特定技能2号の試験の内容や申し込み方法などを解説

2023年に特定技能2号の対象分野が拡大して以降、要件となる試験も活発に行われるようになりました。受験者数は徐々に増加しており、2号で滞在する外国人も数年で大幅に増加するでしょう。今後も2号を目指す人は増えると思われます。
この記事では特定技能2号の試験の概要や費用、分野ごとの実施状況などについて、詳しく解説していきます。
目次
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特定技能2号とは
特定技能2号とは、人手不足が深刻な分野において外国人の労働を認めた在留資格である特定技能1号よりさらに熟練した技術を持つ外国人が取得できる在留資格です。
対象分野は11分野です。1号には12分野ありますが、介護分野が2号の対象ではありません。
▼特定技能2号のもっと詳しい情報はこちらから!
特定技能2号の要件
特定技能2号を取得するには、試験への合格が必須です。
ルートは2つで、①特定技能の試験に合格するルートと、②分野によっては技能試験の対象級に合格することで取得できます。技能試験は通常、日本人が受験するものとして作成されているため、日本語能力がネイティブレベルでなければ難しいといえます。
ここでは、①のルートを詳しく解説していきます。
ルート②の要件については以下の記事で解説していますので、ご覧ください。
<要件:試験合格>
- 特定技能2号の試験に合格する
- 外食業・漁業分野は日本語能力試験(JLPT)のN3以上に合格する
<要件:実務経験>
- 分野ごとに指定されている年数の管理・指導経験や、実務の経験
※経験についての証明書を受験申し込みの際に提出する必要があります
特定技能2号の試験に合格する
特定技能2号の試験は、1号と同じように分野ごとに試験が異なります。ほとんどの分野で試験は実施されていますが、一部未実施で、海外試験は未実施の分野があります。
指導・実務経験を満たす
特定技能2号を取得するために必要な要件として、従業員などの指導・管理を行った経験年数か、現場での実務経験の年数、またはその両方の経験年数が求められます。
分野ごとに内容は違いますが、多くは指導・管理や実務経験2年以上に設定されています。
また、この経験年数については、特定技能2号の試験に申し込む際に証明書として提出する必要があります。満たしていない場合は受験できません。
特定技能2号試験の特徴
特定技能2号の試験は分野ごとに違いますが、共通する特徴があります。
①言語は日本語のみ
特定技能1号の試験は母国語でも受験できましたが、2号の試験は日本語のみとなります。特定技能2号は熟練した技術を持ち、管理や指導なども担う人材のため、技術面だけでなく業務に必要な日本語力が身についているかを試験で測っていると考えられます。
②ルビが付かない試験もある
試験は日本語のみですが、ルビが付く分野と付かない分野に分かれます。現時点では外食業・飲食料品製造業ではルビがありません。
また、専門用語については母国語で注釈がつく場合もあります。
③管理・指導をする立場の人材が知っておくべき問題も出題される
特定技能の試験は、求める働きをきちんとできる人材かどうかを測っています。特定技能2号では、熟練した技術で実務を遂行できるだけでなく、従業員の指導や管理などのマネジメント、リーダーの補佐などをできる人材であることが求められています。そのため、マネジメント業務を行うために知っていなければならない知識も試験に出題されます。
これらの知識は、どの分野も試験練習テキストに含まれていますので、事前にテキストを使って学習しておくとよいでしょう。
特定技能2号試験の費用
試験の費用は分野ごとに違います。
分野 | 受験料(税込み) | 合格証明書 交付手数料 |
外食業 | 14,000円 | 結果通知書を自身で印刷 |
飲食料品製造業 | 15,000円 | 結果通知書を自身で印刷 |
製造分野 | 15,000円 | 15,000円 |
宿泊 | 15,000円 | 12,100円(企業が納付) |
ビルクリーニング | 16,500円 | 11,000円 |
農業 | 15,000円 | 結果通知書を自身で印刷 |
漁業 | 1,5000円 | 結果通知書を自身で印刷 |
自動車整備 | 4,800円 | 16,000円 |
航空 ※未実施 2025年まで✕ | ― | ― |
建設 | 2,000円 | 結果通知書を自身で印刷 |
造船・舶用工業(溶接) | 48,400円(令和5年度) 96,800円(最低料金) | 不明(無料の可能性が高い) |
分野によっては特定技能号の約2倍です。合格証明書の発行に費用が掛かる分野もあります。
また、基本的に、一度予約した試験はキャンセルできません。返金もされないため、ご注意ください。
特定技能2号評価試験の申し込み方法
基本的には、各分野の試験のサイトから申し込みます。また、先述の通り、実務経験証明書や分野によっては誓約書等も必要になります。
一部の分野では電話で受験の予定を決める方法をとっているので、受験が決まったら申し込みの流れなどはできるだけ早めに確認しておき、企業は証明書の作成期間などを設けておきましょう。
申し込み者は本人?企業?
特定技能2号試験の申し込みは、本人でも可能な分野と、企業が行わなければならない分野があります。提出は企業からのみと規定されている分野や、企業が申し込みしなければ難しい申し込み方法の分野など、様々です。また、本人による申し込みが可能であっても、受験の要件である実務経験証明書の提出については企業が協力する必要があります。
自社の特定技能外国人が2号の試験を受験したい場合は、相談を受けるはずなので、そのような理由があることを理解しておきましょう。
必要書類:実務経験証明書
実務経験証明書のフォーマットは主に各分野の試験サイトなどで入手できます。
分野によってはWordなどの形式ではなく、入力フォームを設けている場合があります。形式は様々なので、特定技能2号の取得について相談された時点で確認しておきましょう。
経過措置について
最近になって特定技能2号の要件が定まった分野が多いため、1号で在留中の方の在留期限の都合から、実務経験についての経過措置が設けられている分野があります。
例えば、特定技能2号の対象になった、2023年6月9日の翌日から起算して、5年の在留期限上限まで2年6カ月未満しかない特定技能1号の人については、「2年以上」ではなく、残余期間から6カ月を差し引いた期間の管理等実務経験でよい、といったものです。
特定技能2号試験の注意点
試験に関して注意すべきことについて解説します。
過去の勤務先に実務経験証明書の記載を依頼する必要がある
特定技能2号の試験を受験するためには実務経験が必要ですが、この経験年数は現在勤務している企業だけでなく、過去に勤務していた企業での年数も合算できます。転職経験があると、以前働いていた企業へ実務経験証明書の記載を依頼しなければなりません。
しかし、過去に勤務していた企業との関係が悪く依頼が困難な場合もあります。現在雇用している企業や登録支援機関などが間に入って取得するなどの対応が必要になるかもしれません。
もし過去に雇用していた外国人に実務経験証明書の記入を依頼された場合は、記載に協力しましょう。各省庁も記載をお願いしており、入管法の条文※に記載を定めている分野もあります。
試験を申し込む前にIDの取得や登録が必要な分野もある
外食業や飲食料品製造業などでは、申し込みの前に会員登録をしておく必要があります。事前登録の期間も決まっています。
誓約書の提出
在留資格申請の際、実務経験証明書などの書類に偽りがないことを約束する「誓約書」の提出が必要です。
分野によって誓約書の書式と内容は違いますが、多くは受け入れ企業の署名が必要となるので、事前に内容を確認しておくことをおすすめします。
また、分野によっては申請者本人ではなく、受け入れ企業が主体で記載する誓約書の場合もあります。
特定技能2号評価試験の内容
ここからは試験内容について、いくつかの分野をピックアップして解説します。
外食業
外食業の試験は、「外食業特定技能2号技能測定試験」と呼びます。
試験は、学科試験と実技試験で行われます。
試験の内容
- 学科試験の出題範囲:衛生管理、飲食物調理、接客全般及び店舗運営に係る知識を測定。
- 実技試験の出題範囲:業務上必要となる技能水準を測定。
受験に必要な実務経験
複数のアルバイトや特定技能外国人などを指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、サブリーダーや副店長など店舗管理を補助する実務経験(指導実務経験)を2年以上有する
▼外食業分野の特定技能2号についてもっと詳しく解説した記事はこちら
飲食料品製造業
飲食料品製造業の試験は、「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」と呼びます。
試験は、学科試験と実技試験で行われます。
試験の内容
- 学科試験:一般衛生管理、HACCP、品質管理や納期管理、コスト管理などの知識を測定。
- 実技試験:業務上必要となる技能水準を測定。
受験に必要な実務経験
食料品製造業分野において、複数の従業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての実務経験を要件とする。
▼飲食料品製造業分野についてもっと詳しく解説した記事はこちら
工業製品製造業
工業製品製造業とは製造業のことです。この分野の試験は、「製造分野特定技能2号評価試験」と呼びます。
機械金属加工区分、電気電子機器組立て区分、金属表面処理区分のどれかを受験します。
試験の内容
- 学科試験:
[機械金属加工区分]安全衛生管理、品質管理、検査、測定、製図、標準作業、機械操作・管理、金属加工など
[電気電子機器組立区分]安全遠征管理・品質管理、電気、製図、器具、機械応用、電気応用など
[金属表面処理区分]安全衛生・公害(排水処理)、検査・測定・品質管理、材料、化学、電気、めっき・アルミニウム陽極酸化処理共通、めっき、アルミニウム陽極酸処理 - 実技試験:実際の作業工程や材料に関する内容を読んで正しい答えを選択する
受験に必要な実務経験
本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有する。
▼工業製品業分野についてもっと詳しく解説した記事はこちら
農業
農業分野は、「農業技能測定試験2号」と呼びます。
特定技能1号と同じく、2号も「耕種農業」と「畜産農業」の2区分に分かれています。
試験の内容
- 学科試験:
[耕種農業]耕種農業全般の技能及び安全衛生管理等に関する学科及び実技問題
[畜産農業]畜産農業全般の技能及び安全衛生管理等に関する学科及び実技問題 - 実技試験:実際の作業工程や材料に関する内容を読んで正しい答えを選択する
受験に必要な実務経験
農業の現場における管理者としての2年以上の実務経験または農業の現場における3年以上の実務経験を有する
▼農業分野の特定2号についてもっと詳しく解説した記事はこちら
日本語能力の向上が試験合格への鍵
特定技能2号の試験は、熟練した技術や管理などの知識と、業務におけるコミュニケーション可能な日本語能力を有しているかどうかを見ています。
業務における知識はもちろん必要ですが、日本語を理解していればそれだけで正解できる問題、逆に知識があっても日本語がわからず答えを選択できない問題もあり、日本語能力が試験合格の鍵となっています。
当社が見るかぎり、2号の試験は日本語能力試験のN3~N2程度の日本語能力が必要と感じます。特定技能1号の外国人は、1号取得段階では日本語能力N4相当のはずですが、取得後も継続して日本語学習を続けてきたかどうかが試されているわけです。
これから特定技能2号の取得を目指す外国人の方、雇用している外国人の2号取得を希望する企業の皆様におかれましては、まずは日本語力の向上から始めることをお勧めします。