外国人留学生をアルバイト雇用する方法や時間制限などの注意点を紹介
街なかでよく見かけるようになった居酒屋やコンビニの外国人店員。こうしたアルバイトをする外国人の中には、日本に滞在している留学生もいます。少子化を背景に、人手不足で苦しむ業界では外国人留学生は貴重な働き手となっています。
しかし、トラブルなく留学生に働いてもらうには、採用での日本語能力の確認、労働条件の明示、安全衛生への配慮、社内研修の充実など、外国人留学生を雇う企業には適切な対応が求められます。
今回は、留学生を採用した際に企業が対面する課題と、スムーズな雇用のために注意するべき点を紹介します。
目次
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どれくらいの外国人留学生がアルバイトしている?
日本にやってくる留学生の数は、年々増えています。2018年5月時点で、留学生の数は約29.8万人。独立行政法人日本学生支援機構の調査によれば、7割の留学生がなんらかのアルバイトをしています。
直近では新型コロナウイルス感染拡大から水際対策が行われたことにより新規入国者数は減っていますが、入国制限緩和を受けて今後はまた回復する見込みです。
まずは、アルバイトをする留学生の実態をみてみましょう。
留学生アルバイトで多いのは、飲食業やコンビニが3割
アルバイトの職種でみると、一番多いのは「飲食業」の35.0%です。続いて、「営業・販売(コンビニなど)」が30.2%、「工場での組立作業」が6.1%そのあとは「ティーチングアシスタント・リサーチアシスタント」が5.6%、と続きます。
世間では新型コロナウイルス感染拡大の影響で外食の機会が減っており、アルバイトの需要が減っていました。留学生の飲食業でのアルバイトも通常よりは低下しています。代わりに、需要が変わらないコンビニや工場での組立作業などで働く留学生は増加傾向にあります。
飲食業 35.0%
営業・販売(コンビニなど) 30.2%
工場での組立作業 6.1%
ティーチングアシスタント・リサーチアシスタント 5.6%
留学生採用のメリットは、人手不足の解消と多言語対応
留学生をアルバイトで採用する企業にとってメリットの1つは、人手不足の解消につながることです。売り手市場で募集をかけても人がこないと嘆く小売店や飲食店の場合、募集対象を広げることで従業員を確保できる可能性が高くなります。
もう1つ、留学生のアルバイトに期待できるのが母国語を生かした接客です。日本を訪れる外国人旅行客の数は、2018年に3000万人を突破しました。日本語以外での接客が必要になったとき、対応できるスタッフがいれば、訪日外国人をビジネスに呼び込むきっかけになります。
① 人材を確保し、人手不足を解消できる
② 多言語対応が可能になる
株式会社マイナビが2022年5月に行った「非正規雇用の外国人・シニア採用に関する企業調査(2022年)」によると、企業が外国人を採用したい理由は「人手不足の解消・改善に繋がるから」が52.6%で最も多く、「まじめに働いてくれるイメージがあるから」が36.6%、「日本人社員への刺激・社内活性化につながるから」が約28%、「外国語が必要な業務があるから」は24.6%となっています。
外国人留学生のアルバイト採用方法はこちらの記事で詳しく紹介しています。併せてご覧ください。
意外な落とし穴?留学生ビザ発給件数が減少するかも……
企業が知っておくべき留学生をとりまく現状と課題においては、「留学生のビザ発給数」があります。
留学生の全体人数は増えている一方、前年度比の増加率は低下しています。これは日本語教育機関の留学生が前年より7.7%減少したことが影響しています。
考えられる理由としては、出稼ぎ目的の留学生の規制だと思われます。留学を目的に在留資格を得ているものの、実際には出稼ぎのために来日する外国人が増加しており、出稼ぎ目的の留学生の多くは日本語学校へ入学していることが背景にあります。今後も留学生ビザの発給が厳しくなる可能性は十分にあります。留学生の数が減少すれば、日本語ができる留学生の採用はより厳しくなるでしょう。その際、従業員の確保には留学生アルバイトだけではなく、外国人の正社員雇用も視野に入れることが大切です。
外国人を雇うには、飲食業や宿泊業でも即戦力を採用できる「特定技能」や、専門知識を持った職種で利用する「技術・人文知識・国際業務」など、ほかの在留資格もあります。外国人留学生のアルバイト採用をはじめ、自社にとって最適な形の外国人採用を検討しておく必要があるでしょう。
外国人留学生をアルバイト雇用するには
外国人留学生をアルバイト雇用する際には決められたルールがあり、日本国籍の大学生を雇用するのとは別の対応が必要です。何をしなければならないのか、見ていきましょう。
①在留カードと在留資格を確認する
必ず在留カードの確認を行いましょう。外国人を雇用する際は在留資格に関わらず必須の確認事項です。
在留カードの確認では、以下の項目をチェックしましょう。
- 在留カードが本物かどうか、偽造カードではないかどうか
- 在留カードの期限が切れていないかどうか
- 在留資格が「留学」かどうか
- 資格外活動許可を受けているかどうか
在留カードの確認方法については以下の記事で詳しく解説していますのでご確認ください。
②資格外活動許可がない場合は申請する
本来、「留学」の在留資格には就労活動は認められていません。学術や文化を学ぶための在留資格だからです。そこで資格外の活動を行うために「資格外活動許可」を申請します。許可を受けると、在留カードの裏側の該当箇所に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されます。
これらは留学生本人が行うものなので、企業は雇用に際して留学生が許可を得ているのか確認すれば問題ありませんが、申請されていない場合は留学生に申請してもらいましょう。許可がおりる前に雇用することは違法行為となります。
資格外活動許可の申請は住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請を行います。申請書と必要書類をそろえる必要があります。
資格外活動の許可には、「包括許可」と「個別許可」の2種類がありますが、通常、留学生は「包括許可」を得ています。インターンシップなどで就業体験を目的とする場合は「個別許可」に該当する場合があります。
包括許可
1週について28時間以内(教育機関の長期休業期間にあっては,1日について8時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動(注)又は報酬を受ける活動を行う場合は,資格外活動の包括許可が必要となります。
(注)包括許可における「事業を運営する活動」とは,雇用契約書等により従事しようとする時間が明確である管理者等としての活動のほか,個人事業主として配達等の依頼を受注し,成果に応じた報酬を得る活動で,稼働時間を客観的に確認することができるものを指します。
「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について|出入国在留管理庁
これに該当しない場合は,下記2の資格外活動の個別許可が必要となります。
詳細は以下のホームページをご確認ください。
▶「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について|出入国在留管理庁
留学生をアルバイトで雇用する4つの注意点
最後に、留学生アルバイトを雇うとき、企業が注意するべきポイントをまとめました。
留学生は「資格外活動許可」を得ないと労働禁止
留学生の来日目的は学業のため、「留学」の在留資格だけでは労働ができません。しかし、実際にはアルバイトをしている留学生はたくさんいます。それはなぜかというと、彼らは資格外活動許可を法務省に申請し、日本の学校に通いながら労働できる許可を取得しているからです。
そのため、企業は留学生が資格外活動の許可を得ているか必ず確認してください。在留カードの表面にある就労制限の有無は「就労不可」と書かれていますが、裏面の資格外活動欄に「許可」と記載があればアルバイトが可能です。
働ける時間は入管法で週28時間が原則
留学生を雇う企業は、アルバイトの労働時間に注意しましょう。留学生の労働時間は、週に28時間までと決められています。
これは別のアルバイトを掛け持ちしている場合もすべて併せて28時間以内です。注意しましょう。
なお、夏休みや冬休みなどの長期休暇の場合は1日8時間、週40時間までの労働が認められています。雇用主は現場で勤務時間の管理をしっかりと行わなければいけません。
詳細については以下の記事で解説しています。
28時間以上働いてほしい場合は在留資格を変更して働く必要があります。
留学生を違法に雇用した場合、雇用主に罰則が科せられる可能性がある
留学生が違反して働いた場合、本人の次の在留資格の更新が難しくなったり、強制送還の対象になったりします。
また、資格外活動の許可を得ていない留学生を働かせたり、上限時間を超えて勤務させたり、違反した場合は、不法就労を助長したとして企業に3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
実際に毎年、違法行為で摘発される企業が後を絶ちません。
労働時間の上限は、現時点で出入国管理庁が取り締まる仕組みはなく実質努力目標になっています。なかには、お金欲しさにアルバイトを掛け持ちする留学生もいますが、在留資格変更の際の源泉徴収票の提出などで、オーバーワークは露見します。
雇用主側は、法で決められたルールを理解し、適切な雇用関係を結びましょう。掛け持ちでアルバイトをしているかどうかの確認も必要でしょう。
留学生の採用・退職時にはハローワークへ必ず届出を出す
留学生をアルバイトで採用したら、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出します。この届出は、採用時・離職時ともに必ず必要です。また、雇用形態がアルバイト・正社員であるかを問いません。最寄りのハローワーク、もしくはオンラインで届出ができます。
待遇を差別することなく労働法のルールを守ることが重要
留学生をアルバイトで採用するのは、現場の人手不足の解消や、職場の日本語以外での接客を充実させるといったメリットがあります。一方で、仕事を覚えるまでの研修を手厚く行ったり、就業時間をしっかりと管理したりしなければいけません。外国人留学生だからといって、待遇を差別することなく労働法のルールを守ることが重要です。
また、どうしても長時間働いてほしいと場合は、別の在留資格への変更、またはアルバイト以外の雇用方法を検討しましょう。
例えば飲食店であれば在留資格「特定技能」の外国人を雇用するのも一つの手です。
飲食店での就労が認められている在留資格は「特定技能」
在留資格「特定技能」は外食分野で働くことが認められています。「留学」以外で飲食店のホールの業務などを担当できる就労ビザはあまりありません。
主業務でなければデリバリー業務も可能で、在留期限は最長5年、育成後に何年も活躍してもらうことができるでしょう。
検討してみることをお勧めします。