中国人の転職事情と日本人との意識の違い【ホワイトカラーの場合】

面接を受ける中国人就活生
執筆者:

小松栄一

みなさんは転職をしたことがありますか? マイナビが行った転職動向調査2020年版によると、日本における転職率は調査を開始した2016年(3.7%)から年々増加し、2019年には7.0%となりました。

また、転職に対する意識は「転職は前向きな行動である」が68.3%で、調査以来最多です。
特に20代~30代の若い世代を中心に転職は肯定的に捉えられることが多くなっております。

では、中国における転職事情はどうでしょうか? その実態を見ていきたいと思います。

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中国人は転職回数が多い?

中国人を採用している企業に勤める方や、中国駐在経験のある方の多くは、「中国人はよく転職する」というイメージを持っているのではないでしょうか。事実、Linked In(中国語で領英、中国におけるユーザー数5千万人以上)の「2019人才流動和薪酬趨勢報告(人材流動と給与動向報告)」では、64.4%は「2年以内に会社を離れたいと考えている」という調査結果が出ています。

また、同じくLinked Inの過去のレポートにおいても、中国人の平均在職期間は2014~2015年は34ヶ月だったのに対し、2017~2018年は22ヶ月に減少しているとの報告があります。日本人の平均勤続年数が12.2年※ということを考えると、データ上でも転職回数はかなり多いと言えるでしょう。

国税庁:民間給与実態統計調査(2018年)

転職回数が多い理由

転職回数が多い理由はどこにあるのでしょうか。中国の社会的背景と中国人の心理から、4点を紹介したいと思います。

転職しやすい雇用形態

面接を受ける、中国の就活生

以前の記事で、中国では【雇用契約は1年~数年単位の有期契約でスタートし、契約を更新していく】というのが一般的であることをご紹介しました。そこれが転職回数が多い一番の理由です。新卒の場合、初回の契約は1~3年程度で設定する企業が多いと思います。

日本では有期雇用 = 契約社員のイメージを持つと思いますが、中国の場合、基本的には有期雇用と無期雇用の社員で仕事内容や待遇に差がありません。しかし、有期雇用の場合、契約期間満了時に契約の更新が提示されない可能性もありますので、リスクヘッジの観点からも転職を意識する中国人は多いように感じます。

では、どのような場合に無期雇用になるかというと、おおまかに3つのパターンがあります。

▼無期雇用になる場合

  1. 企業側が無期雇用を提示した場合
  2. 契約を2回以上更新し、その労働者が無期雇用での契約を希望した場合
  3. 勤続年数が10年以上の労働者が希望した場合

希望されたら企業は期限を固定しない労働契約に切り替えねばならないと2008年1月に施行された「労働契約法」で定められています。しかし、この無期雇用契約は企業側からの解除も可能(被雇用者には経済補償金の支払いは必要)であり、日本の終身雇用とは概念が異なるので、企業が無期契約を提示したからといって労働者の離職を防げるわけではありません。

スキルアップのためには転職が必要という考え方

中国は仕事のポジションに対して採用をするジョブ型雇用であり、中国にある日系企業の多くもこの雇用方法を採用しています。

仕事の役割と責任が明確化されており、昇格や昇給は成果や達成度合いにより決まりますので、同じ学歴、年齢でも給与が違うことがあることは前回のコラムで紹介した通りです。またほとんどの場合、転勤はありません。

このジョブ型雇用で評価されるのは、ポテンシャルではなく顕在化されたスキルです。企業はその仕事ができること前提で、雇用をします。働く側にとっても、自分のスキルを活かせる場所でなければキャリアアップは望めないことになるので、その企業に「発展空間」がないと判断したら、他の企業での仕事を通して、専門スキルを高めていこうと考えるのが一般的です。これにより、転職を重ねるようになっていきます。

転職意思がなくともスカウトがくる

中国人の転職活動の方法は「求人・求職サイトの利用」、「人材紹介の利用」、「友人・知人などからの紹介」の大きく3つに分かれます。新卒の場合にはこれにジョブフェア(主に学内フェア)やインターン先にそのまま就職というパターンが加わります。

転職活動方法で日本との大きく違うのは「求人・求職サイトの利用」の点です。中国の求職サイトは、企業がアクセス料を支払えば、サイト登録者のレジュメデータベースを検索でき、求職者のコンタクト先を入手することができます。そのため、登録を消さずにいれば、転職をしたばかりの人にも継続的に企業や紹介会社から仕事の紹介がきます。条件が良ければまたすぐに転職というのもない話ではありません。

ちなみに、現在の中国には日本の個人情報保護法にあたる法律がないのですが、立法化に向けての動きはあります。そのため、制定後は現在のように簡単に求職者情報を得ることができなくなる可能性があります。

友人・知人から転職先を紹介してもらえる

友人・知人からの紹介による転職も一般的です。特に最近ではWechat(微信・ウィーチャット)の「モーメンツ」※2 を利用して簡単に友人たちに求人をシェアすることが可能です。

中国人は人と人のつながりを大事にしていることもあり、友人・知人から紹介される企業に一定の信頼をおいているように感じます。業界にもよりますが、中国人は同業界内で転職をし、スキルアップを目指すと共に、人脈を広げていく傾向です。

※2…中国人が日常的に利用するメッセージアプリ。このアプリのなかに、TwitterやFacebookのTLのような機能があり、それを「モーメンツ」と呼びます

数年前までは、若くても管理職になるチャンスがあった

中国企業は年功序列制ではないので、若くして管理職になれる可能性もあり、所属する企業にそれがない場合は転職して管理職につくことを選ぶこともあります。都市部ではそもそも給与が物価にあっていないという問題もありますので、よりよい賃金を求めてチャンスがあれば転職というのも理解できなくはありません。

中国で高等教育機関への進学率が10%を超えたのは1999年です。これは80年生まれが大学進学をした時期にあたります。その後2009年は24.2%、2016年には42.7%と年々大幅に上昇。中国では生産年齢人口で見ると40代の割合も高いのですが、大卒者の比率が高い30代以下の比較的若い層が管理職として活躍しているようです。

コロナによる意識の変化と政府の対策

コロナの影響から、中国では大学生の就職活動は厳しいものとなり、就職・転職に対する意識に変化がでてきました。本来では、仕事は自分の専門性を活かしたいと考える中国人ですが、コロナの影響をあまり受けなかったITや物流、コロナ禍で業績を伸ばしたオンラインビジネスなどの業界へ転職し、リスクを回避しようとする動きがでています。

政府はこの状況を打開すべく、大学卒業生の就職支援サービスを行うプラットフォーム、就業在線(https://www.jobonline.cn/)をリリース。全国各地の求人・求職情報を公開し、各地で開催される合同説明会などの情報も配信するほか、人材紹介会社が求人情報を出すこともできるようになりました。

日本への転職手段

ここまでは、現地の中国人が転職についてどのように考えているか解説しました。ここからは話題を変えて、日本で働きたい中国人がどのようにして転職活動をしているのか、ご紹介したいと思います。

日本で転職を希望する中国人の傾向

日本で働きたいと考えている中国のホワイトカラーというと、日本語学科の卒業生や中国で日系企業就業経験者、日本文化(アニメ・ポップカルチャー)への憧れを持っている人など、日本についてなにかしら接点があった人が大半です。これは日本で働くには言葉の問題が大きいことに起因しています。就業先が外資系企業などでない限り、日本語スキルが高くなければ日本で働くことが難しいからです。

大気汚染が少ない、医療が発展しているなどの生活環境を理由に日本での生活を選ぶ中国人もいます。

転職活動は外国人専門の人材紹介や知人のコネクション

握手をする中国人男性

先述のよう人々は日本語を理解できるため、弊社の「マイナビ転職」のような日本の転職サイトも活用します。しかし、このような日本の転職サイトでは、日本人や既に日本に住んでいる外国人と競い合うため、海外から転職活動をするには不利です。

そのため結局は外国人専門の人材紹介と、日本に住む知人などのコネクションの活用が転職手段のメインとなってきます。

経験や語学力、母国と日本の慣習の違いなどからすんなりと希望の職に就けない場合、中国人が経営する企業や外国人比率が高い企業を紹介してもらい、そこからのステップアップを狙う人もいます。日本での就職に期限を定めている人にこのパターンは多いと思います。

また、日系企業での就業経験がある場合は、日本人の元駐在員が知り合いの企業を紹介してくれることや、本社でのポジションを探してもらえる場合もありますが、これはレアケースと言えるでしょう。

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まとめ

中国人の転職事情がイメージできたでしょうか。

中国人の仕事観だけでなく、社会の仕組みも手伝って、転職自体はとてもポジティブなものととらえられています。それに加えて、中国独自の求人・求職サイトの仕組みや、簡単に情報をシェアできる共有文化は、転職の機会をさらに増やしているように思います。

とはいえ、約14億人が暮らす多様性の国ですから、一つの企業で長く働く人も沢山います。まずは何年くらい働いてほしいかイメージし、求職者とすり合わせしながら採用活動を行っていくと良いかもしれませんね。