長年、EPA介護を受け入れてきた介護法人が、特定技能「介護」で新たな人材を迎えた理由とは?

外国人採用介護施設取材 第3回
執筆者:

外国人採用サポネット編集部

外国人介護士の受け入れがまだ一般的ではなかった2013年、EPAで最初の介護福祉士候補を受け入れて以来、10数人の外国人材を迎えてきた社会福祉法人「泉心会」。
外国人材の活躍の場を広げるとともに、その一人ひとりとのコミュニケーションを通じて、外国人介護士が活躍しやすい環境を築き上げてきた同法人では、現在、EPA介護士に加え、新たに特定技能「介護」の外国人材受け入れも開始しています。

今回は、同法人代表の小泉隆一郎さんに、外国人材がのびのびと活躍できる環境作りのポイントや、新たに特定技能「介護」で人材を迎えた理由などについて、詳しくお伺いしました。

【話し手】

小泉 隆一郎 さん 
社会福祉法人「泉心会」 代表
まだ国内での採用例が少なかった2013年、EPAでの外国人介護士の受け入れを決断。実際の採用から教育サポート体制の確立まで、外国人材受け入れのプロセス全体を通じて主導的な役割を果たしている。
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新卒採用における苦戦から、外国人材の受け入れを決断

外国人介護士の受け入れを開始されたのが2013年というのは、かなり早いという印象があります。きっかけはどのようなものだったのでしょうか。

小泉:日本の人口構成の推移を見ても、今後、介護現場を担う人材を確保するのが難しくなることは当時から明らかでしたので、いち早く備えるべきと考えたのが外国人材に着目した最初のきっかけでした。年々、日本人の新卒採用が難しくなっている実感もありましたので、介護サービスの現場を支えていくために海外の人材を迎えることにしました。

最初はどのような形で外国人材を迎えられたんですか。

小泉:EPA介護福祉士候補として、ベトナム出身の方をお迎えしたのが最初です。さらに半年後、同じくEPA介護福祉士候補として、インドネシア出身者が2名、ベトナム出身者1名に加わりました。

初めて外国人材を受け入れた当時、困ったことなどはありましたか。

小泉:言葉が壁になり、うまく意思の疎通ができないようなことが、とくに最初期のメンバーのときには多くありました。最初に迎えたインドネシア人の介護士候補は数年間の勤務ののち、結局、介護福祉士資格を取得することなく離職したのですが、その帰国前、いろんな思い出話をしているときに「最初のころは辛かった」と言っていました。介護現場では、作業のやり方などについて注意されることもありますが、言葉の意味が伝わらないため、ただ「怒られている」としか感じることができず、どんどん萎縮してしまったそうです。

一方、当時は日本人スタッフ側にも「どこまで仕事を任せていいのか」といった戸惑いや遠慮があり、それらが双方の間に溝をつくっていたような気がします。

その溝はどのように解消されたのでしょうか。

小泉:一緒に働いていくうちに、自然と周囲と打ち解けていったのが大きいですね。本人たちの日本語もどんどん上達し、コミュニケーションも次第に円滑になりました。さらにその翌年以降、新たな介護福祉士候補を迎える際には、最初期のメンバーたちが率先してサポートを引き受けてくれたので、最初のような溝が生じることはありませんでした。コミュニケーションが深まり、互いに対する理解が進んだことで、だんだんとみんなが働きやすい環境になっていきました。

将来も継続的に海外人材を確保するために、早期から特定技能外国人の受け入れを開始

外国人介護士と日本人介護士。

泉心会様では現在、何名の外国人材が活躍していますか。

小泉:11名です。そのうちの9名がEPA介護福祉士候補及び介護福祉士で、残りの2名が特定技能「介護」の人材になります。

特定技能「介護」の2名に関しては、マイナビグローバルからご紹介させていただきました。これまではEPAで外国人材を迎えられていましたが、新たに特定技能「介護」の人材を受け入れられた背景には、どのような理由があったのでしょうか。

小泉:今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外からEPA介護福祉士候補の受け入れが予定通り進んでいませんので、すでに日本にいる外国人材を採用するため特定技能「介護」の人材を活用しようと考えたのが第一の理由です。また、それとは別に、将来のためにこれまでとは違うルートで外国人材を迎えてみたいという思いもありました。

EPAに関しては、受け入れ要件を満たしている法人や施設しか外国人材を迎えることができませんでしたが、新たにできた特定技能「介護」には受け入れ資格などはありません。つまり、今後はEPAよりも特定技能が主流になり、良い外国人材を複数の施設が奪い合うような事態が生じる可能性もあります。そのような競争に負けずにこれからも安定して海外人材を迎えるためには、実際に特定技能「介護」の人材を受け入れる実績を作り、その辺りを見極めてみるべきだと考えました。

当法人の場合、EPAで多くの外国人材を受け入れてきたことから、就業管理・採用後の支援業務に関してのノウハウはありますので、監理団体などによるサポートなどはそれほど必要としていません。そんな私たちにとって、純粋に人材をご紹介いただくだけという利用の仕方もできるマイナビグローバルのサービスは、非常に適していました。

※訪問介護サービズは不可、1号特定技能外国人の数が、事業所における日本人等の常勤介護職員の総数を超えてはいけない、などの条件はある。

―初めて特定技能外国人を迎えてみての感想はいかがですか。

特定技能「介護」で働く、王さん
特定技能「介護」で働く、王さん

小泉: マイナビグローバルさんには、特定技能外国人として2名の中国出身の方をご紹介いただきましたが、ふたりともN1レベルの日本語能力をもつ方だったので本当に助かりました。日本での生活も長いので、生活に馴染むためのフォローなどはほとんど必要ありませんでした。また、仕事にも非常に真面目に向き合ってくれているので、現場にもかなりスムーズに馴染んでいます。

まだ先の話ですが、将来は介護福祉士を目指したいといってくれていますので、長く活躍してもらえるのではという期待も持っています。

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国や地域ではなく、一人ひとりの多様性を受け入れることが、働きやすい環境作りのカギ

施設内の夏祭りの様子。浴衣を着て入所者とイベントを楽しむ外国人介護士たち。

外国人材に対する施設利用者の反応についてお聞かせください。

小泉:私自身も最初は、外国人介護士候補という存在に対して、ご利用者さまやご家族さまがどのような反応をされるのか心配でしたが、全くの杞憂でした。「介護を学ぶ」という目標を持って日本に来ている外国人介護士や介護福祉士候補者は、あらゆることに真面目に取り組む人が多いんです。そんな姿勢はご利用者さまにもすぐ伝わるようで、スムーズに受け入れられるケースがほとんどでしたね。一つひとつのケアも丁寧で、接し方も優しいといって喜んでくださるご利用者さまも多いです。

外国人材と一緒に働くために、注意するべきことなどはありますか?

小泉:それぞれの文化や生活習慣に合わせた対応やサポートに関しては、やはり気を配る必要があります。例えば、インドネシア出身者のなかにはイスラム教徒の方も多いのですが、朝のお祈りなどの習慣と仕事をどのように両立していくべきかなど、日本人の場合には必要のない工夫が求められることもあります。これらについては、本人を含むメンバーと話し合いながら、細かく調整していくようにしています。

出身国や地域によっての違いなどもありますか。

小泉:もちろんです。当施設ではこれまでに4カ国の外国人材を迎えてきましたが、それぞれの国によって、すごくシャイだったり、とても陽気だったりと国民性は全く違います。また、同じ国の人であっても、出身地域によっては言葉や宗教、生活様式も全く異なったりするので、「同じ国の人だから」と一括りで考えることはできませんね。

仕事に対するスタンスやそのなかで大切にしたいことなどについても全く違っていたりしますので、その意味でも一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取りながら、具体的なサポートを考えていくことを大切にしています。

リーダー育成などの新たな取り組みで、長く活躍できる施設に

―これからの課題についてお聞かせください。

小泉:これまで多くの外国人材を迎えてきましたが、そのうち介護福祉士の資格を取得し、現在も活躍してくれているのは2名だけです。EPAの場合、介護福祉士取得を目的としており、来日年齢が21~24歳くらいと若くなります。若く学習能力が高いのですが、国家資格取得時には4年が経過し結婚適齢期を迎え、家族から帰国命令が出ることも多くあります。仕方ない面もありますが、私たちとしてはできるだけ長く一緒に働いてほしいという思いがあります。外国から来られた方がより働きやすい環境をつくることで、ここに留まる選択をしてくれる方を増やしていきたいですね。

具体的には、どのような取り組みが必要ですか。

小泉:まずは外国人材が安心して日本で暮らせる環境や条件をさらに整えていくことだと思っています。EPAや特定技能「介護」で就業している間に介護福祉士の資格を取得すれば、その後は長く日本で働くことが可能ですが、家族などがいる場合、介護福祉士としての給与だけで暮らしを立てていけるかが不安という人も多いようです。しかし、一介護士ではなく、現場のリーダーなどを務めることができれば、当然条件面も変わり、より安定した暮らしを実現できるようになるはずです。

さまざまな制限はありますが、より踏み込んだ業務を担当できる人材になるための成長サポートなど、外国人介護士にも安心して活躍してもらえる仕組みをつくっていきたいと考えています。

外国人採用を検討中の方へのメッセージ

最後に、外国人材の受け入れを検討中の介護事業者や介護施設の方にメッセージをお願いします。

小泉:介護現場では今後、日本人スタッフの確保がさらに難しくなっていきますので、多くの施設がそれに変わる力として外国人材を迎える選択をすることになると思います。しかし、外国人介護士の場合は言葉の壁などもあり、育成には日本人スタッフ以上の時間がかかることもあります。私たちの経験では、例えば特定技能「介護」の介護士に夜勤まで任せることができるようになるには1年程度の期間が必要ですので、いざ、「人が足りない」となってからでは間に合いません。

人手不足のため施設の一部しか稼働できないなどの事態を避けるためにも、計画的に外国人採用に向けて行動されることをおすすめします。


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