いち早く外国人介護士の採用に取り組んだ社会福祉法人に聞く「成功する外国人材の迎え方」

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さまざまな介護の現場で外国人材の活躍が広がっていますが、介護従事者を海外か迎え入れるという意識は、3~4年前ではほとんど定着していませんでした。
そんな状況のなかで将来、必ず到来する「日本人介護スタッフ不足」という事態に備え、いち早く外国人材の受け入れに踏み切ったのが、東京を中心に特別養護老人ホーム7施設 をはじめさまざまな介護事業を展開している社会福祉法人「聖風会」です。

今回は、外国人採用の先鞭をつけた同法人の採用・研修担当の吉田さんと、最初に外国人材を迎え入れた特別養護老人ホーム「台東」の介護係長の前島さんに、外国人材の受け入れにおける苦労や定着までのプロセスについて詳しくおうかがいしました。

社会福祉法人「聖風会」吉田様、前島様
【話し手】

吉田 浩一さん(左) 
社会福祉法人「聖風会」 法人本部事務局 課長(採用・研修担当)
法人全体の採用を支える立場から、外国人採用に関してもその検討段階から中心的な役割を担っている。現在も現地での面談から、日本入国時のビザの申請書類作成、入国後の住居探しや生活の支援、さらには配属先施設の担当者との調整など、あらゆるサポートを担当している。

前島 雅紀さん(右)
特別養護老人ホーム「台東」 介護係長 施設ケアマネージャー
最初の外国人留学生の受け入れ先となった施設で、主に業務指導などを担当。日常生活や語学学習も行った経験から、法人全体での外国人受け入れ体制づくりやサポート体制の確立などにも貢献した。

人材不足への危機感が、外国人受け入れの契機に

聖風会は、いち早く介護の現場に海外人材を迎えた法人のひとつです。まずはそのきっかけについてお聞かせください。

吉田:海外に目を向けたきっかけは日本人スタッフの採用が年々難しくなるだろうという危機感でした。日本人スタッフだけで全ての施設を支えていくのが困難になるのは明らかですので、今後のためにまずは日本で介護を学びたいという希望をお持ちの留学生から迎えてみようと考えました。

外国人材の受け入れ方などについては聖風会のなかでも議論がありましたか。

吉田:そうですね。単に新たな労働力として外国人を募るという考え方もありますが、当法人では、海外の方にも「日本で介護を学ぶメリット」を最大限感じていただける形でお迎えしようということを最初に決めました。日本で得た介護の経験や知識を、母国に持ち帰っていただいた時にその地域の介護の発展にも貢献できるような関係性を築いていくことを目指しました。

留学生を迎えることに対する現場の反応はいかがでしたか。

前島:最初はみんな驚いていましたね。現場に海外出身の方がいる施設というのが今ほど一般的ではありませんでしたし、言葉の壁はどうなのかなど、分からないことも多かったので、少なからず不安もあったと思います。

吉田:それを解消するためには、外国からの人材を迎える理由を現場のスタッフたちへどのように伝えるのかが大切だと思っていました。法人内でもいろいろ話し合った結果、まずは前島さんのような現場の役職者に対し、海外から人材を迎える「必要性」と「意義」の両方をしっかりと伝え、現場のスタッフから質問があった時などにもすぐに答えてもらえるようにしました。

前島:なぜ必要かはもちろん、単なる労働力ではなく介護を志す仲間として迎えることで、それぞれの出身の国や地域にも貢献できることや、ネットワークを構築することで今後末長く、相互協力できる体制をつくるという「迎える意義」までしっかりと伝えてもらえたので、私たちも現場スタッフたちに説明しやすかったですね。また、それがあったからこそ、最初は大変かもしれないけど、がんばってみようという空気が現場に生まれたのではないかと思います。

最初は戸惑いも多かった留学生の受け入れ

ベットシーツを取り換える外国人ン介護士

聖風会が最初に外国人材を迎えられたのはいつですか?

吉田:2017年の秋です。介護を学ぶためにベトナムから来日した男性の留学生の方でした。

現場の方々の反応はいかがでしたか。

前島:最初はやはり戸惑っていましたね。日本語レベルもN4程度の留学生でしたので、細かい仕事のやり方などについてもどう伝えればいいか、コミュニケーションに頭を悩ませました。初めての異国暮らしで、本人もとても緊張しているのが伝わってきたので、こちらもどう接すればいいか迷うような部分もありましたね。

そんな状況をどのように打開されたのですか。

前島:とにかく私自身がまず率先してコミュニケーションを図るようにしました。留学生の彼だけが孤立してしまうのが最も心配でしたので、仕事中はもちろん、終業後も一緒に食事に行ったりしました。そんなやりとりのなか、こちらから日本語を教えたり、逆に留学生からベトナム語を教えてもらったりしているうちに自然と互いに打ち解けることができましたね。

吉田:法人としてお願いしたわけではなかったのですが、前島さんが率先してコミュニケーションを図ってくれたおかげで、周囲のメンバーとも次第に交流が広がっていったようですね。言葉や文化について、日本のものを一方的に伝えるのではなく、互いに教え、学び合うことで親睦を深めてくださったのも良かったと思います。

次第に広がる外国人材の活躍

入所者とコミュニケーションをとる、外国人介護士

その後の外国人材の受け入れ状況はいかがですか。

吉田:最初の留学生を迎えた数ヶ月後に、介護留学のために自費で来日していた留学生6人を迎えました。彼らの多くは介護専門学校を卒業したのち在留資格「介護」を取得し、今も私たちの施設で働き続けてくれています。また、現在では特定技能「介護」やEPA介護福祉士候補などの資格で働いている職員が数人います。国籍もベトナムだけではなく、ミャンマーやインドネシア、中国、カンボジアなどさまざまな国ですね。

外国人材の仕事ぶりについては、どのような印象をお持ちですか。

前島:みなさん総じて仕事覚えが早いという印象ですね。仕事に対する姿勢も真面目で、例えばお風呂掃除などの雑務についても、完璧に仕上げてくれるような方が多いです。

施設の利用者さんたちとのコミュニケーションについてはどうですか。

前島:ご利用者様からも概ね好評です。外国人材の日本語能力には個人差があるので、少し噛み合わないような場面も見られますが、それが支障になっている感じは全くありません。むしろ外国人スタッフとの交流を楽しみにされているご利用者様も多いようで、留学生がお休みの日などに「今日はあの子はいないの?」とたずねられることもあります。

業務に関しては、日本人スタッフと同じですか。

前島:留学生の場合はアルバイトとしての勤務なので介護以外の間接業務などが中心ですが、在留資格「介護」の方の場合はほとんど同じ業務をお任せしています。ただ、報告書や介護計画書などの文書作成やご利用者様のご家族からの電話対応などは日本語の細かいニュアンスが必要なこともあり、苦手な方が多いので、そのあたりは日本人スタッフがフォローしています。

一人ひとりとのコミュニケーションが必要なサポートのヒントに

日本人介護職員と確認をおこなう、外国人介護士

―外国人スタッフの研修やサポートに関しては、法人全体で行われているのですか。

吉田:介護研修に関しては日本人スタッフと同じものを受けてもらっていますし、語学学習については日本語を教えるボランティア講師の方にきていただいている施設もあり、終業後の勉強会という形で取り組んでいます。ただ、就業ルールなどに関しては日本で働くうえでの大切な事や日本独特の文化についても説明します。また、外国人スタッフたちの母国での働き方についてもある程度理解し、お互いに工夫しながら働きやすい環境を作っています。

前島:例えば、イスラム教の場合はお祈りや断食など、信仰において大切な習慣もあるのですが、現場ではそれらにもあわせた働き方ができるようにしています。とくに断食の時期は水分補給もできないので、大量の汗をかく夏場の入浴介助などからは外れてもらったりしています。

吉田:ただ、外国人スタッフが抱える悩みや希望を知ることは、どんなサポートを用意するべきかといった判断にも直結しますので、法人としてしっかり把握したいと考えています。現在は、各施設にお願いして外国人スタッフたちの要望や相談は全て私のところで集約できる体制にして、それぞれがどんな悩みや希望を持っているのかを、法人としてリアルタイムで把握できるようにしています。また、トラブルがあった場合も、私が間に入って現場リーダーと解決をすることで、実態の把握につながります。今後はそれらの希望や要望の一つひとつに向き合い、支援や研修内容に反映していくことで、全ての施設で外国人材が活躍しやすい環境をつくっていきたいと考えています。

転職可能な「特定技能」を踏まえ、外国人材から選ばれる施設に

外国人スタッフの受け入れに関し、今後の展望についてお聞かせください。

前島:もっと多様な交流や相互理解のための場をつくっていきたいです。これまでもそれぞれの国の生活様式や文化について教えてもらったり、介護の実情などについて学ぶ交流会や勉強会などを開いたりしてきましたが、それをさらに充実していきたいと思っています。

吉田:今は難しいですが、コロナ禍が落ち着いたら、各施設のスタッフたちが現地に行って直接学べるような機会もつくれたらいいですよね。私自身は、そんなコミュニケーションなどの機会も通じて、外国人スタッフにとって居心地の良い職場をつくっていくという目標を持っています。今後、介護業界全体で外国人材の受け入れが進めば、当然、良い人材を確保するための競争も激しくなるでしょう。とくに特定技能「介護」では、転職も自由にできるため、働く側に選んでもらえる施設づくりが重要になるでしょう。

前島:今はSNSで海外とも簡単につながることができますので、施設の評判などもすぐに伝わります。私たちの施設でも、働いていた留学生が「良い施設だよ」と書き込んでくれたSNS記事を読んで応募してくれたという方が実際にいました。一人ひとりの声に向き合った環境づくりは、良い人材を確保することにもつながっていくと思います。

外国人材採用を検討中の施設へのアドバイス

外国人材の受け入れを検討中の介護事業者や介護施設の方に、今、お伝えしたいことはなんですか。

前島:長い目でみると日本で働いた期間に受けた対応の全てが、日本の印象につながります。それぞれの思いに向き合い、しっかりサポートすることで、良い交流や循環を生み出していただきたいですね。

吉田:当法人に来てくれた外国人材のほぼ全員が、今ではそれぞれの施設にとって欠くべきことのできない人材になっています。外国人介護士は、間違いなく日本の介護現場を支える力になっていくと思いますので、監理団体や登録支援機関などのプロの意見も聞きながら、受け入れの可能性について今後も検討していただきたいですね。

▼外国人介護士受け入れ施設の過去のインタビュー記事はこちら

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