外国人採用時の雇用保険手続き|注意すべきポイントを行政書士が解説!

執筆者:

行政書士/井手清香

外国人を雇用する場合の雇用保険は、日本人を雇用するときの手続きと違う点がいくつかあります。
この記事では、はじめて外国人を雇用する企業向けに、外国人を雇用する場合の雇用保険の手続きにおいて気をつけるべきポイントをピックアップします。「雇用保険被保険者資格取得届」をメインに細かく説明しますので、参考にしてください。

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雇用保険加入の条件

まず、雇用保険加入の条件について整理します。
原則として、31日以上継続して雇用する見込みがあることと週の所定労働時間が20時間以上であることが必要です。労働基準法や健康保険法などの労働関係法令および社会保険関係法令は外国人にも適用があります。従って、外国人だから雇用保険に入らなくていい、ということはありません。

外国人が雇用保険に加入する際の具体的な手続きとしては、「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に国籍や在留資格、期間、資格外活動許可の有無などを記入し、雇入れ日の翌月10日までに、ハローワークへ届け出ます。詳細は後ほど解説します。

外国人が雇用保険の加入対象とならない場合

雇用保険の加入対象とならない場合は、2通りあります。昼間部の留学生とワーキングホリデーの場合です。

昼間部の留学生の場合

留学生の場合は、昼間主の学校に在籍する留学生なのかによって雇用保険の加入対象になるかならないか決まるので注意しましょう。ただし、例外もあります。

厚生労働省滋賀労働局のホームページによれば「卒業見込証明書を有する者であって卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一の事業主に勤務することが予定され一般労働者と同様に勤務し得ると認められる場合」は、雇用保険の保険者になるという見解が記載されています。

出典:雇用保険被保険者の範囲 | 滋賀労働局

厚生労働省は以下の見解を示しています。

「昼間学生であっても、次に掲げる方は被保険者となります。

① 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の者。 ② 休学中の方(この場合、その事実を証明する文書が必要となります)

③ 事業主の命により又は、事業主の承認を受け(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学する者。

④ 一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業において、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる方。(この場合、その事実を証明する文書が必要となります)

学生・生徒等で、通信教育を受けている者・大学の夜間学部・高等学校の夜間又は定時制課程の者以外の者(左記①から④に該当する者は除く)については、適用事業に雇用されても被保険者となりません。」

出典:第4章 被保険者について|厚生労働省

留学生であっても雇用保険に加入しなければならない場合があるので、要件をしっかりと確認することが重要です。

ワーキングホリデーの場合

次に、「特定活動」の在留資格を持っているワーキングホリデーの外国人の場合は、雇用保険の加入対象となりません。ワーキングホリデーというと働くことができると思いがちですが、特定活動の資格を持っていても、パスポートに貼り付けられている指定書に就労できる旨が書いてないと、そもそも就労できません。特定活動の在留資格によって就労する場合は、必ず指定書を確認してください。

そのほかの社会保険(厚生年金保険・健康保険・労災保険)も条件を満たす場合、外国人であっても雇用保険への加入が必須となるので覚えておきましょう。

雇用保険加入の手続きの方法

厚生労働省のパンフレットから、外国人を雇用する場合の雇用保険の手続きについて紹介します。

「雇用保険被保険者資格取得届」を提出

雇用保険被保険者資格取得届を作成し、提出しましょう。

雇用保険に加入するときに必要な書式は、「雇用保険被保険者資格取得届(新様式第2号)」です。「17」〜「22」の欄に、国籍や在留資格などを記入します。在留資格欄には、在留カード番号を記入してください。

書面でも電子申請でも可能

手続きは書面でも電子申請でも可能です。e-Govのサイトから、電子申請を選択して行います。書面申請の場合も、申請書の様式がまとまっていますのでご利用ください。

出典:雇用保険被保険者資格取得届(平成28年1月以降手続き)|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

外国人を雇用した時に事務作業をスムーズに進めるコツ

そのほかの社会保険も含め、外国人を雇用したときの事務をスムーズに行うための工夫を紹介します。

まず、外国人を雇用したら在留カードのコピーを提出してもらいましょう。この先の手続きで何かと必要になります。毎回提示を求めるよりは、コピーをとったほうがスムーズです。

手続きで、マイナンバーが必要になることもあります。マイナンバーカードを作っている外国人は少数です。在留カードがあり、転入届を出している場合は住民票とマイナンバーが付与される仕組みになっているので、マイナンバーがわからない場合はマイナンバー付きの住民票を取り寄せて確認してください。

在留カードも、マイナンバーについても、個人情報として管理を厳格に行いましょう。個人情報を収集する前に、何のために収集するのか(雇用保険に加入するためなど)外国人労働者本人にしっかりと説明し、理解を求めることが重要です。

外国人を雇用する際の注意点

次に、外国人を雇用する際の注意点について紹介します。

日本の社会保険制度について事前に説明

まず、日本の社会保険制度についてよく説明してください。説明を省略してしまうと後々トラブルに発展してしまうことがあります。例えば、自分は雇用保険に入りたくなかったのに分からないうちに入らされたと主張されてしまうことがあります。事業主からすれば、雇用保険に加入させる義務を履行しただけであっても、日本の労働関係法令がよくわからない外国人労働者にとっては不安を覚えるかもしれません。そのほかの社会保険制度についても、外国人労働者から「健康保険は加入したいが厚生年金は加入したくない」と主張される場合があります。

このようなトラブルを避けるためにも事前に雇用保険をはじめとした社会保険制度と労働関係法令などについて、よく説明してから手続きをしてください。

説明する際に使用する資料については、東京都のTOKYOはたらくネットに掲載されている、外国人労働者ハンドブックを活用できます。東京都が実際に都内6か所の相談センターなどに寄せられた労働相談をもとに作成した、英語と日本語が併記された資料です。外国人にも等しく労働関係法令が適用されることや、賃金、労働時間、休日などのルールから、雇用保険や健康保険などの仕組みについても解説されています。

区・市役所の外国人相談の部分については、事業所のある自治体の外国人相談部署に差し替えて読む必要がありますが、全体として日本の労働関係のルールがコンパクトにまとめられています。事業主も、外国人労働者も、双方が外国人労働者ハンドブックを読み、労働関係法令と制度について理解を深めましょう。

出典:外国人労働者ハンドブック(英語版)労働関連資料・パンフレットダウンロード|TOKYOはたらくネット

雇用主側も在留資格の更新時期を把握しておく

次に、入社後は現在の在留期間が満了する前に、在留資格更新の手続きをすることが必要です。本人が期限を気にしていない場合があるので、雇用側できちんとチェックすることが必要です。

外国人を不法就労させると処罰の対象になる

最後に、外国人を不法就労させた場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられます。不法就労には十分注意してください。在留資格と、何ができるのか(もしくはできないのか)という点については必ず確認をしてください。

外国人の雇用について、よくわからない場合の相談先は、雇用保険関係の場合は労働局やハローワーク、もしくは社会保険労務士です。そもそもの在留資格についてよくわからない場合は、ビザに詳しい行政書士に問い合わせてください。

退職の際の手続き方法

日本人職員が退職をする際と同じ手続きに加えて、「外国人雇用状況の届け出」の提出が必要です。

外国人雇用状況の届出とは

外国人が退職する際に企業が管轄のハローワークに提出をする書類です。

ただし、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出すれば、この届出は不要です。外国人雇用状況の届出を行わない場合は、中長期在留者の受入れに関する届出を入国管理局へ提出します。

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まとめ

外国人を採用する際の雇用保険の手続きは、忘れないようにしましょう。被保険者となった日の属する月の翌月の10日までに手続きをする必要があります。

原則として社会保険関係法令は国籍を問わず適用されます。期限を守って「雇用保険被保険者資格取得届」を提出することが大切です。

留学生を雇用する際には、昼間部の学校に通う留学生については原則として雇用保険加入の対象外となります。例外として、卒業見込証明書を有する者であって卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一の事業主に勤務することが予定され一般労働者と同様に勤務し得ると認められる場合については、雇用保険加入の対象となります。夜間部や通信制の学校に通う留学生については雇用保険加入の対象となります。例外のケースに当てはまらないかどうか、チェックをしてください。

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