最新版統計|技能実習生の受け入れ人数推移・国別割合は?人数枠についても解説

技能実習生の人数 記事アイキャッチ
執筆者:

行政書士/武田敬子

皆さんは技能実習生にどんなイメージをお持ちでしょうか?
ここでは技能実習制度や課題、技能実習生の人数の推移などについて法務省統計を元に解説していきます。

技能実習制度を正しく理解するために、ファクトベースで技能実習の現状を見ていきましょう。

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技能実習生とは

技能実習生とは、もともと「人材育成を通じた開発途上地域等へ技能、技術又は知識の移転により国際協力を推進することを目的」としています(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律。以下「技能実習法」)。

技能移転を目的としているため、技能実習生は3年もしくは5年たったら本国へ帰る必要があります。つまり、技能実習は「永住」のない在留資格なのです。

しかし、政府は深刻な労働力不足を打破するため、2019年4月より特定技能という在留資格を創設し、単純労働と言われる業種で外国人を積極的に受け入れる方向に舵を切りました。政府はずっと単純労働外国人は入れないと主張してきたので、大きな方針転換でした。

技能実習生の人数の推移と現状

次に、技能実習生の人数の現状を見ていきましょう。

在留外国人数の構成比で技能実習は2番目

まずは日本にいる在留者がどれくらいか見てみましょう。

2020年末の在留外国人の構成比(在留資格別)によると、在留外国人数は288万7116人で、日本の総人口(2020年12月1日時点)1億2,565万1千人の約2%を占めています。在留外国人の増加に伴い,2016年の1.88%に比べて上昇しています。人手不足のための特定技能も創設され、日本に在留する外国人数は今後も一定の割合で増加していくものと考えられます。

在留外国人の内訳を在留資格別にみると、1位永住者28%、2位技能実習生13.1%、3位特別永住者10.5%となっています。

在留外国人のうち、技能実習生は2番目に多いのです。

在留外国人の構成比 (在留資格別)(2020年末)
法務省|在留外国人の構成比 (在留資格別)(2020年末【R2.12末在留】統計資料

在留外国人労働者の数は2022年末、過去最高を更新!

では在留外国人のうち、働いている方はどれくらいいるでしょうか。

在留資格別外国人労働者数の推移をみると、外国人労働者数は2022年末で182万2,725人と過去最高を更新しました。10年前の約65万人と比べて約3倍です。全在留外国人の中では、約60%が就労していることになります。

前年比では外国人労働者は95,504(約5.5%)増加し、増加率は前年の 0.2 %から 5.3 ポイント増となりました。

現在もコロナ禍ではありますが、新規入国規制の緩和により外国人労働者数は増加しているので、コロナ終息後は外国人労働者のさらなる増加が予想されます。

技能実習は就労資格の中で一番多い

在留資格別外国人労働者数を今度は円グラフで見てみましょう。外国人労働者数の在留資格別では下記のようになっています。

1位 身分に基づく在留資格 32.7%
2位 専門的・技術的分野の在留資格 26.3%

3位 技能実習 18.8%
4位 資格外活動 18.2%

技能実習は3位です。専門的・技術的分野の在留資格とは経営者、技術者、研究者、調理師、技術・人文知識・国際業務、特定技能などの在留資格が複数含まれているため、単体の在留資格であれば技能実習が一番割合としては多くなります。

ちなみに1位の身分に基づく在留資格とは、日本人の配偶者や永住者などに与えられる資格です。4位の資格外活動は、留学生や就労資格で来日している外国人の配偶者などで、週28時間以内であればアルバイトで働ける許可です。

技能実習生が一番多い職種は?

技能実習生を受け入れるためには、技能実習法に基づき、技能実習生ごとに「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構(以下「機構」といいます)の認定を受けることが必要です。

技能実習生が働ける業種は限られており、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属、その他と大きく分けて7業種、82職種あります(2021年3月現在)。

2020年3月末現在の職種別計画認定件数では下記のようになっています。

1位 その他 24.1%
2位 建設 20.8%
3位 食品製造 18.8%

「その他」には塗装、溶接、ビルクリーニング、介護、宿泊などの職種が追加されています。

したがって、「その他」を見ると最新の労働力が不足している業種が顕著にわかるという面白い相関関係があります。

日本が就労人材として最も入ってきてほしいと言い続けていた「専門的・技術的分野の在留資格」の外国人数が4位で、実質労働力不足の調整弁として使われている技能実習とアルバイト的な資格外活動が2,3位を占めていることを考慮すると、「高度人材を呼び込みたい」「単純労働は受け入れない」と言い続けてきた政府の意図と実態が大きく乖離していたことがわかると思います。

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技能実習生はベトナム国籍が最多

では、技能実習生で一番多い国籍はどこでしょう? 2017年末の技能実習生の国籍を多い順に並べると以下のようになります。

1位 ベトナム
2位 中国
3位 フィリピン

従来は中国からの技能実習生が一番多かったのですが、中国の賃金水準が上がり、家族と離れてまで日本で働くことを望む人が少なくなったようです。技能実習の募集をしても「中国ではあまり人が集まらない」と、監理団体の人から聞くことも多くなりました。

代わりに台頭してきたのが、ベトナムです。ベトナム人技能実習生に月収を聞くと、約2万円と答える人が多いです。日本で技能実習生として働く場合、最低賃金でも自国での賃金より数倍以上の額をもらえるので、まだまだ日本で働く魅力はあるようです。現在情勢が不安定ではありますが、これからはミャンマー国籍の実習生も増えると言われています。

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技能実習生の最多受入れ県は愛知県

2019年度の都道府県別、職種別計画認定件数では、新規技能実習の受入れ人数が一番多いのは愛知県です。2位千葉県、3位埼玉県、4位大阪府と続きます。大都市圏の人手不足感がかなり顕著です。

愛知県が1位を占めるのは「機械・金属関係」と「その他」です。大手自動車メーカーのお膝元であることを考えると、「その他」の中でも塗装や溶接が多いのでは、と推測できます。

 

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技能実習生の課題―不法残留者数(失踪人数)の増加

それでは技能実習の課題はどこにあるのでしょうか?

技能実習の不法残留者数は2位

まず不法残留者数の推移をみてみましょう。2021年1月1日現在の外国人全体の不法残留者数は、82,892人です。推移をみると、2004年、当時の石原都知事下で始まった不法滞在者5年半減計画をきっかけに、219,418人いた不法滞在者は2014年には59,061人へと、約27%まで減少しました。しかしそこから再び増加に転じ、2020年は対前年比11.8%増となっています。そのうち「技能実習」の不法残留者数は1万3079人と2位で15.8%を占めます。

ちなみに2019年の失踪者数は8,796人で、2015年の5,803人から約1.5倍に増えています。失踪すると在留資格の活動をしないことになり、すなわち不法残留となります。

技能実習生が失踪する理由―賃金関係が多い

では、技能実習生が失踪する理由は何でしょうか?

「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」が2017年1月~2018年9月に不法残留等により入国警備官の聴取を受けた、実習実施機関(受入れ企業)に調査を実施しました。その調査結果によると、2015年から2018年にかけ失踪者数は約2%で推移しています。同じ2%でも新規技能実習入国者数が増えているので、数字の上では5,803人から9,052人と約3,249人増加しています。

技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果 概要

失踪技能実習生を受入れていた631企業の違反内容は以下のとおりです。

1位 残業時間不適正 231人
2位 割増賃金不払い 195人
3位 賃金からの過大控除 92人
4位 契約賃金違反 69人
5位 最低賃金違反 58人

1位の残業時間不適正は残業時間が多すぎる、労働法で決められた残業時間を超過しているという意味でしょう。

2位~5位は賃金関係が占めます。技能実習生に日本でお金を貯めて何をしたいのかを聞くと、家族のために家を建てたい、こどもの教育費に使いたいという人がほとんどです。家族と離れて家族のために出稼ぎに来ていることを考えると、賃金に関することが不満要因の上位を占めるのは納得がいきます。

技能実習手続きの煩雑さも問題

違反内容の中に書類不備が222人とあります。技能実習は労働法で定められた賃金台帳、出勤簿以外に、当初の計画と違う作業をしていないか確認するため、毎日の活動を記録する技能実習日誌、講習実施記録など備えておかないといけません。

忙しい中小企業に煩雑な書類を課すより、実習生との交流や日本語教育に時間を使ってもらう方がどんなに有益かと思いますので、書類の簡素化は改善の余地が大きいと感じます。

失踪の対策は違反企業への許可厳格化、悪質な送出し機関の排除、技能実習生への説明不足

技能実習生が失踪してしまう課題として、大きく分けて3点あります。その対策を個別にみてみましょう。

1.実習実施機関の労働基準法違反

技能実習は賃金不払いや人権侵害などの問題により、過去2回大きな法改正があり、制度の見直しが行われてきました。2回目の改正では、以下のように変更になりました。

監理団体を許可制、実習実施機関を届出制に
外部監査を必須に
機構を新たに新設し、技能実習計画の認定の審査、監理団体等の検査など全体を管理する権限を持たる

ほとんどの実習実施機関は労働法を守っていますし、監理団体による実習実施機関の3カ月に1回の監査、さらに機構や労働基準監督機構による監理団体や実習実施機関への検査など、二重三重に監査や検査が入り、制度的にも不正ができないようになっています。それでもなお、一部、技能実習を使い捨ての労働力とみる実習実施機関がいるということでしょう。

機構は対策として、多く失踪が発生している送出機関や監理団体等からの申請は厳格化し,失踪事案が発生した実習実施者に対しては実地調査を優先的に行うなどの対応を行い、改善に努めています。

2.悪質な送出機関による違約金の徴収

技能実習生が失踪する理由として、送出機関の問題もあります。送出機関とは、本国で技能実習生を募集し、日本企業へ紹介などをする機関です。失踪を防ぐためにあらかじめ違約金を取り、それが技能実習生の借金になっているケースがあるのです。そのため、日本に来て失踪しても、そのまま帰国せずに不法滞在して働く人が出てきます。

技能実習法で違約金を取ることは禁止されているため、対策として送出国との二国間取決めにより、送出国による送出機関の認定、問題のある送出し機関の情報共有など悪質な送出機関の排除に努めています。

3.送出機関、監理団体の説明不足

最初から失踪する予定で来る悪質な実習生もいますが、大半は残業があると聞いていたのに残業が少ない、もっと賃金が高い仕事がある、仕事がきつい、などの理由で失踪します。

対策として、送出機関と監理団体が、実習生面接時、仕事のきつさや残業時間の多さなどを適切に伝えることが大切です。

技能実習生の人数枠制限について【団体監理型の場合】

ここでは技能実習を検討している企業に向けて、技能実習と受入れ人数について解説します。

技能実習1号、2号、3号とは?

技能実習生は1年目を1号、2・3年目を2号、4・5年目を3号といいます。各号に移行する際にテストがあり、合格した場合のみ次の段階に進めます。ちなみに3号は、優良な一般監理団体のみに認められています。

監理団体には「一般」と「特定」の2種類があり、通常「特定」の方が優良に思えますが、技能実習制度では「一般」管理団体の方が優良です。法令違反・問題の発生状況、技能試験の合格率等をポイント計算し、ポイントが高い場合は一般監理団体になることができます。

実習期間が3年だと仕事に慣れたころに帰国になるので、実習期間が5年と長く設定できることは一般監理団体の大きなメリットです。

 1年目2年目3年目4年目5年目
在留資格技能実習1号技能実習2号技能実習3号
実習機関特定監理団体は3年一般監理団体は5年

技能実習生の受入れ基本人数

では技能実習生は何人採用できるのでしょうか?

技能実習生の保護の観点から、受け入れる技能実習生数について技能実習法で上限が定められています。例えば実習実施者の常勤職員数が30人以下の場合、技能実習生3人を受け入れることができます。2号に移行した場合は、基本人数枠の2倍となりますので、6人を受け入れることが可能です。

優良認定を受けた一般監理団体の受入れ人数

一方、一般監理団体は1年目から基本人数枠の2倍を受け入れることが可能で、2号、3号も基本人数枠の2倍~6倍と優遇されています。

悪質な監理団体については名前の公表や審査を厳しくするなどする一方、一般監理団体へは

①実習期間の延長
②受入れ人数枠の拡大

と優遇しているのがわかります。

常勤職員数には、技能実習生は含まれませんし、介護など別途人数枠があるものもありますのでご注意ください。

まとめ

いかがでしょうか?技能実習生の実態をファクトベースで見てきましたので、実態を正確に掴めたのではないかと思います。

単純労働者を入れるために特定技能が2019年4月に新しく創設されたことは最初に述べたとおりです。政府としては技能実習の送出し機関を排除するため、新しい在留資格を創設したわけですが、確認先が3カ所に増え、簡素化どころか一層煩雑になりました。政府も思惑がはずれたと思いますが、相手国があると目的を達成するのはなかなか大変だと感じます。

労働力不足が解消しない限り、今後も技能実習生は増加すると思いますが、一番思うのは技能実習生が実習終了後、日本を好きになって帰国しているのだろうか、ということです。

実習生が仕事をさぼったりしたら注意など、しかるべき対応をとらねばなりませんが、日本でしかできない経験をたくさんし、日本人の友人を作り、日本を好きになって帰ってもらう。受入れ企業を始め、皆がそれらを意識するだけで「技能実習生」という名の日本のファンが増え、結果的に日本の将来は明るくなるのではないでしょうか。

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