今も変わらぬフィリピンのLOVE JAPAN。でも愛だけで仕事は選べない!?

執筆者:

櫻井翔太

こんにちは。マニラ駐在員の櫻井です。日本人が思っている以上にフィリピンでは日本の人気が高く、日本で働きたいと思っているフィリピン人も大勢います。しかし、日本に出稼ぎいくフィリピン人は割合でいうとそこまで高くなく、フィリピン人の出稼ぎ先として一番人気なのは中東です。今回は、フィリピン人の働く先として日本より中東が選ばれている理由、フィリピン人が日本で働きたい理由、そしてフィリピン人の仕事選びの条件について紐解いていきたいと思います。

出稼ぎ大国のフィリピン。約18万人ものフィリピン人が日本で働いている

フィリピン人では10人に1人が海外に居住し、フィリピンのGDP約10%が海外からフィリピンへの送金です。日本で働くフィリピン人も数多く存在し、厚生労働省が発表した「『外国人雇用状況』の届出状況」によると、日本で働いているフィリピン人は約18万人、国籍別ランキングだと中国、ベトナムに次いで3番目に多いです。街中でフィリピン人を見かけることも多いのではないでしょうか。フィリピン人の海外就労先は日本がもっとも多いと思っている人が多いですが、実はそうではありません。以前は日本で仕事を探すフィリピン人が多数でしたが、今はフィリピン人の出稼ぎ先でもっとも多いのは中東諸国です。

実はフィリピン人が出稼ぎに行くエリアNo.1は中東

フィリピン人の働き口が中東諸国に集中する理由は、第一に就労ビザの取得難易度が日本に比べると圧倒的に簡単だからです。加えて、中東諸国はメイドや建設作業員などのブルーカラー分野、つまり単純労働の職種も積極的に受け入れていることも理由にあげられます。一方、日本は2019年の改正入管法によって特定技能が創設され、ようやくブルーカラー労働者の受け入れを開始しました。日本では外国人がブルーカラー分野で就労ビザを取得して働くこと自体がこれまで困難でしたが、特定技能という新しい在留資格が新設されたことでブルーカラー労働者も日本で働きやすくなりました。しかし、特定技能の取得、それ以外の在留資格の取得にも一定以上の日本語レベルが必要になります。

中東諸国は英語ができれば働けるため、英語が公用語であるフィリピン人にとって働く障壁が少ないといえます。かつ、日本ではこれらブルーカラー労働者の給与が中東諸国と比べると安く、総じて中東よりも日本で働くメリットが少なくなっていることも、日本より中東諸国が働き口として選択されている背景にあります。

フィリピン人が就労先に日本を選ぶ理由とは?

日本ではなく中東諸国で働くフィリピン人が多いです。しかしながら、日本で働きたいと思っているフィリピン人は大勢います。その理由について説明します。

フィリピン人は日本文化LOVE!

個人的な見解ですが、フィリピン人が日本で働きたいと思う最たる理由は、やはり日本の文化が好きという意見が大多数です。日本の清潔な街並みへの憧れや、アニメ、日本食などフィリピンでも身近な日本文化に実際に触れてみたいと思う人々が多いようです。特に日本の食べ物がおいしいとフィリピンでは評判で、豚骨ラーメンや焼き肉、お好み焼き、寿司などはフィリピンで人気の日本食ですが、フィリピンで食べようとすると価格が高く、頻繁には食べられません。日本に住めばいつでも日本食が食べられることは魅力のようです。また、日本はアジアで最初に先進国になったという経緯から、日本へ純粋な憧れを抱く人もまだまだ存在しています。

日本での滞在経験から「日本人」が大好きな人が大勢いる

大前提として日本人が好きという理由が大きいです。私はフィリピンに渡ってから、日本人を嫌いなフィリピン人に一人も会ったことがありません。日本で働いた経験のあるフィリピン人から「日本人はとても親切だった」という声をよく聞きます。ビザの問題でフィリピンに帰国したが、また日本で働きたいと思っている人が多いです。その評判が人から人へ電波していくのでしょう。日本人の礼儀正しさ、清潔さ、思いやりの精神がフィリピン人を惹きつけているのではないかと感じています。

日本の治安の良さ

中東諸国ではフィリピン人労働者への扱いがひどく、人種差別や虐待、雇用主によるフィリピン人殺人事件が発生するなど劣悪な労働環境が問題になっています。その背景もあり、日本より中東の方が賃金は高かったとしても、安全性を考慮して日本を選ぶ人もいるようです。また、中東で働くより日本で働く方が家族が安心するというのも理由にあげられます。

賃金の高さ

やはりフィリピンよりも高い賃金を獲得できることも日本の魅力です。職種にもよりますが、フィリピンでは4年制大学を卒業したホワイトカラー職種の初任給は2~3万円です。一方、日本で就労ビザを取得して働けば日本の新卒と同じ金額の給料がもらえます。技能実習でもフィリピンで労働するのと比べると10倍近く賃金が高くなります。フィリピンで働くよりも日本で働いた方が圧倒的に稼げるので日本に来たいと思う人は多いようです。

飛行機で片道4時間・時差1時間の距離の近さ

フィリピンと日本の物理的な距離の近さが働き口の選択に大きな影響を与えています。前提として、フィリピン人は家族をものすごく大切にする国民です。中東だと飛行機で片道10時間以上かかってしまい、渡航費も高いので、家族に会うために帰国したくても簡単には帰国できません。一方、フィリピンと日本は飛行機で片道4時間ほどの距離です。日本であれば中東諸国などよりは比較的早く・安く帰国できるので、経済的にも心理的にも出稼ぎのハードルが下がります。加えて日本とフィリピンの時差は1時間しかないので、日本で働いてもフィリピンに残っている家族や恋人と連絡を取りやすいです。

愛だけで仕事は選べない……フィリピン人が働く時に重要視するポイント

フィリピン人は日本が大好きとはいえ、日本だから無条件にフィリピン人は働きに来てくれる、という時代は終わりました。彼らも生活がかかっているので日本が好きだからという理由だけで職場を選べません。

また、労働者を受け入れる側が選ぶ時代ではなく、選ばれる時代に世界は変わってきています。人手が足りないのは日本だけではありません。中東や韓国、ドイツなどは海外からの労働者に選ばれるための施策を国が主導して積極的に講じています。私たちは外国人就労者に対する意識変容を少しずつしていく必要があると思っています。フィリピン人の採用を考えている方はフィリピン人が働く時にどのような労働環境を求めるかは知っておくべきでしょう。

そこで今回は、フィリピン人が働く上で重要視するポイントについて説明します。

給料・待遇

彼らは生活のために国をまたぐので、給料・待遇面は何よりも大事です。

給料は1円でも高い仕事、可処分所得がフィリピンにいる時より高いかはシビアに考えています。とにかくたくさん働いてたくさん稼ぎたいと考える人が多いです。フィリピンは転職文化が浸透しているので、条件が少しでも良い仕事があれば転職してしまうことは念頭に入れておいたほうがいいかと思います。住居の提供はあれば喜ばれますが、そこまで重要度は高くないです。ただ、彼らは日本の生活を知らない状態で来日するので、生活や住居のサポートを用意した方が彼らのロイヤリティが高まると思います。

一社員として尊重されるか

給料を上げたりや待遇をよくするには限界がありますが、やはり大切なことは一人の社員として大切に扱ってあげることです。給料に対してはシビアですが、だからといって給料・待遇以外のソフト面をまったく気にしないというわけではありません。

あくまでブルーカラー労働者に限った話ですが、出稼ぎのために日本にくるフィリピンの人々は職種や働く場所に強いこだわりがあるわけではありません。だからこそ、より良い条件があれば簡単に職を移ります。フィリピンに限らず今の日本も同じ傾向になりつつありますが、良くも悪くも「石の上にも3年」という発想は持ち合わせていません。ただ、国は違えど同じ人間なので、雇用主側が相手を理解しようとする姿勢や育てようという姿勢で臨み続ければ、彼らのロイヤリティは上がります。

このような相手を一人の社員として尊重する姿勢は、給料や待遇以外でフィリピン人を会社に惹きつけるもっとも強い武器となるでしょう。

家族を大事にする価値観が守られるか

従業員の家族に対する気配りや配慮があるかはフィリピンの人々にとって大きなロイヤリティ要素です。

子供に熱が出たり家族に何かが起きたりした時に急に休めるか、家族を理由に休める職場環境はフィリピン人にとって大きな魅力となります。そのような環境が整っていればフィリピン人の働き口として選ばれる武器となるでしょう。

まとめ

何もしなくてもフィリピン人の働き口に日本を選んでもらえるという時代はひと昔前の話です。

私たち日本人も働き先として日本を選んでもらうための理解と努力が必要です。その意識変容が、今後の日本の雇用を結果として守っていけると思っています。給与面や制度面で欧米や中東に大きく負けてしまっている今、彼らの多くは日本が好きだから、という動機を核に給与等で劣る日本に必死で勉強して来日してくれています。給与や制度が劣っていても、彼らに引き続き振り向いてもらうことができるように、私たちも理解という名の努力を継続して行っていく必要があると思っています。

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