特定技能外国人はどの国から雇用できるのか?最新の各国法令・ガイドラインを解説

特定技能外国人はどの国から雇用できるのか?最新の各国法令・ガイドラインを解説
執筆者:

㈱マイナビグローバル 代表取締役社長/杠元樹

2019年に鳴り物入りで登場した在留資格「特定技能」は、国内在住者を対象に急速に拡大してきました。2022年6月末で87,472人となり、直近では3カ月間で135%、前年同月比では300%と大きく伸長しています。

当初の思惑とは異なり、内訳は日本在留者が84%を占める状況となっていますが、渡航制限が事実上解除されたことで「いよいよ海外現地から特定技能人材を採用できる」という期待も高まっています。特に日本在留の外国人採用では難しい条件・立地の企業にとっては、海外現地から採用するというのは有効的な手段です。

では、いよいよ検討を始めた際に「どこの国が良いだろうか?」という疑問に直面するのではないでしょうか。
結論としては、国内在留者であれば選択肢は多くはなく、国籍不問で採用を進めることをおすすめします。海外在住者については一概にどこの国がいいとは言えない複雑な現状があるからです。

本記事では、特定技能に関する二国間の協力覚書、通称「二国間協定」や最新の各国法令・運用ガイドラインを解説しながら「特定技能外国人はどこの国から採用可能なのか」を説明していきます。

外国人採用で最低限押さえておきたい各国の特徴・状況まとめ

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大前提、そもそも特定技能外国人を採用できる国は決まっている?

日本政府と諸外国との二国間協定締結のニュースや技能実習制度、EPA(経済連携協定)のイメージがあり、特定技能も採用可能な国が限定されていると思われがちですが、正確には異なります。

二国間協定(二国間の協力覚書)は、特定技能制度というプロジェクトを円滑に進め・外国人を保護することを目的とした取り交わしです

つまり、海外での特定技能試験の実施は締結国のみとなりますが、在留資格発行の国籍を限定している訳ではありません。日本在留者はその時点での在留資格に関係なく、特定技能試験に合格すれば特定技能を取得することが可能です。実際に、現時点で二国間の協力覚書の締結していない中国も2,450名(2022年6月末時点)ほど特定技能外国人として働いています。

また、2020年4月1日から日本国内試験の運用ルールが変更され、受験目的で「短期滞在」の在留資格により入国し、特定技能試験を受験することが可能となりました。例えば台湾や韓国の方が短期滞在ビザで日本旅行と合わせて特定技能試験を受けて合格し、特定技能外国人としては働くこともできます。

二国間協定締結国

  • カンボジア
  • インドネシア
  • ネパール
  • フィリピン
  • ミャンマー
  • タイ
  • ベトナム
  • モンゴル
  • ウズベキスタン
  • スリランカ
  • インド
  • バングラデシュ

※2022年8月30日時点

▶参照:「特定技能に関する二国間の協力覚書」作成国一覧試験の適正な実施を確保するための分野横断的な方針|出入国在留管理局

外国人採用で最低限押さえておきたい各国の特徴・状況まとめ

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国内からの採用は選択肢が多くなく、必然的にベトナム人が対象に

先ほど、「日本在留者の場合、在留資格問わず特定技能試験に合格すれば特定技能外国人として働くことが可能」と説明しました。しかし、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などの高度人材が特定技能試験を受けることは多くなく、実態として日本在留者を採用する場合の多くは「技能実習生」と「日本語学校」「専門学校」の留学生が中心となります。特に「技能実習生」はベトナム人が54.5%を占めていることから、結果的にベトナム人の応募が多くなります。

逆にいえば、ベトナム以外の国籍に限定して採用を考えると人材獲得が難しくなるということです。

実際に国籍別の特定技能在留人数はベトナムが60.3%を占めていて、国内在留者を対象に採用を考える場合はベトナム人を含め国籍不問で進めることをおすすめしています

【特定技能 国籍・地域別割合】

海外からの特定技能在留外国人数はまだ16.1%に留まるが増加傾向

次に海外からの入国の現状を確認しましょう。

渡航制限が緩和されて日が浅いため、特定技能在留外国人数が急増している割には海外から特定技能で入国した在留者数は多くありません。海外からの在留者比率は16.1%(前年同月17.9%)から伸びておらず、期待とは裏腹に、国内在留者が中心となっている状況に変化はありません。

しかし、日本の渡航制限が緩和されて以降、在留数は着実に増加しています。海外での試験実施回数の増加により合格者は確実に増加していますので、後述する課題が解決すれば一気に入国してくる可能性は秘めています。

日本在住の外国人をの特定技能・就労意識調査 結果

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特定技能で採用できる対象者が多い国はどこか?

それでは、海外から採用可能な国・地域はどこになるのでしょうか。

海外試験合格者は増加、インドネシアが圧倒的。

各分野の試験運営サイトに掲載されている試験結果を元にマイナビグローバルにて加工

海外での試験合格者数を国別に見ると、インドネシアが圧倒しています。渡航制限の解除を受けて試験の実施状況は今後大きく変化していくと考えられますが、現時点ではインドネシアに対象者が多いということになります。次いでフィリピン・ネパール・カンボジアと続きますが、合格者は多いとは言い難い状況にあります。

また、分野別に実施状況が偏っている点も見逃せません。全体的に介護・農業・外食業が進んでいるのに対して、試験がほとんど実施されていない分野もあり、そもそも採用できる分野が限定されている状況です。

出入国管理統計統計表 国籍・地域別入国外国人の在留資格|出入国在留管理庁 から2022年1~8月分をマイナビグローバルにて加工

※再入国:再入国の許可を受けていったん出国した後に再び入国した外国人を「再入国者」と言います。上陸後は従前の在留資格及び在留期間が継続しているものとみなされるもので、在留期間更新許可申請中または在留資格変更許可申請中であっても、再入国許可による出国またはみなし再入国許可による出国は可能です。

新規入国者の累計は伸び悩み。合格者が採用・入国に至っていない現状

合格者は増えてはいますが、合格者と実際の入国・在留数は大きく乖離しているのが現状です。入国人数が多いインドネシアですら、合格者21,543名(2022年9月末時点)に対して入国人数4,956名(2022年8月末時点)と23%に留まっています。

現地でトレーニングを積み試験に合格した外国人が増えている一方で、合格者の採用は十分に進んでいないことがわかります。

元技能実習生しか対象者がいない分野も…メインはベトナム人

ベトナムは試験実施が遅れており特定技能の合格者は多くありませんが、技能実習2号を修了した帰国者も特定技能を取得できる対象となるため、技能実習生が圧倒的に多いベトナムが最大のポテンシャルを秘めています。

そのため、まだ現地試験が実施されていない分野においては、結果的に技能実習生が多いベトナムがメインターゲットになると考えられます。

それぞれの国の法令や明文化されていないガイドラインの存在

特定技能に限らずではありますが、国民が海外で労働するにあたって多くの国で法令やガイドラインが存在します。当然受け入れる国の法令は重要ですが、送り出す国も大事な国民を守る義務があります。

しかしこの現地法令やガイドラインは国ごとに異なっているだけでなく、特定技能制度の運用開始から日が浅いこともあって内容が定まっていない、明文化されていない場合もあり、情報が錯綜しています。

外国人が日本に渡航して労働する場合の本国での許可や手続きなどの流れについては出入国在留管理庁から情報を提供されていますが、実際のルールが十分に記載されていない部分もあるため、知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまうこともあり注意が必要です。

▶参照:出入国在留管理庁「特定技能に関する各国別情報」

国の法令・ガイドライン(2022年10月時点)

ここからは、筆者が実際に現地エージェントから見聞きした法令やガイドラインについて国別に解説していきます。

【インドネシア】

インドネシアは、インドネシア政府が立ち上げた特定技能ポータルサイト「労働市場情報システム(IPKOL)」にインドネシア現地求職者と日本企業が登録してマッチングを図る仕組みです。全てネイティブ言語のみの対応となっています。

また、登録や斡旋に際して現地・日本側のエージェントが代行することは原則禁止されています。

以上のことから、特定技能に特化した人材紹介ライセンスは現時点では存在していません。技能実習やその他在留資格を含めた総合的な人材紹介ライセンスである「インドネシア人海外労働者派遣会社(P3MI)」が介入できる仕組みが検討されているというニュースはありますが、現時点では特定技能も対象になっていると明文化されていません。

技能実習制度において問題となっているような悪質ブローカーを排除するための理想的な仕組みにように思えますが、そもそも日本語力が低い求職者が自分で日本企業を選び、企業側と交渉し、渡航準備を行うことは相当ハードルが高いです。日本企業も、日本語を話すことのできないインドネシア人と採用交渉を行うことは相当な工数がかかります。

また、事実上エージェント利用は禁止されているため、現地教育機関があくまで日本語教育の延長としてサポートするという話を聞きますが、現地法令上問題ないという記載はありません。

インドネシアは特定技能試験が頻繁に実施されており、人口も多く非常に魅力的な国ではありますが、自社または法令やガイドラインに精通した信頼のおけるエージェントに現地法令調査やガイドラインの確認をしてもらうことをおすすめします。

【フィリピン】

フィリピンについては日本在住・現地在住に関わらず、フィリピン人を雇用する日本企業がPOLO(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)に審査され、合格することが必要です。審査には雇用条件の基準をクリアすること以外に、東京もしくは大阪で英語による対面面接があります。

また、フィリピン側のエージェントと「直接契約」が必須です。日本側のエージェントが関わることは問題ありませんが、間に入る関係者が増えることで結果的に採用費用が大きく膨らむことがあります。

この仕組みは国内在留者も同様に適用される点が他国とは異なる重要なポイントです。

日本に多く在留するフィリピン人を採用する際も同様の手続きを経ないといけないため、企業側はフィリピン人だけは特別な対応を行う必要があります。フィリピン側にも利益があり、また求職者を守る仕組みとしてはよく考えられていますが、手続きの難易度・手間がかかり、また基準が十分にオープンにされていない面があるため、採用側(企業)が敬遠するケースがあります。

詳細は「フィリピン人雇用の際は要注意! 独自採用ルールPOLO・POEA基礎知識」をご参照ください。

【ベトナム】

技能実習最大の送り出し国であるベトナムへの期待値は、特定技能創設当初から非常に高かったのですが、現地での試験実施は遅々として進んでいません。要因は定かではありませんが、技能実習制度で問題となっている求職者の多額の借金を排除したい日本側と、それによってベトナム企業に利益が増えないことを懸念するベトナム側との調整が難航しているためとも言われています。

結果的に求職者側の金額上限の設定と、日本企業から給与の1カ月分以上の費用を課すことがガイドラインでは定められました。

新規でトレーニングを行う場合に相応の費用を教育機関や送り出し機関へ支払うことに違和感はないと思いますが、特別に教育を行う必要がない技能実習2号修了の帰国者を採用する場合でも、ベトナム企業への支払いが上乗になることで費用が高額になるという懸念があります。

【ミャンマー】

ミャンマーは東南アジアの中でも特定技能の期待値が高かった国の一つですが、コロナ禍で現地試験が中断されて以降、試験の再開はしているようですがかなり遅れているのが現状です。

法令・ガイドラインについては、認定された送り出し機関を通すことが義務付けられていますが、その他の国と比較して企業側にとって多大な工数が発生することはありません。試験が本格的に再開されれば、魅力的な国であることは間違いないでしょう。

一方で、政治情勢が安定していないことは現地採用とまったく無関係とはいえません。

【台湾・韓国・中国】

台湾・韓国・中国とは二国間協定を締結していません。現時点では現地試験の予定はなく、したがって運用ルールも定められていません。ただし、前述したように日本で特定技能の試験を受けることはできます。旅行を兼ねて短期滞在ビザで来日し、試験を受け帰国後に特定技能で再入国ということも可能です。

インバウンドが復活の兆しを見せていますが、サービス業においては中国語・韓国語のニーズが高まってきています。台湾・韓国・中国は日本語が堪能な人材が多く、また日本での就職希望者も多く存在しています。

現状では在留資格「技術・人文知識・国際業務」での入国を希望する人材が多いと感じますが、今後特定技能2号に宿泊・外食が追加されると、特定技能で働きたいという台湾・韓国・中国人は増える可能性が高いため、狙い目と考えられます。

まとめ「特定技能人材はどこの国から採用可能なのか」

アジアの国旗

まず国内在留者については「技能実習生」と「日本語学校」「専門学校」の留学生が中心となるため、比率の高いベトナム人の応募が多くなります。そのため、ベトナム人含め国籍不問で採用を進めることをおすすめします

海外在住者についてですが、現地での試験実施状況は国によって大きな差があります。二国間の協力覚書を締結済みの国でも、試験は未実施の国もあります。また特定技能の分野ごとの試験回数や実施状況も大きいため、分野によっては技能実習2号修了者しか対象とならず、結果的に元技能実習生が多いベトナムがメインターゲットとなる可能性があります。また、インドネシアやフィリピンのように海外試験合格者が増加しているにも関わらず、制度上の問題で単純に選べない国もあります。

それぞれの国を得意とする日本側のエージェントがあり、直接現地エージェントからの案内もあると思いますが、法令違反なく採用するには、現地の法令を企業が調査したり法令・ガイドラインへの対応について信頼のおけるエージェントに細かく依頼して確認してもらうことをおすすめします

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