【全16種類】就労ビザとは?条件や取得方法をわかりやすく解説
日本で外国人を雇用するためには、就労ビザが必要になります。就労ビザは法律上、本人が申請しなければなりませんが、外国人労働者が1人で申請するには複雑な点も多く、企業のサポートが不可欠です。
そこで今回は、就労ビザの種類や就労ビザと在留資格の違いのほか、就労ビザの1つである「技術・人文知識・国際業務」を中心に申請フロー、注意点まで解説します。
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目次
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就労ビザとは
在留資格のうち、外国人の方が日本で「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」つまり、会社経営者や会社員、個人事業主として働くことが可能な在留資格をいわゆる「就労ビザ」と呼びます。
在留資格とビザの違い
在留資格とは『日本での在留と一定の活動を認める資格」のことです。
在留資格は「ビザ」と呼ばれることがありますが、本来、ビザと在留資格は別物です。ビザは上陸審査の時に使用するもので、正式には「査証(さしょう)」と呼びます。本来は別物の在留資格とビザを同じ意味合いで使用し、働くことを目的とした在留資格を通称で「就労ビザ」と呼んでいます。
具体的には以下の16種類の在留資格を就労ビザと呼びます。
- 技術・人文知識・国際業務
- 特定技能
- 技能実習
- 介護
- 企業内転勤
- 経営・管理
- 技能
- 興行
- 教育
- 研究医療
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 法律・会計事務
- 教授
上記の中でも就労ビザの代表格とされるものは、「技術・人文知識・国際業務」です。就労ビザと呼ばれるときには「技術・人文知識・国際業務」を指すことが一般的です。その他の在留資格全般については以下の記事をご覧ください。
▶関連記事:【29種類一覧】在留資格とは?要件や取得方法を総まとめ!
就労ビザの種類(16種類)
では、就労ビザそれぞれの種類について簡単に紹介します。
技術・人文知識・国際業務
外国人が、日本で技術者やオフィスワーカーとして企業で働く場合に必要になる在留資格が、「技術・人文知識・国際業務」です。
頭文字を取って、「技人国(ギジンコク)」とも呼ばれます。
学歴(職歴)と業務内容との関連性があることが要件で、外国人本人の専門的な知識やスキル、感受性を活かせる業務内容ではない場合は、基本的に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は取得できません。
在留期間は5年、3年、1年または3カ月です。
技術・人文知識・国際業務のそれぞれの主な業務内容を説明します。
「技術」
技術は、「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術を要する業務」とされています。
例えば下記の業務です。
- 管理業務(経営者を除く)
- 調査研究
- 技術開発(農林水産分野、食品分野、機械器具分野、その他製造分野)
- 生産管理(食品分野、機械器具分野、その他製造分野)
- 建築・土木・測量技術
- 情報処理・通信技術 等
「人文知識」
人文知識は、「法律学、経済学、社会学等、その他人文科学の分野に関する知識を要する業務」とされています。
例えば下記の業務です。
- 法律関係業務
- コピーライティング
- 教育(教育機関を除く)
- 企画事務(マーケティング、広報、宣伝)
- 会計事務
- 法人営業 等
「国際業務」
国際業務は、「語学力や外国の文化、国際経験等を要する業務」とされています。
例えば下記の業務です。
- 翻訳
- 通訳
- 海外取引業務
- デザイン 等
技人国に関する詳細は以下の記事をご覧ください。
特定技能
日本国内で人手不足が深刻とされている「特定産業分野」において、人手不足解消のために、即戦力となる外国人材の雇用が可能になった在留資格が、「特定技能」です。
「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、「特定技能1号」は12分野です。また、これに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が追加されることが決定しています。まだ受け入れは開始していませんが、すでに対象分野の企業では採用の検討がされています。
「特定技能2号」は以前は2分野のみでしたが、介護分野を除く11分野(追加4分野は未定)で取得が可能となりました。2023年秋から各分野で2号の試験がスタートしていて、それぞれ試験サンプルを公開していますが、試験未実施の分野もあります。
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特定技能1号
特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。
就労可能な業種は以下です。
在留期間は1年、6カ月、4カ月(最大5年以内)です。
なお、「農業」と「漁業」のみ、派遣での雇用が可能です。
特定技能2号
特定技能2号は、特定技能1号からの移行のみで取得できる、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。以前は2分野のみでしたが、介護を除く11分野で取得が可能になっています。
介護は他に在留資格「介護」などの在留資格移行先があるため2号は創設されていません。
在留期間は3年、1年、6カ月です。2号は更新回数の制限はありません。
技能実習
外国人が、日本に技術を学びに来て、海外へ技能移転をするための在留資格が「技能実習」です。
建設、食品製造、機械・金属関係等さまざまな職種・作業で受け入れが可能です。技能実習は、1号から3号まであり、最長で5年日本に滞在することができます。
在留期間は、1号は1年以内、2号、3号は2年以内です。
技能実習に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
介護
外国人が日本で介護職として働くための在留資格が「介護」です。
介護福祉士養成学校を卒業し、介護福祉士の資格を持っている人が対象です。特定技能の介護分野と異なり、原則、介護福祉士の資格を持っている必要があります。訪問系サービスも可能で、働く期間の制限もありません。
在留期間は5年、3年、1年または3カ月です。
介護に関する詳細は以下の記事をご覧ください。
企業内転勤
海外にある本店や拠点に在籍させたまま、外国人従業員を日本に一定期間転勤させる場合に必要な在留資格が「企業内転勤」です。「企業内転勤」で認められている業務は、上記で説明した在留資格「技術・人文知識・国際業務」で認められている業務と同じです。
在留期間は5年、3年、1年または3カ月です。
経営・管理
外国人が日本で会社を設立し、経営したり、管理職の立場で仕事をするための在留資格が「経営・管理」です。
日本国内で法令上適正に営まれている事業であれば、業種や業態に制限はありません。レストランの経営や、貿易会社、不動産業など幅広い業種で認められます。
在留期間は5年、3年、1年、6カ月、4カ月または3カ月です。
技能
日本にはない特殊な分野や日本よりレベルの高い分野等で熟練した技能を持つ外国人を日本に招くことができる在留資格が「技能」です。
料理人や、外国特有の建築、航空機の操縦やスポーツ指導者などでそれぞれ必要な実務経験年数がある場合に認められます。
在留期間は5年、3年、1年または3カ月です。
興行
外国人モデルや歌手、俳優、音楽家、タレント、プロスポーツ選手などがコンサート、TV出演、舞台出演等で日本で仕事を行うために必要な在留資格が「興行」です。
在留期間は3年、1年、6月、3カ月または15日です。
その他
上記以外にも、下記のような在留資格があります。
教育 | 小学校、中学校、高等学校の語学教師等、日本の教育機関で語学教育等に従事するための在留資格です。 |
研究 | 小学校、中学校、高等学校の語学教師等、日本の教育機関で語学教育等に従事するための在留資格です。 |
医療 | 医師・歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士等、医療機関で法律上資格が必要な医療に従事するための在留資格です。 |
芸術 | 作曲家、画家、小説家等、収入を得て音楽、美術、文学等の芸術上の活動を行うための在留資格です。 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される僧侶や牧師、宣教師等、宗教上の活動を行うための在留資格です。 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマン、アナウンサー等、外国の報道機関との契約に基づいて取材や報道を行うための在留資格です。 |
法律・会計事務 | 弁護士、司法書士、公認会計士、税理士等、法律上資格が必要な法律又は会計の業務に従事するための在留資格です。 |
教授 | 大学教授等、大学やその他の高等専門学校で、研究や指導、教育を行うための在留資格です。 |
上記の在留資格の在留期間は全て共通で、5年、3年、1年または3カ月です。
就労ビザの申請方法と取得の流れ
では、就労ビザを取得するための手続きについて説明します。ここでは、在留資格申請のフローを紹介します。
2つの申請方法
就労ビザの申請には以下の2つのパターンがあります。
2. 変更の申請(在留資格が変わる場合)
1 は海外から来日して働く場合、2 は在留資格を切り替える場合です。
2の例としては、留学生が就職する場合に「留学」の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」に変更する場合などが挙げられます。
なお、転職する場合、変更申請が必要な場合もありますので、ご注意ください。例えば、特定技能の場合、勤務先変更の際は再申請が必要で、技能実習は原則転職ができません。
在留資格に変更がなく、勤務先を変える場合は転職前に「就労資格証明書」を取得しておきましょう。
就労資格証明書とは、法務大臣がその外国人に認められている就労活動について証明した書類です。これが取得すると、転職先の会社と職務内容についての審査は事前に済んだことになり、更新時に不許可になるリスクを低減できます。
申請者について
2の変更の申請の場合は、原則本人が申請をします。
新規に在留資格を取得する1の場合は求職者がまだ日本にはいないため、企業が申請代理人として「在留資格認定証明書」を申請する必要があります。取得したら「在留資格認定証明書」は海外にいる外国人本人に送り、その先の就労ビザ申請は外国人本人が行います。
1. 新規の申請:在留資格認定証明書交付申請を行う
就労ビザを新規に申請する場合のフローをご紹介します。
①在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書を交付してもらいます。申請は、出入国在留管理局(勤務先所在地管轄の地方出入国在留管理局)へ行います。先述の通り、外国人本人はまだ海外にいるため、受け入れ先の企業が代理人として手続きします。標準処理期間は約1〜3カ月です。
②在留資格認定証明書の交付
日本にいる代理人(受け入れ先企業)に送付されます。
③在留資格認定証明書を外国人本人に送付
海外にいる外国人本人に在留資格認定証明書を送付します。
④在留資格認定証明書を在外日本公館で提示しビザ(上陸許可)を申請
外国人本人が行います。通常、申請受理の翌日から最短5業務日以内に発給を受けます。
⑤在外日本公館にてビザ発給
原則、在留資格認定証明書作成日から3カ月以内に日本に入国しなければなりません。上陸港で在留カードを受け取れる場合もあれば、後日居住地に郵送される場合もあります。
在留資格認定証明書交付申請の必要書類について
在留資格認定証明書交付申請には、以下の書類が必要です。
◆ 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
◆ 返信用封筒 定型封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの 1通
◆ 日本での活動内容に応じた資料
在留資格によって別途必要な書類が違いますので、詳細は出入国在留管理庁のHPで確認をしましょう。
在留資格認定証明書の更に詳しい情報を以下の記事にまとめていますので、こちらも併せてご確認ください。
2. 在留資格変更許可申請
在留資格資格変更許可を申請
出入国在留管理局(申請人の住居地管轄または勤務先所在地管轄の地方出入国在留管理局)へ申請します。
あらかじめ変更後の在留資格に応じた必要書類を準備しましょう。申請時にはパスポートと在留カードの原本も持っていく必要があります。
結果通知が届く
審査の結果、問題が無ければ新しい在留カードの発行手続きのための通知(ハガキ)が出入国在留管理局から届きます。
新しい在留カードを受け取る
出入国在留管理局にて、新しい在留カードの発行手続きを申請人本人が行います。パスポート、在留カード、通知ハガキと申請受付票を持っていきましょう。
【注意!】申請が不許可になる場合
就労ビザの申請をしても、必ずしも許可になるわけではなく、不許可になる場合もあります。どんな原因で不許可になる事が多いのか、「技術・人文知識・国際業務」での例を紹介します。
業務内容
「技術・人文知識・国際業務」では、専門学校や大学で学んだ知識と会社で行う業務内容が関連していることが要件になっています。不許可になる事例は、この関連性が認められないケースが多いです。
オーバーワーク
就労ビザではない在留資格(留学や家族滞在など)の場合、アルバイトをするためには資格外活動許可が必要です。
資格外活動は「週28時間以内(長期休みは1日8時間以内)」と決められていますが、それを超えてアルバイトをしたことが発覚した場合に不許可になってしまうケースが多いです。法令をきちんと守っているか、採用前に確認しましょう。
虚偽
当然ですが、学歴や職歴などの虚偽申請も不許可の対象となります。
虚偽の意図がなく誤って記載してしまった場合でも、不許可になってしまうケースがあるので注意が必要です。
不許可事例・対処法などの詳細は以下の記事をご覧ください。
就労ビザの審査には何日かかる?
就労ビザの申請は、すぐに通るものではありません。日数に余裕を見て申請する必要があります。
「技術・人文知識・国際業務」では、申請後概ね1カ月~3カ月の間に審査され、結果が出ます。あくまでも窓口に書類が受理されてからの日数であり、それ以外の期間(書類の準備期間等)は含まれていません。採用スケジュールや書類の準備期間等も考慮し、余裕を持って準備しましょう。
また、4月入社が多いことから、2~3月は混みあう可能性がありますので、早めに申請することをおすすめします。
審査期間についての詳細は以下の記事をご覧ください。
就労ビザの有効期間と更新方法
就労ビザには、在留期間(有効期間)があります。更新を忘れて在留期間を過ぎてしまうと、不法滞在になってしまうため、注意してください。
就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」の在留期間は「5年・3年・1年、または3カ月」です。更新回数に制限はないため、在留期間が満了する前に更新申請を行い、許可が下りれば日本で働き続けることができます。
更新申請は在留期限の3カ月前から可能です。転職などをしていない場合は比較的スムーズに更新することができますが、申請は早めに行うことをおすすめします。
また、更新手続きの審査中に在留期限を迎えてしまう場合がありますが、在留期限までに在留期間の更新申請をすると、在留期限を過ぎても2カ月間の特例期間が認められていますので、そのまま審査結果を待ちましょう。
具体的な必要書類や手続きは以下の記事をご覧ください。
就労ビザを持つ外国人を雇用する方法
外国人を雇用するにしても、「優秀な人材をどう集めればいいのかわからない」「どうやって雇用したらいいのかわからない」という企業も多いのではないでしょうか。雇用方法をいくつか紹介します。
求人サイト・自社サイトで募集
サイトに掲載するのみなので、費用が掛からないことがメリットです。ただ、応募が必ずあるか分からない、応募者のレベルがバラバラで希望通りの人材が集まるか分からないというデメリットがあります。
ハローワーク
公共職業安定所で求人を掲載する方法です。費用がかからないことがメリットです。
入管主催のマッチングイベント
特定技能の場合、出入国在留管理局が企業と外国人のマッチングイベントを開催していることがありますので、参加するのも1つです。
人材会社から紹介してもらう
人材会社であれば、人材を集めるところから面談の設定をしてもらえます。中には、在留資格等のサポートまで行っている会社もあります。そのため、初めて外国人を雇用する企業や、なるべく早く採用活動を行いたい場合におすすめです。
アルバイト雇用は可能なのか?
就労ビザで既に働いている外国人を、本業とは別にアルバイトとして雇用することは可能なのでしょうか。
「技術・人文知識・国際業務」の場合、資格の範囲内の業務であれば可能です。
資格外業務のアルバイトの場合は資格外活動許可申請が必要です。資格外活動許可を取得せずに、外国人を働かせた場合、不法就労にあたり、企業も罰せられる可能性があります。
詳細は以下の記事をご覧ください。
就労ビザで働く外国人が退職した場合
就労ビザで働く外国人が退職した場合、何をする必要があるのでしょうか。企業がするべきことを紹介します。
就労ビザを持っていた外国人を雇っていた企業は、外国人従業員が退職した時に「中長期在留者の受け入れに関する届出」を入管に提出しましょう。この届出は任意のものですが、提出するのが望ましいです。その際に、外国人本人の氏名、生年月日、性別、国籍、住所、在留カード番号、退職日も所定の様式に記入し、入管に提出します。
また、外国人本人が提出しなければならない「所属機関に関する届出」もあります。この届出は、必ず必要なものなので忘れずに外国人本人に伝えましょう。提出期間は退職から14日以内とされています。
詳細は以下の記事をご覧ください。
就労ビザで働く外国人を雇用する際に注意すべきこと
その他にも、受け入れ先企業が注意しなければならない点はいくつかあります。
日本人と同等以上の給与の設定
経験年数、年齢、職務内容等が近い日本人と同等以上の給与を設定しなければなりません。外国人だからという理由で給与を下げることは出来ませんので注意してください。
3カ月以上その活動をしていないと取り消しの対象になる
「技術・人文知識・国際業務」では、3カ月以上その活動に従事していないと在留資格の取り消しの対象になります。
退職をする外国人にも忘れずに伝えましょう。
在留資格で認められた活動以外に従事させないこと
「技術・人文知識・国際業務」では、専門知識を必要としない単純業務をさせることができません。
例えば、飲食店でのホール、工事現場の作業、工場での組み立て作業等には従事させることができません。飲食店を経営する会社の企画や営業などは技人国の範囲内ですが、ホールや接客は特定技能の範囲です。
また、機械の設計やエンジニアリング、CADは技人国の範囲内ですが、工場での組み立て作業は特定技能の範囲です。在留資格の範囲を超えて就労させないように注意してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は就労ビザの種類から申請フロー、注意点までご紹介しました。また、就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」について焦点を当て、取得方法や不許可事例についても解説していますので、今後外国人を採用する際はこの記事を是非参考にしてください。