採用前に知っておきたい!中国人の仕事観を徹底解説

執筆者:

小松栄一

こんにちは。みなさんの職場には外国人の同僚はいますか?厚生労働省の調査によれば、2019年10月末時点で外国人労働者数は 1,658,804人(前年比13.6%増)※で、年々大幅な増加を続けています。今回は外国人労働者数全体の25.2%を占める中国人の仕事観について、日中両国で中国人と働いた経験から解説したいと思います。

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中国の雇用形態

日本と中国では雇用の形態が異なります。根底となる雇用に対する考え方が違うので、まずはそこから見ていきましょう。

中国ではフルタイムの労働者は基本的には正社員となります。日本で言う契約社員、派遣社員にあたる雇用形態もありますが、契約社員=有期雇用の社員(中国の場合、1~数年単位の有期契約でのスタートし、契約を更新していくというのが一般的)であり、派遣社員=労務管理をアウトソーシングしている企業で働く社員となるので、雇用期限のない正社員と雇用期間以外の差はないと言っていいでしょう。

また、遵守されているかは別として、社会主義国である中国の労働法では労働者の権利は強いものになっています。

例えば解雇事由が限定されており、会社事由での解雇が難しかったり、平日の残業代は日本の25%増に対し中国では50%増だったり、労働者に対する保護がある程度厚いものになっています。そのため、初めて日本で働く中国人には雇用形態や就業規則などを細かく説明した方がよいでしょう。また、説明後は本来必要のない文書にも確認のサインをもらうことをお勧めします。説明は受けたが同意はしていないと言われるトラブルを避けるためです。

中国は契約社会ですので、自分の不利益となるものにはその根拠となるものの提示を主張します。会社に対する帰属意識は薄く、あくまで契約により労働力を提供し対価を得ていると考える場合が多いので、会社に忖度し、自身が納得いかないものに妥協するということはしないのです。

就職のキーワードは「専門性」「教育体制」「発展空間」

①専門性

中国で新卒求職者や若手の転職希望者に会社に求める条件を訪ねると、多くの人が「専門スキルを活かせること」「教育体制がしっかりしていること」「発展空間があること」と答えます。

「専門スキルを活かせること」というのは、新卒者の場合、大学での専門・専攻分野を活かせることを指し、転職者の場合、大学での専攻+業界経験を指します。これは理系だけでなく、文系にも当てはまり、大学で学んだことが自分の就職におけるストロングポイントであり、スキルアップ、給与アップにつながる手段だと考える人が多いようです。日本の総合職のような業務内容が明確でない職種は一般的に理解されません。

②教育体制

「教育体制がしっかりしている」とは、「その会社で働くための教育がしっかりしている」という意味ではなく、「手に職をつけさせてくれる」ことを指しています。就職した会社で早く一人前に仕事ができるようになることも重要ですが、中国人は会社で何のスキルを身につけることができるのかを意識していますので、中長期的に見てどのような教育が受けられるのか提示できるといいでしょう。

③発展空間

「発展空間」とは、日本語に適した訳がないのですが、中国人が就職の条件としてよく使う言葉です。意味としては、自己成長が見込める職場環境があるかどうかということなのですが、つまるところ給与アップが見込めて、キャリアパスが見えることであると解釈しています。

この「発展空間」は転職理由でもよく使われる言葉です。以前は、日系企業の要職を日本人駐在員が占めており、「発展空間」がないという話をよく聞きました。今では「現地化」が進み、中国人管理職も増えたように感じます。中国人が日本で働く際も同様に、日本人と同じように出世の機会があるか、その企業での「発展空間」があるかどうかを見ています。

同じ新卒でも給与は違う?

中国では日本と違い同じ年に4年制大学を卒業した新卒者でも給与が違うことがあります。

例えば日系企業で日本語能力が求められる職に就く時に、日本語能力がN1とN2では給与に差が出ますし、他の職種でも重点大学(北京大学や清華大学など中国政府が指定する一流大学群)卒業生と他の大学卒業生でも差があります。給与を一律にしてしまうと高学歴者は正当な評価をされていないと感じ、早期離職の原因となることがあります。

仕事は結果主義・個人主義、でもチームワークができないわけではない

中国人の仕事は結果主義・個人主義

結果主義

中国人は仕事に対してプロセスよりも結果を重視します。例えるならば日本人が最初から100点を目指して仕事をするのに対し、中国人はまずは及第点である60点や70点を達成することから目指し、必要があれば後から修正すればよいと考えて仕事をしています。

中国人の仕事は粗いという声を聞くことがありますが、もちろんレベルの低い仕事をわざとしようと思っているわけではありません。内容の本質を押さえていれば、多少の見た目や形が悪くとも、早く終わらせて結果(成果品)を出すことが重要だと考えているのです。

また、今でこそ残業を厭わない中国人も増えてきていますが、基本的には仕事よりも家族やプライベートを優先する国民性ですので、課された要件以上の仕事をするのは損と考えている中国人もいます。

個人主義

中国人は一度任された仕事は自分の領域と考えます。自分が責任者であり、決定権者という意識なので、任されたその仕事が完成するまで「報・連・相」をすることはありません。目的を同じくする個人事業主が集まって働いている感覚といえばよいでしょうか。

そのため、何度も進捗の確認をすると「自分には信用がない」とか「自分の仕事に口出しをされている」と勘違いさせてしまうことがあるので注意が必要です。

中国人の結果主義・個人主義のマイナス面

ここまでを読むと、中国人は仕事が早く、自分の仕事には責任を持つ人材だというように映ると思います。そうです、仕事がうまく回っている時はそうなのです。

次は結果主義・個人主義で起こりうるトラブルをいくつか紹介したいと思います。日本人からするとハラハラドキドキすることばかりなのですが、私はこれが中国人の凄さであり、愛すべき一面だとも思っています!

納期直前でも仕事が未着手なことがある

結果主義のため、納期に間に合えばそれでよいという考えがあります。ともすると、物が完全に仕上がってなくても、結果がよければ成功と考えている節があります。

何年か前に日本をPRするイベントを開いたのですが、前日になっても当日配布するプログラムの印刷が終わっておらず、また、イベント会場のパネルはスポンサーロゴが何社か抜けているというひどい有様でした。それを彼らは、プログラムはQRコード読み込みで対応、抜けていたロゴはデジタルサイネージに映し出すという方法切り抜けたのです。結果、予想以上の集客がありイベントは大成功。印刷費用などのコストも削減できたと胸を張られました。

中国人の最後の追い込み、帳尻を合わせる力は大変素晴らしいのですが、もしスポンサーロゴが抜けていたのではなく、間違っていたら……と考えるとどうしても危ない橋を渡っているようにしか思えません。

中国人が「没問題」と言ったら「有問題」(問題ないと言ったら問題あり!)

中国人に「あの仕事は順調?」などと質問すると、進捗が悪いものほど必ずと言っていいほど「没問題(問題ない)」という返答が返ってきます。これを鵜呑みにすると危険です。日本人の「問題ない」は、“仕事を進めていく上で障害がなく、期限までに終わる”という感覚だと思いますが、中国人の場合は“現時点では問題ないが、先のことはわからないとなります。

また、「有問題(問題あり)」=「仕事のできない無能な人間」という意識なので、実現の可能性があるうちは自らの評価を落とす回答はしません。

もう一つ、中国語には「没法子」という表現があり、日本語に直訳すると「仕方がない」という意味です。これを言われると、日本人には「できなかった言い訳」にしか聞こえませんが、中国人は“人事を尽くして天命を待った結果なので、これ以上の対応法はない”といったニュアンスで使います。

「没問題(問題ない)」だったはずが、いつの間にか「没法子(仕方がない)」となることが多々あるので、注意が必要です。

この「没問題」も「没法子」も本人の主観で判断している場合が多いです。日本人としては、過程を確認し、客観的な判断材料を得られるようにしたほうがスッキリするのですが、彼らから自発的に「報・連・相」があがってくることはありません。対策の一例として、ゴールを区切って、報告のタイミングを増やすなどの工夫をしてみるとよいでしょう

中国人がチームプレーをするときに重要なのは、リーダーの明確で合理的な指示

中国人はチームプレーが苦手だと言われています。実際に私の周りの人たちも意見をすり合わせて何かを作り上げることは得意ではないように思います。しかし、中国人は協調性がないかと言えばそうではありません。中国では目上の人に対して尊敬の意も含め「哥(お兄さん)」「姐(お姉さん)」と愛称をつけて呼ぶ習慣があります。哥や姐の仕切りがしっかりしていると、中国人は驚くべきスピードと素直さで仕事をします。これは日本人のチームでの仕事がメンバーの合意をもって進められるのに対し、中国人はトップダウンで意思決定がなされるためです。リーダーの指示が明確で正確であるほど、精度の高い仕事が返ってきます。

また、仕事の進め方が合理的であることも重要です。中国人は基本的に無駄だと判断した作業を嫌がるため、期待通りに仕事をしてもらうためには、十分な説明と明確な理由が必要です。

さらに、その作業工程や道筋をはっきり示すことも求められます。

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取引先との関係はフラット

中国人は人と人との繋がりを重要視し、一度信用した相手は家族同様大事にします。それはビジネス上の関係でも同じで、一度関係が深まると、発注者、受注者のような上下関係があったとしても、まるで友達であるかのような対等であけっぴろげな関係になります。この横の関係は非常に強く、時には会社など自分の所属する組織よりも優先されます。

中国人とビジネスをするときは「会社付き合い」よりも「個の付き合い」を意識するとよいでしょう。中国人と親しくなると家族のことや年収などプライベートなことを聞かれますが、これは相手をもっと知りよい関係を築こうとするものであり、裏があるわけではありません。

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まとめ

中国人の仕事観を知ると、中国人の行動に対する捉え方も変わってくるのではないでしょうか。日本企業の慣習に戸惑う外国人も多いですが、日本人側も彼らの文化的背景を理解することで円滑なコミュニケーションにつながるとよいですね。

※[出典]:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】