なぜ海外で働くベトナム人が多いのか?ベトナム駐在員が理由や背景を解説!

執筆者:

ヂョンマンホウン

こんにちは!マイナビのホーチミン駐在員事務所で勤務しているホウンです。
ベトナム人でありながら、留学と仕事で日本に11年住んでいた経験があります。
約2年前に東京本社からベトナム赴任の命令が出たため、母国に戻りました。いわゆる 逆輸入の駐在員です。

自分が持っているベトナム人感覚と日本で生活した経験を踏まえて、ベトナム人の海外就職事情や採用した時に注意すべきポイントについて数回の記事を通して解説していきます。

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お店で見かける ❝ あの ❞ 店員さんの正体

コンビニや飲食店で店員さんの名札が気になることありませんか?どこかでグエンさん、チャンさんという店員さんと出会えば、恐らく彼らは留学生でアルバイトをしているベトナム人です。

もちろん、留学生だけでなく、技能実習生や高度人材として日本で働くベトナム人も毎年増えています。ただ、日本だけでなく、ベトナム国外で働くベトナム人はたくさんいますが、その理由をご存じでしょうか。

海外で働くベトナム人がベトナム経済を支えている

世界銀行の統計データによると、海外にいるベトナム人の母国への送金金額は2019年で16.68億USD(約1兆8348億円)、世界で9番目に多いそうです。これはベトナムGDPの6.4%も占めており、ベトナム経済を支える柱の一つと言っても過言ではありません。海外からの送金の多さから国外で働くベトナム人が多いことがわかります。

では、なぜ国外で働くベトナム人が多いのでしょうか。実はベトナム戦争や近隣諸国との所得格差、大学卒業者の失業率の高さが関係しています。

理由1 ベトナム戦争と国外で働くベトナム人の密接な関係

戦後、家族を助けるために、ベトナムの多くの若者がソ連と東欧に出稼ぎへ

「ベトナム」と聞いてベトナム戦争を思い出す人も多いのではないでしょうか。18世紀末から19世紀の前半にかけてフランスに植民地化された後、アメリカがベトナムに侵略。100年近く戦争が続き、破壊されたベトナムは困窮状態に陥りました。

食糧不足はもちろん物品不足も著しく、生活のために必要な最低限の衣食住でさえ保たれていない状態でした。戦争で産業も全く成長せず、農業以外の仕事がほぼない状態でベトナムの労働力は余っていました。

また、ベトナムは2回の戦争で武器、資金や物品を支援してくれたソ連、東欧の国々への返済義務を負っていました。返済の一環としてベトナム政府はソ連や東欧諸国にベトナム人労働力を輸出し、ベトナムの若者たちは現地の工場で単純労働者として働くことになります。異国の地で働く若者たちは一所懸命に働き、貯めたお金をベトナムにいる家族に送金、または物品に変えて母国に送っていました。これがベトナムの労働力輸出国としての第一歩です。

 

ベトナム戦争終結後、多くの南部ベトナム人が海外に移住

一方、ベトナム戦争で北ベトナム軍が南ベトナム(親米政府)を解放するためにベトナム南部へ侵攻し、1975年4月30日にサイゴン陥落、ベトナム戦争が終結しました。その後はホーチミンを中心に多くの南部ベトナム人がベトナムを脱出し、アメリカやカナダなどで移民や難民として生活を始めました。

1975年にアメリカ政府の援助で渡米したベトナム人は約12万5千人にのぼります。その後も多くのベトナム人が家族や親戚をアメリカに呼び、ベトナムから移り住む人は増加しています。アメリカの国勢調査局によると2017年の在米ベトナム人は約134万人にのぼり、アメリカに移住した外国人総数の約3%を占め、6番に多いそうです。アメリカへ渡ったベトナム人たちはベトナムにいる家族、親戚へ仕送りや投資を行い、ベトナム経済に貢献しています。

また、ベトナムへ戻って起業するベトナム系外国人も少なくありません。彼らは海外で勉強したことや体験したことを活かして、海外にあってベトナムにまだないプロダクトやサービスを作り、ベトナムの様々な課題を解決しています。

 

自分と家族の生活をもっと豊かにするために、海外での就労を目指す人が増加

ベトナム戦争後に多くのベトナム人がソ連各国や東欧諸国、アメリカ、カナダなどへ旅立ち、家族を助けるために一所懸命働きました。海外での就労後ベトナムに帰ってきた人々は、貯金したお金で家を建て替えたり家電製品を買ったりしました。そのおかげで農村も少しずつ潤っていきます。彼らが海外で働き、活躍することによって、ベトナム経済が徐々に成長してきました。

海外で働いた後に生活が豊かになっていく様子を見た人たちや子供たちは、海外で働いて生活を豊かにしたい、人生を変えたいという夢を持つようになりました。いまでも海外で働いて生活が豊かになった人たちの影響で海外派遣者数は毎年増え続けています。

また、政府間の労働協約制度によって海外に労働者を送り出していましたが、1991年にライセンスを得た民間企業が労働者を海外に派遣できるようになったこともベトナムの海外派遣労働者増加に影響しています。

 

理由2 ベトナムと近隣国との所得格差

2018年のベトナムの一人当たりGDPは約2,551 USDです。ベトナムのGDPと比較すると、日本のGDPは15倍(39,304 USD)、韓国は13倍(33,320 USD)、シンガポールは25倍(64,578 USD)、台湾は9.8倍(25,007 USD)、タイは2.9倍(7,448 USD)にのぼります。このことから、ベトナムはアジア近隣国と比べるとまだ非常に低い所得しか得ていない状況だと分かります。そのため、ベトナムより高い給料を求めて海外で働くベトナム人が多く存在します。

 

※参考:https://www.globalnote.jp/post-1339.html

 

私の感覚だと日本の新卒月給は約18~25万円ですが、ベトナムでは3万円前後です。もちろん、英語や日本語などの外国語スキルを持っていれば、給料は新卒でも上がっていきます。例えば日本語能力試験(JLPT)のN2程度を持っていれば給料は5万円~10万円に上がります。

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理由3 大学を卒業した若者の失業率の高さ

ベトナムの人口は約9600万人、世界15位です。労働人口はおよそ5500万人で、失業率は2%と比較的低水準を維持しています。しかし、大卒を含めた若年層(15~24歳)の失業率はなんと7%台にのぼり、大学を卒業しても就職に困る若者が非常に多いです。

東南アジアに良く行く方はGrabという配車アプリをご存知かと思いますが、ベトナムでは車だけではなく、Grabバイクというタクシーのバイク版配車サービスがあります。実際に乗ってみるとバイクドライバーの多くは大学生や大卒で仕事がまだ見つからない人が多いです。

若年層の失業率が高いのは、近年ベトナムが学歴化社会になっている影響で大学卒業者が就職口の数以上に増加したことが要因の一つです。ただし高失業率の原因はそれだけでなく、就職方法・チャネルが少ないことにも起因されます。ベトナムでは日本のように新卒の一括採用は存在しません。求人サイトもありますが、大学教授の紹介、学校のジョブフェア、家族や友人のコネクションで仕事を探す新卒がまだ多い状況です。

さらに、ベトナム企業は即戦力としての経験者を求める傾向が強く、新卒の研修やトレーニングに力を入れていないため、新卒を断る企業は少なくありません。

このように国内で就職チャンスを見つからない若者は海外での就労機会を求め、ベトナムより良い給料を手に入れて人生を変えようと、海外へ働きに出ます。

就労先として日本が人気

以上のように、国外で働くベトナム人が多い理由はベトナム戦争に始まり、所得の格差、大学を卒業した若者の失業率の低さが影響しています。

2000年代から、台湾、韓国、マレシーア、日本への労働者派遣が盛んになり、ベトナム人の働き先は国も職種も多種多様になりました。海外派遣労働者数は2018年には14万2860人、2019年には15万2,530人と年々増加しています。派遣先としては日本と台湾がトップで全体の約9割を占めていますが、近年は台湾より日本が増えています。

このことから数多くの海外派遣労働者の中でも日本を選ぶベトナム人が非常に多いことがわかりますが、その理由はなんなのでしょうか。次回の記事では、なぜ日本で働くベトナム人が増えているかをご説明します。

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