任せきりで大丈夫?送り出し機関について企業が知るべきチェックポイントや認定要件を解説

執筆者:

外国人採用サポネット編集部

技能実習制度の問題を語る際、必ずと言っていいほど一緒に取り上げられる「送り出し機関」とは、本来どんな役割の機関なのでしょうか。制度上、雇用主側や実習実施機関が直接関わらない場合があり「あまりよく知らない」「受け入れ企業側は関係ない」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし昨今の技能実習制度の問題を考えると、知らずにいられない理由があります。

また送り出し機関とは、技能実習制度のみに関係する機関ではありません。外国人採用を検討する企業とは関わりがありますので、違法にならないためにも正しく知っておくと安心です。
本記事で詳しく解説していきます。

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監修:行政書士/古田 晶稔(サポート行政書士法人)

在留資格(ビザ)申請に携わると共に、技能実習に関する手続きも担当。 人材不足に悩む中小企業へ向けた外国人活用に関するコンサルティング業務をメインとして活躍。 行政書士(愛知県行政書士会所属 /第16190330号)

企業が送り出し機関について知っておくべき理由

送り出し機関については、昨今報道などでも話題になっているように悪質な機関も多く存在します。技能実習制度では監理団体と送り出し機関が直接のやり取りするため、受け入れる企業はあまり関係ないと思われがちですが、採用する外国人を斡旋するのは送り出し機関の役割です。

後述しますが、技能実習生の場合は特に、来日前に負荷のかかる契約などを行っていないかどうかが、職場への定着や雇用後のパフォーマンス向上に大きく影響します。

例えば、来日前に高額な借金をさせるような契約を送り出し機関がさせている場合があります。

こういった行為をする送り出し機関から人材の紹介を受けていないかどうかを知るために、正しい送り出し機関の在り方について知っておく必要があるわけです。

送り出し機関とは

送り出し機関との関係図

送り出し機関とは、「海外現地で求人を募集し、日本へ送り出す機関」のことです。

送り出し機関というと技能実習制度のイメージが強いかもしれませんが、本来は技能実習制度に限った機関ではありません。送り出し機関を通じて採用される外国人が取得する在留資格は、技能実習、特定技能技術・人文知識・国際業務などが多いでしょう。

技能実習制度の団体監理型では、必ず送り出し機関を利用しなければなりません。技能実習制度においては、送り出し機関は技能実習生候補者に事前講習を行い、監理団体の要望に応じて選考し、日本へ送り出すために海外での必要な手続きを代行します。

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技能実習制度における送り出し機関の役割と認定の要件

では技能実習制度における送り出し機関の役割とはなんでしょうか。

技能実習制度では、送り出し機関は、技能実習生を監理団体の元へ送り出す団体のことです。

基本的には海外現地の団体です。技能実習には団体監理型と企業単独型の2つの方法がありますが、送り出し機関が関係するのは団体監理型に限ります。送り出し機関の役割・業務としては、技能実習生として日本で実習をしたい現地の外国人を集め、そのなかから企業が求める人材を年齢、性格、学歴、日本語能力や技術などを踏まえて選抜して送り出します。

また、技能実習生の候補者が日本へ入国する前の教育、入国のための手続き、送り出し後のサポート、帰国後のフォローなども送り出し機関の役割です。

送り出し機関は認定制で、認定されるための要件は規則第25条に定められています。

送り出し機関の要件

規則 第25条における外国の送出機関の要件(概略)

・所在する国又は地域の公的機関から推薦を受けている

・制度の趣旨を理解して候補者を適切に選定し、送り出す

・技能実習生等から徴収する手数料等の算出基準を明確に定めて公表し、技能実習生に明示して十分理解させる

・技能実習修了者(帰国生)に就職の斡旋等必要な支援を行う

・法務大臣、厚労大臣又は外国人技能実習機構からのフォローアップ調査、技能実習生の保護に関する要請などに応じる

・当該送出機関又はその役員が、日本又は所在国の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、刑執行後5年を経過しない者でない

・当該送出機関又はその役員が、過去5年以内に

–保証金の徴収他名目を問わず、技能実習生や親族等の金銭又はその他財産を管理しない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)

–技能実習に係る契約の不履行について違約金や不当な金銭等の財産移転を定める契約をしない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)

–技能実習生に対する人権侵害行為、偽造変造された文書の使用等を行っていない

・所在国または地域の法令に従って事情を行う

・その他取次に必要な能力を有する

出典:外国人技能実習制度とは|JITCO

上記の要件を満たすと、技能実習制度における「送り出し機関」に認定されます。

特定技能制度における送り出し機関の役割

特定技能制度における送り出し機関は技能実習とは少し違います。

技能実習制度において、実習生を希望する外国人は、送り出し機関を通じて求職を申し込む必要がありますが、特定技能制度においては、必ずしも送り出し機関を経由する必要はありません。

しかし国によっては、政府認定送り出し機関の利用が義務付けられていますので、確認が必要です。該当の国については後述します。

送り出し機関の利用は必須なのか

送り出し機関を利用しなければ外国人は受け入れられないのでしょうか。

現状、技能実習の実習機関の多くは団体監理型を利用しており、この団体監理型の場合は必ず送り出し機関の経由が必要です。また特定技能制度においても、政府認定送り出し機関の利用が必須となっている国が複数あることから、外国人採用において送り出し機関の利用は切っても切り離せない存在です。

特定技能制度などにおいて送り出し機関を利用しない方法は、国内在住の外国人を採用する方法です。すでに日本へ送り出された後なので、基本的には送り出し機関と関わることはありません。また、特定技能は転職が認められています。海外現地から受け入れる技能実習生の場合は転職は不可能です(転籍の場合を除く)。

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【重要】二国間協定

外国人採用における「二国間協定」とは、日本と送出国が外国人雇用を円滑に進めること、外国人を保護すること(悪質な仲介事業者の排除など)を目的とした国同士の取り決めです。

技能実習制度と特定技能制度などで締結をしており、「技能実習に関する二国間の協力覚書(取決め)」「特定技能に関する二国間の協力覚書」を作成しています。締結国は以下の国です。

【二国間協定締結国】

  • フィリピン  
  • カンボジア  
  • ネパール
  • ミャンマー  
  • モンゴル  
  • スリランカ  
  • インドネシア  
  • ベトナム  
  • バングラデシュ  
  • ウズベキスタン  
  • パキスタン  
  • タイ  
  • インド  
  • マレーシア(特定技能のみ) 
  • ラオス  
  • ブータン(技能実習のみ)
  • キルギス(特定技能のみ)

技能実習制度における認定送り出し機関のリストは以下から確認できます。

外国政府認定送出機関一覧|外国人技能実習機構

▶参考:技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)|厚生労働省

▶参考:特定技能に関する二国間の協力覚書|出入国在留管理庁

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送り出し機関と問題

昨今よく報道される技能実習生の失踪ですが、その背景には制度上の問題と送り出し機関の問題があります。

技能実習生は制度上、原則転籍ができません。就労を目的としていないため、職を変える転職という考え方がないからです。

そのため、受け入れ企業が法律に反した雇用を行っている、過度な労働を課す場合であっても実習先を辞めて別の場所で実習を行うということが困難です。(企業都合などの場合は、転籍という形で別の企業で実習をする場合があります。)

また、借金の返済があるため働かないわけにはいかず、やむを得ず失踪してしまう実習生が発生しています。

本来、技能実習法で違約金を取ることは禁止されています。日本政府は、対策として送出国との二国間取決めを行い、送出国による送出機関の認定、問題のある送り出し機関の情報共有などを行うことで悪質な送出機関の排除に努めています。

しかしながら、技能実習生を違法に就労させる実習先や悪質な送り出し機関は引き続き横行しており、技能実習生の環境が非人道的であると世界的にも問題視される状況となっています。

送り出し機関に支払う費用・手数料の相場

送り出し機関は、監理団体や人材紹介会社・企業から手数料を得るだけでなく、それとは別に外国人労働者からも費用を徴収しています。

技能実習生が送り出し機関へ支払っている金額について、出入国在留管理庁が公表したデータを見てみましょう。

上記を見ると、技能実習生によっては、送り出し機関以外にも仲介者などに支払いを行っている場合があり、費用の総額は平均値で日本円にして約54万円です。日本よりも給与が低いことからもわかるように、この金額は母国ではかなりの額にあたります。この金額がすべて借金だった場合、技能実習生の平均賃金などを考えても返済は非常に重荷であることは想像に難くないでしょう。

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送り出し機関の選び方

では、送り出し機関はどう選べば良いのでしょうか。また、技能実習生を受け入れる場合はどこを見ておけば良いでしょうか。

送り出し機関の見るべきポイント

見るべきポイントとして、以下の内容をチェックすると良いでしょう。

  • 現地政府から認定されている送り出し機関かどうか(認定されていない送り出し機関の利用が可能だとしても認定機関の方が安心です)
  • 送り出し機関の規模や実績、現在紹介可能な候補者の人数、教育をしている人の経歴(例えば介護関連なら介護福祉士として日本で働いていた、など)
  • 入国前の教育はどんなことをしてもらえるのか。日本語や日本のルール・マナーについて教育することはもちろんのこと、技能実習を行う分野についても教育をしてから送り出してくれるのかどうか。
  • 技能実習生や特定技能外国人が送り出し機関に支払っている費用の金額が適正であるかどうか。国によっては上限が決められています。
  • 窓口となる担当者の日本語能力。現地の方で日本語があまり得意ではない場合、勘違いによるすれ違いなどが起きやすくなります。
  • 継続的な受け入れを予定している場合は、安定的に人材を供給できるかどうか。最初はよかったが、途中から人材を紹介してこないといったことにならないために確認が必要です。
  • 技能実習生の場合は日本国内に駐在事務所・支社を置いているか否か。トラブルが起きた際に監理団体と連携して即時に対応でき、また、外国人も母国語で相談できる相手が日本国内にいるため安心できます。これは基本的には技能実習生を受け入れる場合においてです。

実際に上記に当てはまるかどうかは、ヒアリングするしかありません。特定技能制度などの場合は、送り出し機関または間を取り持っている人材紹介会社に確認しましょう。

技能実習制度を利用する場合は直接確認することは難しいので、監理団体に確認するしかありません。また、監理団体は送り出し機関を選定することも役割ですので、監理団体そのものがきちんと役割を果たし、コンプライアンスなどを遵守しているかを見極めましょう。送り出し機関の見極めだけでなく、監理団体は技能実習生の監理も行う非常に要となる機関です。慎重に検討することをおすすめします。

特定技能外国人などの受け入れのために直接、送り出し機関とやり取りする場合は、上記を確認していく必要があります。時間と手間はどうしてもかかってしまいますので、効率を重視するのであれば、すでに送り出し機関をスクリーニングしている人材紹介会社に依頼して外国人を紹介してもらうとよいでしょう。

マイナビグローバルでは安心できる送り出し機関を選定しています。お困りの際は、ぜひ気軽にお問合せください。

特定技能外国人の採用をワンストップ支援!

ベトナム国籍の方の採用について

ベトナムについては、政府認定の送り出し機関の利用が義務付けられています。これは技能実習だけでなく、特定技能においても送り出し機関を利用する場合は政府認定の送り出し機関を経由しなければなりません。

推薦者表の承認については、ベトナムにいる方を新たに特定技能外国人として受け入れる場合は、送出機関がベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局(DOLAB)において手続を行う必要があります。

また、海外現地での求職者の募集や在留資格取得手続きなどはノウハウがないと難しいため、紹介会社などを利用することをおすすめします。

フィリピン国籍の方の採用について

特定技能などの就労ビザも技能実習も、フィリピンではMWO(旧POEA:駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)認定の現地エージェントを介さないと雇用できません。これは日本国内在住のフィリピン人に対しても同様です。

DMW公認のフィリピン現地人材会社を選定し、契約を結んで受け入れます。

また、受け入れ前に駐日フィリピン大使館海外労働事務所(DMW)または 在大阪フィリピン総領事館労働部門に必要書類を提出し、受け入れ企業が英語で面接を受ける必要があります。

かなり複雑なレギュレーションのため、ノウハウをもったエージェントに相談するか、フィリピン以外からの受け入れも視野にいれると良いかと思います。

MWO(旧POLO)やDMW(旧POEA)については、こちらの記事で解説していますので、ご確認ください。

ミャンマー国籍の方の採用について

ミャンマーの制度上、特定技能などの就労ビザも技能実習も、ミャンマー政府から認定を受けた現地の送り出し機関を通じて人材の紹介を受け、雇用契約の締結をしなければなりません。

また、送り出し機関が企業に紹介する人材の求人を行う際は、受け入れ機関から提出された求人票をミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)に提出し、求人票の許可・承認を得る必要があります。

こちらも申請が複雑なため、ノウハウをもった機関などに依頼して進めることをお勧めします。ただし、日本国内に在住するミャンマー人は現地の認定送り出し機関を通さず採用できます。

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