特定技能「産業機械製造業」は人材不足解消の一手!雇用方法を解説します

執筆者:

外国人採用サポネット編集部

日本では、さまざまな分野で人材不足が進んでいます。そうした事態を打開するため、2019年4月、政府が新設したのが外国人の在留資格「特定技能」です。特定の技能を持った外国人の就労制度があらためられ、一定の技術を持つ外国人材が産業やサービスの現場で働けるようになりました。

特定技能には14業種ありましたが、2022年5月に製造3分野(素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野)が統合し、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」となりました。
また、2022年8月には、これまで製造業分野の業務区分が19区分に分かれていましたが、3区分に統合され、より現場の実態に沿った業務範囲となりました。

それらの中から今回は「製造3分野」のひとつだった「産業機械製造業」を解説します。また、外国人材を採用するために知っておきたい試験制度や在留資格についても説明します。

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監修:行政書士/古田 晶稔(サポート行政書士法人)

在留資格(ビザ)申請に携わると共に、技能実習に関する手続きも担当。 人材不足に悩む中小企業へ向けた外国人活用に関するコンサルティング業務をメインとして活躍。 行政書士(愛知県行政書士会所属 /第16190330号)

特定技能「産業機械製造業」とは?

日本では少子高齢化の影響により、さまざまな業界で人材不足が進んでおり、この問題を解決するため新設されたのが在留資格「特定技能」です。

特定技能の在留資格が認められているのは特に人手不足が深刻とされる12の分野です。「産業機械製造業」は元は分野の1つでしたが2022年に製造に関する他の2分野と統合して「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」分野となりました。

産業機械製造とは、工場や事務所内で利用される機械全般のことです。一例として、建設機械や農業機械、工業機械が挙げられます。つまり「産業機械製造」とは、そうした機械を作る産業を指し、日本の製造業を支えるために不可欠な業界であり、日本の社会インフラを整備する重要な役割を担っています。

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「素形材・産業機械・電子電機情報関連製造業」分野の2号は2023年秋に試験を初実施予定

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、外国人材が保持する技能レベルに応じて1号と2号に分けられます。

これまで、12分野のうち2号は「建築業」と「造船・舶用工業」の2分野のみでしたが、2023年に護分野を除く11分野が2号の対象になることが閣議決定し、秋からは特定技能2号の試験が順次スタートします。

特定技能1号
相当程度の知識又は経験を必要とする技能(※1)
を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能2号
熟練した技能(※2)
を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
在留資格1年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について
指定する期間ごとの更新、通算で上限5年まで
3年、1年または6カ月ごとの更新、上限無し
技能水準試験等で確認
(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)
試験等で確認
日本語
能力水準
生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
(技能実習2号を修了した外国人は試験免除)
試験等での確認は原則として不要
受入れ見込数
(上限)
ありなし
家族の帯同基本的に認めない要件を満たせば可能(配偶者、子)
支援受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外
製造業分野の特定技能2号追加について|経済産業省 を一部抜粋

(※1)相当期間の実務経験等を要する技能であって、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいう。
(※2)長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する 技能であって、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいう

在留資格認定証明書の交付を一時停止中 ※2022年4月時点

産業機械製造業分野における特定技能1号外国人数が、2022年2月末現在で5,400人(速報値)となり、受入れ見込数である5,250人を超える状況となったことから、在留資格認定証明書交付の一時停止することとなりました。特定技能1号への在留資格の変更、在留期間の更新については、要件を満たしていれば許可がおります。

特定技能「産業機械製造業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置等について|出入国在留管理庁

特定技能が創設された背景

日本では、世界に例を見ないスピードで少子高齢化が進んでいます。それにより、人材不足はますます深刻化しています。日本商工会議所と東京商工会議所が2018年度に行った調査によれば、人員が「不足している」と回答した企業は、対象企業の66.4%でした。また、東京商工リサーチの調べによると、2020年度上半期(4~9月)に人手不足が関連して倒産した企業は215件、前年同期比と比べると4.8%増でした。

さまざまな業界で人手不足が見られますが、なかでも産業機械製造業の現状は深刻です。工作機械やロボットなどの産業機械に対する需要が高まっているにも関わらず、2017年度の産業機械製造業に関連する職業分類における有効求人倍率は、2.89倍。今後も人材不足はさらに進み、経済産業省は、産業機械製造業における人手不足の見込み数は、2023年までに7万5,000人になると予測されています。

こうした事態を打破する一手として、政府は新しい在留資格「特定技能」を定めることにより、外国人技術者の受け入れを可能にしたのです。

特定技能についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

特定技能「産業機械製造業」で外国人材が行うことのできる業務

特定技能「産業機械製造業」では、次のとおり、18 の業務を行うことができます。

  1. 鋳造:金属を型に流し込み製品を製造する
  2. 鍛造:金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にしたりする
  3. ダイカスト:溶融金属を金型に圧入して高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する
  4. 機械加工:旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や切削工具を用いて金属材料等を加工する
  5. 金属プレス加工:金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞り等を行い成形する
  6. 鉄工:鉄鋼材の加工、取付け、組立てを行う
  7. 工場板金:各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う
  8. めっき:腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する
  9. 仕上げ:手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う
  10. 機械検査:各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う
  11. 機械保全:工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する
  12. 電子機器組立て:電子機器の組立て及びこれに伴う修理を行う
  13. 電気機器組立て:電気機器の組立てや、それに伴う電気系やメカニズム系の調整や検査を行う
  14. プリント配線板製造:半導体等の電子部品を配列・接続するためのプリント配線板を製造する
  15. プラスチック成形:プラスチックへ熱と圧力を加える又は冷却することにより所定の形に成形する
  16. 塗装:塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う
  17. 溶接:熱又は圧力若しくはその両者を加え、部材を接合する
  18. 工業包装:工業製品を輸送用に包装する

特定技能1号を取得するには?

外国人材が特定技能1号を取得するには、二つの方法があります。一つ目は、「特定技能1号評価試験」と日本語検定に合格して資格を取得するという方法です。

二つ目は、「産業機械製造業」分野の技能実習2号から移行する方法です。

特定技能1号評価試験に合格する

特定技能1号を取得する一つ目の方法は、「産業機械製造業」分野特定技能1号評価試験に合格する、というものです。

産業機械製造業だけではなく、在留資格「特定技能」を取得するには、特定技能12業種がそれぞれ独自に定めた「特定技能評価試験」に合格する必要があります。

「産業機械製造業」の場合は、経済産業省の定める「製造分野特定技能1号評価試験」に合格しなければなりません。

さらに、日本での労働に必要な日本語水準を満たしていることを証明するため、規定の日本語試験に合格する必要があります。

特定技能試験については後ほど詳しく説明します。

技能実習2号からの移行

外国人材が特定技能1号「産業機械製造業」を取得するための、二つ目の方法は、「産業機械製造業に該当する技能実習2号から移行する」というものです。

「技能実習2号」とは、1993年に導入された「技能実習」ならびに「研修」制度です。新設された「特定技能」の制度が整備されたことにより、外国人材は「技能実習生」から「特定技能」へ移行できるようになりました。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、在留資格「特定技能」を得ることで、追加で最長5年間、日本に滞在できるようになります。また、「産業機械製造業」の特定技能1号評価試験は免除されます。

下記に挙げた技能実習の職種は、試験なしで特定技能1号『産業機械製造業分野』へ移行できます。

経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」をマイナビグローバルで加工)
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「産業機械製造業」分野特定技能1号評価試験とは?

外国人材が特定技能1号「産業機械製造業」を取得するには、「技能測定」と「日本語」の、二つの試験で一定の成績をおさめる必要があります。

ここでは「産業機械製造業」の特定技能試験について解説します。特定技能試験の制度や受験資格などについては、こちらの記事で紹介しています。

「産業機械製造業」分野特定技能1号評価試験

「産業機械製造業分野特定技能1号評価試験」は、受験者が技能水準を満たしているかを評価する技能試験です。

特定技能1号「産業機械製造業」を取得するには、経済産業省が行う試験に合格しなければなりません。

技能試験 「製造分野特定技能1号評価試験」

実施場所2019年度は、インドネシアで実施(2020年度は国内でも実施予定)
試験言語主に現地語
実施方法学科試験、実技試験
試験区分19試験区分(鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、 工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、 電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、 塗装、溶接、工業包装) ※レベルは技能検定3級相当(技能実習2号修了相当)
製造業における特定技能外国人材の受入れについて(経済産業省):PDF

試験の日程や試験の実施状況はこちらの記事でまとめています。参考にご覧ください。

日本語試験に合格する

特定技能1号「産業機械製造業」の特定技能資格を取得するには、日本での就業や生活が可能な日本語能力を持っているかを確認する必要があります。そのため、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格しなければなりません。

「日本語能力試験」

日本語能力試験のレベルは5段階。基礎のN5から幅広い場面で使われる日本語のN1までがあります。「産業機械製造業」分野の特定技能資格取得に際し、「日本語能力試験」を活用する場合は、N4以上が必要です。N4は、「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる」「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」というレベルです。試験は通常、年2回開催されます。

「国際交流基金日本語基礎テスト」

日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。試験は通常、年5回開催されます。

特定技能「産業機械製造業」の外国人材を採用するには?

特定技能「産業機械製造業」資格を持った外国人材の採用を検討している企業は、どうすれば受け入れることができるのでしょうか。

 特定技能外国人を雇用する企業を、「特定技能所属機関(受入れ機関)」と呼びます。産業機械製造業で特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入れ機関)は、以下3つの条件をすべて満たす必要があります。

1.事業所が以下の日本標準産業分類に該当している

特定技能「産業機械製造業」の外国人材を採用する事業者は、下記の日本標準産業分類に該当している必要があります。

2.支援体制の義務を果たす

特定技能所属機関(受入れ機関)が特定技能1号外国人を雇用するためには、「事前ガイダンスの提供」「日本語学習の機会の提供」など、各種支援を行うことが義務付けられています。

ただし、受入れ機関はこの支援業務を「登録支援機関に委託する」ことができます。登録支援機関の詳細は、下記の記事で紹介していますので、ご覧ください。

3、産業機械製造業分野特定技能協議会への加入

特定技能所属機関(受入れ機関)は、経済産業省が組織する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する必要があります。これは、経済産業省、法務省、地方自治体と、素形材産業・産業機械製造業・電気・電子情報関連産業分野によって構成される組織のことです。協議・連絡会では、以下の活動により、構成員の連携強化や事業者の情報把握などを行います。

注意すべきポイントは、外国人材の受け入れ前に協議・連絡会への加入しなければならないことです。

他分野では原則、初回受け入れ開始後の加入で問題ないため、間違えないようにしましょう。

また、2021年10月現在、加入手続きが混みあっており、3~4カ月程度の期間を要します。早めの手続きがおすすめです。

【活動内容】

  • 特定技能「産業機械製造業」の外国人を受け入れる制度の趣旨や優良事例の周知
  • 特定技能所属機関等に対して法令遵守の啓発を行う
  • 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報把握及び分析
  • 地域別の人手不足の状況の把握及び分析
  • 特定技能外国人受入れに必要なその他の情報・課題等の共有・協議

まとめ

古くから「モノづくり」が盛んな日本において、産業機械製造業はいわば「縁の下の力持ち」といえる産業です。

少子化や高齢化の影響により、このまま人材不足が進めば日本のさまざまな産業は衰退し、国際的な競争力を失ってしまうかもしれません。日本の未来のためにも、産業機械製造業における外国人材の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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