在留資格「特定活動」は就労可能?46種一覧や指定書など徹底解説

「特定活動」記事アイキャッチ。特定活動のイメージ
執筆者:

行政書士/井手清香

在留資格「特定活動」は、種類が複雑に分かれた在留資格です。他の在留資格に当てはまらない外国人が日本に滞在するための受け皿のようなもので、昨今では、新型コロナウイルス感染症に対する特例措置として、技能実習生に「特定活動」の在留資格が付与される措置も取られています。

今回は、特定活動の種類や就労の可否と注意点について解説していきます。

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在留資格「特定活動」とは?

「特定活動」とは、現在ある在留資格のいずれにも分類できない活動に従事する外国人に与えられる在留資格です。他の在留資格に当てはまらない外国人が日本に滞在するための受け皿のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。

通常、新しい在留資格を新設するには「出入国管理及び難民認定法」の改正が必要になりますが、「特定活動」に関する決定権は法務大臣が持っています。

特定活動

法務大臣が個々の外国人について次のイからニまでのいずれかに該当するものとして特に指定する活動。

出典:法務省|参考資料1 在留資格一覧表 別表第一の五

そのため、政府は出入国管理及び難民認定法を改正することなく日本に在留可能な活動の種類を増やすことができます。例えば「新型コロナウイルス感染拡大の影響による帰国困難者」のような一定の期間だけ必要となるような活動を増やす際は、柔軟に対応できます。

このような理由から、特定活動では活動がそれぞれ違うため、特定活動の在留資格を持っているからといって、就労できるとは限りません

特定活動の種類

特定活動の種類は、根拠となる法律などによって大きく以下の3種類に分かれています。

【特定活動の種類】

1.出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動(3種類)
2.<告示特定活動>法務省の告示によるもの(46種類)
3.<告示外特定活動>それ以外(3種類)

ここからは、それぞれの種類について解説していきます。

1. 「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」とは?

出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動は、以下の3種類があります。専門的な研究や情報処理機関で働く外国人、その家族向けの在留資格であるため、多くの企業にとって、この在留資格の外国人と接する機会は少ないかもしれません。

「特定研究活動」

高度な知識を持った外国人(高度人材)を受け入れる目的で作られた在留資格です。研究の内容によって、外国人ごとに審査が行われます。

「特定情報処理活動」

法務大臣が指定した事業所において、自然科学または人文科学の分野の技術または知識を要する情報処理関連の業務に就く外国人向けの在留資格です。

「特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動」

上記2つの「特定研究活動」「特定情報処理活動」を行う外国人の家族が在留するための資格です。

2. 「告示特定活動」とは?

法務省が決定した事項(以下、「告示」と呼びます)に基づいて規定されている「告示特定活動」は、2021年4月現在46種類ありますが、流動性があり、種類は増えたり減ったりしています。

「○号告示」というように、告示の番号で呼ばれることが多いです。

告示特定活動の内容は変更が多いため具体的に提示することは難しいですが、参考の一覧表を作成しました。あくまで参考程度にご覧ください。

参考資料:告示特定活動

3. 「告示外特定活動」とは?

他の在留資格に該当せず、上記で紹介した「出入国管理及び難民認定法されている特定活動」にも、「告示特定活動」にも当てはまらない活動内容の場合は、「告示外特定活動」となります。これは、法務大臣が外国人本人の持つ様々な事情を考慮して、個人別に活動を認めた在留資格です。

「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」や「告示特定活動」と違い、外国人を直接海外から呼ぶことができません。すでに日本に入国した人が、何らかの理由で「告示外特定活動」として在留資格を取得する流れになるということです。

一例として、以下のようなケースが考えられます。

例)

就職先が決まらなかった留学生が引き続き就職活動をしたい場合
⇒在留資格「留学」から「特定活動」に変更

在留資格変更許可申請が不許可になってしまったので出国の準備をする場合
⇒従来の在留資格から「特定活動」に変更


※外国人個人の事情を考慮して審査される制度のため、上記に当てはまる場合でも必ず許可されるとは限りません

外国人を雇用する際に知っておきたい、7つの活動

特定活動で働く外国人のイメージ

ここからは、「特定活動」の中でも、企業が外国人採用をおこなう際に知っておきたい活動を7つピックアップして紹介します。

1. 就職活動を継続する場合(告示外特定活動)

日本の大学や専門学校への留学生が、就職活動をしていたものの卒業までに就職先が決まらなかった場合に、卒業後も就職活動を継続するための在留資格です。

対象者は以下の通りです。

● 継続就職活動大学生(日本の大学を卒業した留学生)

● 継続就職活動専門学校生(日本の専門学校を卒業した留学生)

● 国家戦略特別区域における日本語教育機関在籍者

たとえ在留資格「留学」の在留期間がまだ残っていたとしても、学校卒業により「留学」という活動が終わってしまうため、卒業後も就職活動を続けたい場合は「特定活動」に切り替えなければいけません。

在籍していた学校から卒業証明書や推薦状、継続して就職活動を行なっていることを明らかにする資料(エントリーした企業の資料や、面接通知などの書類)を出入国在留管理庁に提出し、在留資格を変更するための手続きを行います。

在留できる期間

在留期間は6カ月で、1回のみ更新できます。

条件

日本の大学を卒業した留学生で、卒業前から就職活動を行なっていることが条件です。日本の専門学校を卒業した留学生の場合は、専門学校で学んだ内容が「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格に関連していることが条件となっています。

2. 特定活動46号

留学生を、そのまま日本で採用する場合に当てはまります。専門性が求められない「接客業務」や「製造業務」にも従事できますが、翻訳・通訳要素のあるコミュニケーションをとることや、大学等で学んだことを活かせるような専門的な内容(商品企画や技術開発など)を含んでいる必要があります。

就労可能な在留資格の代表格である「技術・人文知識・国際業務」とは違い、外国人本人の学歴と業務内容が、関連していなくてもよい点がポイントです。

在留できる期間

5年、3年、1年、6カ月、3カ月のいずれから決定されます。原則として、在留資格「留学」から変更する時や、初めての在留期間更新の場合は、在留期間が「1年」となります。

条件

取得には、以下のような条件があります。

●学歴(日本の大学や大学院を卒業していること)

●日本語能力(日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を保有)

●常勤であること(パート、アルバイトは対象外) など

3. ワーキングホリデー

日本と協定等を結んだ国や地域の外国人を対象とし、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補う範囲での就労を認める制度です。

ワーキングホリデーの外国人を採用したい場合は、相手国・地域との協定の内容により、日本に滞在したまま在留資格を変更することができない場合があります(英国、フランス、台湾、香港など)。その場合、一度、帰国してもらい、「在留資格認定証明書交付申請」を行い、日本に呼ぶことになります。

在留できる期間

1年または6カ月です。更新は認められていません

条件

休暇が目的であるので、労働がメインの活動内容になることは認められません。
本人についての条件としては、以下のようなものが定められています。

● 原則として査証申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること

● 子または被扶養者を同伴しないこと

● 以前にワーキングホリデー査証を発給されたことがないこと

● 有効な旅券と帰りの切符もしくは資金があること

そのほかワーキングホリデーの際に注意すべき点については、以下の記事で解説していますので、ご覧ください。

4. 新型コロナウイルス感染拡大の影響による帰国困難者

新型コロナウイルス感染拡大等の影響を受けた技能実習生について、以下の4パターンに分けて対応がとられています。

本国への帰国が困難な場合

「特定活動(6カ月・就労可)」または「特定活動(6カ月・就労不可)」に在留資格を変更することができます。(帰国できない事情が継続している場合は更新することができる)

技能検定等の受検ができないため次段階への技能実習へ移行できない場合

受検・移行ができるようになるまで特定活動(4カ月・就労可)へ在留資格を変更することができます。

実習先の経営悪化等により技能実習が継続できない(次の実習先も見つからない)場合

特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付けることを希望するなど、一定の条件つきで特定活動(最大1年・就労可)へ在留資格を変更することができます。 帰国が困難な場合は、6月の範囲で更新を受けることができます。

技能実習2号から特定技能1号へ移行するための準備が整わない場合

特定活動(4カ月・就労可)へ在留資格を変更することができます。また、2020年までという条件で受け入れられていた特定活動32号と35号の外国人については、以前と同じ業務につく場合について、特定活動(6カ月・就労可)等へ在留資格の変更が可能になっています。

5. インターンシップ(特定活動9号)

報酬を受け取るインターンシップの場合、「特定活動9号」の在留資格となります。報酬がない場合は、90日未満であれば「短期滞在」、90日以上になれば「文化活動」の在留資格になります。

在留できる期間

1年を超えず、かつ当該大学の修業年限の2分の1を超えない期間

条件

学業等の一環として、日本の企業等において実習を行う活動であって、「専攻内容とインターンの内容に関連があること」「インターンの内容が大学側に学業の一環として評価されること」が条件となります。

6. サマージョブ

夏休みの間に、海外の学生が日本の企業で働くための在留資格です。在留期間は、3カ月を超えることができません。

7. 難民

戦争など、迫害を受けた人々が日本に逃れてきた場合、出入国在留管理局へ難民申請を行います。難民であると認められると、「定住者」の在留資格が与えられます。

就労可能かどうかは「指定書」を必ず確認する

先ほども述べた通り、「特定活動」といっても人によって許可されている活動内容が違うため、就労可能かどうかはわかりません。そこで、就労可能かどうかを見分けるために確認すべき書類が「指定書」です。「指定書」は、在留カードとともに発行され、パスポートに添付されている書類で特定活動の活動詳細が記載されています。

「指定書」の本文に「報酬を受ける活動を除く」と書いてある場合は、就労できません

また、就労できる場合でも、その分野や業種などが細かく記載されていますので、細かな部分まで内容を確かめる必要があります。

指定書のサンプル
指定書のサンプル 厚生労働省|届出事項の確認方法より

記載例① 就労可能な場合

例:ワーキングホリデーの場合

指定書に、「旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動」という記載があります。

「報酬を受ける活動」ができるので、就労は可能ということです。また、「旅行資金を補うため必要な範囲内で」ある必要があります。

記載例② 就労不可の場合

指定書に、「就職活動及び当該活動に伴う日常的な活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を除く)」という記載がある場合は、就労はできません

在留資格「特定活動」の外国人を雇用する際に注意すべきこと

「特定活動」で在留する外国人を雇用する際には、以下の点に注意しましょう。

許可の確実性が高くないことを理解しておく

特定活動は制度が非常に細かく、審査基準も非公表であるため、要件を把握できずポイントを押さえた書類を準備できない場合があります。許可されるかどうかが分かりにくく、在留資格を取得する難易度は高いといえるでしょう。不許可にもなりやすいということを理解したうえで申請しましょう。

準備期間に余裕をもつ必要がある

就労できる特定活動を申請する場合は、勤務先や業務内容に関する書類も必要となるため提出書類が多くなる傾向にあります。書類をそろえるために時間がかかり、さらに不備・不足も出やすいため、許可されるまでに時間がかかることがあります。余裕をもって申請を行う必要がある在留資格です。

上記のことから、できれば、申請前に専門家や行政書士に相談することをおすすめします。

まとめ

特定活動で働く外国人従業員と日本人男性従業員

「特定活動」とは、現在ある在留資格のうち、いずれの活動内容にも当てはまらない活動をする外国人に与える在留資格です。そのため活動内容は雑多です。また、告示特定活動については流動性があり、法務省告示によって種類が増えたり減ったりしています。オリンピック関係者を対象とした「特定活動48号」などがその例です。

このような状況から、「特定活動」の活用内容をすべて把握すること非常に困難です。不許可になってしまうこともあり、「特定活動」で在留している外国人の採用を考えている場合は、専門家や行政書士、入国管理局などに相談することをおすすめします。

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告示特定活動46種類 一覧

※削除は数に数えません。変更・削除が頻繁にあるため、あくまで参考程度にご覧ください。

   
番号説明備考
外交関係1 号外交官・領事官の家事使用人
2号●特定活動2号の1:
 高度専門職・経営者等が雇用する家事使用人
●特定活動2号の2:
 高度専門職が雇用する家事使用人
報酬は月額20万円以上
という規定あり
外国との
協定などに
関連するもの
3号台湾日本関係協会の在日事務所職員とその家族
4号駐日パレスチナ総代表部の職員とその家族
5号●特定活動5号の1:ワーキングホリデー
●特定活動5号の2:台湾人のワーキングホリデー
旅行資金を補う範囲での就労可能
スポーツ系6号国際的な競技会に出場したことのある
アマチュアスポーツ選手
日本の公私の機関に月額25万以上の
報酬で雇用される必要がある。
7号特定活動6号のアマチュアスポーツ選手に
扶養されている配偶者や子
弁護士8号国際仲裁事件の代理を行う
外国人弁護士。
国際交流系9号インターンシップ報酬ありで実習を行う場合が対象。
10号イギリス人ボランティア福祉関係に係る場合。
11号削除
12号短期インターンシップを行う外国の大学生
13号削除
14号削除
15号国際文化交流を行う外国の大学生地方公共団体が行う国際文化交流事業で、
報酬を受けて行う講義が対象。
インドネシア
関連
16号インドネシア人看護研修生
17号インドネシア人介護研修生
18号特定活動16号の
インドネシア人看護研修生の家族
19号特定活動17号の
インドネシア人介護研修生の家族
フィリピン
関連
20号フィリピン人看護研修生
21号フィリピン人介護研修生(就労あり)
22号フィリピン人介護研修生(就労なし)
23号特定活動20号の
フィリピン人看護研修生の家族
24号特定活動21号の
フィリピン人介護研修生の家族
医療関連25号日本の病院で入院・治療を受ける活動
26号特定活動25号で治療を受ける者の
日常生活の世話をする活動
ベトナム
関連(EPA)
27号ベトナム人看護研修生。
28号ベトナム人介護研修生(就労あり)
29号ベトナム人介護研修生(就労なし)
30号特定活動27号のベトナム人看護研修生の家族
31号特定活動28号のベトナム人介護研修生の家族
オリンピック
関連
32号技能実習が修了した外国人の
オリンピック・パラリンピック関連施設設備等の
建設業務
帰国困難者に対する措置あり
高度専門職
関連
33号在留資格「高度専門職」で在留している
外国人の配偶者の就労
34号高度専門職外国人もしくはその配偶者の親
造船関連35号技能実習が修了した外国人の造船業務帰国困難者に対する措置あり
研究関連36号研究・教育者あるいは、研究・教育に関する経営者。
情報処理37号情報処理技術者
38号特定活動36号、37号の活動で在留する者が
扶養する配偶者や子
39号特定活動36号、37号で在留する者と
その配偶者の親
観光40号観光・保養のために滞在する外国人預貯金額について条件あり
(一人あたり3,000万円以上)
41 号特定活動40号で在留する外国人の家族
経済産業省
関連
42号経済産業大臣が認定した製造業の受入事業における
特定外国従業員
日系人43号他の在留資格に当てはまらない日系4世
経済産業省
関連
44号外国人起業家で「外国人起業活動管理支援計画」の
認定を受けたもの。
45号特定活動44号の扶養を受ける配偶者または子
留学生の
就職支援
46号日本の4年制大学または大学院を卒業生し、
N1以上の日本語力がある外国人。
一般的なサービス業務や製造業も可能になる
47号特定活動46号で在留する外国人の扶養を受ける
配偶者や子が対象
オリンピック
関連
48号東京オリンピックの関係者
49号特定活動48号で在留する外国人の
扶養を受ける配偶者や子