことで企業のイメージダウンを招いてしまったりすることもあります。

不法就労防止のため、警視庁ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

熊谷:警視庁では2020年3月に在留外国人の安全確保に向けた「総合対策本部」を設置し、在留外国人を含むあらゆる方の安心な暮らしをサポートするさまざまな取り組みを行っています。具体的には、外国人を受け入れている教育機関や企業、事業者を訪問して不法就労防止のための申し入れを行っているほか、在留外国人に直接、不法就労をしない、犯罪に巻き込まれないことの大切さをお伝えする説明会やイベントなども開催しています。

企業へ不法就労に関する啓発を行う様子

不法就労助長罪になってしまった具体的な事例

近年、不法就労や不法就労助長に問われた事例には、どのようなものがありますか。

熊谷:2021年末、複数の外国人を不法に就業させていた某食品メーカーの食品工場の社員が検挙され、大きなニュースにもなりました。こちらの事例では、雇用する外国人の在留資格では認められていない業務を行うと知りつつも、人材不足のためやむなく雇用・就労させたことが罪に問われ、食品メーカー及び工場の採用担当者が書類送検されています。この際の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」の「国際業務」で、通訳などとして働くことが許可されていますが、外国人には加工食品等を製造する工場の作業に従事させていました。また人材紹介会社を通しての雇用だったため、紹介会社も同じく検挙されています。

そのほか最近のものとしましては、人材派遣会社が複数の不法滞在外国人に土木工事の現場作業などを故意に斡旋し、検挙されたという事件もありました。在留期限が切れている不法滞在者は働けないので、不法就労を助長したことになります。また、この人材派遣会社は暴力団とのつながりが発覚しています。企業側は派遣会社や紹介会社などがどんな会社かを見極めることも重要です。

企業側が不法就労に至るプロセスには、どのようなものが多いのでしょうか。

熊谷:先程の事例のように、違法性を知りながら仕事を斡旋する派遣会社や紹介会社などから不法就労にあたる外国人を紹介されたり、最近では同郷の外国人同士がSNSなどでつながり、日本で働きたい外国人本人が自身の在留資格では従事することができない仕事を斡旋してもらったりするケースなどが多いですね。また、日本で働きたいと考える外国人本人が、偽造の在留カードを購入し、いわば企業を騙す形で働いていたという事件もあります。

不法就労助長罪に関し、企業が故意ではなく過失で罪に問われてしまったケースなどもあるのでしょうか。

熊谷:事前に在留資格の確認を怠ってしまった結果、定められた時間や業務範囲を超えて就業させていた企業が検挙されたという事例が少なからずあります。例えば、留学生の在留資格では、就労できる時間は月28時間以内と定められていますが、その認識がなく日本人のアルバイト学生のように28時間を超える勤務をさせ、不法就労助長罪に問われることもあります。複数のアルバイトを掛け持ちしていた場合はそれらの合計時間が対象となるため、実は28時間を超過していたということもあるので注意が必要です。

また、いずれの在留資格でも、いわゆる「風俗業」に従事することは認められていないのですが、清掃などサービスと関わりない仕事ならいいだろうという勝手な解釈で風俗業の店舗清掃に従事させ、不法就労助長罪を問われた企業などもありました。

過失で不法就労助長罪にならないために、企業が確認すべきポイント

―外国人材を雇用する企業が、不法就労助長罪にならないため、最初に確認すべきことはなんですか。

熊谷:それぞれの在留カードの情報を、きちんとチェックするというのが基本です。偽造されていない正規の在留カードであるかの確認はもちろんのこと、どんな在留資格で日本に滞在しているのか、その在留資格ではどんな業務を任せることができるのかといった内容をしっかりと把握した上で適正な業務で活躍してもらえる環境を整えていくのが大切ですね。それを確認するためには、在留資格に対する知識を持つことも重要になります。

在留資格は種類も多く、従事できる仕事の種類や就業条件などもそれぞれによって大きく異なります。「特定活動」など、特定の業務への従事のみ認められている在留資格などもありますので、どの範囲の業務まで任せていいのかを把握するのは大変だと思いますが、できる範囲で構いませんので、しっかりと情報を集め、確認することを心がけてください。就業の条件などについて分からないことについては、出入国在留管理庁のホームページ等で確認するか、直接お問い合わせすることをおすすめします。

人材派遣会社や紹介会社から外国人材を派遣・紹介してもらう場合に注意するべきことはありますか。

熊谷:まずは国の認可を受けている人材派遣会社や紹介会社と取引をするようにしてください。先ほどの事例のように暴力団と繋がっているなど、不法就労を斡旋する紹介会社もないとは言えません。認可をされている事業者なら100%安心とはいえませんが、やはり過去の事例からいっても、無認可の事業者からの紹介や派遣によって不法就労助長罪となったケースが多いということは、知っておいていただきたいですね。

認可を受けているかどうかは、紹介会社のホームページなどに有料職業紹介許可や労働者派遣事業許可のナンバーが記載されているかで調べていただければすぐに分かると思います。また、厚生労働省職業安定局の「人材サービス総合サイト」からも、適正な許可を受けた会社について調べることができます。

その他、企業はどんなことを知っておくべきでしょうか。

熊谷:PCやプリンターがどんどん発達したことで、現在では在留カードの偽造も、個人レベルで簡単にできるようになっています。実際に外国人本人がカードを偽造したり、インターネットで購入して使用したりという事件は増加していますので、在留カード確認の際には注意が必要です。在留カードには、角度を変えるとカードの端部分の色が変わる、ホログラムで本物かどうかを確認できるといった「偽造防止対策」が施されていますので、確認はコピーではなく必ず現物で行うようにしてください。

偽造防止対策についてはインターネット上にもさまざまな情報がありますので、それらも参考にしながら、できる限りで構いませんのでしっかりと確認するようお願いいたします。

日本人と在留外国人、それぞれが明るく暮らせる社会を目指して

同じ組織犯罪対策部の中野さんとのお打ち合わせの様子

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、対策をしっかり行った上で取材しております

―在留外国人が犯罪に巻き込まれるようなケースも増加しているのでしょうか。

熊谷:SNSなどにより外国人同士が簡単につながり、お互いに情報交換や支え合いができるようになった一方で、犯罪組織に取り込まれて、「運び屋」などさまざまな犯罪に加担してしまったというケースも残念ながら増加しています。これらのなかには、犯罪者グループに脅された、巻き込まれたといったもののほか、「簡単にお金を稼げる方法があるよ」といった甘い言葉に誘われ自ら犯罪に加担してしまったというケースも少なくありません。

―外国人材を犯罪から守るため、企業側でできることはありますか。

熊谷: やはり、在留外国人を孤立させないよう、見守っていくのが大切ではないかと思います。日ごろしっかりとコミュニケーションをとって信頼関係を確立し、それぞれの生活のサイクルなどを把握することができていれば、何か変化があったときにも気づきやすくなると思います。

海外と日本の生活様式の違いなどが、犯罪につながってしまうこともありますか。

熊谷:日本の法律がよく分からず、例えば、ゴミの出し方が分からず不法投棄をしたり、自分では使わない銀行口座を他人に譲ったり、理由なく刃物を携帯したりと、外国人が知らず知らずのうちに法律違反を犯してしまうことはあります。そんな過失を防ぐためには、日本の法律やルール、生活様式といったことについて、できるだけ分かりやすい日本語で伝えていく必要があるでしょう。

最後に、外国人の雇用を考える企業に伝えたいことはありますか。

熊谷:警視庁組織犯罪対策部でも、さまざまな学校や企業への訪問や、オンラインを通じて、日本で暮らす外国人の方に直接、防犯や安全に関する意識をもっていただく機会を積極的に設けるようにしています。警視庁では、そんな取り組みにご賛同いただける学校や企業、そして地域の方々と連携しながら、日本人も在留外国人も安心して暮らせる環境や社会をつくっていきたいと考えています。ご協力のほど、何卒よろしくお願いいたします。

—ありがとうございました。不法就労助長罪に関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、併せてご覧ください。

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