フィリピン人採用ルールMWO(旧POLO)・DMW(旧POEA)の基礎知識

POLO・POEA基礎知識
執筆者:

櫻井翔太

海外現地からフィリピン人を雇用する場合、日本国内でのビザ取得と併せて、フィリピンの「POLO」や「POEA」といった行政機関に対して所定の手続きを行う必要があります。
これはフィリピン独自のルールで、フィリピン人雇用を考える企業担当者は理解しておく必要があります。

今回は、これらの行政機関の役割やルール、手続きなどの基礎知識を解説していきましょう。

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監修:行政書士/近藤 環(サポート行政書士法人)

在留資格に関するコンサルティング業務を担当。2019年に新設された「特定技能」も多数手がけ、申請取次実績は年間800件以上。 行政書士(東京都行政書士会所属 /第19082232号)

MWO(旧POLO)申請に関係する重要機関について

フィリピンでは国民の約10%が海外で働いていることから、管理・監督が必要不可欠で、フィリピン独自の雇用ルールがつくられました。

まずはそれらの制度に関係する、3つの行政機関と役割について解説します。

DOLE

DOLEとは、フィリピン労働雇用省(Department of Labor and Employmentの略称)のことで、フィリピンにおける労働及び雇用に関する規制・監督を行う官庁です。雇用についての問題が発生した場合は、雇用者はDOLEに不服の申し立てを行います。

DOLEは労働者の保護が主な職務とされています。外国企業(実質的に外国人により経営されている企業を含む)に雇用されているフィリピン人労働者に関連して問題が発生した場合、労働者保護の観点から、企業に対して厳しい判断をすることが多いようです。

DMW(旧POEA)

DMW(旧POEA)とは、移民労働者省のこと。送り出し政策の中心機関であり、海外で働くフィリピン人の権利を守ることを目的に活動しています。

DMW(旧POEA)はフィリピン現地にあり、人材を海外へ送り出す前に就職先の審査を行っています。日本の企業がフィリピン現地から人材を直接雇用する場合、必ずこのPOEAの審査を受ける必要があります。

また、DMW(旧POEA)の認定を受けた現地の送り出し機関だけが、海外に人材を送り出すことができます。

MWO(旧POLO)

MWO(旧POLO)とは、フィリピン共和国大使館移住労働者事務所のことで、DMW(旧POEA)やDOLEの出先機関です。

DMW(旧POEA)は海外各国に拠点があり、日本では駐日フィリピン大使館と在大阪総領事館の中に拠点を持っています。雇用先の企業がDMW(旧POEA)からの審査を受ける際は、DMW(旧POEA)に出向く必要があります。

▶参考:フィリピン共和国大使館|Philippine Overseas Labor Office

ちなみに、日本で働くフィリピン人は約18万人です。なぜ多くのフィリピン人が日本で働いているのかについては、下記の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

▶参考:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和2年10月末現在)

フィリピンではエージェントを介さない直接雇用は原則禁止

海外現地の人材を採用する場合、日本の採用担当者が現地に赴いて直接スカウトする、または現地のエージェントを介する方法が一般的には考えられます。

しかし、フィリピンでは2017年8月から、DMW(旧POEA)認定の現地エージェントを介さない雇用ができなくなりました。つまり、直接採用をすることは原則できないということです。

DMW(旧POEA)認定エージェントを通じてフィリピン人雇用を行う手続き

では、では、海外在住のフィリピン人を採用する場合、どのように手続きを行えばよいのでしょうか。

海外在住者の採用の場合における、DMW(旧POEA)認定エージェントとの契約~就労者来日までのフローを見てみましょう。

フィリピン在住のフィリピン人を雇用したい場合


1. DMW(旧POEA)公認のフィリピン人材会社を選定し、契約を結ぶ

2. 必要書類を準備し、フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO)または 在大阪フィリピン総領事館労働部門に必要書類を提出(オンラインキューイングシステムで予約、または郵送で提出)

3. 審査:約2週間

4. 書類審査を通過した場合、面接日の連絡が届く

5. POEAの担当官による面接が英語で行われる
 ※雇用の目的や事業などについて質問される。通訳を用意することも可能

6. 承認の場合、許可書類
が届く。フィリピン人材会社に書類を送付

7. フィリピン人材会社がDMW(旧POEA)に書類を提出。DMW(旧POEA)からの認可を受ける

8. 人材の募集を開始・面接を行い、採用人材を決める

9. 出入国在留管理局へ在留資格認定証明書交付申請をして、認定証明書
(COE)の交付を受ける

10. 労働者が在フィリピン日本国大使館で査証申請をして、査証発給を受ける

11. フィリピン人材会社がDMW(旧POEA)へOEC
(Overseas Employment Certificate)を申請する

12. OEC(
Overseas Employment Certificate)海外就労認定証発行

13. 日本への入国が可能になる(フィリピンを出国時にOECを提示)

以上のようなステップを踏み、初めて現地のフィリピン人を雇用することができます。

出入国在留管理局から交付される認定証明書(COE)には有効期限があるため、認定証明書交付申請を行う前に、フィリピン側の手続を済ませておきましょう。

日本在住のフィリピン人を雇用したい場合

日本在住者を雇用する場合も、身分系(永住者、定住者、日本人の配偶者等など)の在留資格以外の場合はMWO(旧POLO)の審査があります。日本在住フィリピン人であっても、一度フィリピンにあるPOEA公認の人材紹介会社を経由した上で審査・受入れを行わなければなりません

この場合、日本の人材派遣会社などはMWO(旧POLO)などと直接やりとりができませんので、受入れ企業自身で対応を行う必要があります。

これらの手続きを踏まなかった場合、就業者が不利益を被ってしまう可能性があります。在留資格を取得できたとしても一時帰国などでフィリピンに戻った際、フィリピン出国時にOECの提示を求められるため、日本に戻れなくなってしまうことも考えられます。

日本国内で在留資格を変更した場合でも、OECを取得するためには海外在住者採用の場合と同様にMWO(旧POLO)への申請手続等が必要となります。MWO(旧POLO)申請はフィリピンの法律・制度なので、現地において厳しく確認される可能性が高いです。また、企業のコンプライアンスの面からも、正しい手順で申請を行い、雇用をしましょう。

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直接雇用禁止の免除申請ができる場合

前述のとおり、フィリピン人を雇用する場合には、原則としてエージェントを介さない直接雇用は禁止されています。

とはいえ、免除の申請が可能な業種もあります。直接雇用禁止免除の条件には以下のようなものがありますが、該当するかどうかについては、適宜判断されるため、都度、DMW(旧POEA)に確認することが必要です。

●高度技術・専門職(管理職、エンジニア、教授など)や、国際機関、国家元首及び政府高官などの業種・職種

●報酬や福利厚生は、PDMW(旧POEA)が要求する最低限度以上である

●雇用される者は大卒以上で、業務に関連する十分な専門知識や実務経験を持っている など

直接雇用禁止免除申請の流れ

直接雇用禁止免除申請の流れは以下のようになります。


1. 指定された書類を用意してMWO(旧POLO)に提出
(オンラインキューイングシステムで予約、または郵送で提出)

2. 審査期間:5~10営業日

3. 審査に合格の場合は面接日決定。不合格の場合は通常のエージェント経由へ

4. POEAの担当官による面接が行われる

5. 在留資格認定証明書交付申請をして、認定証明書(COE)の交付を受ける

6. MWO(旧POLO)にCOEを提出し、認証を受ける

7. 労働者が在フィリピン日本国大使館で査証申請をして、査証発給を受ける

8. 労働者がPOEAへOEC(Overseas Employment Certificate)を申請する

9. OEC(Overseas Employment Certificate)海外就労認定証発行

10. 日本への入国が可能になる
(フィリピンを出国時にOECを提示)

このような条件とフローにより、直接雇用禁止免除の申請が行われますが、承認をもらうことは非常に難しいと言われています。また業種・職種についても該当するかどうかは、都度確認を行う必要があるでしょう。

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まとめ

このように、海外現地フィリピン人雇用を行う際には、独自ルールとプロセスの理解が必要です。やや複雑になりますが、国の管理がしっかりしている分、雇用後のトラブルなどが起きにくいと言われています。

また、違法なブローカーなども、これらの制度があるおかげで、基本的には排除されています。しかし、受け入れる日本企業側の手続きなども煩雑になるため、フィリピン人雇用の際には十分に注意をしましょう。

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▶参考:出入国在留管理庁|フィリピンに関する情報