特定技能でミャンマー人を雇用するには?気になる採用方法を解説
特定技能外国人の採用を検討する際に、ミャンマー人を候補に考えたことがある方も多いのではないでしょうか?ミャンマー人は日本の企業と親和性が高く、特定技能として雇用するメリットも大きいため、現在注目を集めています。
しかし、ミャンマーは情勢が不安定であり、特定技能として採用するためには様々なハードルがあります。
この記事では、ミャンマー国内の情勢や特定技能として雇用する際の手順・注意点のほか、ミャンマー人の性格についても解説します。
目次
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特定技能で働くミャンマー人が急増している理由とは?
ミャンマーはタイの隣国に位置している国で、日本の約1.8倍の国土を持っています。
そんなミャンマーの人々が、日本で特定技能として働くことを選択するケースが急増しています。出入国在留管理庁によると、2023年12月末時点で特定技能のミャンマー人は11,873人だったのが、2024年12月末には27,348人まで増えました。たった1年で2倍以上の人数に増加していることがわかります。特定技能外国人全体の増加率が1.36倍であることを考えると、非常に高い増加率であるといえます。
特定技能として日本で働くミャンマー人が増えている理由には、以下の2つがあります。
- 情勢悪化により国外での就労を希望する人が増加している
- 特定技能試験の実施回数と合格者が多い
詳しくは以降の項目で説明します。
①情勢悪化により国外での就労を希望する人が増加している
ミャンマーでは、2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し、民主化が進んでいた体制から軍事政権に移行しました。
当時の国家顧問アウン・サン・スーチー氏や大統領が拘束されたことは国民に衝撃を与え、今に至るまで抗議デモや国軍との武力衝突が頻発しています。国軍による民主化勢力への弾圧も起こり、これらの出来事を問題視した各国は、ミャンマーへ経済制裁を科しました。その結果、ミャンマー経済は悪化し、国外に仕事を求める人が増加しています。その影響で治安が良く、ミャンマーと比較して賃金が高い日本で特定技能として働く選択をするミャンマー人が急増していると考えられます。
また、2025年3月にはミャンマーで地震が発生し、首都ネーピードーなどでも大きな被害が報告されています。このような災害も、今後さらに国外で働きたいと考える人が増える一因となる可能性があります。
ミャンマーの情勢については以下の記事で詳しく解説しています。
②特定技能試験の実施回数と合格者が多い
ネーピードーやヤンゴンでは、特定技能試験が数多く行われています。その影響もあり、ミャンマー人の特定技能試験合格者は多く、2024年3月から2025年2月の間に合計62,037人のミャンマー人が合格しています。この数字は、2位のインドネシアより約15,000人も多いです。
情勢が悪化しているのに実施回数が多いことに疑問を感じる方もいるかもしれませんが、紛争が多いのは国境や辺境で、ヤンゴンや首都ネーピードーは比較的安全と言われています。
特定技能とはどんな制度?
特定技能制度は、一定の専門的な技能を持つ外国人を受け入れるための制度で、日本の労働力不足を背景に創設されました。在留資格「特定技能」は外国人が日本で就労するための在留資格のひとつで、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。
特定技能1号と特定技能2号の詳細な違いは、以下の表の通りです。
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
| 分野 | 16分野 | 11分野 |
| ②在留期間 | 1年・6カ月・4カ月ごとの更新 (通算5年まで) | 3年・1年・6カ月ごとの更新 (更新の上限なし) |
| ③永住権の取得 | できない | 要件を満たせる可能性がある |
| ④技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 | 1号よりも熟練した技能 (各分野の技能試験で確認) |
| ⑤外国人支援 | 必須。支援計画の策定実施は義務 | 支援計画の策定、実施は不要 |
| ⑥家族の帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
特定技能2号は、リーダーなど管理指導の役割を求められる分野が多い点も特徴です。
特定技能の対象分野
特定技能の分野の対象は、以下のリストの通り、全16分野です。
【特定技能1号の分野】
出入国在留管理庁によると、これらの分野のうちミャンマー人が最も多く働いている分野は介護で、11,717人が特定技能1号として就労しています(2024年12月末時点)。介護分野の中ではインドネシアの12,242人に次いで2番目の多さです。
また、先述したように特定技能1号と特定技能2号では対象の分野が異なります。特定技能1号では対象だった分野でも、特定技能2号では対象外の分野があります。
詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶特定技能1号と2号の7つの違いを徹底比較!取得要件や在留期間に注目
企業が特定技能外国人を受け入れるための要件
ミャンマー人に限らず、特定技能の受入れ企業が満たすべき要件があります。分野で共通している要件は、以下の4つです。
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
- 受入れ企業自体が適切であること
- 外国人を支援する体制があること
- 外国人を支援する計画が適切であること(登録支援機関に依頼し「支援計画書」などの作成をサポートしてもらうことも可能)
※分野によっては追加の要件があります。
特定技能を受け入れるための企業の要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶受入れ機関とは?特定技能外国人の受け入れ条件や雇用までの流れを解説
ミャンマーにいる人材を採用する方法
ミャンマー人を特定技能として採用する際には、他の国とは異なる特有の手続きがあり、6つの段階を踏む必要があります。
- 受入れ企業は求人票(デマンドレター)をミャンマー認定の現地送り出し機関に提出
- 送り出し機関が求人票を「ミャンマー労働・入国管理・人口省(通称:MOLIP)」へ提出
- MOLIPが在日ミャンマー大使館に求人票の内容の確認を依頼
- MOLIPが「ミャンマー教育・健康及び人材開発委員会」に求人票を提出し、承認を受ける
- 現地のミャンマー人が送り出し機関を通じて求人に応募する
- 特定技能として採用されるミャンマー人が、スマートカード(海外労働許可証:OWIC)の申請を行う
以降では、デマンドレターの承認の流れやスマートカードについて解説していきます。
ミャンマー政府に求人票(デマンドレター)を承認してもらう
現地にいるミャンマー人を採用するには、ミャンマー政府にデマンドレターを承認してもらわなければなりません。デマンドレターとは求人票のことで、受入れ企業が作成します。ミャンマーにおいて、このデマンドレター(求人票)の流れは複雑なため、以下の図で説明します。
【デマンドレター承認の流れ】

デマンドレターは①~⑧の順で処理されます。そのため、送り出し機関に求人票を提出してすぐに候補者を集められるわけではありません。
「①求人票の提出」から「⑧求人票に基づくあっせん」まで、数カ月ほどかかることが想定されるので、入社期日から逆算しスケジュールを立てて採用を進めましょう。
スマートカード(海外労働許可証:OWIC)を申請
スマートカード(海外労働許可証:OWIC)とは、ミャンマー人が海外で働く際に発給される証明書で、ミャンマー政府によって所持が義務づけられている書類です。このスマートカードが無いと、ミャンマーから出国することはできません。
スマートカードは、ミャンマー人自身がMOLIPに発給を申請しますが、発給までに時間がかかる場合があります。勤務開始時のスケジュールに関わってくるので、企業もスケジュール感を把握しておくことが大切です。
すでに日本に在留しているミャンマー人を採用する方法
日本に在留しているミャンマー人を採用する方法は、海外在留者を採用する場合と比較するとさほど複雑ではありません。
手順は以下の通りです。
- 求人募集や採用活動を行い、ミャンマー人と雇用契約を結ぶ
- ミャンマー人自身が在留資格変更許可申請を行う
- 許可が下りれば特定技能として就労可能
以上の流れで、在留ミャンマー人を特定技能として雇用できます。
「②在留資格変更許可申請を行う」の際、特定技能1号として雇用する場合は支援計画書など、企業側の協力がないと提出できない書類が多数あります。そのため企業側がミスなく書類作成を進めることでスムーズな入社が可能となります。また、書類作成については登録支援機関によってはサポートしてくれる場合もあるので、不安な場合は書類作成をサポートしてくれる登録支援機関に依頼するという手段もあります。
採用の際にかかる費用
ミャンマー人を特定技能として採用する際、以下の5種類の費用がかかります。
- 在留資格申請・手続き費用
- 住居費
- 渡航費
- 人材紹介会社・送り出し機関の費用など
- 登録支援機関委託・支援費用
このように、費用は国内在住者の採用か海外現地からの採用かによって異なります。また、人材紹介会社に依頼する場合は会社によって手数料や費用の内訳が異なるため、複数社を比較して検討することが大切です。
ミャンマー人を採用するために注意すべきこと
ミャンマー人を採用する際、注意すべきことは、以下の2つです。
- スマートカードの発給に遅れが生じている
- デマンドレターの受付数に制限が設けられている
以下に、詳しく解説します。
スマートカードの発給に遅れが生じている
現在、スマートカードの発給に遅れが生じています。発給にかかる明確な期間は公表されていません。
発給が遅れている要因としては、ミャンマーの内戦の影響で国外脱出者を制限するために発給が一時停止されたことに加え、地震により労働省の建物がダメージを受けてしまい、発給実務が大幅に遅延したことが挙げられます。
このような状況を受けて、日本は在留資格認定証明書の有効期間を3カ月から6カ月に延長するという措置を設けています。
しかし、スマートカードの発給にかかる期間が明確ではないため、これから特定技能のミャンマー人を雇用することを考えている企業は、スマートカードの申請を在留資格認定証明書交付申請の前に行うことをおすすめします。
デマンドレターの受付数に制限が設けられている
デマンドレターの受付数に制限が設けられていることも、注意すべきポイントです。
現在、1つの送り出し機関につき、デマンドレターの受付は月1回上限15名までと制限されています。ミャンマーの徴兵制度の影響で若者が国外に流出する動きが活発化しており、これを制限する狙いがあるみられます。
これらのポイントを踏まえると、企業が特定技能として国外にいるミャンマー人を採用したくても、すぐに募集できないのが現状です。
帰国困難による特定活動(緊急避難措置)について
これまで解説している通り、現在のミャンマー情勢は不安定です。そのため、特定技能を含む帰国が困難な在留ミャンマー人は、緊急避難措置として在留資格「特定活動」で滞在することができます。
詳しい条件は以下の表をご覧ください。
| 在留資格を有するミャンマー人 | 取り扱い |
| 現に有する在留資格の活動を満了した者で、在留を希望する者 | 在留資格「特定活動(1年・就労可)」 |
| 自己の責めに帰すべき事情によらず(※)、現に有する在留資格の活動を満了せず、在留を希望する者 | 在留資格「特定活動(6カ月・週28時間以内の就労可能)」 ※特定活動(6カ月・週28時間以内の就労可)を許可されてから、何らかの違反を犯すことなく適正な在留を行っていると認定された者は、個々の事案に応じて「特定活動(1年・就労可)を許可 ※「技能実習」で在留し、技能実習を修了していない者で、残余の在留期間がある者については、在留資格の変更を認めない |
| 自己の責めに帰すべき事情により、現に有する在留資格の活動を満了せず、在留を希望する者 |
※…「自己の責めに帰すべき事情」とは、「自身に責められる理由や落ち度がある」という意味。
特定技能のミャンマー人を採用するメリット
特定技能としてミャンマー人を採用するメリットは、大きく分けて3つあります。
- 日本語を習得しやすい
- 慈悲深く目上の人を大切にする
- 比較的、若い人材を採用しやすい
順に解説します。
①日本語を習得しやすい
ミャンマー人を採用するメリットとしては、ミャンマー人は日本語を習得しやすいという点があげられます。
これは、ミャンマー語が日本語の構成と同じ、「SOV型(主語-目的語-動詞)」の構成となっていることが影響しています。文法の構成が同じなため、ミャンマー人にとって習得しやすい言語と言えます。また、発音も似た単語が多いことも日本語学習や習得のハードルを下げることに影響しています。
こうした背景もあり、ミャンマーで開催された2024年度のJLPT(日本語能力試験)の受験者は約15万人にのぼりました。
JLPTやJFT-Basicなどの日本語試験を受験し、定められたレベルに達していることが特定技能の在留資格を申請する要件のひとつです。ミャンマー人のように日本語習得のハードルが低い場合は、日本語試験にも合格できる可能性が高く、特定技能の在留資格申請要件を満たしやすいと言えます。
また、ミャンマーでは日本語試験だけではなく技能試験も多く開催されています。特定技能を取得できるチャンスが多いため、対象となる人材の母数が多いと言えるでしょう。
②慈悲深く目上の人を大切にする
ミャンマー人には、敬虔な仏教徒が多いです。そのため、善い行いで徳を積むことがとても大切という価値観が根付いており、年上や年配者を敬う国民性が特徴的です。
ミャンマー人の慈悲深さは、数字で示すこともできます。世界の寄付指数ランキングでは、ミャンマーは1位だった年も多く、ランキング上位の常連です。国内情勢が不安定な2024年でも第2位にランクインしました。
年上の人から頼まれたことを忠実に実行しようと努力し、年上や年配者を敬う性格は、年配者と接する介護の仕事やサービス業と相性がいいと言えるでしょう。
ミャンマー人の価値観などについては以下の記事でも解説しています。
▶ミャンマー人ってどんな人?特徴7選を紹介!うまく付き合うための方法や国の情勢・宗教も解説
③比較的、若い人材を採用しやすい
ミャンマー人を特定技能で採用するメリットとして、比較的若い人材を確保しやすいこともあげられます。
ミャンマーは生産年齢人口(15~64歳)が全体の約65%を占めており、国民の平均年齢も30歳前後です。日本の平均年齢が約48歳であることを考えると、若い人材を採用しやすいと言うことができます。
そのため、現在若い人材の採用に苦戦している企業からすると、特定技能のミャンマー人を採用することは若い人材を採用できるチャンスと言えます。
ミャンマー人採用のメリットや採用方法などをさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶ミャンマー人を採用したい!求人募集のステップや雇用のメリットを徹底解説!
情勢を確認しながら、採用を検討しましょう
ミャンマー人材は、言語の相性や性格といった面で日本との親和性が高く、若年層が多い点が魅力です。そのため、特定技能外国人を雇用したいと考えている企業にとってはメリットが多いと言えます。しかし、現状デマンドレターの発給規制やスマートカードの発給遅延など、採用スケジュールの見通しを立てにくいのも事実です。
ミャンマーの状況の変化が激しいことを理解したうえで、ミャンマー人の採用を検討するようにしましょう。










