内定取り消しは違法?外国人なら問題ない? 誤りやすい事例や基本ルールについて有識者が詳しく解説

内定取り消しは違法?
執筆者:

株式会社マイナビ 法務部

日本国内においては働き手不足が深刻な社会問題となっており、企業にとっても労働力の確保は重要な課題となっています。そのような状況下において、外国人雇用への関心は高まりを見せており、積極的な外国人雇用へ舵を切る雇用主も増えてきているようです。

本来、外国人は日本人と同様に法律で守られます。しかし、「外国人雇用に関しては日本国内の労働関係法令が適用されず、簡単に内定取り消しが行える」との誤った考えを持たれている方も少なくないようです。このような誤った考えに基づいて安易な内定取り消しを行うことは、求職者の権利を損なうことのみならず、結果、雇用側のイメージ低下を招くこととなり、その後の採用活動にも悪影響を及ぼすなど、雇用主にも大きなダメージをもたらすおそれがあります。

本記事では、「内定」や「内定取り消し」の基本的な内容に触れると同時に、外国人雇用特有の内定取り消しの事例も交えながら、内定取り消しを行う際にはどういった点に注意が必要かを解説していきます。

「内定」とは

就職活動や転職活動といった場面においてはお馴染みの言葉かと思いますが、その内容を正確に把握されている方は必ずしも多くないのではないでしょうか。

実際の就職活動や転職活動においては、雇用主から採用決定の旨が伝えられた状態のことを内定と呼ぶことが多いようですが、本来「内定」とは、書類審査や面接といった採用プロセスを経て、求職者と雇用主が雇用条件などに合意し、労働契約が締結された状態のことをいいます。

「内定」が法的にはどのように扱われるのかといいますと、過去に裁判所が下した判決においては、雇用主が求職者に対し内定を通知することにより『労働契約が成立したもの』と解釈されており(※1)内定の通知により成立する労働契約を「始期付解約権留保付労働契約」と一般的に呼んでいます。

◆「始期付」 → 本来の労働契約の開始時期(入社日)が決まっている
◆「解約権留保付」 → (始期までに)労働契約を解約できる(=内定を取り消すことが可能である)状態

つまり、法律上の内定とは、雇用主と求職者が『入社日までは解約権が留保された状態の労働契約』を締結していることをいうのです。

(※1) 大日本印刷事件 最高裁二小 昭54.7.20判決

求職者へ通知した「内定」は取り消せる?

「内定」は、求職者と雇用主との間に労働契約が成立している状態のことなので、雇用主都合による内定取り消しは契約の一方的な破棄にあたり、合理的な理由がない限りは無効となります。

例えば「やっぱり日本語能力に不安を感じたので採用をやめたい」「受け入れ体制を整えようとしたができなかったので採用をやめたい」「本部から採用を中止するように指示された」などはどれも雇用主都合による一方的な理由であり、内定取り消しを行うことは認められません。

とはいえ、あらゆる場面において内定取り消しが認められないのかというと、そうではありません。上記のとおり、内定は「解約権留保付」の労働契約であり、この解約権の行使が認められる限りは内定を取り消すことができるのです。

判例においては、解約権の行使が認められる場面を以下のように述べています。

内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として内定を取り消すことが解約権保留の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる

引用:最高裁判判例集|最高裁判所

つまり、採用内定を通知する時点で、雇用主が内定取り消しの要因となる事実を知る由がなく、労働契約の継続を行わないことが社会常識から考えて不合理ではない場合には、内定取り消しが認められるということです。なお、この場合、要因の発生時期は関係ないとされています。

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「内定取り消し」が認められる場合とは?

判例が示す基準をもとに、「内定取り消し」が認められる事例を見ていきましょう。

(1)内定者に起因する場合の事例

① 内定者が学校を卒業できなかった場合

新卒採用においては、学校を卒業することを前提に、学生に対して内定を通知するケースがほとんどです。学校に通ったまま入社を認めることは一般的とまでは言えず、就業開始日までに卒業ができない場合、雇用主による内定取り消しが認められる可能性はかなり高いと言えます。なお、最近では、内定者の事情を考慮のうえ、就業開始日を延期する等の措置をとって内定の取り消しを行わないケースもあるようです。

② 内定者の病気・けがにより就業が困難になった場合

内定者の病気・けがにより就業が困難となった場合、内定取り消しが認められる可能性があります。ただし、風邪などの軽度な症状(すぐに回復するもの)のほか、就業に直接関係のない病気・けがを理由に内定を取り消すことは認められません。

③ 内定者による重大な経歴詐称

内定者が重大な経歴詐称をしていた場合、内定を取り消すことが可能です。たとえば、就業に必要とされる資格を保有していなかった、学歴を詐称していたなどの場合がこれに該当します。ただし、詐称した事実が業務遂行に影響を与えないものに関しては内定取り消しを否定される場合も考えられますので、詐称行為のすべてが内定取り消し可能とはならない点に注意が必要です。

法律のイメージ

(2)求人者都合の場合

雇用主が経営不振などを理由に内定を取り消す場合は、判例により「整理解雇の4要件」(①人員削減の必要性 ②解雇回避の努力 ③人選の合理性 ④解雇手続の妥当性)を判断基準とすることが一般的です。具体的な事情を、この4要件に照らし合わせて、内定取り消しが認められるか個別に検討していく必要があります。

① 人員削減の必要性

現状の人員を抱えたままでは経営が難しいとされるケースが該当します。生産性の向上などではなく、経営不振を理由とした人員削減を行うべき経営上の理由があることが必要です。

つまり、今後の財務状況の見通しを立てずに整理解雇を決定したり、整理解雇を決定して間もなく新規採用を行っているといった場合には、「人員削減の必要性」は否定されてしまうということになります。

② 解雇回避の努力

解雇回避のために努力したことを証明する必要があります。人員配置の転換や希望退職者の募集等、解雇以外のあらゆる手段を尽くしているかが基準となります。

このような手段を尽くすことなく、いきなり最終手段である解雇を行った場合には、「解雇回避の努力」を行っていないとして、その解雇が無効となる可能性が高まります。

③ 人選の合理性

整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であることが必要です。具体的には、年齢、勤務成績、勤務年数、これまでの会社に対する貢献等の総合的な要素から客観的、合理的に判断され、公正な人選であることが求められます。恣意的、主観的な人選は認められません。

単に「あいつは気に入らない」といった理由で対象者を選ぶことは、当然ながらNGです。どのような基準を採用するかは、企業毎に判断することとなりますが、社員への説明に際して、どの基準を採用すれば納得感が得られ、企業としても説明を行いやすいか、といった観点での検討が必要になります。

④ 解雇手続の妥当性

整理解雇を実施するまでの期間に、労働組合または労働者に対して適切な説明を行わなければなりません。具体的には、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るための然るべき説明を行い、十分な協議を行うことが求められます。

つまり、いきなり社員を会議室に呼ぶなどして、「あなたを解雇します」ということはNGということです。

これらの要件があることからも分かるように、雇用主都合での内定取り消しは、非常に困難であると言えます。計画的に人材募集を行っておきながら、短期のうちに経営が悪化することは通常考えにくく、例え悪化することがあったとしても、それは雇用主側の落ち度であると考えられてしまうのです。

ただ、歴史を振り返りますと、短期のうちに経営が悪化するとの事態がまったく生じていないわけではありません。代表的な事例としては、バブル経済の崩壊やリーマンショックが挙げられ、直近の新型コロナウイルスの感染拡大もその代表的な1つと言えます。

これらのような一種の極限状態においては、短期のうちに経営が悪化することは大いに生じ得るものであり、経営悪化の責任を必ずしも雇用主側に負わせることは出来ないため、各種要件を満たすことに繋がる可能性があります。

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外国人雇用特有のケース / ①在留資格についての注意点

ここまでは、一般的な「内定取り消し」に関する内容に触れてきましたが、ここからは外国人雇用における「内定取り消し」について、その特有のケースと注意点をみていきましょう。

まず大前提として、外国人であっても日本人と同様に、先述した「内定取り消しが認められる事例」のような理由がない限りは、雇用主都合による内定取り消しは原則無効です。労働者としての権利は、外国人も日本人と等しく保護されます。

しかし、外国人は法制度上、日本で活動するために「在留資格」が必要であり、これが外国人雇用の際に大きく影響します。

在留資格」とは、「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」)が規定する、外国人が日本に在留して活動を行ううえでの資格のことです。

日本に在留する外国人は、入管法や他の法律に規定がある場合を除き、「在留資格」を有していることが求められ、在留資格で認められている活動以外で収入を得てはいけませんし、留学生が日本で就職をしたり、既に日本で就労している外国人が転職して活動の内容が変わったりする際には、在留資格の種類変更が必要な場合もあります。

「就労ビザ」と呼ばれる就労のための在留資格の取得(変更)は、外国人が従事する仕事の内容に加えて、就業先の状況を踏まえて承認されます。そのため、在留資格の取得(変更)には、就業先が既に決定している必要があり、就業先が未定の場合には在留資格の取得(変更)の申請が受け付けられません。まずは就職活動を行い、その後、就業先からの内定を得ることが求められます。

そのため、雇用主が求職者へ「内定」通知を行った後にその求職者の「在留資格」の承認が下りなかった、不許可になってしまったという事態も起こり得るのです。このような場合において雇用主が求職者に対して内定取り消しを行うことに問題はないのでしょうか?

ここで、雇用主が「在留資格を持っていない」または「適切な在留資格への変更を行っていない」といった事情を抱えた外国人を雇い入れた場合、その外国人自身が「不法就労罪」に問われてしまうとともに、雇用主側も「不法就労助長罪」という罪に問われる可能性があります。

「在留資格」が取得できなかった者との労働契約の締結・継続は、むしろ法が禁止しているとも考えられることから、求職者が在留資格を取得できなかった場合の内定を取消しには合理性が認められるものと考えられています

停止条件付の雇用契約書の締結

「在留資格」が取得できない場合に、「内定取り消し」を行うことに問題はないとされているものの、実際に「在留資格」が取得できないという事態が生じた場合、雇用主・求職者との間における内定の取扱いに関する認識の違いからトラブルとなることも想定されます。

そのようなトラブルを回避するためには、あらかじめ雇用契約書の中に「停止条件」の項目を設けておき、契約締結にあたっては、雇用主・求職者の双方でその内容を確認しておくことが効果的であるとされています。「停止条件」とは、あらかじめ設定した条件を達成することで、はじめて契約の効果が生じるという性質の条件です。つまり、外国人雇用に置き換えた場合、雇用する外国人が在留資格を取得してはじめて雇用契約の効果が生じるということになります。

これにより、外国人に対しては在留資格の取得が入社の条件であることを示すことができますし、さらには、出入国在留管理庁に対しても不法就労には加担しないという雇用主のスタンスを示すことにも繋がります。

▼トラブル回避のための雇用契約書の書き方は以下の記事で詳しく解説しています。

外国人雇用特有のケース / ②求職者の属する国の制度等に関する注意点

外国人雇用を行うにあたっては、求職者側の国の制度にも注意を払う必要があります。

今回はフィリピンが設ける独特の制度を紹介します。

フィリピンは、他国に比べて国外で働く国民の割合が多く、国として自国人材の国外への送り出しを厳しく管理・監督するために、独自の雇用ルールを設けています。フィリピン独自の雇用ルールのなかでも、フィリピン人雇用を検討する雇用主が特に注意すべきなのが、「DMW(フィリピン移住労働省、旧POEA)」の存在です。

DMW(旧POEA)は、フィリピン国外で働くフィリピン人を保護するために、フィリピン人を雇用するフィリピン国外の雇用主が適切な労働環境を備えているかを審査・登録する機関です。フィリピン国外の雇用主がフィリピン人を雇用するためには、予めDMW(旧POEA)の審査を経て、国外雇用主としての登録を受けておくことが必要となります。

このため、フィリピン国籍の求職者と雇用契約を締結するにあたり、DMW(旧POEA)の審査・登録に関してきちんとした理解を有していないと、雇用主がDMW(旧POEA)の登録を得る前に内定通知を行ってしまい、後日DMW(旧POEA)による国外雇用主としての登録がかなわず、結局内定取り消しを行わざるを得ない、などという事態が生じてしまうかも知れません。

▼DMW(旧POEA)については以下で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

この場合、内定取り消しを行うこと自体は、外国公的機関による雇用契約の締結の制限として合理性が認められる可能性はありますが、それでも、当該制度への理解不足を過失として、求職者からの損害賠償請求などには応じなければならないと考えられます。

以上のようなフィリピン独自の雇用ルールは、求職者側の国の制度に関する代表的な注意例であり、その他の国においても独自の雇用ルールを設けている場合や今後新たに設けられるといった可能性も十分にあり得るところです。

そのため、外国人雇用にあたっては、求職者側の国に関する制度について弁護士等の専門家に調査を依頼することや、外国人雇用に特化した人材紹介会社を利用することは、事前に大きなトラブルを回避するための有用な対応と考えます。

求職者の属する国の制度等に関する注意点
外国人雇用を行うにあたっては、求職者側の国の独自の制度にも注意を払いましょう
 
(フィリピンの場合)
◆フィリピン国外の雇用主がフィリピン人を雇用するには予めPOEAの審査を経て国外雇用主としての登録が必要
◆企業が制度を知らず、国外雇用主としての登録以前に求職者へ内定通知を提示してしまい、登録不可となる事例がある
◆国外雇用主の登録がされなければフィリピン人の雇用を原則してはいけないため、内定取り消しせざるを得ない
◆当該制度への理解不足を過失として、求職者からの損害賠償請求などには応じなければならない
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外国人雇用特有のケース / ③求職者の属する国の状況などに関する注意点

外国人雇用に関しては、内定を受けた求職者が日本に入国する際の世界情勢(戦争や内乱、感染症の蔓延等)にも影響を受ける可能性があります。近年では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国が独自に水際対策を行った関係で、内定を受けていた求職者が当初の予定どおりに入国できず内定を取り消される事態も発生しています

このように、求職者・雇用主の双方に落ち度のない事情を原因として求職者の入国時期(勤務開始時期)が未定となってしまった場合に、雇用主が求職者の内定取り消しを行うことに問題はないのでしょうか。

この点については、内定取り消しの可否に関する明確な規定や基準があるわけではありません。可能な場合もあります。しかし、より不安定な立場に置かれている求職者の状況を考慮のうえ、求職者に改めて入社意思の確認を行い、求職者が入社を望む場合には雇用主は入社時期の変更を行うなどして、可能な限りで求職者の意思を尊重した対応が必要になると考えられます。

入国時期(勤務開始時期)未定の状態が長期化すると予想されるケースにおいても、まずは、求職者に入社意思の確認を行い今後も雇用関係を継続させることを望むか否かを確認していくことが重要です。そのうえで、求職者の状況を考慮しつつも雇用主として内定取り消しを行わざるを得ないとの判断に至った場合には、求職者に事情を説明し、新たな就職先の確保などに最大限の努力行う、補償などの要求に対しては誠意をもって対応しましょう。

求職者の属する国の状況などに関する注意点

◆不安定な立場に置かれている求職者の状況を考慮のうえ、求職者に改めて入社意思の確認を行う

◆求職者が入社を望む場合には、雇用主は入社時期の変更を行う

◆雇用主として内定取り消しを行わざるを得ないとの判断に至った場合には、求職者に事情を説明のうえ、新たな就職先の確保に最大限の努力行う

◆内定取り消しに対する補償などの要求に対しては誠意をもって対応していく

「内定取り消し」を行う際に企業・雇用主が注意すべきこと

ここまで内定取り消しの実施が問題とはなりにくいとされている事例をみてきましたが、そもそも内定取り消しは、内定者の生活・キャリアに大きな影響を及ぼすおそれがあるため、できる限り回避することが望ましいものと言えます。

そのため、実際に内定取り消しを実施するにあたっては、ただ単に事例に当てはまるからとの判断だけでなく、実施後に生じる得る雇用主の不利益についても注意を払う必要があります。

内定取り消しを行った場合に、雇用主側に生じる不利益としては、次のようなものが考えられます。

①内定者から訴えられる可能性がある

不当な内定取り消しに関しては、内定者から訴訟を起こされる可能性があります。

訴訟の結果により、内定取り消しが無効となった場合には、雇用主にはその内定者を雇用する義務が生じることとなります。

また、未払い賃金(内定取り消しが行われていなければ得られたはずの利益)や慰謝料等の金銭的な賠償もあわせて行われる可能性があります。

②内定取り消しを行うことによるイメージダウン

適法に内定取り消しを行っても、丁寧に説明を行わないなど、雇用主側の取り消し時の対応等を理由として、求職者が納得しないという状況も発生し得ます。そのような場面で、求職者が内定取り消しの事実を、世間に発信することも考えられます。

SNSが発達した現代においては、個人による情報発信が容易であり、発信された情報(「内定取り消しを行った企業」との悪評)は瞬く間に拡散されることとなります。仮に、情報発信者が社名等を公表していなかったとしても、他の情報から会社が特定されてしまうリスクは大いにあると言えます。また、外国人労働者同士のSNSは非常に活発であるため、日本人以上に企業の評判は拡散されてしまいます。

拡散されてしまった情報は度々掘り返され、情報が完全に消え去ることはまずありません。潜在的な求職者にも知れわたることとなり、新たな人材の確保に悪影響を及ぼします。

このような事態を避けるためにも、内定取り消しを行うにあたっては丁寧な事情説明を行ったうえで、少しでも求職者の納得感を得られるよう配慮に配慮を重ねた対応が求められます。

③企業名、事業者名を公表される可能性がある

内定取り消しを行った雇用主に対する罰則自体はありません。しかし、特に内定取り消しが問題になる新卒者採用の場面(留学生を新卒者として採用した場合も含むものと考えられます)においては、以下のいずれかの事由に該当する場合、厚生労働大臣によって採用内定取り消しを行った企業名が公表されることとなります(職業安定法施行規則第17条の4)。

企業名が公表されてしまうと、翌年以降の新卒者採用もそうですが、中途採用においても、優秀な人材を確保することが困難になるリスクが生じるため、雇用主にとっては、大変重たい措置であるといえるのではないでしょうか。

採用内定取り消しを行った企業名が公表される場合

  • 厚生労働大臣が事業所名を公表できる要件2年連続で内定取り消しを行った場合
  • 同一年度内に10名以上の内定を取り消した場合
  • 事業活動の縮小を余儀なくされていると明らかには認められない場合
  • 内定取り消しの理由を対象者に十分に説明しなかった場合
  • 内定を取り消した学生・生徒の就職先の確保を支援しなかった場合 

④今後、外国人の受け入れができなくなる可能性がある

①~③に記載のとおり、内定取り消しを行った企業に対する罰則は設けられていないものの、企業名の公表によって当該企業の悪評は瞬く間に広がることとなります。

また外国人の雇用には在留資格取得の申請が必要となる場合があり、その審査中に内定取り消しを行えば、当然、申請を取り下げる手続きをしなければなりません。在留資格の審査は入管が行うため、取り下げの申請の際に入管へ事情を報告することとなり、今後の外国人雇用に影響が出かねません。

これらによって、今後外国人労働者の受け入れが一切出来なくなってしまうといっても過言ではないでしょう。

労働者の権利は国籍関係なく平等

各業界において人材不足が叫ばれるなか、諸外国に比べて必ずしも賃金水準が高いとは言えない日本において、外国人材の存在が大変貴重であることは言うまでもありません。そんな状況下においても、外国人材の取扱いについて、誤った情報・理解に基づいた不適切な対応が取られている事例は後を絶ちません。

雇用主においては、本文中にも記載したとおり、労働者としての権利に国籍の差はなく、等しく取り扱われる必要があることを認識いただくことが大変重要です。内定取り消しにおいてもそれは変わりません。

あわせて、外国人材は日本の求職活動や雇用に関する知識・情報が不十分であることに配慮し、そのうえで、雇用する外国人材がその有する能力を有効に発揮し、職場にも容易に適応できるよう措置を講じていくことが今後ますます求められることとなります。