最新調査で読み解く「外国人の就労意欲と特定技能制度の現在地」セミナーレポート
2025年7月15日、【外国人の「日本離れ」は本当か?最新調査が示す就労意欲と特定技能制度の現在地】をテーマにオンラインセミナーを開催しました。
株式会社マイナビグローバル 代表取締役社長 杠元樹(ゆずりは・もとき)が登壇し、日本在留外国人へ行った調査結果をもとに、円安をはじめとする問題に起因した「日本離れ」について解説しました。本記事ではその様子をレポートでお伝えします。
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このセミナーでわかること
- 外国人労働者の就労意欲の現状
- 特定技能1号・2号の制度の認知度と影響
- 外国人労働者が感じる日本で働くことへの不安点
- 本当に「日本離れ」が起こっているのかどうか
- 企業が外国人を採用するためにすべきこと
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登壇者:杠 元樹(株式会社マイナビグローバル 代表取締役社長 )
2004年(株)毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社。 採用支援コンサルタントとして、日本を代表する大手企業からベンチャー企業まで 1,000社以上の採用支援を行う。2018年よりマイナビグループの東南アジア海外拠点設立に関わると同時に2019年に(株)マイナビグローバルを設立、特定技能外国人をはじめ外国人材の就労支援を行っている。 ※文部科学省 令和6年度「専修学校の国際化推進事業」 「調理・製菓・ホテル等ホスピタリティ分野の専修学校国際化に向けたモデルプラ ン策定・推進事業」有識者委員
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外国人労働者数の総数は過去最高! 「日本離れ」は本当か?
昨今、外国人労働者の「日本離れ」が大きなテーマとなり、報道でも散見されます。
しかしながら外国人労働者の総数は過去最高を更新し230万人を突破、年間増加数は過去最多25万人超えとなりました。これは、日本全体の就業者増加数(42万人)の60.5%を占めています。 生産年齢人口が減少している日本において、外国人の労働力が重要であることは明らかです。
このような数字だけを見ると、「日本離れ」とは遠く感じられますが、実情はどうなのか、「日本在留外国人の日本での就労意欲・特定技能に関する調査結果(株式会社マイナビグローバル)」から読み解いていきます。
非常に高い外国人の就労意欲

株式会社マイナビグローバルでは、2025年1月31日~2025年2月19日にかけて日本在留外国人を対象に日本での就労意欲・特定技能への意識に関する調査を行いました。その結果を見ながら外国人労働者の日本離れについて考えます。
「現在の在留資格が切れた後も日本で働きたい」と答えた外国人は、全体のうち92.3%です。今後、どのくらい日本で働きたいかという点では「5年以上」と回答した方が76.3%でした。外国人の日本での就労意欲は、非常に高いという結果がうかがえます。

在留資格別で見ても、「働きたい」という回答の率は高く、前年比では留学を除き、「働きたい」が増加しています。
危惧すべき日本の経済的優位性の低下

円安の影響について言及されるなか、「日本で働きたくない理由」の結果だけを見ると、なぜ日本の人気は減少しないのかと疑問を持たれるかもしれません。回答を見ていくと、就労意欲は高いものの懸念材料もあるということが見えてきます。
外国人が日本で働きたくない理由は「円安だから」と回答した人が35.5%と最も多く、「給料が低いから(26.3%)」、「母国で家族と住みたいから(25.0%)」と続きました。将来的に日本の経済の発展がしなさそうだからという回答も20%を超えています。こうした項目に着目すると、外国人が日本の経済状況や収入面に不満を感じている割合が多いことがうかがえます。
また、前年比較を見ると、「他の国の方が稼げるから」という理由が8.4pt増加しています。
一方で「働く環境が悪いから」は17.8pt減少し、わずか7.9%でした。東南アジア諸国の賃金上昇や円安により、日本で就労している外国人にとって、日本の経済的優位性の低下が危惧されていることが明らかな結果となりました。
高まる特定技能の認知度と理解度
「特定技能」とは、特定の産業分野における人手不足を背景に、即戦力となる外国人労働者を受け入れるために設けられた在留資格で、就労ビザの1つです。2019年に創設され、人手不足対策として今最も日本で受け入れが進んでいます。特定技能には1号と2号があり、1号は最大5年間の在留が可能です。
一方、2号はより高度な技能を持つリーダーポジションを任せられるような人材が対象です。在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も認められています。
この特定技能制度と技能実習制度は2024年6月に制度の見直しが行われています。
これまで不適正な企業や監理団体による人権侵害事案の発生や、それに伴う失踪が問題となっていた技能実習制度は廃止となり、新たに育成就労制度の創設が決定。実質労働力として扱っていた技能実習生のキャリアパスが不明瞭だったため、育成就労制度では、特定技能への移行を見据えた制度設計となっています。
また、先述の通り、特定技能制度も2号の対象分野拡大を行い、育成就労から特定技能2号まのでキャリアアップが明確になっています。
このような見直しをもって、外国人から選ばれる国となるように政府による労働政策が行われました。
では、この特定技能1号・2号について、特定技能以外の外国人の間ではどの程度認知されているのでしょうか。また認知されていた場合、制度の内容はどの程度浸透しているのでしょうか。前年と比較すると、大きく認知度が広がっているという結果がでました。詳しく見てみましょう。
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95%近くが特定技能を知っていると回答

まず特定技能以外の在留資格の外国人で「特定技能を知っている」と回答したのは94.8%とかなり高い割合でした。また、「知っていて、よく理解している」という回答の前年比較を見ると、12.2pt増加しており、特定技能制度に関する理解が高まっていることがわかります。

どの在留資格においても「知っていて、よく理解している」の割合が高まっていますが、中でも技能実習では、2024年が29.3%だったのに対し、2025年は50.0%で半数となり20.7pt増と、増加率が高い結果です。
特定技能2号の特徴も広く認知

特定技能2号は、元々は2分野のみでしたが、2024年に対象分野が9分野追加され、11分野にまで拡大をしました。これまでは対象分野が少なかったため、そこまで知られていなかったという背景があります。
今回の調査では特定技能を知っている外国人のうち「特定技能2号を知っている」と回答したのは75.2%。さらに「特定技能2号について知っていること」を聞くと「家族と一緒に住める(60.3%)」が最も多く、次いで「特定技能2号になるために必要な条件(51.4%)」、「在留期限の上限がない(45.4%)」という回答が続きました。
「特定技能2号での在留期間が永住権の申請にカウントされる」(33.2%)という点も高い割合で回答されており、特定技能2号の制度の特徴的な部分が認知され、理解が進んでいることが示されました。
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外国人の就労意欲の向上へつながる特定技能の浸透
特定技能制度に対する外国人の関心はこの一年で大きく高まっています。その背景には、この制度の特徴が外国人に 浸透していることがあるようです。
特定技能1号での就労意欲も増加傾向

特定技能で働く外国人以外の回答で「特定技能1号で働きたいと考えている」という人が69.4%に達しています。前年比較では特に「働きたいと強く考えている」という回答者は18.1pt増加しており、特定技能1号の就業意欲は昨年から大きく向上しているという結果になりました。

在留資格別でも前年との比較を見てみましょう。
「特定技能1号で働きたいと強く考えている」と回答した留学の外国人が13.6pt増加。技能実習も11.0pt増加、技術・人文知識・国際業務でも14.6pt増加しました。中でも留学と技術・人文知識・国際業務の方の就労意欲が上がったという点は大きなポイントです。もともと、留学は卒業後、技術・人文知識・国際業務で働きたいという意向が非常に強い傾向にありますが、最近では少し変化が見られ、特定技能への就労意欲が高まっているという結果になりました。
また、技術・人文知識・国際業務は、いわゆる高度人材にあたり、日本あるいは母国での学歴や職務経験が問われる在留資格です。
技術・人文知識・国際業務の外国人は、在留資格変更の際にあえて特定技能を選ぶことは多くないという現状がありますが、そのなかでも就労意欲が上がっているという結果が出ています。

特定技能以外の人または帰国予定者以外の人に「特定技能1号で働きたい理由」を聞いたところ、一番は「特定技能で働きたい業界・職種があるから」という回答が56.3%で最多。「自分のスキルを活かせそうだから(37.4%)」、「希望勤務地で働けるから(30.6%)」が続きます。特徴的なのは前年度との比較で、「在留資格を取りやすいから」が7.3pt増加、「給料が高いイメージがあるから/手取りが上がるから」は6.9pt増加。「転職できるから」も3.5pt増加しました。
勤務地の選択や転職の自由など、技能実習にはない特定技能1号の特徴が、日本で就労する外国人にも浸透してきているということが示されています。これは重要なポイントです。
また、特定技能の取得には、日本語の能力試験の合格と特定技能の試験の2つの試験合格が必要となりますが、国内の各分野で、特定技能の試験受験機会を増やしており、その点は「在留資格を取りやすいから」という数字に表れています。

「特定技能1号で働きたい理由」を国籍別でも見てみました。
ベトナム人材の特色として「転職できるから(23.3%)」「特定技能2号で長く働くことができるから(25.6%)」という理由が他の国と比べて高いという結果が出ました。ベトナム国内の平均賃金が上昇する中、自身の給与額を気にしているベトナム人が多く、特定技能1号から2号へとキャリアアップが可能であるという点に興味関心を持っていることがデータからも読み取れます。

次に特定技能外国人に、特定技能を選んだ理由を聞きました。一番高いのは「働きたい業界・職種があるから(39.2% )」という結果です。続いて「特定技能2号で長く働くことができるから(31.4%)」がランクインしているという結果になりました。
日本で長く働くことを希望する外国人にとって、特定技能2号を取得できるということが、特定技能を選ぶ動機の一つとなっているようです。
特定技能2号での就労意欲も高まる傾向

特定技能2号を知っていると回答した人に就労意欲について聞きました。
1号と同様に84.0%が特定技能2号で働きたいと回答。こちらも前年比較では、7.9pt増加しています。特定技能1号と同様に、2号での就労意欲も高まっている結果となっています。

また、在留資格別でも、技能実習・留学・特定技能の6割が特定技能2号で働きたいと強く考えています。
理由としては、「家族と一緒に住めるから」など、特定技能2号の利点の影響が考えられます。前年度比較も、留学が23.4pt増加。技術・人文知識・国際業務で22.1pt増加と、特定技能2号の就労意欲が高まっているという結果です。
逆に留学では、特定技能2号での就労を全く考えていないという方が16.1pt減少しています。
その背景として、技能実習から特定技能1号、さらに2号へというキャリアストーリーが外国人労働者の方の中でも大きく浸透してきていることが考えられます。

国籍別で見ると、ベトナム人で働きたいと強く考えている人は11.2ptも増加しました。他国と比較すると待遇面の希望が高い傾向があるベトナム人も特定技能2号については強い就労意欲を持っていると言えます。

特定技能2号で働きたい理由を聞いたところ「家族と一緒に住めるから」と回答した人が52.1%と最も多く、その次に「在留期限をずっと更新できるから(47.9%)」、「キャリアアップしたいから(44.9%)」と続きました。将来、日本に永住できる可能性があるというところも高い割合です。
特定技能2号の持つ利点が広く認識され、その制度的特徴が就労意欲を上げる大きな要因となっているのではないかと推察されます。
外国人の日本での就労意欲はまだまだ高い
外国人の日本離れについて不安視されているものの、まだまだ日本への就労意欲の高さがうかがえる結果となりました。
しかしながら、日本の経済状況や収入面に不安を感じている回答も明らかに増加しており、日本の優位性の低下が危惧されます。
このような状況にもかかわらず、日本での就労意欲が高まっている理由として、技能実習から特定技能1号、そして2号へというキャリアストーリーが外国人労働者の中でも大きく浸透してきていることが挙げられます。特定技能の制度そのものが、日本での就労意欲を高める要因となっているのです。
ここまで見てきたように、特定技能への理解あるいは2号の制度的特徴の理解は大きく高まっており、また、1号への就労意欲も大きく増加傾向にあります。特に、技能実習では8割を超えるという特徴が見られました。特定技能2号も同様に就労意欲が大きく増加しています。技術・人文知識・国際業務、留学の外国人においても、日本で働きたいと考えている割合が大きく上昇しており、就労意欲は高い数字になりました。
また、特定技能2号の分野が追加されたことで合格者が大きく増加していることも、好影響を与えていると考えられます。企業の意識の変化により技能実習と比較して特定技能外国人の待遇が年々向上している点も、日本への就労意欲を高める要因になっていると言えるでしょう。
このように、外国人労働者が増加傾向にある今、日本離れは加速しているとは言えない状況です。
あらためて、日本離れが進んでいるかどうかという単純な二元論ではなく、特定技能制度の浸透、企業側の意識変化で、外国人労働者数や就労意欲が維持されていると考えられるのではないでしょうか。
さいごに:外国人採用のために企業がすべきこと
日本の経済的優位性の低下について危惧されるなか、日本人に対する求人と同様に「選ばれる企業」となるための対応が一層求められます。かつてのように、何も対策しなくても外国人労働者が採用できるという状況ではありません。給与だけでなく人間関係の構築なども含め企業による支援や待遇の差が広がる中で、企業の人気の差も顕著になってきているのが現実です。
また、特定技能2号の取得は、分野によってはリーダー・マネジメントの実務経験が必要となり、それには企業の理解と支援が必須です。特定技能2号へ進むキャリアストーリーが浸透してきている今、企業側も特定技能1号から2号へのキャリアステップをサポートする旨を明確に示すことが重要です。
2号に必要な環境整備は、特定技能1号外国人を採用時点から必須条件となりつつあるでしょう。
もし、外国人採用について課題や困ったことを感じているようでしたら、一度マイナビグローバルへご相談ください。また、定期的に外国人採用についてのセミナーも開催していますので、気になった方はそちらのご参加もお待ちしております。



