【最新版】特定技能外国人数の急増の理由を解説!受け入れ人数枠はあるのか?

特定技能外国人の人数について 記事メイン画像
執筆者:

行政書士/川添賢史

外国人の雇用を考える際に「特定技能」という言葉をよく聞くようになりました。2023年になり、特定技能2号の対象分野が11分野に拡大することが閣議決定され、話題になっています。
そのため、どんな制度なのか、どのくらいの数の外国人がこの「特定技能」で日本に来ているのか、気になっている方も多いと思います。

本記事では、最新版の法務省統計(2022年12月末時点)をみながら、「特定技能」で働く外国人の現状の解説と今後の予測をします。

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特定技能とは

そもそも「特定技能」とは何かというと、在留資格の種類の一つです。外国人が日本に滞在するのに必要な在留資格は30種類以上ありますが、特定技能は2019年4月に創設された在留資格です。日本国内で深刻な人手不足に悩むいくつかの産業分野(現在は12分野)において、働き手として即戦力となる外国人の採用・雇用ができるようになりました。単純労働を含む幅広い業務が可能です。

特定技能には1号と2号があり、2号は介護以外の11分野が対象です。

2号になると家族帯同が可能になり、在留資格更新の上限が撤廃されます。また永住権を得るための要件を満たすこともできるため、1号よりも外国人が長く日本で在留するための条件が整っています。

詳細はこちらの記事を参照してください。

※建設業、造船・船用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材・産業機械製造・電気電子情報産業の12分野。

特定技能外国人の人数の推移と現状

特定技能の在留資格で日本に滞在する外国人の人数は、2021年9月末現在で約3万8千人。新制度ができた2019年4月から2024年3月までの5年間で約34万5千人を上限に見込んでいたことからすると、この最初の2年半での人数は予測を大幅に下回っているように思えます。

これにはいくつかの理由が考えられます。例えば、

  • ほかの在留資格に比べて条件がかなり厳しく、受け入れ体制の整備や申請書類などの手続きが煩雑であったこと
  • 特定産業分野ごとの試験実施や加入義務のある協議会運営が遅れたこと
  • 技能実習といったほかの在留資格との違いなど、制度の理解不足で外国人本人も雇用会社も二の足を踏んだこと

などです。

加えて、新型コロナウイルス感染対策による入国制限も大きな障壁になったのは間違いありません。

しかし、それでも2019年9月末に約200人ほどだった特定技能外国人は以下のように急激に増えてきています。直近では3カ月で1万人近く増えていて、ようやく制度が本格的に動き出したと言えそうです。今後、新型コロナ感染対策による入国制限が緩和された際には、経済復興のもとでの人手不足解消のため、さらに爆発的な増加も見込まれます。

特定技能の資格をもって働いている外国人の数は、ほかの在留資格をもつ外国人(例えば、技術人文国際約30万人、技能実習約40万人、資格外活動アルバイト約40万人など)と比べるとまだまだ少ないものの、3年後、5年後、10年後の少子高齢化による人材不足を補うため、いずれは最大数となることも十分予測できます。現在認められている特定技能1号(上限5年まで)に加えて、特定技能2号(上限なし・家族帯同可など)の範囲が拡大されれば、さらにその数は増えるでしょう。

▶参考:特定技能在留外国人数の公表|出入国在留管理庁 

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特定技能外国人は現在も増加中。その要因とは。

ここからは特定技能外国人の増加について、いくつかの分析と今後の予測も含めて、具体的な中身をもう少し詳しくみていきましょう。

まず、新型コロナウイルス感染対策による厳しい入国制限があるなかで、なぜこれだけ多くの「特定技能」外国人が増えているのでしょうか。それは、その多くがほかの在留資格(技能実習や留学など)をもって日本に滞在していた外国人からの「移行組」だからです。

本来は、アジアを中心に海外から新たに多くの労働者に日本に来てもらうことを想定していました。しかし実際は入国制限が強化され、多くの帰国困難者が出たことから、今「特定技能」をもって日本で働いている外国人の大半は、もともと別の在留資格で日本に滞在していた方々です。加えて、新型コロナウイルス感染対策の特例措置として、日本に滞在したまま在留資格を「特定技能」やその準備のための「特定活動」(特定技能と混同しやすいので注意)に変えたりするための条件が緩和されたことも一層その傾向を強めました。

移行組の大半は、技能実習生が通常3年(最大5年)の実習期間を終えた後に特定技能に移行する「技能実習生ルート」です。その数は統計上、2021年9月末の38,337人のうち30,734人です。実に約80%が技能実習生からの移行組でした。

「試験ルート」では、専門学校や大学などを卒業した留学生がそのまま特定技能に移行するケースが多くあります。また、家族滞在、文化活動、特定活動などほかの在留資格で日本滞在中に試験に合格して特定技能になったケースも少しあります。現状では全体の20%ほどとはいえ、宿泊業、外食業など技能実習制度がない分野で働く場合や、アジア以外の国から来ている外国人の方は試験ルートでの移行組が多いようです。最近は、特定技能の技能試験や日本語試験を専門に教えている専門学校や日本語学校も増えているようですので、こちらも今後人数が増えていることが予測されます。

一方で、移行組ではなく「新規入国」として新たに日本に来て働く特定技能外国人は、新型コロナウイルス感染対策による入国制限のもと、現時点ではまだそれほど多くはありません。ただ、国外にいる外国人の新規入国の可否をあらかじめ審査する「認定証明書」の審査はこの間も継続して行われていて、特定技能の認定証明書交付数(言い換えると、日本への入国を待つ待機者)も急増していることから、入国制限が緩和された後は一気に増加することが予測されます。

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【分野別】「飲食料品製造業」が受け入れ人数最多

ここでは、特定技能の数を産業分野別にみてみましょう。

一番多いのは、飲食料品製造業分野で42,505人(全体の32%)です。もともと技能実習生や留学生アルバイトが多く働いていた分野でもあり、都市・地方ともに工場の数も多いことからニーズも高いことに加え、作業が定型的であることから外国人労働者側にも人気がある分野です。

次に多いのが製造3分野が統合してできた素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業(27,725人)、農業分野(16,459人)、そして介護分野(16,081人)と続きます。いずれも人手不足の深刻さはニュースなどでも報じられていて、今後もますます人数が増えていくと見込まれます。

また、今後は、特定技能制度の理解と会社の受け入れ体制の整備によって、以前技能実習生として働いたことがあり現在は母国に戻っている元技能実習生を日本に呼び戻したり、アルバイトで雇っていた留学生や家族滞在の外国人の方が試験合格して移行したりすることで、製造業(素形材・産業機械・電子電気情報関連産業)や建設業も本格的に増えていくと思われます。一方、新たに特定技能で認められた宿泊業・外食業は伸び悩んでいる傾向です。

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【国別】ベトナム人が受け入れ人数最多

特定技能の数を国別にみると、一番多いのはベトナム国籍者(約59%)です。これも移行組のもとになっている技能実習生のなかでベトナム国籍者の割合が最も高いため、当然の結果ともいえるでしょう。

そのほかの国ではフィリピン、中国、インドネシア、ミャンマー、タイ、カンボジアなどの人数が多く、東・東南アジアの国からの外国人が大半を占めています。

当面はベトナム国籍者の優位が続くと思われますが、特定技能資格取得のための技能試験・日本語試験の実施や法律整備など環境が整ってくれば、いずれミャンマー、カンボジア、タイ、インドネシアなどの国も増えていくと予測されます。

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【都道府県別】愛知県が受け入れ人数最多

さらに、特定技能の数を都道府県別にみると、一番多いのは愛知県(11,555人)です。次に大阪府(7,811人)、茨城県(7,426人)、埼玉県(7,363人)、千葉県(7,258人)と続きます。

前述のとおり分野別の人数割合で食料品製造・農業・介護などが増えていること、技能実習生からの移行組が多いことからすると、まずは都市近郊が増加する傾向にあります。ただ、特定技能では地域間の偏りにも一定の配慮をしているので、今後は介護のほか、建設業や製造業などが伸びていくことが予測でき、全国に幅広く広がっていくと思われます。

【特定技能】の受け入れのポイントと課題

特定技能外国人を受け入れるポイントは、雇用側の受け入れ支援体制の整備です。技能実習制度では協同組合(監理団体)が人材のマッチングや教育、ビザや生活の手続き、通訳・翻訳、生活相談、トラブル対応までのほとんどの支援業務を会社に代わって担っていました。これによって受け入れ企業は適切な監理団体に任せていれば安心できたところも大きかったと思われます。

しかし、特定技能制度では受け入れ企業が自社でこうした支援を行っていくのが原則です。自社で難しい場合は「登録支援機関」に外注することも可能ですが、それでも「支援」が明確に義務付けられていることはほかの在留資格との大きな違いであり特徴です。

在留資格申請のときに求められる多くの添付資料も、この受け入れ体制や支援体制に関するものがほとんどです。最初の1人を受け入れる際は多くの時間や手間を要するかもしれません。ただ、受け入れ体制や支援体制は一度社内で整備できれば、それ以降は維持・改善をしていくのみです。その意味では、最初の体制づくりが受け入れ企業にとっては大きな課題です。

このことは外国人との多文化共生、会社内での労働環境整備にも関わる、より大きな経営課題にもつながってきます。単に「人材不足を埋めるための労働者」という見方だけではなく、文化の違う外国人を受け入れる責任と覚悟をもち、受け入れ体制・支援体制をしっかり整えておくことは、今後長く続いていく持続可能な会社経営の視点からも必要不可欠の考え方です。人材不足はいまや日本だけではなく世界的な課題です。日本や各企業が世界の若い労働者に選ばれる体制・環境を意識的につくることが重要です。

特定技能外国人の受け入れ人数枠について

特定技能の特徴の一つに「受け入れ人数枠」がないことが挙げられます。技能実習生の場合には受け入れ会社の常勤職員数に応じた会社ごとの人数枠がありましたが、特定技能の場合は原則ありません(介護・建設業など一部は除く)。

多くの外国人労働者を長期間(1号で上限5年、2号で上限なし)継続的に雇用できることは、受け入れ会社にとって技能実習にはなかった大きなメリットといえます。しっかりとしたキャリアプランを描くことで長く継続的に働いてもらえる若い人材を確保できるという点は、企業にとってメリットになるでしょう。

まとめ

制度運用の未整備具合などもあり、特定技能の人数増加はスロースタートでしたが、2021年になってようやく本格的な人数増加が見込めてきました。外国人労働者側も受け入れ企業側も制度への理解が進み、海外での試験実施回数も増えてきて、これからが本番といったところでしょう。

ここ数年で特定産業分野の見直しが行われ、特定技能2号対象分野の拡大、申請手続きの電子化なども進みました。今後もより使いやすい制度になっていくことが望まれます。特に人材不足に悩む業界・企業の方は、特定技能に関する最新情報にしっかり注目していただきたいと思います。

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