企業が守るべき外国人労働者雇用の法律|行政書士が徹底解説
外国人労働者は、日本人労働者より安く働かせることができると思っていませんか?
それは誤解です。外国人労働者を雇用する際も日本人を雇用する際と同等の待遇が必要と法律で定められています(労働関係法規)。
今回は、外国人を受け入れる際に守らなければならない法律について詳しく解説していきます。
目次
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企業が外国人労働者を雇用する際に守るべき法律
日本人労働者に適用される法律として、雇用対策法、職業安定法、労働者派遣法、雇用保険法、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、健康保険法、厚生年金保険法、男女雇用機会均等法などの労働法があります。多くてびっくりされたのではないでしょうか?
これらの法律は外国人労働者にも、すべて適用されます。
以下では特に大事な「労働基準法」、「出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)」、「雇用対策法」、「最低賃金法」の4法に絞って、解説します。
1.労働基準法
日本人労働者に適用される法律が、なぜ外国人にも適用されるのでしょうか?
その根拠は労働基準法第三条にあります。
第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov
第三条が労働者の均等待遇について定めているから、外国人にも等しく適用されるのですね。
2.入管法
入管法とは、正式名称「出入国管理及び難民認定法」のことで日本に出入国するすべての人と日本に在留するすべての外国人の在留の公正な管理を図ることを目的とした法律です。特にここ最近、外国人人材の必要性に伴い頻繁に改正されているため、最新の入管法を追いかけ続ける必要があります。
ただ、外国人の在留に関するすべての手続きは、この法律に記載されているので、迷ったときはいつもこの法律をバイブルとして立ち返り、読み直すと良いでしょう。
入管法で認められた在留資格でのみ就労可能
入管法では現在29の在留資格があり、それぞれの在留資格でできる活動が決められています。逆に言うと、その在留資格で認められた活動しかできません。
例えば在留資格「留学」は大学などで勉強することが主な活動として認められますが、アルバイトで報酬を得たい場合は、留学の活動の範囲外となるので、在留資格外の活動をする許可、すなわち「資格外活動許可」を取得する必要があります。資格外活動許可は本来の活動を妨げない範囲であれば認められます。「留学」の場合、資格外活動許可を取得すると、週28時間以内の風俗を除くアルバイトであれば合法的に行うことが可能です。
逆に資格外活動許可を受けずに、在留資格外の活動をした場合、外国人本人は不法就労となり、1年以下の懲役、禁固や200万円以下の罰金を科されます。さらに雇用した事業者は不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役や300万円以下の罰金に科される可能性があります。
外国人のアルバイト採用時に注意したいのは、資格外活動許可を取得しているか確認すること、働く時間を週28時間以内に管理することの2点です。働く時間が週28時間を超える外国人の罰則は上記よりさらに重く、在留資格の更新もほぼ無理です。
法律で決められた範囲を超えて働かせるのは企業の責任でもありますので、しっかり管理するようにしましょう。
不法就労助長罪については、以下に詳しく書かれています。
改正入管法とは
在留資格「特定技能」が2019年に創設されました。従来、日本は単純労働をする外国人は受け入れないという立場をとっており、この改正で初めて方針転換し、ある意味分岐点となる改正でした。
「改正入管法」に関して、詳細は以下を参照ください。
在留資格「特定技能」とは
特定技能は、「介護」「ビルクリーニング」「建設」など、企業が生産性向上や人材募集をしてもなお人手が不足する14分野に限って、即戦力となる外国人を期間限定で受け入れる在留資格です。
1号と2号に分かれており、1号は上限5年、2号は上限3年働くことができ、1号から2号に移行できるのは現在「建設」「造船・舶用工業」の2分野のみです。詳細は以下を参照してください。
3.雇用対策法
雇用対策法は、少子高齢化による人口構造の変化などに対応して、国が総合的に必要な手立てを講じることで、労働力の需給均衡や職業の安定を目的とした法律です。
【企業の義務】外国人雇用状況の届出
外国人を雇用した場合、アルバイトや正社員といった雇用形態に関わりなく、その氏名、在留資格などを届け出ることがすべての企業に義務づけられています。その義務を課す根拠が雇用対策法28条「外国人雇用状況の届出等」です。
届出の目的は、外国人の雇用環境の改善に向けて、国が企業へ助言や指導を行うこと、離職した外国人への再就職支援を行うこと、不法就労防止などです。
外国人雇用状況の届出は、離職の際にも必要
この届は外国人が離職する際にも必要です。離職の際には忘れてしまう企業が多いので、ご注意ください。
この届ができたおかげで、出入国在留管理庁の管理だけではわからなかった、働く外国人の数が正確にわかるようになりました。
外国人雇用状況の届出の方法
届出はハローワークに提出します。雇用保険に加入させる場合は、この届ではなく、雇用保険加入の際に提出する「雇用保険被保険者資格取得届」を出せば済みます。手続きは難しくありませんし、インターネットからも可能です。
雇用保険に加入・非加入で手続きが異なること、届出期限があること、働く時間の長短に関係なく届出が必要なこと、届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となることにご注意ください。
詳細な手続きは以下を参照ください。
外国人労働者の雇用管理改善等に関する事業主の対処指針
外国人は日本の雇用慣行や求職活動に必要な情報が不足していますよね。
その情報格差により外国人が能力を発揮できないことのないよう、雇用対策法8条では、事業主は、外国人が職業に適応することを容易にするための措置、雇用管理、離職する場合の再就職の援助などに関し必要な措置を講ずる努力義務を定めています。
その詳細、安全衛生教育、健康診断、社会保険への加入などについては「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」がありますので、ご参照ください。
▶参考:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(PDF)|厚生労働省
4.最低賃金法
最低賃金法は、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保を目的としています。地域別最低賃金は毎年10月1日近辺、地域別最低賃金発効の前にアナウンスされますので、ご存じの方も多いと思います。
最低賃金は都道府県毎に違います。物価が違いますので、当然と言えるでしょう。
もし最低賃金額より低い賃金で雇用契約を締結したとしても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額との差額を事業主は支払う必要があり、これは外国人でも等しく適用されます。
地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
まとめ
以上外国人を採用する際に守るべき主な関係法令を見てきました。
外国人はどうしても日本人と比べて情報格差があります。その格差を悪用することなく、コンプライアンスを守ることで外国人に選ばれるような企業になり、多様性が生まれ、世界でも競争力ある企業が増えると良いですね。