特定技能評価試験とは?内容や取得に必要な日本語試験なども詳しく紹介
今回は、在留資格「特定技能」の試験制度や内容、試験合格者の知識レベル、実態について説明します。
各分野の特定技能外国人がどのようなスキルを持った人材なのかは、「どのような試験に合格したのか」というところから見えてくるでしょう。「採用後、業務をどのレベルから教えるべきなのか」、「日本語はどの程度通じそうなのか」などは、だいたいの目安を知ることもできます。
ぜひ、特定技能人材の採用の参考にしてみてください。
目次
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在留資格「特定技能」とは
特定技能とは、2019年4月に創設された、人手不足が深刻とされる特定産業分野(12分野)において、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。
労働力を確保することを目的に創設されているため、就労ビザの代表格「技術・人文知識・国際業務」などでは行えない単純労働を含めることで幅広い業務を行うことが可能です。
例えば、特定技能「宿泊」であれば、ホテルのフロント業務だけでなく付随的業務の範囲でベットメイキングや清掃を担当してもらうこともできます。ホテルや旅館では「技術・人文知識・国際業務」の「国際業務」で採用も多いですが、この場合は海外からの宿泊客対応(通訳業務)のための雇用となり、ベットメイキングや掃除などの単純労働は一切できません。幅広く業務に従事してほしい場合、特定技能外国人という選択肢ができました。
また、技能実習2号から特定技能1号への移行も可能で、実習を終えた技能実習生が帰国せずに働き続けることができます。
特定技能制度全般について詳しく知りたい場合は、下記の記事をご覧ください。
特定技能の対象12業種
対象となる業種は以下の通りです。
※特定技能1号は上記12分野で受入れ可。特定技能2号で受入れができるのは介護以外の11分野です。
分野別・職種別については、こちらの記事で紹介しています。
▶【2024年】特定技能12分野(14業種)を解説!職種一覧・受け入れ状況まとめ|外国人採用サポネット
在留資格「特定技能1号」の試験制度とは
在留資格「特定技能」を取得には、指定された試験に合格をする必要があります。
ただし、試験に合格しても「特定技能」の在留資格が付与されることが保証されるわけではありません。別途、在留資格の申請・変更手続きを行い、審査されます。
また、技能実習2号を良好に修了している場合はこの試験が免除されますが、技能実習と特定技能の分野が違う場合は試験を受けなければいけません。技能実習の移行に関しては以下の記事で詳しく知ることができます。
受験資格
試験は日本国内だけでなく海外でも行われており、それぞれ異なります。
●17歳以上(インドネシア国籍を有する者にあっては、18歳以上とする。)
●在留資格を有している外国人であること ※不法残留者、日本国籍者等は受験不可
<海外で受験をする場合>
●各国によって条件が異なる
国内受験の資格については2021年に緩和され、上記の条件となりました。過去には「中長期在留者か中長期在留者として在留していた経験」が必要でした。現在は観光などの短期滞在(旅行ビザ)でも受験が可能です。また、技能実習生も実習期間内に受験することが可能で、技能実習を修了しない状態で特定技能への移行したい場合は、受験をすれば良いということです。
受験後45日は次の試験を受けることができませんので、不合格となり再受験する際には注意が必要です。
所轄省と試験実施団体
特定技能は一つの所轄省庁が取りまとめているのではなく、産業分野ごとに違います。そのため技能試験の実施団体もそれぞれ異なり、直接所轄省が実施する試験もあれば、民間機関が委託を受けて実施する試験もあり、わかりにくいという難点があります。
ここでは、所轄省と技能試験実施団体一覧表でまとめました。それぞれのサイトから試験申し込みなどに遷移できますので参考にご覧ください。
産業分野 | 所轄省 | 技能試験実施団体 |
---|---|---|
介護 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
ビルクリーニング | 厚生労働省 | 全国ビルメンテナンス協会 |
素形材・ 産業機械製造 ・ 電気・電子情報関連産業 | 経済産業省 | 経済産業省 |
建設 | 国土交通省 | 建設技能人材機構 |
造船・ 舶用工業 | 国土交通省 | 日本海事協会 |
自動車整備 | 国土交通省 | 日本自動車整備振興会連合会 |
航空 | 国土交通省 | 日本航空技術協会 |
宿泊業 | 国土交通省 | 宿泊業技能試験センター |
農業 | 農林水産省 | 全国農業会議所 |
漁業 | 農林水産省 | 大日本水産会 |
飲食料品製造業 、 外食業 | 農林水産省 | 外国人食品産業技能評価機構 |
特定技能 所轄省と技能試験実施団体一覧表
特定技能の試験は2種類
特定技能を取得するには、以下の2つの試験に合格する必要があります。
試験②:各分野の「技能評価試験」
即戦力として一定の業務をこなせる人材が取得できる在留資格であるため、試験では業務に関連した技能と、業務遂行可能な日本語スキルを持っている人材かどうかチェックされるということです。
では、試験の内容について詳しく見ていきましょう。
日本語能力の試験について
日本語能力の試験では、文字通り、日本語能力のレベルを評価します。
先述の通り、「日本語能力試験(JLPT)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」のどちらかを受験します。両方とも日本国内外に試験会場があり、受験できます。内容は似たようなものですが、問題文を現地語で読めるかどうかという違いがあります。
また、1年に開催される回数や受験できる場所も違いますので、自分に合ったほうを選べばよいでしょう。国際交流基金日本語基礎テストのほうが、年間を通じて多く開催しています。
日本語能力試験 (JLPT)
問題文の言語は日本語のみです。2021年11月現在、会話や作文の試験はありません。マークシート方式で実施されます。
N1~N5までの5段階にレベルが分かれており、特定技能で要求されるのはN4以上です。N4とは、基本的な日本語を理解することができるレベルとされています。
【N4】 基本的な日本語を理解することができる
読む
・基本的な語彙や漢字を使って書かかれた日常生活の中でも、身近な話題の文章を、読んで理解することができる。聞く
日本語能力試験|国際交流基金 日本国際教育支援協会
・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)
受験レベルは1つのみです。CBT(パソコンやタブレットを使用)方式で実施され、2020年9月現在、会話や作文の問題はありません。
問題文は英語で書かれていますが、「Your Language」ボタンを押すと現地語で読むことができます。
▶関連サイト:JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト|国際交流基金
分野別の技能試験について
対象となる分野で、外国人が即戦力として業務を行うために必要な知識や経験を持っているかを測る試験です。
日本語の試験は特定技能のどの分野も共通の試験ですが、技能評価試験は分野ごとに分かれます。
試験実施状況
試験の実施状況や合格者の数を確認すると、どの分野に人材が多くいるのか、試験を積極的に実施して合格しているのかなどの傾向を見ることができます。
毎月試験を実施し、多くの合格者を出している分野は、多くの人材が求職活動を行っている可能性が高いでしょう。逆に試験を実施していない場合は、別の在留資格からの切り替えのみとなるため、採用を希望しても人材が市場にはいない可能性が高いということです。
このように、自社で求めている分野の採用確度や傾向を知るためにも、実施状況の確認は定期的に行うことをおすすめします。
試験実施状況の毎月のデータは、下記の記事で確認できます。
特定技能 介護分野の試験内容
現在非常に需要が高い介護分野の、「介護技能評価試験」について見てみましょう。
介護技能評価試験の試験水準は、介護職種・介護作業の第2号技能実習修了相当の水準である介護技能実習評価試験と同等の水準(注)とする。
出典:「介護技能評価試験」試験実施要領|厚生労働省
(注)介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベル
試験はコンピューターで実施
介護分野では、先述の日本語試験に加えて「介護日本語評価試験」の受験が必要であるため、実際は「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」「日本語試験」の3つの試験に合格する必要があります。
介護技能評価試験も、介護日本語評価試験もCBT(パソコンやタブレットを使用)方式で実施します。そのため、介護の実技試験はありません。
技能試験問題例
試験内容は下記の表のとおりです。合格基準は総得点の60%以上です。
介護技能評価試験 | 介護日本語評価試験 | |
---|---|---|
問題数・ 試験時間・ 試験科目 | 全45問 60分 ►出題基準 <学科試験:40問> ・介護の基本(10問) ・こころとからだのしくみ(6問) ・コミュニケーション技術(4問) ・生活支援技術(20問) <実技試験:5問> ・判断等試験等の形式による実技試験課題を出題 | 全15問 30分 ・介護のことば(5問) ・介護の会話・声かけ(5問) ・介護の文書(5問) |
実施方法 | コンピューター・ベースド・ テスティング(CBT)方式 | コンピューター・ベースド・ テスティング(CBT)方式 |
このように、介護技能評価試験では、介護の現場で必要な知識が出題されます。
厚生労働省の資料によると、介護技能評価試験のレベルは「介護職種の第2号技能実習修了(3年間)相当の水準である介護技能実習評価試験と同等の水準」とされています。これは、「介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベル」です。
この試験に合格すれば、3年間の技能実習を終えた人と同じくらいのことがわかっている、ということです。
以下、サンプル問題より引用しました。
例題1 自己決定を支援する上で把握すべき内容として、 適切なものを1つ選びなさい。
1 家族の意向
2 介護を必要とする人の希望
3 医師の判断
4 経済状況
(正答:2)
出典:厚生労働省|介護技能評価試験サンプル問題
介護日本語評価試験の内容は?
介護日本語評価試験は、日本語で実施されていますが、問題文は現地語です。
試験内容は、介護に特に必要な日本語がテーマです。介護の用語に関するものや、短めの読解問題があります。4つの選択肢から1つを選ぶ方式です。
マイナビグローバルでは特定技能「介護」の人材紹介サービスが可能です。資料請求・無料相談はこちらから
特定技能 宿泊分野の試験内容
次に、特定技能の中でも外国人材の高い需要が見込まれる「宿泊」分野の試験内容を見てみましょう。
試験問題例:業務に直結した内容が出題される
特定技能「宿泊」の試験は、宿泊業で働くために必要な知識を「フロント業務」「広報・企画業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つの分野からの出題により確認します。宿泊業技能試験センターが実施します。
以下、試験のサンプル問題です。
【学科試験】
●「ホテルのチェックインとチェックアウトの時間は法律で定められている」(×)
●「ホテルを宣伝するためにホテルで撮影した写真であれば、お客様が映り込んでいても、誰にも許可を得ずに使用することができる」(×)
●「メニューの注文を受けるときは、お客様に食物アレルギーがあるかどうかを確認する」(〇)
出典:一般社団法人 宿泊業技能試験センター
学科試験は、〇か×で答えます。
【実技試験】
●受験者の外国人はホテルの従業員になったつもりで、宿泊業の基本的な事項に関する質問に答えます。
出典:一般社団法人 宿泊業技能試験センター
いずれの問題も、宿泊業で働くのであれば知っておかなければならないことです。
各分野の基本業務を行える人材が、特定技能を取得できる
特定技能の試験に合格した外国人は、その業務の基本的なことを理解し、即戦力として働ける技能を持ち合わせていると言えるでしょう。これは、3年間の技能実習を修了すれば試験が免除される点からもうかがえます。また、業務に必要な範囲での日本語コミュニケーションも可能です。
とはいえ、特定技能試験は技能実習のような実地試験があるわけではないので、あくまでもペーパーテスト(職種によっては面接試験)において、「業務の基本が理解できていることの証明」と考えると良いでしょう。業務内容については入社の際に丁寧な講習が必要であると感じます。日本語能力N4レベルでは、簡単な日本語での挨拶はできますが、複雑な話をすることは難しいです。
それでも、基本的な事項を理解している人材であれば、現場としては戦力にしやすいという点は大きなメリットではないでしょうか。
技能実習からの移行であれば、すでに日本での就労経験を経ていますので、日本文化への理解や日本語能力の高さも期待できます。
能力や条件を正しく理解したうえで、特定技能外国人の採用をぜひ検討してみてください。