介護施設が外国人介護士を採用した理由は?受け入れ施設の声と採用市場を解説

介護士と介護される高齢者

高齢化で介護ニーズが高まる一方、介護業界でも他業種や同業他社と人材獲得競争に迫られています。そのような背景の中、介護分野での外国人に対する期待は高まっており、政府は外国人介護士受け入れの法的枠組みを拡大してきました。
2020年10月現在、介護に関連する在留資格は4つとなり、雇用ルートも広がりつつあります。

そこで今回は、調査から分かった外国人介護士の採用トレンドをご紹介します。

加えて「外国人採用の実態がよく分からず躊躇している」という担当者に向けて、既に外国人介護士を採用した担当者の声をお伝えしていきたいと思います。

調査から見る外国人介護士採用のトレンド

EPAに基づく介護福祉候補者の受け入れ実人数の推移
厚生労働省|外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブックp4より抜粋

過去808箇所の介護施設等で雇用実績がある

現在ある介護に関連する在留資格は「EPA」、在留資格「介護」、「技能実習」、「特定技能」の4つです。

2008年にEPA(経済連携協定)に基づくインドネシア人介護福祉士候補者から受け入れをスタートし、2009年にはフィリピン、2012年にはベトナムからの受け入れも解禁しました。また2016年には在留資格「介護」が創設され、技能実習制度には介護職が追加されました。

その後、2019年に出入国管理及び難民認定法を改正、在留資格「特定技能」介護の新設が行われています。

上のグラフはEPA介護福祉士候補者のみに限定した人数ですが、年々外国人介護士の受け入れ人数が増加し、2019年1月時点で累計4,302人、808の施設で受け入れていることがわかります。

また介護士養成校を卒業した留学生を主な対象とした在留資格「介護」では、資格創設から3年で592人が資格を取得しています(2019年12月時点)。

外国人介護士の受け入れ施設の実態

介護分野で外国人介護士が徐々に増加してきているのはお分かり頂けたかと思います。では、実際に彼らはどこで、どのように働いているのでしょうか?

受け入れ施設種別の受入れ人数割合(見込み)の円グラフ
出典:公益社団法人 国際厚生事業団

まず2017年度のEPA介護福祉士候補者の受け入れ施設種別を見てみましょう。

特別養護老人ホームが68%、老人保健施設が23%とそれ以降も施設サービスが続きます。居宅サービスや地域密着型サービスの割合は2%です。また別調査における外国人介護士の受け入れ施設種別は、介護老人保健施設や介護老人保健施設、有料老人ホームといった施設サービスが60%以上を占めます。

これは在留資格によって勤務可能なサービスの種類が異なることが影響していると考えられます。

例えば在留資格「介護」をもつ外国人の場合、日本の介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士資格を取得しています。そのため、資格の取得過程は日本人の介護福祉士と全く変わらず、勤務できるサービスにも制限がありません。

一方、技能実習及び特定技能の資格を持つ外国人は日本語要件も基本的な日本語を理解できるレベル(日本語能力試験N4※程度)です。母国での資格や介護経験の要件もないため、訪問系サービスに従事できないのです。

※日本語能力試験N4…「N1~N5:認定の目安」| 日本語能力試験 JLPT

外国人介護士受け入れ経験の有無が受け入れ方針に影響

今後、外国人介護職員を受け入れる予定があるかどうか、アンケートグラフ(円ブラフ)
出典:平成30年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の受入れに関するアンケート調査」
厚生労働省|外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブックp4より抜粋

では、施設は外国人介護士の採用にどのような姿勢を示しているのでしょうか。

平成30年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の受入れに関するアンケート調査」によると、EPA介護福祉士・候補者を職員として雇用している介護施設の78.9%が「今後も受け入れる予定」と回答しているのに対し、雇用していない介護施設は「受け入れる予定」が20.2%と消極的な回答です。

実際の受け入れ経験の有無によって、外国人採用の意識・関心が大幅に異なることがわかります。

以上から、施設の採用経験の有無により将来的な受け入れの展望が異なることが見えてきました。では、なぜ外国人採用施設は受け入れに踏み切ったのか、施設担当者に伺ってみました。

外国人採用を決めた施設職員管理職、人事担当者の声

出典:公益社団法人 国際厚生事業団「平成26年度厚生労働省社会福祉推進事業「外国人介護労働者に係る実態調査事業」報告書」p18より抜粋
出典:公益社団法人 国際厚生事業団「平成26年度厚生労働省社会福祉推進事業「外国人介護労働者に係る実態調査事業」報告書」p18より抜粋

 (1)日本人介護士を募集しても集まらない

施設の声

  • 「求人を出しても人が集まらない時代があり、その時に外国人採用の話題が出ていました。こちらで拒否感を持っている方が時代遅れでおかしいかなという認識を持っていました」(介護老人保健施設・施設長)
  • 「今は人員が充足していますが首都圏では採用が難しい状況であり、今後、同じような状況が当地でも起こることを見据えて受け入れている状況です」(特別養護老人ホーム・支援員)

一度採用が滞ると現場は更に忙しくなり、既存のスタッフへの負荷が増え、退職者が出るなど、人材不足により拍車をかけてしまうことが予想されます。外国人介護士を雇用することで職員不足の連鎖を断ち切り、将来の人員確保を見据えて採用を決めた施設が多いようです。

(2)他施設の実践を耳にしていた

施設の声

  • 「2000年代に入ると全国の老健大会(※)でEPAの受け入れに関する取り組みが発表されており、いずれ外国人介護士を採用する時代が来るのかなという意識がありました」
  • 「実際受け入れたのはEPA介護福祉士候補者でしたが、老健協(※2)が留学生を勧めていたのは以前から知っていました」(介護老人保健施設・施設長)

冒頭で触れたように、外国人介護士の受け入れは、EPA介護福祉士候補者の受け入れから、他の3資格に拡大した経緯があります。EPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れに関しては歴史があり、先進的な施設での実践報告が多数行われています。

このように介護関係者の中で徐々に認知されてきた外国人介護士ですが、全国団体である全国老人保健施設協会は「EPA、技能実習生、在留資格「介護」の3ルートのうち、留学生として来日して在留資格『介護』を取得するルートを推奨し、支援していく立場を明確にしています」(全国老人保健施設協会、2018)と示しています。

※老健大会…全国介護老人保健施設大会

※2 老健協…公益財団法人全国介護老人保健施設協会 

(3)施設経営者の経営方針で採用になった

施設の声

  • 「現場としては人材不足、人を募集しても採用に至らない状況と認識していましたが、外国人を受け入れるとは思っていませんでした。法人上層部より管理者へ外国人介護士を受け入れるという方針が打ち出され、その後、施設管理者で話し合い受け入れるに至りました」(介護老人保健施設・介護長)
  • 「法人上層部より、中国は介護という概念がない国なので介護を教えて欲しいと言われ、現地で介護を教えてきた時期があったんですね。その間に技能実習での受け入れが決まり、現地での技術講習に参加してくれた方が応募してくれました」(介護老人保健施設・外国人介護士支援者)

介護施設にとって、採用は単なる人手不足解消だけではなく、各サービスに必要な配置基準を満たし、介護報酬の減算を回避することを意味します。(1)でも触れた通り、外国人介護士を採用した施設の多くは日本人の採用に苦慮しており、事業を継続し、職員の雇用を維持するため、苦肉の策として外国人の採用に至ったというケースは少なくありません。

他には現時点では採用には困っていないものの、将来的な地域の介護ニーズの増加や採用困難を見越し、事前に手を打ったという施設もあります。

いずれにしても経営者の強い意向で外国人採用を始める場合、職員にどのような意図で受け入れるのか伝えなければ、指導の負担や意思疎通の難しさによるフラストレーションが強調されてしまいます。受け入れ後のしこりを軽減させるためにも、予め施設で受け入れる意図やメリットを職員間で共有することが大切です。

今回、お話を伺った施設は(1)そもそも日本人介護士を募集しても採用困難な状況であり、(2)以前より、他施設での外国人介護士の受け入れを耳にする他、政府や業界団体からも受け入れを促進しているという意識があったものの、(3)最終的には経営者判断で採用に至ったという流れで受け入れに踏み切っていました。

まとめ

外国人介護士採用のトレンドや、採用するに至った経緯について紹介しました。

人手不足が深刻化し日本人介護士の採用状況が厳しい今、外国人介護士という選択肢を考える施設も増えつつあります。お話を伺った施設では、経営者判断で受け入れが決まったとのことでしたが、このようなトップダウンでの採用決定は比較的よくあるケースのようです。

この場合、ほとんどの方が外国人と一緒に働くことに対して漠然としたイメージで、「具体的にどのような準備をしたらいいのか分からない」という施設様や、「外国から来られる方に万が一があってはいけないから」と逆に力が入りすぎて、担当者の負担になってしまったというケースもあります。

外国人介護士の採用は受け入れ準備や日本語でのコミュニケーションは、厳しい介護業務に従事できるのか、利用者さんに受け入れて頂けるのか?など、担当者の悩みは尽きないでしょう。

しかし、外国人介護士採用に成功している施設様からお話を伺うと、どの施設も行っていた準備や事前に職員間で共有していた点、外国人介護士への関わり方など、いくつかの押さえるべきポイントがあります。

この連載ではそんな外国人介護士の採用のお悩みとポイントについて、丁寧にお答えしていければと思います。