【介護士不足対策】介護業界の人手不足は本当?データから見る原因とは?最新データ&将来予測

執筆者:

外国人採用サポネット編集部

介護業界は慢性的に人手不足と言われていますが、なぜ、この問題は解決されないのでしょうか。
今回は介護業界の人手不足の現状と原因について、最新データから読み解くとともに、近い将来を予測した今後に役立つ対策についてお伝えしていきます。

介護業界の人材不足問題について、その視点を「社会全体における介護職不足」問題と「個々の職場が抱える人材不足」問題の、大きく2つに分けて見ていきましょう。

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記事制作協力北村 岳大 氏

医療系ソフトウェアを開発するベンチャー企業を経て、2004年より人材大手にて医療介護分野における人材紹介サービス立ち上げに参加。以後、約18年にわたり同部門の営業責任者、マーケティング責任者として従事。また2020年4月から2022年3月まで厚労省委託事業「医療介護保育分野における適正な職業紹介事業者認定制度」の構築に携わるなど、医療介護分野における転職サービスの質的向上(ミスマッチによる離職・定着悪化などの解消)に向けた活動を進めている。

介護業界の人材不足の実態って?

まず「社会全体における介護職不足」問題について、国が公表した「第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量などに基づく介護職員の必要数」から考えてみましょう。

どれくらいの人材が不足しているか

第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を見ると、2023年度には約233万人(+約22万人(5.5万人/年))、2025年度には約243万人(+約32万人(5.3万人/年))、2040年度には約280万人(+約69万人(3.3万人/年))となっています。

※ ( )内は2019年度(211万人)比
※ 介護職員の必要数は、介護保険給付の対象となる介護サービス事業所、介護保険施設に従事する介護職員の必要数に、介護予防・日常生活支援総合事業における従前の介護予防訪問介護等に相当するサービスに従事する介護職員の必要数を加えたもの。

▶出典:「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」|厚生労働省

国全体で見ると、2025年度までは毎年5万人規模で介護職人材が不足、ここがピークとなり、2040年度には毎年3万人の不足へと転じます。この頃になると高齢者も減りはじめ、介護需要そのものがピークアウトします。人材不足感が最も顕在化するのは、これからの数年であるということがわかります。

なぜ介護職は、これまで長きにわたって人材不足の状態が続いてきたのでしょうか。

主な原因として、賃金など処遇面での改善が進まないといった問題が指摘されており、これまでも介護職員処遇改善交付金や、介護職員処遇改善加算などが行われてきました。しかし仕事内容に対する処遇としては未だ十分な水準とは言えず、人材不足の改善につながらない要因となっています。

▶参考:「介護労働者の確保・定着等に関する研究会 中間取りまとめ」について|厚生労働省

都心部で深刻な人手不足となっている

介護職そのものの人材不足に加え、介護職の地域偏在についても念頭におく必要があると考えています。都道府県別の介護職の有効求人倍率を示したデータを見ると、多くの地方都市では有効求人倍率は2.5倍前であるのに対し、首都圏、東海、関西などの都市部ではおおむね4倍以上。地方と都市で大きな開きが生じています。

全産業の全国平均の有効求人倍率は1.27倍(2022年7月29日時点の最新版。厚労省発表)ですから、都心部での介護職の人材確保がいかに厳しいか、想像に難くありません。

さらに、都市の規模別に、65歳以上の人口がどう推移していくかを予測したグラフを見てみましょう。

話を分かりやすくするためにザックリ「都市部」と「地方」に分けて見ていきます。かつては地方こそ高齢者が多いイメージで捉えられていましたが、現状では地方における高齢化率はピークアウトをむかえつつあります。他方、これから先は絶対数の多い都市部での高齢化率が急速に進んでいくことが分かります。

ただやはり2040年もしくは2045年以降、都市部での高齢化率も落ちつき始めますから、入居施設を都市部に作り続けたとしても、どこかの時点で他の用途へ転用する必要が生じます。「足りないから増やす」という発想だけでなく、今あるリソースを最適化していく筋の議論が必要で、地域包括ケアの仕組みも活用しつつ、都市部での介護職確保を進めていくことが大事だと思います。

手厚い家賃補助を支給することにより地方からの保育士確保を進めた世田谷区などの事例など、他職種における成功事例も踏まえつつ具体的対策を講じる必要があるでしょう。

職場が抱える人手不足の原因とは

介護業界が人手不足なのはおわかりいただけたかと思いますが、次に、「個々の職場が抱える人材不足」について触れていきます。

高い離職率の原因は給与よりも人間関係

多くの施設が人手不足に陥る要因の一つとして、離職率の高さが挙げられます。低賃金で3K(きつい・汚い・危険)というレッテルが貼られがちな介護職ですが、現場で働く職員の多くは誇りとやりがいを感じて仕事をしています。実際のところ最も多い離職の原因は「人間関係」です。

下の図をご覧ください。

公益財団法人介護労働安定センターが行った調査で、介護職を辞めた理由の調査データを見ると、一番多くあげられているのが「職場の人間関係に問題」という答えで、23.2%に上ります。

これは二番目の「結婚・出産・妊娠・育児」20.4%よりも多い結果となりましたが、この中にも、人間関係さえよければ出産後も職場復帰して働きたいと考える人もいたことが予想できます。三番以下の「理念や運営に不満」「将来に見込みがない」というのも人間関係がからんでいる場合が多く、根深いといえそうです。

一方、「収入が少ない」ことは六番目となり、離職の直接的な理由として多くはない、という結果でした。これらの結果を見るに、「低賃金」や「3K」といった介護職の人手不足や離職において世間一般に言われているイメージは現場の実態とは、少々乖離しているのではないでしょうか。

評価制度が整っていない

離職理由のおよそ1/4が「職場の人間関係に問題」と答えていますが、この結果は保育士、看護師などのエッセンシャルワーカーに共通する傾向といえます。いずれも「仕事ができる人」と「仕事があまりできない人」にはっきりと分かれてしまうことが原因の一つと考えることができます。

現場でもしも仕事の評価基準が明確に定まっていないと、仕事の能力差や働きぶりなどが正しく評価されないという問題が出てきます。さらには仕事のできる、できないが給与や賞与に反映されにくく、不満に思う人が増えることが、人間関係の問題を深刻にすると考えられます。

また、評価基準がきちんと整備されていないことで、昇格につながる評価も勤続年数や年功序列になりがちであり、若手とベテラン職員との摩擦が起きやすくなります。若くてもよく働く人、職場のために助け合おう、という人が正しく評価されないと、新人が入ってもすぐに辞めてしまう、という問題を抱える一因となるといえるでしょう。

職場における人手不足の解決策

それでは、職場における人手不足を解決するためにはどんな対策があるのか、具体的にご紹介します。

ITツールなどを用いて組織課題や人間関係の「見える化」を推進

離職率の高い施設が新人を採用できたとしても、それは穴の開いたバケツで水を汲んでいるようなものです。まずは離職率を健全な水準に戻す必要があります。

離職率の高い職場の多くに共通していることは、職場における組織課題や人間関係が把握できていないことが挙げられます。マネジメント層は本来こうした課題を現場において把握した上で解決の糸口を探ることが必要なのですが、介護職の場合は目の前の高齢者に向き合うことに忙しいことから本来の組織マネジメントができておらず、組織課題やこじれた人間関係が長年にわたって放置されているケースも珍しくありません。

幸いわい、昨今では組織課題や職場における人間関係の問題を把握する『サーベイツール』※や従業員の職場視点での職場・上司への評価を測定する『アセスメントツール』※などのITツールが数多く登場しています。まずはそのようなツールを活用しつつ、組織や人間関係のどこに穴があるのかをきっちり把握する必要があると思います。その上で具体的な対策を講じていく必要があるのではないでしょうか。

※サーベイツール…従業員が企業や組織、自分の働き方などに満足しているかどうかを可視化する社内調査ツールのこと

※アセスメントツール…計算値や測定値などの客観的な基準をもちいて対象を人事評価などをするツール

人間関係改善のために相談窓口を設置する

人間関係改善の対策として、相談窓口をもうけることも一つの手段です。

介護労働安定センターが行った調査によると、相談窓口がない事業所は労働条件に関する悩みが多いという結果が出ています。

また「職場での人間関係について特に悩み、不安、不満などは感じていない」と答えた人のうち、相談窓口のある介護事業所で働いている人が42.1%に上ったのに対し、相談窓口がない人は22.9%に留まり19.2%の開きがありました。

職員がなにか問題を抱えた際に気軽に相談できる窓口が職場内にあることは、人間関係の問題を減らすだけでなく、さまざまな意見を吸い上げて検証することで、労働環境の改善にもつながることが期待できそうです。

▶参考: 「令和2年度 介護労働実態調査結果について」|公益財団法人介護労働安定センター

「待ち」の採用をやめ、「積極採用」を行う

「応募がなかなか来ない」と嘆きつつも、ハローワークや人材紹介会社に任せっきりになっている、つまり「待ち」の採用しかしていない事業所も少なくない印象があります。

コーポレートサイトの採用ページがテキストだけの味気ないページになっていませんか?どの職場でも誇りとやりがいを感じていきいきと活躍してくれている職員によって支えられているはずです。介護の仕事をするのが「かっこいい」「面白い」と思われるような情報発信をしていきましょう。 「うちは大手ではないので情報発信にコストを割くことが難しい」という声も聞きますが、現在、Web媒体での情報発信(SNSを含めて)はほとんどコストをかけずに行うことが可能です。

また、人材紹介会社を活用する場合にしても、「人材紹介会社のマネジメント」という観点をぜひ持っていただきたいと思います。紹介会社のマネジメントが上手に行えている事業者さんの事例を紹介します。

上記①〜③、いずれもZOOMをはじめとするWeb会議ツールの普及によって以前より手軽に行うことができるようになりました。紹介会社は通常、数千から数万件の求人を取り扱っていますので、「待ち」の姿勢だけでは数多ある求人のなかに埋没してしまいます。紹介手数料に見合った成果を出してもらうためにも、上記のような「マネジメント」という観点を持つことが重要です。

外国人雇用で人材不足を解決する

人手不足解消の対策として、外国人を雇用する方法があげられます。

少子高齢化の日本では若年者の雇用に限りがあるため、高齢者や女性の活躍推進が叫ばれています。しかし、体力が重要となる職種も少なくはないため、若年層の獲得が望ましい場合があります。特に介護などの現場ではそれが顕著ではないでしょうか。

そこで、日本で働きたいと考えている外国人や、すでに日本に在住している外国人を雇用する方法が考えられるわけです。

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外国人雇用のメリット

外国人の雇用には3つのメリットがあります。

  • メリット1:若い労働力が確保できる
  • メリット2:地方の職場でも採用しやすい
  • メリット3:雇用に際して助成金などの支援がある

最も大きなメリットとして、若い労働力の確保が挙げられます。海外から日本へ来て働きたいと考えている外国人の多くは年齢が若いことが多いためです。

メリットの2つ目として、地方の職場でも採用しやすい場合があります。日本人の場合、給与額が高かったとしても地方での人材採用は難しい傾向にありますが、外国人の場合は立地よりも給与額と社宅や寮の有無で就職を決定する方もいます。

とはいえ、地方では住居を借りるのが都心より難しかったり、自動車免許がない外国人の方が生活できるように施設側がサポートしたりする必要はありますが(詳しくはこちらの記事をご覧ください)、それでも日本人より採用が比較的しやすい傾向です。

メリットの3つめとして、外国人雇用に際して助成金や補助金などの支援が活発なことです。

国からの補助金だけでなく、地方自治体などでは介護分野向けの補助金も増えています。外国人介護士の日本語などの教育補助や、介護福祉士資格取得のための補助などもあります。外国人雇用には日本人雇用よりもランニングコストがかかる印象があるかもしれませんが、助成金や補助金を活用することでコストを抑制できる場合があります。

助成金や補助金については以下の記事をご覧ください。

外国人介護士を雇用する方法

外国人が日本に滞在をするためには在留資格が必要です。さらに外国人を雇用する場合は、雇用する外国人の在留資格が就労が認められているものでなければなりません。就労が認められているのはいわゆる「就労ビサ」と呼ばれるものや、配偶者などの身分系の在留資格です。

就労が認められていない在留資格は資格外活動許可を得ていれば就労できますが、就労に関して制限があります。留学生の在留資格「留学」などがこれに該当します。

就労ビサについて詳しく知りたい方は、以下の記事で解説していますのでご覧ください。

介護士として働ける在留資格は、主に以下の4つとなります。

  1. 特定技能
  2. 技能実習
  3. 介護
  4. 特定活動(EPA介護福祉士)

「EPA介護福祉士」や「技能実習」は受け入れに制限があり、「介護」については在留資格の取得が難しく、採用のハードルが高い傾向になります。それぞれに違いがありますが、施設としてどのように働いてほしいのかを考えて在留資格を選ぶことをお勧めします。

4つの在留資格の特徴は以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

そして現在進行形で在留人数を大きく増やしているのが「特定技能」です。特定技能外国人そのものが大きく人数を伸ばしていますが、特定技能の中でも介護分野は3番目に在留人数が多い分野です。

採用しやすく、日本人と同等に活躍が可能な特定技能

特定技能とは人手不足が深刻な業種で即戦力となる外国人を受け入れるために新設された在留資格です。1年・6ヶ月または4ヶ月の更新を行いながら、通算5年まで日本で働くことができます。

特定技能「介護」は技能実習などと比較して、採用がしやすいわりに対応できる業務の幅が広く、制限が少ないことが特徴です。

これは特定技能が就労を目的とした在留資格であることが大きく影響しています。EPAや技能実習などの、国際貢献や実習を目的とした就労のためではない在留資格とは違い、現場で戦力となる仲間として介護に携わってもらうことが可能です。

【特定技能のメリット】

◆採用しやすく、業務の幅が広い
◆訪問系サービスを除いた、身体介護と付随する支援業務が可能
◆技能実習生はできない一人夜勤も可能
◆技能実習生からの移行が多く、日本で在住経験のある人材が採用できる

このようなメリットから、介護分野において、特定技能外国人の採用は人手不足の解消に非常に有効な対策となっています。これらがメリットである理由や更に詳しく雇用のメリットを知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

介護業界における外国人採用状況アンケート調結果

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