台湾人は転職が当たり前?台湾の就職事情を解説|日本で働く理由も
転職に対する考えは、海外と日本で大きく異なります。諸外国から見たら、日本が特殊と言っていいでしょう。同じアジアで、距離の近い台湾と日本も、転職事情がかなり異なります。今回は台湾人の転職事情について話をしていきたいと思います。
目次
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台湾新卒の就職活動
まず知って頂きたいのは、台湾の就活は日本と全く概念が違うということです。そもそも、台湾には新卒採用という概念がありません。新卒採用枠を設ける企業はほぼ皆無です。大学四年生になっても就活に焦ることはなく、卒業してからゆっくり就職先を探す人も多数います。新卒も経験者と同じ土俵で競争することになるので、経験のない新卒は圧倒的に不利です。そのため、初めはどこでもいいからとりあえず採用してくれるところに入るという傾向が強くあります。
つまり、転職前提で入社するというわけです。日本の入社一年目の離職率は11.9%なのに対して、台湾は40%強です。いかに新卒の離職率が高いかが分かります。
台湾における転職はポジティブ
諸外国と比べると、日本は転職回数が多いことに対してネガティブなイメージを抱きやすい傾向です。親日で文化も比較的日本に近いと言われている台湾ですが、この部分に関しては日本とまったく違います。転職をポジティブに考える人が多いのです。日本は生涯転職回数3~4回と言われているのに対して、台湾は7回以上と言われています。年齢を重ねると転職が難しくなるのは日本と同様で、20代~30代前半だと、2年ごとに仕事を変えるのがごく一般的です。2年未満の転職も珍しくありません。日本では考えにくいことです。
台湾人が転職する理由
では、なぜ台湾人は頻繁に転職するのでしょうか。台湾労働部の調査によると、大卒労働者の転職理由の上位は①待遇に不満②勤務地を変えたい③職場環境が良くない、でした。以下でそれぞれの理由を説明します。
出典:中華民國統計資訊網|行政院主計處108年人力運用調查報告
①待遇に不満…給与問題
台湾の大学新卒の初任給は平均3万元程度、日本円に換算すると約10万円です。台湾は近年物価の上昇率を考慮した「実質所得」で見ると、台湾の実質所得は2003年よりも低いということになります。また、台湾の最大手の求人・求職サイト「104人力銀行」の調査によると、2020年に昇給を実施する企業は38%です。日本の場合ほとんどの会社は定期昇給の制度がありますが、台湾は定期昇給のない会社も多く存在します。初任給が低く、長く勤めても給料が上がらないため、少しでも高い給料を出してくれる会社に転職したくなるわけです。
②勤務地を変えたい
台湾でよく言う冗談に、仕事の理想は「錢多事少離家近(チェンドゥオ・シーシャオ・リージャージン)」という言葉があります。給料が高く、業務量が少なく、家から近いという意味です。
日本のように通勤に1~2時間をかける人は少数です。台北市在住者の平均通勤時間は29分で、1時間以上の人は3.4%しかいません。台湾はプライベート重視、家族との時間を大切にする文化ですから、通勤に時間をかけたくないという考え方です。日本人の場合、通勤時間を短縮したいなら、まずは引越を考えますが、台湾人の場合は、引越よりも転職を考えます。
③職場環境が良くない
台湾人は職場の人間関係をとても重視します。同僚や上司との相性が良くないという理由で、会社を辞める人が非常に多いです。また、残業を嫌う傾向が強くあり、仕事探しの際に長時間労働、休日出勤をNG条件とする人が多数です。日本人の場合は、職場環境が悪くても仕事だから仕方がないと多少は我慢すると思いますが、台湾人は仕事よりもプライベート優先なので、多くの人が我慢せずに転職を選びます。
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台湾は転職しやすい環境
転職率が高いのは、求職者側だけの問題ではなく、台湾社会全体の環境にも原因があると言われています。
履歴書は1枚で良い
日本の場合、就職や転職前に応募したい企業を研究して、企業文化と求められる人材像に合わせて履歴書の職務経験、自己PR、志望動機を変えたりすることが普通です。しかし台湾ではそこまでする人はほぼ皆無です。同じ履歴書で何十社、何百社の企業に応募します。そもそも企業側も志望動機をそこまで気にしていません。主に学歴と職歴で即戦力かどうかを判断するからです。
採用面接は1回で済む
台湾の大手企業以外では、面接は概ね1回のみです。また、有給を取りやすい環境なので、面接のために会社を休むことで気が重くなることもあまりありません。就職活動が日本のような長期戦ではないため、在職中でも転職活動をしやすい状況です。
拠出型退職金制度
2007年より実施されている定年退職金制度では、雇用主は定年退職金として、毎月、従業員の月給6%以上を拠出し、労働者の定年退職金個人専用口座に積み立てることが義務付けられています。従業員は何度転職しても以前の積立分をそのまま引き継ぐことになるため、1社での勤続年数が短くても、退職金に影響はありません。
採用コストが安い
日本と比べると、台湾での人材採用コストは相当安くなります。大手求人サイトの掲載料金は年間10万円程度、しかも求人数無制限です。さらに、代替性の高い人材は安く採用できるため、企業も人材の流出を防ぐ努力をしなくなるのでしょう。どうせ辞めるし、また探せばいいと考える会社も多いのです。もちろん、優秀な人材は奪い合いになるため、高いコストをかけてでも採用したい、という企業もあります。
増加する海外転職
近年、台湾では海外転職を考える若者が増えています。台湾のビジネス誌が20~35歳を対象に行った調査によると、6割以上の人は海外で仕事したいと答えています。その中で、行きたい国の一位はダントツで日本です。グローバル人材に高い給料を払うというイメージのある欧米や中国よりも日本が人気なのはなぜでしょうか。
出典:商業周刊|圖輯》20~35歲年輕人海外工作意願大調查
台湾人に日本での就職が人気の理由
実際、日本で働く台湾人は年々増えています。主な理由として二つ挙げられます。1つ目の理由は、親日だからです。台湾人は非常に日本のことが好きで、多くの人が年に何回も日本旅行に行きます。旅行の延長で、日本で働きたい、日本に住んでみたいという人もいます。そして2つ目の理由は、地理的な距離が近いからです。飛行時間3時間以内で到着し、台湾からは一番行きやすい先進国です。
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まとめ
転職回数が多いことに対して、日本ではどうしてもネガティブなイメージがありますが、台湾ではむしろ多くの人がポジティブに考えます。これは台湾人の心理だけではなく、台湾社会全体の環境にも要因があり、日本とは全く異なります。そのため、彼らが日本で就職した場合は、簡単に転職しません。なぜなら、日本では台湾人が転職すること自体が難しいからです。台湾人を採用する際、転職回数や在籍期間に驚かれることがあると思いますが、このような背景があるということを念頭においておくと良いでしょう。この記事の内容がご参考になれば幸いです。
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