特定技能「飲食料品製造業」を徹底解説!なぜ需要拡大している?

飲食料品製造業記事のメイン画像

国内で進む労働力不足の解消のため、2019年4月に整備された新たな在留資格である「特定技能」。
14業種に及ぶ対象の特定産業分野のうち、今回はとくに需要が高まっている「飲食料品製造業」にクローズアップし、その現状や特定技能1号取得のための具体的な条件、そして外国人材を雇用するために必要な準備やサポート体制などについて詳しく解説します。

監修:近藤 環(サポート行政書士法人)

在留資格に関するコンサルティング業務を担当。2019年に新設された「特定技能」も多数手がけ、申請取次実績は年間800件以上。 行政書士(東京都行政書士会所属 /第19082232号)

特定技能「飲食料品製造業」とは?

飲食料品製造業の様子

特定技能「飲食料品製造業」は、酒類を除く飲食料品の製造、加工、安全衛生など、飲食料品を製造する過程全般に従事する外国人材のための在留資格です。

現在、あらゆる産業分野で少子高齢化に伴う労働力不足が進行していますが、なかでも飲食料品製造業における影響は深刻で、厚生労働省の「雇用動向調査」では、2017年度における同業界の欠員率(充足できていない人員の割合)が3.2%にも達するというデータも示されています。

この問題を解消するひとつの方法として注目が集まっているのが、特定技能「飲食料品製造業」による外国人材の採用です。

▶出典:農林水産省|飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について:PDF

▶関連記事:新在留資格「特定技能」についてわかりやすく解説。最新動向もチェック! 

高まる特定技能「飲食料品製造業」の需要

まずは特定技能「飲食料品製造業」を取得して日本国内で働きたいと考える外国人材、そして、彼らを雇用したい企業がともに多い理由から考察してみましょう。

新型コロナウイルスの影響で、技能実習からの移行が増加している

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2021年8月も海外からの日本への入国、そして日本から海外への出国は、ともに大きく制限されています。そのため、技能実習で来日していた外国人材が、実習期間が終了したのちも母国に帰ることができないという事態が生じました。こうした元技能実習生のなかには、在留資格を特定技能に切り替え、日本で働き続けることを希望する方が多数含まれています。

また、技能実習生を受け入れていた企業側にも、入国制限のため新たな技能実習生を迎え入れるのが難しくなっていることから、今現在、研修中の技能実習生の在留資格を特定技能に切り替え、そのまま働いてもらいたいという需要があります。

そのような背景からコロナ禍以前から特定技能で就業していた外国人材に、技能実習からの移行組が加わり、飲食料品の製造に従事する、あるいは従事することを希望する外国人が急増しています。

一方、企業側でこうした人材の採用が活発化している理由としては、技能実習からの移行の場合、3年の技能実習を経てすでに日本語や日本での生活様式に対応できている人材も多いことから、教育などに関する初期投資を抑えつつ質の高い外国人材を雇用しやすい状況が生まれていることなどが考えられます。

また、特定技能では、技能実習では認められない転職が可能であることも、この分野における人材の動きを活発にしている要因といえるでしょう。

6次産業化によって、農業事業者としての採用も進んでいる

6次産業の説明

農林漁業の1次産業、工業の2次産業、そして商業の3次産業を融合し、生産者が加工や流通まで行うことができるようにする「6次産業化」。これにより農産物の生産のみを行っていた農業事業者が、加工品の製造や販売まで行うケースが増加しています。

農業事業者の所得の向上、さらには地域活性などさまざまなメリットをもたらす6次産業化ですが、一方で加工などが加わることによる業務の多角化で、一人ひとりが担う業務の幅も広がったことで、これまで以上にマルチに活躍できる人材の需要が高まっています。そんな背景から、農業事業者の間で海外の人材採用に活路を見出す動きが広がっていることも、特定技能「飲食料品製造業」に注目が集まっている理由のひとつと考えられます。

また、農業分野ではこれまでも技能実習制度を用いた外国人材の受け入れが活発に行われてきましたが、技能実習生が担当できる作業は細分化されているため、包括的な業務を任せることはできませんでした。一方、さまざまな農産物の加工を行う場合、季節によって人手を割きたい作業の内容なども大きく変わることもあります。こうした事情からも、1年間を通じてひとつの作業しか任せることができない技能実習制度よりも、より多様な業務を任せることができる特定技能「飲食料品製造業」を選択する動きが広がっています。

特定技能「飲食料品製造業」で外国人材を雇用できる業務は?

特定技能「飲食料品製造業」の対象となるのは、以下の7業務です。

1.      食料品製造業
2.      清涼飲料製造業
3.      茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
4.      製氷業
5.      菓子小売業(製造小売)
6.      パン小売業(製造小売)
7.      豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

また、食品製造業の内訳は以下の通りです。

1.      畜産食料品製造業
2.      水産食料品製造業
3.      野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
4.      調味料製造業
5.      糖類製造業
6.      精穀・製粉業
7.      パン・菓子製造業
8.      動植物油脂製造業
9.      その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)

▶参考:農林水産省|飲食料品製造業分野 技能測定試験について:PDF

なお、スーパーなどの場合は注意が必要です。お惣菜の調理や加工を行うバックヤードも「小売業」の1機能と見なされるため、特定技能「飲食料品製造業」の対象には含まれません。しかし、スーパーとは経営主体が異なるそれぞれの店舗が調理や加工を行うような場合や、スーパーの売り上げの過半数以上をバックヤードで製造・加工された飲食料品の売り上げが占めるようなケースは特定技能の対象となります。

▶参考:特定技能・飲食料品製造業分野に関するQ&Aについて:PDF

特定技能外国人を採用するために必要なこととは?

次に特定技能「飲食料品製造業」により、外国人材を雇用したい企業側がクリアすべき条件や準備すべきことについて見てみましょう。

農林水産省の示す「受け入れ要件」を満たす

特定技能「飲食料品製造業」で海外から人材を迎えるには、農林水産省が示す以下のa~cの3条件もしくはdの条件を満たす必要があります。

「食品産業特定技能協議会の構成員になること」

海外の外国人材を受け入れた企業や団体は、最初の人材の受け入れから4ヶ月以内に、特定技能「飲食料品製造業」の適切な運用を図るための組織である「食品産業特定技能協議会」に加盟する必要があります。

▶参考:農林水産省|食品産業特定技能協議会 加入申請フォーム(特定技能所属機関)

「食品産業特定技能協議会に対し、必要な協力を行うこと」

食品産業特定技能協議会に加盟後は、制度に関する情報の発信や、法的に守るべきことの啓発、さらには地域ごとの人出不足の状況調査などを行う同協会の活動に協力する義務が生じます。

「農林水産省が主導する調査に必要な協力を行うこと」

食品産業特定技能協議会だけではなく、農林水産省が主体となって実施される調査などに関しても、適宜協力が求められることがあります。

「支援を外部委託する場合には、上記のa~cを満たしている登録支援機関に委託すること」

海外の外国人材の在留期間における支援計画の作成や実施に関し、外部に委託する場合は、上記のa~cの3条件を満たした「登録支援機関」を選ぶ必要があります。

支援体制を整える

特定技能外国人を受け入れる企業や団体には、事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、日本語学習、相談苦情対応といったさまざまな支援の義務が生じます。こうした支援を自ら行うことができるのは、過去2年間において外国人材の受け入れ実績がある組織のみと定められています。それ以外の場合、または、独自に支援体制を構築するのが難しい場合には、外部の登録支援機関に委託する必要があります。

特定技能に関する具体的な支援の内容や登録支援機関については、下記の外国人採用サポネットの記事からもご確認できます。

▶関連記事:登録支援機関の委託は必須か?役割・選び方・特定技能外国人の支援内容を解説 

特定技能「飲食料品製造」1号を取得するには?

食品を工場で詰める様子

実際に日本で働くために必要な特定技能「飲食料品製造業」1号を取得する方法はいくつか存在しますので、ここではその方法をお伝えしていきます。

なお1号とは取得条件が異なる2号が存在するのは、現在までのところ「建設業」と「造船・船用工業」の2業種のみですが、今後は「飲食料品製造業」を含むほかの業種にも拡張される可能性があります。

試験に合格する

日本で就業したい外国人が特定技能「飲食料品製造業」1号を取得するためには、以下の試験に合格する必要があります。

「飲食料品製造業 特定技能1号技能測定試験」

日本の飲食料品製造業で働くために必要な「技能水準」に達しているかを測るための試験です。衛生管理や労働安全衛生の知識などを問う学科試験のほか、図やイラストを用いた「判断試験」と計算式に基づいて作業計画を立てる「計画立案」からなる実技試験を受け、満点の65%以上を獲得すれば合格となります。

▶参考:OTAFF特定技能1号技能測定試験 飲食料品製造業国内試験

「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」

日本での就業や生活が可能な日本語能力を測るための「国際交流基金日本語基礎テスト」(年6回実施)のA2レベル以上を取得するか、N4レベル以上の「日本語能力試験」(年2回実施)に合格する必要があります。

2号(または3号)技能実習を良好に修了する

2号、または3号技能実習を良好に修了し、かつ、修了した技能実習において習得した技能が、これから従事する予定の業務と関連性があると認められる場合は特定技能1号に移行することができます。この条件に該当する場合、上記で説明した技能試験や日本語の試験は免除されます。

▶参考:外国人技能実習機構|移行対象職種情報

2021年6月に施行されたHACCAP(ハサップ)を含む衛生管理の知識

2021年6月1日から、飲食業や飲食料品製造業の事業者は原則として「HACCP」に沿った衛生管理に取り組むことが義務付けられることになりました。HACCAPとは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つからなる衛生管理の手法です。特定技能「飲食料品製造業」を取得して日本国内で活躍する外国人材は、上記した試験や技能実習をクリアすることのほか、このHACCAPに沿った衛生管理を実施できる知識や技能を有している必要があります。

HACCPに沿った衛生管理の知識・技能とは?

具体的には下記の3つの知識・技能を指します。

  • 主な食中毒菌や異物混入に関する基本的な知識・技能
  • 食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識・技能
  • 施設設備の整備と衛生管理に関する基本的な知識・技能

▶参考:厚生労働省HACCP(ハサップ)

まとめ

お弁当の工場で働く様子

今回は特定技能14業種のなかでも、とくに企業、外国人材の双方からの需要が高い「飲食料品製造業」についてご紹介しました。

コロナ禍や6次産業化などの新たな要因から、この分野では外国人採用の意識がかつてないほどの高まりを見せています。また、技能実習からの切り替えも進むことで、質の高い外国人材を確保しやすい状況も生まれつつあります。

一方、外国人材に対する需要拡大で、今後、企業間での人材獲得競争が激化するという予想もあります。質の高い外国人材を確保するためには、支援の体制を含め、より良い条件で迎えることができる環境を整えることが重要になるでしょう。

 

その他の特定技能職種について知りたい方はこちらの記事も併せてご覧ください。