現地取材!インドネシアの特定技能「介護」の外国人はどんな人材? 

執筆者:

外国人採用サポネット編集部

ここ数年で日本での在留数を大幅に増やしている国は、インドネシアです。
マイナビグローバルでは介護分野で特に多くのインドネシア人材をご紹介していますが、非常に適性が高いというお声をいただきます。

マイナビグローバルが紹介するインドネシア人材がどんな人たちなのか、きちんと管理された送り出し機関を利用しているのか、
皆さんが気になる部分を外国人採用サポネット編集部がインドネシア現地で取材してきました。併せて、現地の様子や宗教事情などもご紹介します。

インドネシア人材の採用を検討している担当者必見です!

外国人採用で最低限押さえておきたい各国の特徴・状況まとめ

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日本での在留人数が多い国籍を中心に、外国人雇用で知っておくべき各国の特徴・状況を網羅!
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インドネシア人と介護職

日本で働くインドネシア国籍の方がここ数年で急激に増えていることは、先ほどお伝えした通りです。

どれくらい増えているかというと、2023年10月末時点の外国人労働者の国籍別の状況では、インドネシアは対前年増加率が最も大きい国であったことがわかります。

対前年増加率が大きい主な3か国

  1. インドネシア 121,507人 ( 前年比 56.0%増 ) 〔前年  77,889人
  2. ミャンマー 71,188人 ( 同   49.9%増 ) 〔 同   47,498人
  3. ネパール 145,587人 ( 同   23.2%増 ) 〔 同  118,196人

ベトナムや中国の在留者は未だに多いですが、新たに在留する人数が減少傾向であることはあまり知られていません。ミャンマーについては国内で紛争が続いているため未知数ですが、今後はインドネシアやネパールの外国人が増加していくでしょう。

ではインドネシア人はどんな産業で働いているのでしょうか。

外国人雇用状況の届出状況を見ると、インドネシア人労働者の方が働いている産業で最も多いのが製造業です。続いて建設業、3番目に医療、福祉となっています。次に、医療、福祉の産業の国別割合を見てみると、ベトナム、フィリピンに次いでインドネシアが3番目に多い割合であることがわかります。

▼最新の外国人労働者数についてはこちらの記事で解説!

もともとは技能実習が盛ん。しかし……

日本に住むインドネシア国籍の方の多くを占めているのは、技能実習生と留学生です。

インドネシア現地の送り出し機関は、技能実習生を送り出すためのカリキュラムで人材を教育しています。しかし最近では「技能実習制度が廃止になった」という情報が広がっており、特定技能の人材を送り出すことを検討し始めている送り出し機関も増えているそうです。

技能実習制度の代わりとなる「育成就労制度」がどういった制度になるのか、まだ具体的な情報が出ていない点でも不安に感じているようです。

とはいえ技能実習で在留するインドネシア人は未だに多く、在留外国人の数は引き続き技能実習生がけん引していくことと思いますが、今後は特定技能外国人の数も大きく増加するだろうと予想されます。

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インドネシア人と介護職は相性がいい

では、なぜインドネシア人は介護の分野と相性が良いと言われているのでしょうか。

インドネシア人は宗教の特性上、奉仕や相互扶助などの精神が根付いており、高齢者の介護に対してポジティブなイメージを持っています。

また、優しく温かい人柄でおしゃべりなどの他人とのコミュニケーションが得意な人が多い国民性です。実際にインドネシア人の方の採用面接を見ていても感じますが、「話をすることが好きで、高齢者の方と会話したりお世話したりしたい」という理由で介護職を希望する方が少なくありません。会話をすることが好きな方が多いので、単語がわからなくても何とか伝えようとする気持ちが大きく、日本語上達の速度も速いです。同僚や入居者とのコミュニケーションもすんなりとれることが多いようです。

さらに、技能実習の「介護」分野におけるインドネシアの在留者は非常に多いという下地もあります。日本で介護を学んだ技能実習生がインドネシアに戻り、送り出し機関で実習生に対して介護の講師をしていることも少なくありません。

このような条件から、インドネシア人は介護分野との相性が良いと言われ、また多くの人材が介護分野で働いています。

▼インドネシア人採用のおすすめ業界を、駐在員が解説!

海外から採用するメリットは?

特定技能などの就労ビザで働く外国人の採用方法は、大きく分けて2つあります。

すでに国内に在者を採用する場合と、海外現地在住者を採用する方法です。

日本国内にいる方は既に働いていたり、留学などの就労ビザ以外の在留資格を持っていたりします。海外在住者はこれから日本で働くことを希望している方で、在留資格の取得も就職先が決まってから行います。

海外在住の外国人の場合、技能実習生を思い浮かべて、入国まで時間がかかったり住居の手配があったりするのではと、敬遠している方もいるのではないでしょうか。日本に在留しているインドネシア人ではなく、現地に住むインドネシア人を採用するメリットはちゃんとあります。特に、地方の事業所や企業、中小企業にとって大きなメリットとなるのです。

以下、詳しく見ていきます。

人材の母数が圧倒的に多い

日本国内から採用する場合、在留中のインドネシア人なら誰でも採用していいというわけではありません。就労できない在留資格で滞在している場合があるからです。外国人が就労可能な業務範囲や業種は、在留資格によって決められているため、「任せたい業務」と「在留資格で認められている業務」が一致する外国人しか雇用できません。この時点でかなり対象者の数が狭まりますが、なおかつ、国内在留者の中には転職を希望していないインドネシア人もカウントされているため、採用対象者はかなり少ないと予想されます。よって日本在留者のなかから採用をしたい場合、採用競争は厳しくなっていきます。

一方、インドネシア現地からの採用は、対象となる人材の母数が圧倒的に多いのが特徴です。

インドネシアは日本の少子高齢化とは真逆で人口増加が加速しており、2020年時点で人口は約2億7000万人(インドネシア政府統計)、2024年では3億人超と言われています。また、生産年齢人口の割合が高く、65歳以上の割合は約5%。対する日本は約1億2000万人で、65歳以上が約30%を占めています(総務省統計局)。そのため、インドネシア国内には仕事が見つからず、海外で働きたいという方がインドネシアには多く待機しています。採用対象者の数は日本国内にいるインドネシア人の比ではありません。よって、採用に至る可能性が国内のインドネシア人を対象にするより格段に高くなります。


通勤時間は多くの人がバイクや車で移動し、混み合います。人口が多いので交通量が日本の比ではありません。

筆者がインドネシア現地で聞いた話だと、インドネシアの地方では、就職活動のために企業の人にお金を渡さないと採用面接が受けられない……といったことも起きているようです。

給与や立地へのこだわりが少ない

日本に在留するインドネシア人が就職活動をする場合の多くは転職です。すでに就労経験があり、日本の地理や文化などに詳しく、就職に関する希望条件が高くなっています。給与額も希望額があり、特に立地に関しては住み慣れた土地がいい、パートナーと同じ市内に住みたいなどの希望がある場合もあります。

一方、海外現地採用の場合はまだ働く際の地域にこだわりがなく、日本であればどの地域でもいいという場合も少なくありません。現地の送り出し機関でヒアリングしてみたところ、都会はまだ怖いので地方で就職したいと言う方も一定数いました。地方の介護施設で、求人募集に応募がなく困っているといった場合は、海外現地からの採用を検討してみることも一つの手です。

ただし、給与額については、日本在留者であっても海外現地在住者であっても非常にシビアであるということは覚えておいていただきたいです。技能実習や特定技能で働く外国人の多くは仕送りが目的なので、給与額についてはあまり妥協しません。

企業の知名度を気にしない

企業の知名度についてはあまり気にしない傾向にあります。

インドネシアには日系企業も多く進出しており、自動車やバイクは日本メーカーが多く馴染みがあるようですが、知られている日系企業はごく一部です。自分の就職先が大手企業や有名企業であるかどうかはあまり気にしていません。それよりは給与額や寮、社宅などの住環境が整っているかどうかを気にしています。

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海外現地在住者を採用する場合は「送り出し機関」が重要

インドネシアでは高齢者介護は自宅で家族が行うことが一般的です。介護施設は少数ありますが国営のものであり、環境はあまり良くありません。そのため「介護施設で高齢者の介護をする仕事」と伝えてイメージする介護の仕事は日本とかなり違います。そのことを知らずに来日・就職してしまうと、ギャップに驚いたり、仕事に慣れることができず退職してしまうことが懸念されます。

これを防ぐには、「送り出し機関」による事前の教育が非常に重要となります。

日本での介護職とはどんなことをする仕事なのか、どんな姿勢で臨むものなのか、包み隠さず知ってもらう必要があります。実際、マイナビグローバルと提携している現地の送り出し機関を視察した際は、おむつ交換や看取りなどについて丁寧に実習する送り出し機関が多かったです。

日本の介護について勉強するインドネシア人

ベッドを用いた介護の実習を行っている様子

現地で実習を受けていたインドネシア人の方と話をしてみたところ、「声かけ」が難しいのだと言っていました。何と声を掛けたらいいのかわからないと言います。日本で育った人では、海外の方の「わからないこと」に気が付くことができません。そのため送り出し機関が、インドネシアでの常識や介護の業務と比較してギャップとなりそうな部分を事前にフォローできるかどうかが重要になってきます。

送り出し機関を直接利用する際はもちろんのこと、紹介してもらう際はその人材紹介会社が使っている送り出し機関の質を見極める必要があると感じます。

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インドネシア人の日本語能力は?

介護分野で外国人の雇用を検討する際、心配なことは日本語能力ではないでしょうか。

インドネシア人はというと、日本のアニメや漫画、ドラマなどを見ていることもあり、文化に慣れ親しんでいる人が多く、日本語が上手な人が多い印象です。

また、インドネシア人は世界の日本語学習者数で2位で、その数は増加し続けています。

また、体感の話ですが、例え文法や単語を間違えていても積極的に話をする、間違えることを恐れない人が多いと感じました。ハイヤーの運転手などは英語を少しだけ話せると言った人も少なくありませんが、完璧な英語ではなくても積極的に私たちに話かけてきます。

同じように、求職中のインドネシア人の方も、一生懸命に話かけてくれました。これは外国語の上達に欠かすことのできない素質ではないでしょうか。


実際に現場で使うことを目的としたオリジナルテキストで授業を行う送り出し機関も

実施回数が多いので、JFT -basic の受験も盛ん

日本語のレベルを確認する資格としては、日本語能力試験(JLPT)が有名です。特定技能の取得にはN4以上が必要ですし、技能実習も介護の場合はN4が必要です。

しかし先述の通り、インドネシアでは日本へ出稼ぎに行きたい人材が多く、試験回数が年に2回しかないJLPTだけでは追いつかないことから、もうひとつの日本語試験である国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-basic)も盛んに受験されています。

JFT-basicは就労のために来日する外国人が遭遇する日常のコミュニケーションに必要な日本語能力を測定するもので、特定技能1号の要件を満たすには200点以上をとる必要があります。

JFT-basicはJLPTと比較して試験の実施回数が多いことが魅力ですが、インドネシアではJFT-basicの予約が非常にむずかしいそうです。転売ビジネスが発生しており、受験枠をなかなか予約できない状況が起きています。

JLPTは年に2回しか試験がなく、回数の多いJFT-basicは受験枠をとることができないことから、現地では試験の種類を選ぶことは難しいようで、受験できるものでとにかく要件をクリアしています。

宗教について配慮すべきポイントは?

外国人の雇用にあたって、気になるのが宗教の問題です。

インドネシアの宗教事情は果たしてどうでしょうか。

データ上の情報と、実際にインドネシア現地での様子を併せて皆さんに解説していきましょう。

インドネシア人の多くはイスラム教徒

インドネシア人の多くはイスラム教徒で、9割近くを占めています。次いでキリスト教、そしてヒンズー教などが根付いています。

【インドネシアの宗教の割合】

1位 イスラム教:87.21%
2位 キリスト教:9.87%
3位 ヒンズー教:1.69%
4位 仏教:0.72%

※出典:インドネシア共和国基礎データ|外務省

約9割を占めるイスラム教ですが、国教ではありません。インドネシアでは250以上の言語、約300の民族が暮らしていることから、憲法で「宗教の自由」を明言しています。改宗なども自由です。また、島国であることから、島によって多数派の宗教が違うこともあります。例えば観光地として有名なバリ島は、住人の約90%がヒンズー教徒です。

豚肉やアルコール禁止などの食に関する制限がある

イスラム教にはタブーがいくつかありますが、採用にあたって注意したいことは、豚肉食と酒の摂取です。イスラム教では、豚肉そのものだけでなく、ハムなどの加工品や豚を原料とした食品添加物なども口にすることを避けます。例えば豚骨スープなども対象です。そう聞くと、介護職の仕事には食事介助もあるので不安に思われるかもしれませんが、手袋をして直接触らなければ対応可能な人が多いようです。仮に床に豚肉を落としてしまったとしても手袋越しであれば拾うことができる、と言う方も。

酒の摂取は、料理酒やみりんなども該当します。しかしながら、この辺は少し緩く、日本に来てお酒を飲んでしてしまう人もいるようです。戒律にそこまで厳格ではないということも影響しています。とはいえ、基本的には飲酒を避けますので、歓迎会や飲み会などで無理にお酒を勧めることはやめましょう。

お祈りは1日に5回

イスラム教では毎日お祈りをします。回数は1日に5回で、1回につき5~10分程度です。

早朝の日の出の時間に1回、午前、午後、日没後、そして寝る前に1回行います。5回のお祈りのうち、午前、午後、日没後の3回は勤務時間と重なってしまう可能性があります。休憩時間が決まっている場合は、午前、午後、日没後の3回はまとめて1回にする人もいるので、入社前にすり合わせておくと良いでしょう。オフィスワーカーなどの場合は、トイレ休憩に行くようにタイミングを見計らってお祈りして戻ってくるということが多いようです。

お祈りはモスクやお祈りスペースなどで行う

お祈りは、インドネシア現地では自宅やモスク、オフィス内のお祈り用スペースで行います。ムスリムのインドネシア人を雇用する場合は、他人に見られにくい個室や仕切りを立てた場所にお祈りスペースを設けてあげると喜ばれます。省スペースでも構いません。

インドネシアには大小さまざまなモスクが多数あり、少し街中を歩くだけですぐに見つけることができます。日本の神社や寺のように街中に溶け込んでいます。それだけ多くの人が信仰しているということです。1日5回の決まった時間になると、モスクからはお祈りの声が響き渡ります。


インドネシア現地のイスティクラル大モスク。観光地としても有名で、街の中に点在しています。
お祈りスペース

インドネシア現地のオフィスに設けられたお祈りスペース。床に座るため、敷物があるとよいでしょう。

断食(ラマダン)の期間がある

イスラム教では断食の期間があります。約1カ月の間続きますが、1日中飲食を禁止するものではなく、日の出から日没までの日中のみ飲食ができません。断食については慣れており問題なくできますが、企業が気を付けたいこととしては、断食中に無理に食事をさせようとすることです。これは絶対にやめましょう。

女性が着用するヒジャブについて

女性が頭や髪、首のまわりまでを覆うヒジャブというスカーフのような布があります。イスラム教の聖典コーランにある「美しいところは人に見せないように」という部分が発祥のようで、女性としての尊厳や謙虚さを保ったりするものとして着用します。

中東においては非常に厳格ですが、実はインドネシアにおいてヒジャブの着用はそこまで厳しいものではありません。中にはヒジャブを着用しない女性もいます。また、工場などの巻き込みの危険が伴う作業をする場合は着用していないそうです。業務上着用が難しい場合は、本人に相談してみるとよいでしょう。

▼インドネシアの宗教事情を更に詳しく解説している記事はこちら

宗教に関する話は必ずしもセンシティブではない

宗教による雇用上の差別は人種や国籍に関わらずしてはいけませんが、宗教の話をすることがタブーかというと必ずしもそうとは限りません。お祈りの時間をとることや、豚肉を触る必要がある、味見の業務があるなど事前に知らせなければならないことや、配慮が必要な場合は確認やすり合わせが必要です。

現地でムスリムの方に質問してみたところ、「事前に確認して配慮してもらえるのは嬉しい」という回答がほとんどでした。逆に配慮されると思っているものが入社後にできなかったりすると、ギャップによって早期退職してしまったり、企業側が知らず知らずのうちにタブーを強要してしまうようなことが起きてしまいます。「配慮が必要なことはありますか?」と聞くことをお勧めします。

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必ずしもイスラム教徒とは限らない

先ほどインドネシアに住む9割の人がイスラム教徒であると述べましたが、だからといって必ずしもイスラム教徒とは限りません。それ以外の宗教を信仰している場合もあります。

教会

モスクの目の前にはキリスト教の教会があることも……

介護業界であれば、お祈りの時間のために休憩を用意できるかどうか、食事介助による豚肉の対応、ヒジャブの着用の可否などが関係してくると思いますので、事前に確認してみることをお勧めします。

まとめ

今回はインドネシア人の海外採用と宗教などについて解説しました。海外現地からの採用は地方の企業や施設でも比較的若い人材を採用しやすく、また、介護とインドネシア人材の相性がよいことから候補となる人材の数も多いことがメリットです。

マイナビグローバルでは、多くの送り出し機関の中から、事前に介護に関する教育を丁寧に行っているかどうかを確認し、適切な人材をご紹介しています。また、送り出し機関のチェックも現地視察などで丁寧に確認しています。

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