改正入管法とは?改正の背景とポイント・注意点を解説

近年、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)の改正が話題になっています。今回は、新たに創設された在留資格である「特定技能」について解説するとともに、特定活動46号告示の創設や、特定技能の受験対象の拡大など、入管法の改正の動きをまとめてご紹介します。 

入管法改正の理由 

なぜ、このタイミングで入管法が改正されたのでしょうか。 
まず、日本の人口減少と深刻な人手不足が背景にあります。この問題を解消するために、一定の専門性・技能がある外国人を即戦力として受け入れる在留資格「特定技能」が創設されました。また、他の在留資格も包括的に検討・改正が行われています。 入管法は今までの外国人材の雇用における課題を解決するために改正されます。

どのようなところが課題であったかという点については後ほどご説明します。 

 

在留資格の検討と改正が行われている背景 

特定技能が創設されただけではなく、他の在留資格も併せて包括的に検討・改正が行われてます。 大きなポイントは専門分野の外国人は積極的に受け入れ、それ以外の外国人の受け入れは慎重になったという点です。 

 

専門的・技術的分野の外国人の受け入れは積極的に 

専門的な知識や技術がある外国人については、受け入れ積極的に行われるようになりました。

法務省は、在留資格の決定にかかる運用方針を明確化したり、手続きの負担を軽減したりすることによって、円滑な受け入れを図るという方針を示しています特定技能の在留資格は、専門的・技術的分野に入り技能実習は「非専門的・技術的分野」に分類されます 

20194月に入管法施行規則が改正され、地方公共団体などに雇用される外国人が、複数の在留資格にまたがる活動に従事できるよう、一括して資格外活動許可を付与する仕組みができました。 また、20204月には上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートに関係なく、在留資格「介護」を認めるようになりました。 このように、専門的な知識や技術のある外国人の受け入れについては、受け入れやすく外国人本人日本に滞在しやすい仕組みができつつあります。

  

高度専門職告示の改正 

在留資格のうち、高度専門職「高度人材ポイント制が導入されています。ポイントが一定数以上あると、在留資格を更新しやすくなったり、将来的に日本に帰化しやすくなったりといった優遇措置があります。2019年には高度専門職告示が改正され高度人材ポイント制の特別加算対象大学拡大されました(国内では13校から100校以上に拡大) 

また、同じく2019年には、国家戦略特区法関係共同命令の改正により、特区自治体の支援する企業に所属する外国人材に、特別加算を認める制度が創設されました。この制度は、201910月から東京都、12月から広島県で運用が開始されています。 

 

上記以外の分野の外国人 

一方で、専門的・技術的分野ではない外国人の受け入れについては、慎重な姿勢が示されています 

2019年には「失踪技能実習生を減少させるための施策」が公表され、2020年に一部改正された技能実習法施行規則では、失踪に帰責性のある実習実施者及び監理団体の新規受け入れ停止及び口座振込等による報酬支払いを導入しました。 

留学生の在籍管理についても徹底する方針が公表されています。2019年に公表された「留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」は、大学における留学生の在籍管理が不十分であり、繰り返し指導しても改善が見られない場合は、「留学」の付与停止もあり得るという内容です。 これらの改正から、専門的・技術的分野ではない外国人の受け入れについては慎重に対応し、徹底した管理を行う方針であることがわかります。 

 

留学生と技能実習生の雇用をめぐる課題 

我が国の方針として、留学生30万人計画が掲げられてきました。

この数値目標を達成するために留学生を積極的に受け入れていましたが、受け入れ機関において管理が徹底されているとは言い難い状況でした。留学生の中には、純粋な留学生もいれば出稼ぎ目的の留学生も散見され留学生の管理であったがゆえに大量の所在不明者が発生したことが問題にもなりました国としても管理が行き届いていなかった面があります。 

また、技能実習生制度についても問題が浮き彫りになっています。本来、技能実習生制度は、開発途上国の労働者を日本で一定期間受け入れることで、技術や知識を学んで持ち帰ってもらい、本国の発展に活かそうというものでした。 しかし、本来の目的から外れて技能実習生が単純労働をしている現状があり、低賃金、残業代未払いや長時間労働、実習生の犯罪や失踪などが問題視されています。

 

このように、現在日本の人手不足を技能実習生と留学生に頼っているのが現状ですが、留学はそもそも労働ビザではなく、本来の制度の目的から外れていることが問題となっています。しかし、「就労目的で在留が認められている外国人」以外の労働者が多い現状からも分かる通り、日本の労働力不足を外国人で補うには制度が欠陥しています。 

そこで、現行の制度の欠陥を補う新たな制度として設立されたのが「特定技能」と「特定活動46号」です。特に、「特定技能」は単純労働を認めた在留資格であることが特徴です。 

 

 

在留資格「特定技能」の創設 

20194創設された在留資格「特定技能」について説明します。特定技能は就労可能な在留資格で特定技能1号と、特定技能2に分類されます 

 

特定技能1号と2号の違い 

特定技能1号と2号は産業分野によって区分されます 

 

産業分野による区分 

  • 特定技能1号……特定産業分野(14分野)にのみ適用され、それ以外の業種では、特定技能の在留資格は適用されません
    特定産業分野(14分野)は以下の通りです

①介護 ②ビルクリーニング ③素形材産業 ④産業機械製造業 ⑤電気・電子情報関連産業 ⑥建設 ⑦造船・舶用工業 ⑧自動車整備 ⑨航空 ⑩宿泊 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業

  • 特定技能2号……建設と、造船・船用工業の2分野にだけ認められています

 

その他の違い 

技能水準や、日本語能力水準、家族の帯同、受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象かどうかという点にも差があります。 

  • 技能水準について……特定技能1号の場合は試験で確認しますが、技能実習2号を良好に終了すれば試験が免除されます。特定技能2号の場合は試験が必要です
  • 日本語能力水準について……特定技能1号の場合は試験で確認しますが、技能実習2号を良好に終了すれば試験が免除されます。また、特定技能2号の場合は試験がありません
  • 家族の帯同……特定技能1号では基本的に認められません。特定技能2号の場合は、要件を満たせば配偶者と子を帯同できます
  • 受入れ機関または登録支援機関による支援……特定技能1号では対象になりますが、特定技能2号は対象になりません

 

「特定技能」の受験機会が拡大 

20204月から観光などを目的に入国する3カ月以内の短期滞在者に対して、特定技能の受験機会拡大されましたまた、在留資格があれば、退学・除籍の留学生、失踪した技能実習生でも受験可能となりました 

ただし試験に合格したからといって、必ずしも在留資格の付与が保証されるものではありません。 

 

 

「特定技能」の外国人労働者を受け入れる場合に必要な対応 

在留資格が特定技能1号の場合、第三機関に支援や管理を依頼する場面があるので、日本人と同じように採用・管理することができません。登録支援機関・受け入れ機関との連携が必要です。 

 

登録支援機関・受け入れ機関とは 

登録支援機関は、特定技能の外国人を実際に受け入れて支援する個人事業主や、企業のことを指します。 

受け入れ機関は、外国人材と雇用契約を締結する個人事業主や企業のことを指します。 

 

外国人労働者を受け入れるための基準 

外国人労働者を受け入れるためには、以下の要件をクリアする必要があります。 

  • 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること。一例として、報酬額が日本人と同等以上であること
  • 受け入れ機関そのものが適切な機関であること(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと)
  • 外国人を支援する体制があること 
  • 外国人を支援する計画が適切であること 

外国人を支援する体制や計画は事前によく考えておく必要があります。社内制度についても、休暇の取得時期の見直しや、職務記述書の明確化などの対応が必要です。 

 

留学生アルバイトを正社員雇用できる特定活動46号告示の創設  

2019年5月30日に施行された、特定活動46号告示についてご説明します。 

創設の背景 

留学生の卒業後の就職率が30%という就職率の低さが制度設立の背景にあります。留学生の卒業後の就職率の低さの原因の一つは、就労ビザ(技人国ビザ等)は基本的に大卒でないと取得できないためです。現状では専門学校や日本語学校に通う留学生が多いですが、それらの卒業生は就労ビザを取得できず、帰国せざるを得ません。 

また、学校で学んだ内容に見合った業務内容でないと就労ビザが下りないため、専門学校等の卒業生が取得できる在留資格がこれまで無かったことも、日本に残って就職できない理由の一つでした。 

そこで、そのような留学生が日本で就職できるように設立されたのが、特定活動46号告示です。これにより、留学生の卒業後の就労人口の増加を目的としています。 

留学生のアルバイトをそのまま新卒採用可能に  

日本の大学や大学院を卒業した留学生は、これまで、製造業の単純労働として働いたり、飲食店、小売店などで販売スタッフとして働いたりすることができませんでした。しかし、特定活動46号では、技術・人文知識・国際業務の就労ビザでは就けない接客業に就けることがポイントです。これは、留学生アルバイトをそのまま新卒採用できるという規制緩和とも言えます。 

特定活動46号告示の条件 

特定活動46号告示は、取得条件のハードルが高いことが特徴です。 

条件は、以下のように細かく定められています。 

  • 常勤で雇用されること。アルバイト・パート、派遣などは認められません
  • 日本の大学や大学院を卒業し、学位を得ていること。中退者や海外の大学、短大、専門学校卒は対象外です
  • 日本語能力試験N1を取得している、またはBJTビジネス日本語能力テストが480点以上であること
  • 日本人の大卒者・院卒者と同等額以上の報酬であること。昇給面も含みます
  • 日本語を使った円滑なコミュニケーションを要する業務であること。単純労働では認められません
  • 日本の大学や大学院で取得した知識を応用する知識労働が一定水準以上含まれているか、将来的に従事する見込みがあること 
     

なお、家族の帯同も可能です。家族のアルバイトに関しても、特定活動47号告示によって在留資格を得て、資格外活動許可申請をすれば可能です。 

特定活動46号告示とその他の就労ビザの違い 

特定活動46号告示と特定技能1号の違いは、特定技能1号が14業種に限定されているのに対し、特定活動46号告示は業種・職種の制限がない点です。 

特定活動46号告示は、特定技能や技能実習と異な、採用・管理は日本人とほぼ同じ運用になります。ただし、風俗営業活動や大学・大学院で習得した知識や能力を必要としない業務のみに従事することはできません。 

特定技能の場合は、そもそもの目的が「日本の労働力不足の補填」ですが、特定活動46号の場合は、「留学生の日本への定着率をあげること」という目的の違いがあります。ちなみに、技術・人文知識・国際業務のビザの場合は、外国人の知識労働者の獲得が目的です。 就労できるという点ではよく似ていますが、目的や詳細な点が異なりますので注意しましょう。 

最近の動向の総括 

入管法改正の最近の動向としては、専門分野の外国人は積極的に、そうではない人の受け入れは慎重になったということです。 

専門分野の外国人については、特定技能の創設と受験機会拡大を始め、高度人材のポイント制の開始と拡大、特定活動46号の創設など、受入れ拡大の方向で動いています。 技能実習生については、失踪技能実習生対応の施策が公表されました。留学生の場合は、在籍管理の徹底が図られ、抑制される方向です。 

まとめ 

今回は、最近の入管法の改正についてご紹介しました。 

外国人受入れに関する従来の施策の課題を解決するため、2019年から2020年にかけて新たな在留資格創設されたり、今までの受入れ体制について慎重な姿勢が示されたり、多くの改正点がありました。 

2019年に創設された特定技能の在留資格については、受験機会が拡大し、現在は旅行者でも受験できるようになりましたただし合格したからといって必ずしも在留資格が付与されるわけではないため注意が必要ですまた、特定活動46が新設され、日本で学んだ留学生が、日本にとどまって仕事をしやすくったことも大きなポイントです 

人手不足や労働・雇用の問題と外国人受入れに関する施策は密接に関係しています。今後動向に注目していきましょう。