自動車整備分野で特定技能外国人を採用する方法は?2号や試験の情報解説!

執筆者:

外国人採用サポネット編集部

2019年4月、日本政府は人材不足に悩む14の業種において、外国人材を対象に新たな在留資格である「特定技能」を設けました。
少子高齢化により深刻化する労働力不足を解消するため、一定の技能と専門性を持った外国人材を即戦力として雇用する制度です。

今回は、特定技能「自動車整備」分野について、特定技能外国人を採用する方法や要件などを解説します。

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監修:行政書士/近藤 環(サポート行政書士法人)

在留資格に関するコンサルティング業務を担当。2019年に新設された「特定技能」も多数手がけ、申請取次実績は年間800件以上。 行政書士(東京都行政書士会所属 /第19082232号)

特定技能「自動車整備」とは?

特定技能「自動車整備」は、自動車整備産業における人手不足を解消するために創設された特定技能の分野の一つです。

特定技能には1号と2号があります。2号は2023年6月9日の閣議決定により追加されました。

自動車整備分野に特定技能ができた背景

現在、自動車整備分野における人材不足は、年々、深刻化しています。厚生労働省が発表した「職業安定業務統計」によれば、2021年における全職種の有効求人倍率が1.05倍だった一方で、自動車整備の有効求人倍率は4.55倍にも達しています。

自動車整備要員の有効求人倍率のグラフ

また、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会が編集した「平成31年度版自動車整備白書」によれば、整備工場の半数以上が「人材が不足している」または「やや不足している」と回答しています。

自動車整備士の過不足の状況のグラフ

国土交通省の取りまとめによると、電動車や衝突被害軽減ブレーキ等の先進安全技術が普及しており、自動車の整備に求められる技術も高度化している一方で、自動車整備士になる若者が減少し、自動車整備業の有効求人倍率は4.55となるなど、自動車整備士の人材不足は深刻な課題となっているとされています。

自動車整備学校入学者数と自動車整備要員の平均年齢のグラフ

このように、自動車整備の業界で人材不足が加速する要因として

  1. 少子化
  2. 若者のクルマ離れの進展
  3. 職業選択の多様化

などが挙げられます。

国土交通省はこうした事態に対処するため、自動車整備業の仕事についての啓発活動やイメージ向上をめざして、さまざまなPR活動を行ってきました。また、自動車整備業の働き方改革や労働環境の改善なども積極的に進めてきました。しかし、人材不足がますます深刻化している状況を鑑み、日本政府は特定技能「自動車整備」を創設しました。

特定技能「自動車整備」で可能な業務

現在、特定技能「自動車整備」で、外国人材が従事できる業務は、以下の3つです。

  • 自動車の日常点検整備
  • 自動車の定期点検整備
  • 自動車の分解整備

また、これらの業務に付随すると考えられる関連業務(例えば、「整備内容の説明及び関連部品の販売」「自動車板金塗装や下廻り塗装作業」「洗車作業」「車内清掃作業」など)も担当することができます。

さらに、自動車整備工場に限らず、こうした業務を行っている事業所(例えば、カーグッズショップや、整備ピットのあるガソリンスタンドなど)も、外国人材を採用することが可能です。

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特定技能1号「自動車整備」を取得するには?

「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の、2種類の資格があります。
「特定技能1号」は、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」、「特定技能2号」とは、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」と定義されています。つまり、特定技能2号のほうが、より高度な技術を持った人材に適用される在留資格ということです。

特定技能「自動車整備」1号の資格を取得するためには、「特定技能評価試験と日本語試験に合格する」、または、「自動車整備分野の2号技能実習を修了する」の、いずれかを満たす必要があります。

特定技能1号の「自動車整備分野特定技能評価試験」に合格する

外国人材が特定技能「自動車整備」1号を取得するための一つの方法が、「特定技能評価試験と日本語試験に合格すること」です。
本来、「特定技能」は、即戦力となる人材を確保するための在留資格です。そのため、資格の取得を希望する外国人は、一定程度の専門技能を持っていることを証明しなければなりません。

そこで用いられるのが、特定技能のために作られた技能試験「自動車整備分野特定技能評価試験」です。試験の詳細は以下「自動車整備」分野特定技能1号評価試験とは?」で解説します。

自動車整備士技能検定試験3級に合格する

自動車整備分野特定技能評価試験のほかに、国土交通省が行う「自動車整備士技能検定試験」の3級に合格することでも、特定技能の在留資格を取得することができます。両者の難易度はほぼ同レベルであり、「エンジンオイルやギアオイルの交換、タイヤ交換、点検整備など、各装置の基本的な整備を一人で行うことができるレベル」です。

「自動車整備」分野の技能実習2号からの移行

外国人材が特定技能1号「自動車整備」を取得するもう一つの方法は、「自動車整備分野の技能実習2号から移行する」というものです。

「技能実習2号」とは、1993年に導入された「技能実習」ならびに「研修」制度のことです。自動車整備士技能検定試験3級に合格していない人は、自動車整備の技能実習2号を修了して技能水準を満たしていると判断された場合に、無試験で「特定技能」へ移行することができます。

日本語試験に合格する

外国人材が日本での就業や生活が可能な日本語能力を持っているか、日本語の試験によって確認します。外国人材が、特定技能「自動車整備」を取得するには、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。

その他、日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められる試験に合格することで証明することも可能です。

「日本語能力試験」

日本語能力試験のレベルは5段階で、基礎のN5から幅広い場面で使われる日本語のN1までがあります。

要件であるN4は、「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる」「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」というレベルです。

試験は通常、年2回開催されます。

「国際交流基金日本語基礎テスト」

日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定するテストです。

試験は複数回開催されています。

1号の特定技能評価試験とは?

自動車整備分野特定技能評価試験とは、一般社団法人日本自動車整備復興会連合会が行う技能試験です。外国人材が一定の技能や知識を持ち、即戦力となりうるかを確認するために行われます。2019年12月3日からフィリピン共和国において自動車整備分野特定技能評価試験が開始され、国内においても令和2年9月から実施されました。さらに、2024年5月24日からベトナムにおいて試験が開催されました。

ここでは「自動車整備」分野の特定技能評価試験について解説します。特定技能試験の制度や受験資格等については以下の記事をご覧ください。

試験の範囲

試験の範囲は、自動車のシャシ、エンジンに関し、次に掲げる範囲とする。

①学科試験の科目

  1. 構造、機能及び取扱法に関する初等知識
  2. 点検、修理及び調整に関する初等知識
  3. 整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
  4. 材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識

②実技試験の科目

  1. 簡単な基本工作
  2. 分解、組立て、簡単な点検及び調整
  3. 簡単な修理
  4. 簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い

特定技能評価試験の形式、問題数及び試験時間

試験の形式はCBT方式で問題数及び試験時間は、次のとおりです。

①学科試験の形式、問題数及び試験時間

  1. 出題形式は、真偽法(○×式)
  2. 問題数は30問、試験時間は60分

②実技試験の形式、問題数及び試験時間

  1. 出題形式は、いくつかの課題について作業試験または図やイラスト等を用いた状況設定において正しい判別、判断を行わせる判断等試験により行います。
  2. 問題数は3課題で、複数の設問を設け、試験時間は20分

合否の基準

学科試験は正解数が出題数の65%以上、実技試験は得点合計が60%以上

参考:自動車整備分野特定技能評価試験

日程

現在、日本国内以外ではフィリピンとベトナム現地で受験をすることが可能です。2024年6月時点では、毎月開催されています。自動車整備分野特定技能評価試験試験日程の詳細は下記の試験公式サイトから確認できます。

過去の合格者人数や開催日程は以下の記事にまとめていますので、参考にご覧ください。

試験問題サンプル

試験としては下記のような問題が出題されています。

※試験は、CBT方式(コンピュータ・ベースド・テスティング)で 行われ、コンピュータを使用して出題、解答(○×式)するもので、受験者は、コンピュータの画面に表示される問題に画面上で解答します。

●特定技能評価試験(学科試験)の例

【問題】
1.ガソリン・エンジン(gasoline engine)では、運転中(うんてんちゅう)にカリカリ(かりかり)という異音(いおん)が発生(はっせい)することがあり、これをノッキング(knocking)という。

≪解答≫…○

【問題】
2.ジーゼル・エンジン(diesel engine)の排気ガス(exhaustgas)には、PM(Particulate Matter)が含(ふく)まれる。

≪解答≫…

参考:特定技能評価試験(学科試験)の例

●特定技能評価試験(実技試験)の例

【問題1-1 】
シリンダ・ヘッド(cylinder head)の取(と)り外(はず)し、取(と)り付(つ)け作業(さぎょう)について、答(こた)えなさい。
シリンダ・ヘッド(cylinder head)の取(と)り外(はず)しについて、注意(ちゅうい)することは、どれか。

1. シリンダ・ヘッド・ガスケット(cylinder head gasket)は、交換(こうかん)しないので取(と)り外(はず)しに注意(ちゅうい)する。
2. シリンダ・ヘッド・ボルト(cylinder head bolt)は、長(なが)さや太(ふと)さが違(ちが)うものがあるので、組(く)み立(た)て時(じ)に分(わ)かるように注意(ちゅうい)する。

解答≫…2

【問題1-2】
シリンダ・ヘッド(cylinder head)の取(と)り外(はず)し、取(と)り付(つ)け作業(さぎょう)について、答(こた)えなさい。
シリンダ・ヘッド(cylinder head)の取(と)り付(つ)けについて、注意(ちゅうい)することは、どれか。

1. シリンダ・ヘッド・ボルト(cylinder head bolt)のねじ部(ぶ)に薄(うす)くオイル(oil)を塗(ぬ)る。
2. シリンダ・ブロック(cylinder block)のボルト(bolt)穴(あな)にたまった冷却水(れいきゃくすい)やオイル(oil)などは、こぼさないように注意(ちゅうい)する。

≪解答≫…1

参考:特定技能評価試験(実技試験)の例

特定技能2号を取得するには?

特定技能2号は2023年に対象分野を拡大、介護以外の全11分野となりました。試験情報は実施機関である一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会や国土交通省のHPに掲載されます。

2号の申請要件は以下の2つを満たす必要があります。

【2号申請要件】

  1. 「自動車整備分野特定技能2号評価試験」又は「自動車整備士技能検定試験2級」に合格
  2. 地方運輸局長の認証を受けた自動車整備工場で3年以上の実務経験

「2」の証明にあたっては、日整連が定める実務経験証明書を併せて提出する必要があります。

※様式は日整連のホームページからダウンロード可能です。

自動車整備分野特定技能2号評価試験とは?

自動車整備分野特定技能2号評価試験は2024年7月16日から開始しました。

特定技能2号評価試験の範囲は、自動車のシャシ、エンジンに関し、次に掲げる範囲としています。

①学科試験の科目

  • 構造、機能及び取扱法に関する一般知識
  • 点検、修理、調整及び完成検査の方法
  • 整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する一般知識
  • 材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する一般知識
  • 保安基準その他の自動車の整備に関する法規

②実技試験の科目

  • 基本工作
  • 点検、分解、組立て、調整及び完成検査
  • 一般的な修理
  • 整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い

試験と技能のレベルは、「自動車整備士技能検定試験2級」と同等レベルです。試験は基本的に日本語、漢字にはルビが付きます。専門用語等については注釈とし英語や試験実施国の現地語などの他の言語が記載される場合もあります。

  • 開催機関:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
  • 開催場所:日本国内、フィリピン、ベトナム
  • 開催日程:最新日程はTest Dates Prometricのホームページでご確認ください。※毎日実施予定

なお、受験にあたっては、道路運送車両法第78条に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場における3年以上の実務経験が必要となります。

特定技能「自動車整備」の外国人材を雇用するための条件

ここまでは、外国人に求められる要件について解説してきました。一方、自動車整備を行う企業が特定技能外国人を採用するには、どうしたら良いのでしょうか。

特定技能外国人を雇用する企業のことを、「特定技能所属機関(受入機関)」と呼びます。建設業で特定技能外国人を受け入れる特定技能所属機関(受入機関)は、次の条件を満たす必要があります。

地方運輸局長の認証を受けている

外国人を受け入れる事業所は、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条第1項に基づき地方運輸局長から認証を受けた事業場を有していなければなりません。

支援体制の義務を果たす

特定技能所属機関(受入機関)は特定技能外国人に対し、以下のような支援を行うことが義務付けられています。

<受入機関に課せられる、特定技能外国人に対する義務の一例>

事前ガイダンス
出入国の際の送迎
住居確保
生活オリエンテーション
公的手続き
日本語学習の機会の提供
相談・苦情への対応
日本人との交流促進
定期的な面談と行政機関への通報 など

ただし、受入機関はこの支援業務を「登録支援機関に委託する」ことができ、また、委託しなければならない場合もあります。自社企業がどのパターンに当てはまるのかについては、下記の記事で解説しているので併せてご覧ください。

特定技能協議会への加入と同協議会に対し必要な協力を行う

特定技能所属機関(受入れ機関)は、自動車整備分野特定技能協議会へ加入が必須です。自動車整備分野特定技能協議会は、特定技能「自動車整備」制度の適正かつ円滑な運用を可能にするために設立された組織であり、受入れ機関や登録支援機関、有識者、自動車整備事業者団体、関係省庁などで構成されています。

受入れ機関は、受け入れ予定の特定技能外国人の在留諸申請前に協議会に加入し、加入後は必要な協力を行う必要があります。

まとめ

自動車整備の様子

今後、人材不足と高齢化が進む自動車整備の分野では、特定技能の外国人材に課される期待がますます高くなると予想されます。特定技能外国人を採用するには、法令に定められた要件を満たすとともに、外国人材への支援などを適正に実施しなければなりません。外部のサービスを上手に活用しながら、特定技能外国人の採用を考えてはいかがでしょうか。