台湾の大学に日本語学科が多いのはなぜ?日本語学科の学生の魅力とは

執筆者:

山下訓儀

台湾の大学には日本語学科が比較的に多く設けられています。もちろん英語学科がトップを占めていることは言うまでもありませんが、その次が日本語学科です。

また、他学科でも第二外国語として日本語を熱心に学ぶ学生も少なからずいます。特に日本語学科の学生は日本でのインターシップ活動に参加したり、日本での就職を考えたりしている学生も少なくありません。

ここでは日本語学科の人気がどこから来ているのか、日本語学科とその学生の現状を中心に、台湾の大学の現状も含めてご紹介していこうと思います。

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台湾の大学の現状、日本の大学との相違点 

2019年10月15日の台湾教育部の統計(専科学校の短大も含む。通信教育や特殊な神学関係の大学は含めない)によると、現時点での国公立大学数は48校、私立大学数は104校で、現在台湾には全部で約152校もの大学が存在しています。(下記「2019年の台湾の全国大学数一覧表」を参照の事)

そして大学は普通高校から入る一般大学と職業高校から入る科技大学に分けられています。また、昔日本にもあった中学卒業後に入る専科学校(職業高校3年+短大2年の計5年制の学校)もわずかですが残っています。実は科技大学はこの専科学校が4年制の大学に昇格したものなのです。

2020年5月の台湾教育部の調査報告によると、台湾における2018年度の大学への現役進学率は82.4%で、一方2018年12月の文部科学省の発表(短大も含む)によると, 日本における2018年の大学への現役進学率は54.8%しかなく、台湾の進学率はなんと日本の1.5倍にもなっているのです。これはどうしてなのでしょうか。主に考えられる理由を、以下に列記します。

  1. 台湾では高校も義務教育となっており教育レベルの向上に力を入れている。
  2. 台湾では日本のような専門学校がほとんどなく、日本の専門学校で教えるような技術習得の教育内容が大学の学科に組み込まれている。
  3. 台湾では特に少子化ということもあり根強い学歴重視の傾向がある。
  4. 台湾政府が低所得者や原住民の子女に進学の優遇政策や利子優遇による教育ローンの貸出政策を行っており、進学を推進している

以上の理由が挙げられます。

2019年の台湾の全国大学数一覧表」 

国公立  私立 
一般大学  科技大学  専科学校 小計 一般大学  科技大学  専科学校  小計 総 計 
33  13  2  48  37  57  10  104 152
台湾教育部民国108学年度(2019年度)大專校院一覧表 全國大專校院校數 (資料統計時間:2019年10月15日)を参照し作成

台湾の大学における日本語学科設置数 

日本語学科を設置している台湾の実践大学 

2020年現在、台湾では4年制の国立大学7校と4年制の私立大学33校に日本語学科が設置されており、合計40校に達します。この40校の中には外国語学科や言語学科又は東洋言語学科の中に日本語組という専門コースを設けている大学が約7校含まれています。要するに台湾の全4年制大学140校中40校、なんと約28.6%が日本語を専門に教えているということになります。 

なぜ台湾には日本語学科を設置する大学が多いのか 

このように、台湾において多くの大学に日本語学科が設置されている理由は3つ考えられます。

理由①:台湾の歴史的背景

台湾では約50年に渡って日本の台湾統治が行われ、徹底した日本の教育を受け、また日台間の国民感情は非常にいい関係にありました。そのため、台湾はもともと日本文化を受け入れやすく、浸透しやすい体質を備えています。 

理由②:日本の良い所を学ぶために、日本企業との盛んな交流を行ったり、留学に行ったりする台湾人が多くいること

日本という先進国から様々な技術や文化、良い所を学び、国や企業の発展に役立たせようといった目的意識が強く、日本企業との盛んな交流を行ったり、日本へ留学に行ったりする台湾人が多くいることです。 

また、日本へ何度も旅行に行く人が後を絶ちません。要するに台湾人の日本を見る目は、一種の憧れなのです。私が台湾へやって来てよく耳にする言葉は日本の教育、生活環境又、日本製品や日本人の国民性などに対する賛美の声です。

理由③:台湾の若者達の衣食住や娯楽エンターテインメントなどの日本文化に対する憧れと興味

実践大学で行われたコスプレ‧日本語アテレココンテストに参加する高校部活動の生徒たち

大学だけにとどまらず、29校の職業高校でも日本語組(コース)が設置されており、普通高校でも第二外国語として日本語の科目を設けて1年間日本語を教えている所も多くあります。また、多くの高校に日本のアニメや日本語のアテレコ又は日本アニメのコスプレなどの部活動があり、コンテストも開かれています。

日本と台湾は距離も近く、高校積極的に日本と姉妹校を締結し交流を深めており、学生の希望者を日本の相手校へ遊学させたりホームステイさせたりしている高校も多くあります。政府もまた国際交流を重視する教育方針を打ち出し、推進しています。

大学の入試面接で日本語学科に入りたい理由を聞くと、日本のアニメを愛好しているとか、姉妹校を通して日本へ行ったが日本は素晴らしい国だとか、将来日本語の通訳や翻訳の仕事をしたいとか、中にはアテレコの声優になりたいという学生もいます。

また、コロナウイルスによる志村けんの死去や京都アニメ放火事件は台湾で大々的に報道され、驚きと怒りをぶつける台湾の若いファンの声がネットで話題になりました。ここにも日本文化の浸透が見受けられます。 

台湾の学生たちは日本語学科で何を学んでいるのか

実践大学(台湾)で実用日本語検定試験(J-TEST)を受ける生徒たち 

台湾の日本語学科では主に語学を主体として、日本の歴史文化や商業経済やビジネスマナーなども学んでいます。

商業日本語や観光日本語・日本政経・日本史・日中関係・日本文化事情などの科目がそうです。語学訓練としては日本語のヒアリング・読解・文法・会話・翻訳や通訳などの科目を必修科目として習っています。また、教育部(文科省に相当)の指導もあり、世界共通の言語である英語にも力を入れています。

日本語学科の学生は日本の法人が運営する日本語能力検定(資格試験)の合格を目指して頑張っています。台湾で受けることができる日本語の資格試験は、主に日本語能力検定試験(JLPT)、実用日本語検定試験(J-TEST、英語能力検定のTOEICに相当)、ビジネス日本語能力試験(BJT)などがあります。

現在私が学科長を任されている実践大学の応用日本語学科では、台湾初※の救済措置による卒業を一切認めない卒業ボーダーラインを設けました。卒業資格を日本語能力検定N1(JLPT日本語能力検定試験の最高)レベル相当と定め、学生の日本語能力の向上に力を注いでいます。また、救済措置を講じてはいるものの、卒業資格をN1と定めている大学も少なからず見受けられます。

ちなみに台湾では日本語学科の種類が2つあります。文学系の日本語学科と実務応用を目指す応用日本語学科です。また、実践と応用の能力を高める為に実習単位を取り入れ、日本への実習(インターンシップ)を行っている大学もかなりあります。

※2020年9月実践大学(台湾)調べ

日本語学科の学生の卒業後の進路 

これまでは台湾の日系企業に入って活躍をと考えている学生達が多数を占めていました。ところが近年では、インターンシップやサマージョブ、ワーホリなどを通して日本での就労機会が増えたことにより、日本で就職を……と考えている学生も徐々に増えているようです。日本語学科の学生達は日本で就労体験をすることにより、日本語能力のレベルアップはもちろんのこと、生活文化や企業文化を肌で感じ理解していきます。そして将来日本で働く不安を解消し、働いていけるという自信を高めていくのです。 

職種は航空会社、観光関係、ビジネス関係、販売やアパレルなど学生によって様々ですが、要するに専門である日本語を使って、日本で活躍し更には日本語能力を更に高めたいと考えているようです。本学の卒業生の中には日本での生活に適応しきって、台湾へ帰りたくないと言う学生も少なくありません。

就職活動に関して台湾の学生が気にしていることは「採用条件」と「仕事内容」の2つです。給料や住居の問題はもちろんのこと、その企業に就職することで自己向上に役立つかどうか会社を選定する重要な要素となっています。ただ仕事をして収入があればいいと考えているのではなく、目的や将来への希望・理想を持って仕事をしたいという志向が強くあります。それゆえに、多少の苦労は勉強のためと割り切って誠実に努力をします。特にワーホリは日本での就職に踏み出す大切な一歩であり、本学としてもこれからも引き続き日本の人材企業とタイアップをし、企業に推薦できる良い学生を育て、安心して勤められる企業を学生達に紹介して行こうと考えています。学生のために努力する大学が増えれば、学生が大学を通じ日本での就職先を探す傾向は、これからもどんどん強くなっていくことでしょう。 

日本企業が台湾の日本語学科学生を採用する上での魅力とは? 

日本でのインターンシップ活動に参加する日本語学科の学生たち

日本語学科卒業生の魅力は、何と言っても語学力です。まず、日本語で比較的にスムーズにコミュニケーションが図れると言うことです。

ちなみに3年生の学生だと日本語レベルはほとんどがN2以上です。最初は専門用語などで慣れない言葉もあるかもしれませんが、コミュニケーションに大きな問題はありません。本学では毎年135名の学生を日本のインターンシップに出していますが、どこの企業でも高い評価を受けています。

また、中国語が母国語であり、中国語圏の国から日本へやって来る訪日外国人にも喜ばれています。世界人口の四分の一は中国人と言われていますが、中国語を使うのは中国人だけではなく、東南アジアの国々で活躍している華僑も中国語を使っています。彼らの及ぼす経済効果は大きく一国の経済に大きな影響を与えると言っても過言ではありません。その中国語圏の外国人と日本人の間の架け橋になってくれるのが、日本語学科の学生達なのです。 

さらに、語学力だけではなく日本企業で仕事をする上で他にも大切なのは、日本の企業文化や生活文化及び、日本人の国民性とマナーの理解です。日本語学科の学生達は、日本が大好きで日本語や日本の文化を一生懸命真剣に学んでおり、これらをある程度理解してくれています。 

※華僑…中国本土から海外に移住した中国人およびその子孫 

まとめ 

日本に好意的で日本人の思想や文化に最も歩み寄っている国は他でもなく台湾なのかもしれません。特に日本が大好きで、日本に憧れと尊敬の念を抱き熱心に日本の文化や日本語を学んでいる日本語学科の学生達は、日本の企業にとって大きな手助けとなる貴重な人材であると言っても過言ではないでしょう。

また、日本で活躍できる機会を楽しみに待っている日本語学科の学生達は決して少なくはありません。あなたも台湾人と仕事のパートナーになってみませんか? 

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