【最新】特定技能2号外食業分野についてわかりやすく解説!
2023年に特定技能2号の分野がそれまでの2分野から11分野へと広がり、外食業も特定技能2号の対象分野となりました。
特定技能2号は、特定の産業分野において習熟した技能を持つ外国人が取得できる在留資格ですが、その分、要件も1号より難しくなっています。
そこで今回は、外食業分野の特定技能2号の概要と申請要件について詳しく解説するので、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
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特定技能2号の概要
特定技能2号とは、特定技能1号よりも習熟した技能と豊富な実務経験を積んだ人材が得られる在留資格です。
特定技能1号の上位に位置する在留資格といえます。
取得した外国人は、人手不足が深刻な産業分野において、単純労働を含む幅広い業務に従事することが認められます。現在、1号は12分野、2号は11分野あり、基本的には、1号の特定技能外国人が同じ分野の2号を取得してステップアップすることが想定されています。
外食業分野はその11分野のうちの1つです。
▼特定技能1号の外食分野については以下の記事で解説中!併せてご覧ください。
技能水準
特定技能2号の技能水準は、習熟した業務技能と一定以上の日本語能力、自らの判断で高度な業務を行ったり、監督者として副店長やサブリーダーといった店長補佐や管理業務を行ったりできることが求められます。
特定技能2号の特徴
特定技能2号の在留資格の特徴として、次のようなポイントがあります。
- 在留期間の更新上限なし
- 家族帯同が可能
- 永住権の要件を満たせる可能性がある
- 特定技能外国人がキャリアステップを描ける
順に説明します。
在留期限の更新上限なし
特定技能1号は、在留期限の更新に上限があり、通算で5年間だけ在留が許されています。しかし、特定技能2号には在留期限の更新に上限がありません。3年・1年・6か月ごとに更新が必要ですが、何度でも更新できます。つまり、本人の意思があれば日本に在留し続けることができます。
家族帯同が可能
特定技能1号では家族帯同は許されていませんが、特定技能2号は、配偶者と子であれば呼び寄せることが可能な場合があります。
永住権の要件を満たせる可能性がある
特定技能2号は、永住権の要件を満たせる可能性があります。
永住権申請には国益適合要件というものがあり、10年間の在留が必要です。このうち就労資格(就労ビザなど)や居住資格で5年以上の在留が必要で、技能実習と特定技能1号はその期間にカウントできないことが決められています。特定技能2号になって初めて永住権を目指すことができるのです。
特定技能外国人がキャリアステップを描ける
特定技能1号では通算5年しか在留が認められていないので、日本で自分のキャリアプラン、つまり出世していく過程想像することは困難です。しかし、特定技能2号によって長期的な就労が可能となり、将来の計画を立てられるようになります。例えば、サブリーダーになりたい、いずれは店長になりたいや社員たちのリーダーになりたい、などです。
▼特定技能1号と2号の違いをわかりやすく説明しました。ぜひご覧ください
外食業特定技能2号の申請要件
外食業で特定技能2号の在留資格を申請するためには、2種類の試験への合格と、規定の実務経験がなければいけません。
- 「外食業特定技能2号技能測定試験」への合格
- 「日本語能力試験(JLPT)」N3以上への合格
- 指導・管理などの2年間の実務経験
合格すべき2つの試験
特定技能2号の申請には、「外食業特定技能2号技能測定試験」と「日本語能力試験(JLPT)」N3以上」に合格する必要があります。
この2つの試験について、順に説明します。
1.外食業特定技能2号 技能測定試験
外食業特定技能2号技能測定試験は、外食業における特定技能2号の技能試験で、「一般社団法人外国人食品産業技能評価試験(OTAFF)」が主催している試験です。
技能試験の詳細は後ほど説明します。
2.日本語能力試験(JLPT)のN3以上
外食業では、技能試験だけでなく、日本語能力試験(以下、JLPT)のN3以上に合格する必要があります。在留資格の申請前までに合格していなければなりません。多くの分野では日本語能力試験への合格は特定技能2号の取得要件には含まれていないため、外食業の特徴といえます。
N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルの日本語力だとされています。
なお、特定技能1号の申請に必要な日本語試験はJFT-basicも対象でしたが、2号からはJLPTに限定さますので、注意が必要です。
▼N3ってどれくらい話せるの?日本語能力試験のレベルの考え方は以下の記事でわかります
指導・管理などの実務経験
外食業分野の特定技能2号を申請するためには、日本国内の飲食店において、2年間にわたり複数の従業員の指導・監督業務経験と店舗運営の補助業務の経験が必要です。
その経験の証明として、サブリーダーや副店長の肩書きを付与した辞令書や職務命令書、シフト表を提出します。
注意したい点は、技能実習や家族滞在、留学の在留資格のときの業務経験は要件に該当しないことです。また、外国人の母国での経験も含まれません。
経過措置について
外食業には、実務経験について経過措置があります。
2023年6月10日に外食業が特定技能2号の対象分野となったことを受けての措置です。
2023年6月10日時点で特定技能1号としての在留期間上限の日が「2年6カ月未満」だった場合、そこから6カ月を減じた分だけ管理・指導等の実務経験があれば、実務経験を満たしたことになります。
つまり、経過措置の対象である場合、2年に満たない場合でも実務経験の必要条件を満たしていることにできる可能性があります。
申請に必要な書類
外食業の特定技能2号の申請に必要な書類は、以下の通りです。
【特定技能2号申請 必要書類】
- 在留資格変更許可申請書をはじめとした「(1)申請人に関する必要書類」(全分野共通)
- 「(2)所属機関に関する必要書類」(全分野共通)
- 外食業特定技能2号技能測定試験の合格証明書の写し
- JLPT(N3以上)の合格証明書の写し
- 保健所長の営業許可証又は届出書の写し
- 外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(特定技能所属機関によるもの)
- 協議会の構成員であることの証明書(特定技能所属機関)
「(1)申請人に関する必要書類」と「(2)所属機関に関する必要書類」に関しては、以下のページを参考にしてください。
▶ 在留資格「特定技能」 特定技能2号|出入国在留管理庁
特定技能2号の取得手続き
特定技能2号の取得手順は以下の①~④の流れが基本です。
- 特定技能1号外国人にサブリーダーや副店長などの役割を任せ、複数のアルバイトや特定技能外国人の指導・監督や店舗管理の補助を原則2年間経験させる
- JLPTのN3以上を受験、合格する
※JLPTが外食業特定技能2号技能測定試験の受験後という場合もあります。 - 1. の実務経験2年を満たしたタイミングで、外食業特定技能2号技能測定試験を受験、合格する(この際に①の経験・肩書を証明するものが必要)
- 在留資格変更許可申請書などの2号の申請に必要な各種書類を用意し、最寄りの地方出入国在留管理局・支局(空港支局を除く)に提出する
▼特定技能2号の様々な分野について知りたい場合は以下をご覧ください。
特定技能2号技能測定試験について
特定技能2号技能測定試験は、特定技能1号外国人にとってひとつの壁となる試験です。詳しく解説します。
試験の概要
日本における外食分野における知識や技能を試す試験です。
現状は、特定技能外国人が、個人で受験申請をすることはできません。特定技能外国人を雇用している企業が申し込みをします。
申し込みのためには、企業登録申請締め切り日までにマイページ登録が必要です。本登録として企業の詳細情報を登録しなければいけないので、スケジュールに余裕をもって行いましょう。
合格基準は満点(250点)の65%以上です。
学習テキストもあり、「一般社団法人日本フードサービス協会」のサイトから取得することができます。
▶ 外食業技能測定試験学習用テキスト|一般社団法人日本フードサービス協会
受験資格
受験資格は、次のア~エの全てを満たす人です。
- ア. 試験の日に在留資格を有する人
- イ. 試験日の時点で満17歳以上である
- ウ. パスポートの所持
- エ. 試験の前日までに外食業分野において複数のアルバイトや特定技能外国人などを指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、サブリーダーや副店長など店舗管理を補助する実務経験(指導実務経験)を2年以上有する、または試験の前日までに指導実務経験を2年以上有することが見込まれること
※「エ」は先述した実務経験を指す
テスト方式
試験は学科試験と実技試験の2科目行われます。試験時間は70分で、言語は日本語で出題されます。なお、漢字にルビはついていません。ペーパーテストで、マークシート形式です。
試験科目
試験は、学科試験と実技試験で行われます。出題範囲は以下の通りです。
学科試験の出題範囲:衛生管理、飲食物調理、接客全般及び店舗運営に係る知識を測定。
項目 | 主な内容 | 問題数 | 配点 |
衛生管理 | ・一般衛星に関する知識 ・HACCPに関する知識 ・食中毒に関する知識 ・食品衛生法に関する知識 | 10問 | 満点:40点 |
飲食物調理 | ・調理に関する知識 ・食材に関する知識 ・調理機器に関する知識 ・食品の流通に関する知識 | 5問 | 満点:10点 |
接客全般 | ・接客サービスに関する知識 ・食の多様化に関する知識 ・クレーム対応に関する知識 ・公衆衛生に関する知識 | 10問 | 満点:30点 |
店舗運営 | ・計数管理に関する知識 ・雇用管理に関する知識 ・届出関係に関する知識 | 10問 | 満点:40点 |
合計 | 合計35問 | 合計120点 |
実技試験の出題範囲:業務上必要となる技能水準を測定。
項目 | 主な内容 | 問題数 | 配点 | ||
判断試験 | 計画立案 | 合計 | |||
衛生管理 | 学科試験と同じ | 3問 | 2問 | 5問 | 満点:40点 |
飲食物調理 | 3問 | 2問 | 5問 | 満点:20点 | |
接客全般 | 3問 | 2問 | 5問 | 満点:30点 | |
店舗運営 | 3問 | 2問 | 5問 | 満点:40点 | |
合計 | 計12問 | 計8問 | 計20問 | 合計130点 |
試験の実施状況
現状では国内でのみ実施されています。特定技能1号のように、国外試験はありません。
年に3回程度実施されます。各回のくわしい試験日程は、決まり次第「一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)」のサイトで確認できます。
合格者数
2024年度第1回目(5月6月実施)に全国で行われた特定技能2号技能測定試験の結果は、以下の通りとなっています。
【2024年5月6月 試験結果】
会場 | 受験者数(人) | 受験者数(人) | 受験者数(人) |
---|---|---|---|
北海道 | 4 | 4 | 100% |
宮城 | 4 | 1 | 25.0% |
埼玉 | 3 | 2 | 66.7% |
東京 | 64 | 29 | 45.3% |
石川 | 2 | 2 | 100% |
愛知 | 14 | 4 | 28.6% |
大阪 | 11 | 2 | 18.2% |
広島 | 1 | 1 | 100% |
福岡 | 8 | 7 | 87.5% |
宮崎 | 1 | 1 | 100% |
合計 | 112 | 53 | 47.3% |
このように、受験者の合格率は平均で40%超えています。
外食業分野は他の分野に比べて受験者数が多く、合格率も高い傾向にあります日本語のみでルビ無しにもかかわらずこの合格率は高いものだといっていいでしょう。
試験サンプルは公開されていませんが、学習用テキストを見ると、指導・監督、管理する立場などの知識が必要であることがわかります。特定技能2号の外国人には店長を補佐するような業務に就くことが求められるため、その適性が試験で測られます。
▶ 特定技能2号試験学習用テキスト|一般社団法人日本フードサービス協会
企業が特定技能2号外国人を雇用するメリット
企業が特定技能2号外国人を雇用するメリットは、2つ。
ひとつめは「店舗管理・従業員の指導ができる人材を確保できる」こと、
ふたつめは「特定技能2号になりたい外国人材を探しやすくなる」ことが挙げられます。
詳しく見ていきましょう。
メリット① 従業員の指導や店舗管理ができる人材の確保
ひとつめのメリットは、店舗管理や従業員の指導ができる人材を確保できることです。特定技能2号外国人は、在留資格の更新に上限がありません。そのため、長期間にわたって店舗で従業員の指導や店舗管理の補助を行うことができます。言い換えれば、受け入れ企業で重要な戦力になり得るのです。
メリット② 特定技能2号になりたい人材を探しやすくなる
ふたつめのメリットに、特定技能2号になりたい外国人材を探しやすくなる点があります。特定技能2号という在留資格は、長期で就労しやすい在留資格であるため、外国人にとって魅力的なものです。
実際にアンケートを取った結果、63.6%が特定技能2号で働きたいと考えています。
特定技能2号を目指したいという外国人は少なくありません。
このことから、特定技能1号の採用において「当社では特定技能2号を取得できる」という情報を伝えることは、外国人への大きなアピールポイントとなります。またすでに特定技能2号外国人を雇用している場合も同様でしょう。日本で長く働ける環境が整っている企業だと示せるからです。優秀な外国人ほど競争率が高くなりますので、このようなアピールも上手に利用しながら採用活動を行うことをお勧めします。
▼アンケート結果はこちらからもっと詳しく見ることができます!
「日本在留外国人の日本での就労意欲・特定技能に関する調査結果」
まとめ
外食業分野で特定技能2号を取得するためには、2つの試験の合格と、店舗管理の補助や従業員への指導などサブリーダーとしての実務経験が必要です。
多くの特定技能外国人は、特定技能2号を取得したいと考えています。在留期限ギリギリになってから慌てないよう、特定技能1号で採用したときから「指導・管理などの実務経験」を積むための計画をたてておくことをお勧めします。
また、今後も外国人から選ばれる企業になるためには、特定技能2号の外国人雇用をすることが重要です。
特定技能2号を目指す外国人が多いことから、多くの外国人は2号を視野にいれながら特定技能1号で働くはずです。企業が1号外国人しか雇用しないと決めている企業より、2号の取得を支援してくれる企業のほうが選ばれやすくなっていくことは想像に難くありません。
より優秀な人材を集めるためにも、特定技能2号外国人の雇用が必要になってくるでしょう。