雇用側も知らないと怖い!在留資格の取消し制度と対処方法【行政書士解説】

外国人が日本に入国する際、どんな方でも29の在留資格のいずれかに該当する必要があります。ただし、29の在留資格に該当して入国した外国人でも、虚偽の書類を提出して在留資格を得た者や、在留状況が悪いなどの場合には在留資格が取り消しとなります。

ここでは在留資格の取消し制度や、取り消された場合の雇用側の対処法について解説していきます。

在留資格取消しとは

在留資格の取消しとは、外国人が嘘をつき、または不正な手段により在留資格を得た場合や、その在留資格に応じた活動を一定期間行わないでいた場合などに、外国人の在留資格を取り消す制度です。

偽造文書を提出し不正に在留資格を得る外国人や、失踪技能実習生等の増加により、取消事由を追加した「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)が2016年11月に施行されました。

従来は在留資格に応じた活動を3ヶ月以上行っていない場合にのみ、在留資格の取り消しが可能とされていました。しかし2016年の改正で、在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ他の活動を行い又は行おうとしている場合、3ヶ月経たなくても在留資格を取り消ことが可能になりました。

偽装滞在者を迅速に処分することができるようになったといえます。

仮に、御社で雇用している外国人の在留資格が取り消されたら、どうなるでしょうか?

ずっと働いてくれると思っていたのに、取り消されることで雇用を続けることはできず、仕事に大きな影響が出ます。まわりの人に当然その負担がかかり、またプロジェクト自体の進行を見直さざるを得なくなる可能性もあります。中小企業にとって「雇用している外国人の在留資格の取り消し」は決して他人事ではありません。

在留資格が取り消しになる場合

具体的に在留資格が取り消しになる原因・理由(以下、取消事由)とはどのようなものでしょうか?

入管法上は第22条の4第1項1号から10号まで10の事由がありますが、それらを大別すると3つに分けられます。

3つの取消事由

①犯罪などにより上陸拒否該当者なのに「該当しない」と偽り、あるいは、在留資格の要件に該当しないのに虚偽の書類を提出して入国した場合(入管法第22条の4第1項1~4号)

②在留資格に定められた活動をしていない場合、あるいは本来の活動以外の活動を行っていた場合(同5~7号)

③中長期在留者が、虚偽の住所地を届ける、あるいは住居地が決まったのに90日以内に届け出をしていない場合(同8~10号)

(入管法上は住居地が決まってから原則14日以内に届け出る必要があります。)
※「本来の活動以外の活動」の具体例は、次項の「取り消しの事例」にて紹介します。

簡単に言ってしまうと、在留資格の取り消しは、①不法に入国した場合、②在留資格外・本来の活動以外を行った場合、③中長期在留者が住所を偽ったり届け出なかったりした場合 におこなわれると思ってください。

▶参考:在留資格の取消し(入管法第22条の4)|出入国在留管理庁

取り消しの事例

例えば、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格をもつ外国人が、離婚して配偶者としての活動を6か月以上行っていない場合は、上記②の「在留資格に定められた活動をしていない場合」に当たります。

在留資格:日本人の配偶者等、永住者の配偶者等

取消事由:離婚をして配偶者としての活動を6か月以上行っていない

⇒「②在留資格に定められた活動をしていない場合」

また、留学生が専ら資格外活動に精を出し、出席率が悪い場合は②の「本来の活動以外の活動を行っていた場合」に当たります。

在留資格:留学生(資格外活動申請済)

取消事由:学校の授業への出席率が低い 

⇒「②本来の活動以外の活動を行っていた場合」

それ以外ですと、永住者が取り消される場合は①の「在留資格に該当しないのに虚偽の書類を提出して」のケースが多いでしょう。

取り消し対象とならない「正当な理由」とは?

ただし、定められた活動を行わないで在留していることにつき、正当な理由がある場合は取り消し対象となりません

例えば「就労」の在留資格を持つ外国人が勤務先を退職後、再就職先を探すために会社訪問など具体的な就職活動を行っている場合などです。

新型コロナウイルス感染症の影響で再就職先が見つけにくい場合、正当な理由に該当する可能性があると言えます。

また、日本人や永住者の配偶者がいて、離婚調停中などの場合も在留資格が取り消しとならない正当な理由に該当します。

上記③の住居地関係で言うと、頻繁な出張を繰り返して1回当たりの日本滞在期間が短く、住居地を決めていない場合も在留資格の取り消し対象外です。海外に拠点をおいているが、頻繁に日本の親/子会社に出張する経営層の方などはこれに該当することが多いです。

在留資格取り消し件数

法務省の発表によると、2020年の在留資格取消件数は1,210件で、前年度993件と比べ21.9%増加しています。在留資格別では1位「技能実習」561件(46.4%)、2位「留学」524件(43.3%)、3位「技術・人文知識・国際業務」29件(2.4%)と、上位2つで約90%を占めます。

国籍・地域別の在留資格取消しを行った在留資格(2020年)グラフ・在留資格別
令和2年の「在留資格取消件数」について|出入国在留管理庁 から作成

1位の「技能実習」は転職ができないため、何らかの不満やトラブルがあり、外国人が失踪して他の会社で働いていたケースが多いです。また2位の「留学」は先に述べたように、「本来の活動以外の活動」、すなわちアルバイトを専ら行うなど、在留資格で定めた活動違反が多いと思われます。

ただ、留学生で資格外活動超過の場合は、在留資格の更新が不許可となり、取り消しにまでは至らないケースも見られます。そのため、実際はもっと資格外活動をしている外国人留学生は多い可能性があります。

在留資格の取り消しを行った国籍・地域別にみると、1位ベトナム711件(58.8%)、2位中国162件(13.4%)、3位ネパール98件(8.1%)と、ベトナム人技能実習生の増加と重なり、ベトナム人が多くなっています。

国籍・地域別の在留資格取消しを行った在留資格(2020年)のグラフ 地域別
令和2年の「在留資格取消件数」について|出入国在留管理庁 から作成

入管法第22条の4第1項各号の取消事由別にみると、1位は第5号で616件(50.9%)、2位は第6号で493件(40.7%)となっており、上記②に該当する事由、「在留資格に定められた活動をしていない場合、あるいは本来の活動以外の活動を行っていた場合」が約91%を占め、在留資格「技能実習」「留学」が約90%を占めているのと合致しています。

第5号は2016年の入管法改正で新設されたものですが、取り消し事由の1位を占めますので、法改正が効果を発揮した良い例と言えるでしょう。

在留資格取消における取消事由適用件数(2020年)
令和2年の「在留資格取消件数」について|出入国在留管理庁 から作成

在留資格が取り消されたらどうなる?

在留資格が取り消される原因が上記①のうち、「上陸拒否該当者なのに『該当しない』と偽り、あるいは、在留資格に該当しないのに虚偽の書類を出して入国した場合」に該当すると、直ちに退去強制の対象となります。

退去強制

退去強制とは、我が国の安全や利益を守るため、不法入国した外国人を強制的に国外へ退去させるシステムです。

②の「在留資格に定められた活動をしていない場合、あるいは本来の活動以外の活動を行っていた場合」で、かつ外国人が逃亡すると疑うに足りる理由がある場合も、退去強制の対象となります。

出国準備期間

それ以外の理由で在留資格が取り消された場合は、30日を限度とする出国のために必要な期間が指定され、その期間内に自主的に日本から出国しなくてはなりません。

ただし、この期間内に出国しても、在留期間内に出国する場合と同様に取り扱われ、ペナルティーはありません。

在留資格の取り消しに該当するのに「指定期間内にきちんと出国したらペナルティー無し」なんて、ちょっと甘い印象を受けるかもしれません。これは、厳しくするよりも不適切な外国人に早く帰国してもらうことを選択した法律と言えるでしょう。

ただし、指定された期間内に出国しなかった場合は、退去強制の対象となり、かつ刑事罰の対象(3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役もしくは禁錮及び罰金を併科)となるので注意が必要です。

上陸拒否期間とは

日本から退去強制され、または出国命令を受けて出国した外国人は、入管法の規定により一定期間日本に入国することはできません。その期間を上陸拒否期間と言います。

具体的には以下の表のとおりです。

 上陸拒否期間
いわゆるリピーター
※過去に日本から退去強制された、または出国命令を受けて出国したことが複数回ある者
退去強制された日から10年
過去1回のみ退去強制された者退去強制された日から5年
出国命令により出国した者出国した日から1年
参考:退去強制手続と出国命令制度Q&A||出入国在留管理庁

出国命令とは

出国命令とは、不法残留した外国人が自ら帰国を前提に入国管理局に出頭した場合、入国管理局に収容しないで出国させる制度です。

上陸拒否期間の定めがない、すなわち永久に日本に上陸できない外国人もいます。それは、日本や海外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮に処せられた者や、麻薬や覚醒剤などの取り締まりに関する法令に違反して刑に処せられた外国人です。

この条文があることで「日本は不法な外国人から守られている」と、少し安心できる一文かもしれません。

図引用:出国命令制度について|出入国在留管理庁

在留資格取り消し手続き

入管法上、法務大臣が外国人の在留資格の取り消しをしようとする場合、入国審査官は在留資格取り消し対象の外国人から意見を聴取しなければなりません。入国審査官は、意見聴取通知書を対象の外国人宛に送付します。

外国人は、意見の聴取期日に出頭し、意見を述べ、証拠を提出することができます。

ただし、法務大臣は、当該外国人が正当な理由がなく意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わないで在留資格の取り消しをすることができます。

もし雇用している外国人に意見聴取通知書が来たら

まずは外国人から事情をよく聞いてあげてください。正当な理由があったり、誤解されたりしている可能性がある場合、必要なら会社の書類を用意する、または専門家を紹介してあげるなど、一緒に解決する姿勢を示すと外国人も安心するでしょう。

失踪外国人を雇用しているなど明らかに違法な場合、会社も不法就労助長罪に問われますので、ご注意ください。

不法就労助長罪については下記の記事をご覧ください。

まとめ

在留資格取消しの理由やその後の対処法について解説しました。

取り消しは法を守らない外国人を速やかに国外に出させるために有効な法律です。正当な理由があれば取り消し対象外ですし、聴取の手続きも入管法上設けられており、外国人に防御の機会も与えられているといえます。

法律はどうしても現実の後追いになりますので、改正を繰り返すことで違反を防ぎ、望ましい方向に変えていく必要があります。

どのように法改正すれば日本の労働力や成長を確保しつつ、安全も保てるか、皆さんも考えてみても良いかもしれません。

 

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